車社会の地域に住んでいると、家に車が二台あることも珍しくありません。車を二台所有していると自動車保険が安くなる「セカンドカー割引」という制度があります。しかし、自賠責保険にはその制度がありません。
自賠責保険には、なぜ割引制度がないのか詳しく解説します。また、車二台持ちの場合の維持費やメリットとデメリットはどのようなことがあるのかも紹介していきます。
自賠責保険と自動車保険
自賠責保険は、任意で加入する自動車保険と異なり、個人の意思とは関係なく加入しなければならない強制保険です。
車は自賠責保険への加入が法律等で定められ、車の新規登録時や車検時には車検期間をカバーする自賠責保険に加入する必要があります。対して自動車保険は強制ではなく任意での加入になるので、加入しなくても処罰されることはありません。
自賠責保険の保険料は、損害保険料算出機構という機関が定めています。全保険会社(各種共済組合含む)共通であり、車種と保険期間(車検期間)によって料金が定められています。
また、年齢や免許証の色による保険料の差もありません。さらに、保険金額と保険料だけでなく、支払限度額や損害別による細かい支払基準も定められているので、保険会社が違ったとしても全て内容も同一です。
被害者請求と加害者請求の2つの請求方法も変わりません。
自賠責保険の保険料は、普通車と軽自動車で異なりますが大きな金額の差はありません。保険料は12ケ月、24ケ月、36ケ月といった保険期間(車検期間)による違いのほうが大きくなります。
令和3年4月1日以降始期の自家用乗用自動車の場合の保険期間別保険料は次のようになります。
12ケ月…12,700円
13ケ月…13,310円
24ケ月…20,010円
25ケ月…20,610円
36ケ月…27,180円
37ケ月…27,770円
12ケ月…12,550円
13ケ月…13,150円
24ケ月…19,730円
25ケ月…20,310円
36ケ月…26,760円
37ケ月…27,330円
車検ごとの期間である12ケ月、24ケ月、36ケ月よりも、自賠責保険の加入期間のほうが車検よりも1ケ月多く設定されていることが多いです。新規登録する際、次の車検満了日までに手続きが遅れてしまう可能性を考慮して、1ケ月余裕を持って設定されています。
二台持ちの場合の自賠責保険料の支払いについて
自動車保険は、同じ保険会社で二台目の車両を加入すると割引が適用される特約があります。しかし、自賠責保険の場合はそのような割引は適用されません。
はじめて自動車保険を契約する場合、ノンフリート等級は6等級からスタートしますが、一台目の自動車保険が11等級以上であるなどの条件を満たすと割引が適用され、二台目が7等級からのスタートとなります。
また、一台目と二台目が別の保険会社で契約していたとしても、この割引は適用されます。
それでは、二台持ちの場合の自賠責保険料はどのように支払うのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
自賠責保険は1台ずつ契約するため、二台持ちの場合も契約期間にかかわらず1台ずつの保険料を期間内に支払うことになります。
自賠責保険の支払いと契約は、損害保険会社やその代理店、または車やバイクなどの販売店などが取り扱います。
保険料は全保険会社共通なので、それぞれの車の保険会社が異なっても問題ありません。また、自賠責保険料は基本的に現金払いです。
自賠責保険の保険料は、車の購入時に支払うと、次は契約期間の終わる車検の更新時に支払います。乗用車の場合、新車であれば初回は3年、それ以降は2年ごとの車検時に契約して支払います。
また、新車の購入時や車検時は、「法定費用」として明細書に記載されているので、自賠責保険料がいくらなのかを確認できます。
修理工場やディーラーは、保険会社の代理店になっています。車検を受け続けている間は自賠責保険の保険料を車検時に必ず支払うため、払い忘れるという心配はないでしょう。
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二台持ちの場合の自動車保険はどうなる?
自賠責保険では二台持ちでも保険料が変わらないことが分かりました。では、任意で加入する自動車保険の場合はどうなのでしょう?
ここからは、自動車保険について詳しく解説していきます。
自動車保険は「任意保険」と呼ばれるように、自分で加入するかどうかを決められる保険です。加入が義務である自賠責保険と異なり、加入しなくても罰則などがありません。
また、万一の事故の際に、自賠責保険の補償だけでは不十分なことが考えられるため、費用はかかってしまいますが、多種多様な保証内容のある自動車保険に加入する方が多いのが実情です。
自賠責保険は相手方への対人補償だけですが、自動車保険であれば自分の身体や自分の車、相手の車や家屋等の物損もされるなど補償内容を自由に決められるので、目的や予算に合わせた補償範囲を設定できます。また、ネット型の保険会社のように、保険料が安いところを選ぶこともできます。
自動車保険には二台持ちの場合、自賠責保険と違い「セカンドカー割引」または「複数所有新規割引」という割引があります。どちらも同じ内容で、保険会社によって名称が異なるだけです。
もし二台目の車を購入し、新規で自動車保険を契約した場合、6等級3%割増からスタートすることになりますが、セカンドカー割引を利用すると、7等級34%割引から始めることができます。
ここからは、このセカンドカー割引を利用した場合について詳しく見ていきましょう。
セカンドカー割引は、適用条件を満たせば、二台目以降の自動車保険を契約する際の保険料が割引かれるというものです。
この適用条件は保険会社によって異なる場合がありますが、主に以下の内容が含まれています。
- 一台目の車の等級が11等級以上であること
- 一台目の車の用途・車種が自家用8車種であること
- 一台目の車の所有者が個人であること
- 一台目の車の自動車保険の記名被保険者が個人であること
- 二台目の記名被保険者が一台目の契約者または配偶者か同居の親族で個人であること、そして車両所有者であること
(自家用8車種とは、ほとんどの乗用車が含まれると思っていて大丈夫です。)
セカンドカー割引を使うと、通常だと6等級スタートの保険が7等級スタートから始められます。つまり、セカンドカー割引が適用されると通常より高い等級が適用されるため、保険料が安くなります。
本来なら1年間無事故だと適用になる7等級を最初から得られるのは大きいでしょう。
自動車保険は、前年度が無事故であれば保険料の割引率が高くなり、保険料が安くなります。したがって、セカンドカー割引を適用するなら、1年前倒しで等級が進むことになります。
保険会社によって異なることもありますが、6S等級の割増引率は4%の割増なのに対して、7S等級の割増引率は34%の割引になります。では、セカンドカー割引の具体的な安さはどのくらいになるのでしょう?
例えば、100,000円の保険料だとすると、6等級なら割増引後の保険料が103,000円のところ、7等級だと62,000円です。
割増引率、保険料の算出方法は保険会社により異なりますが、かなりのお得感があります。
セカンドカー割引は、その他にも特典があります。
各保険会社は契約数の確保のため、セカンドカー割引に力を入れているところも多いです。加入条件には差がなくても、割引率などで差別化と競争が行われています。
新規での無事故等級が6S等級から7S等級になるのは共通ですが、7S等級になるときの割増引率が34%~38%と幅があります。
通常、1台目を契約している保険会社でセカンドカー割引を契約すると思いますが、この機会にセカンドカー割引の大きい保険会社に乗り換えることも検討して良いかもしれません。
ただし、その場合はセカンドカー割引の他のサービス内容や使いやすさも考慮しましょう。
二台持ちする場合の維持費について
最近では一家で車を複数台所有することも珍しくないので、二台目の購入を検討している方もいるでしょう。車が二台になれば、その分維持費も増えて、自動車保険は台数分増えていきます。
維持費は所有する車種や保険内容で異なり、二台持ちならば当然二台分の維持費が必要となります。
また、維持費には定期的に決まって発生し、金額が一定の支出となる「固定費」と、それ以外の臨時の支出が予想される「変動費」があります。
車の維持費は家計の支出の中でも大きな割合を占めるので、計画的に支出を考慮していく必要があり、少しでも節減することが重要です。場合によっては、二台持ちという考えを改めなければいけないかもしれないので、以下の内容を参考にしてみてください。
維持費には、ガソリン代、駐車場代、自動車保険料、自賠責保険料、自動車税、重量税、車検代などがあります。
また、普通車か軽自動車か、あるいはガソリン車かディーゼル車か、もしくは最近の傾向として電気自動車であるかでも維持費は変わってきます。
さらに、加入している保険によっても維持費の金額は大きく異なります。
維持費を考える際には毎月の支出と年間での支出、さらには車検など予定される翌年、翌々年度の支出も抑えておくことが必要です。二台持ちとなれば車検時期も異なることが多いため、より支出の管理が重要になります。
普通車と軽自動車の1台分の年間維持費用の内訳を紹介しましょう。
車の購入時に必要になる初期費用以外に、車を維持する費用には大きく分けて「固定費」と「変動費」という2つの費用がかかります。
定期的に決まった月日に支払いが発生し、その金額もおおむね一定の支出であることが固定費となります。
変動費は燃料代や消耗品の交換費用など、金額が一定ではなく、発生する時期も固定されていない支出です。事故など不測の事態での修理費なども含まれます。
固定費や変動費は、普段あまりなじみのない言葉ですが、この2つに分けて維持費を考えると、支出の管理が非常に分かりやすくなるでしょう。
特に保険料は自賠責保険と自動車保険があり、二台持ちとなると補償内容や運転者の年齢などによって金額も大きく変わります。その上、無事故等級などその内容によっては、1台の場合よりも大きな負担になります。
固定費は定期的に決まって発生し、金額が一定の支出が見込まれる維持費です。
各種税金や保険料が当てはまり、駐車場代も含む場合があります。税金や保険料は車の種類や大きさによって変わり、保険料には年齢や無事故割引などの個人差があります。
また、駐車場代は自宅のガレージか、月極駐車場を利用するか、さらに居住する地域差も大きくなるでしょう。
車のローンを利用して購入する場合には、その金利を含めた支払額も維持費に含む場合があります。
変動費は月々の燃料代やオイルやタイヤといった消耗品の交換費用、事故の際の修理費などが含まれます。さらに、高速道路料金、出先でのコインパーキング代なども該当します。
これらは年間を通して発生する費用です。維持費の中でも金額に大きなバラつきがあり、時期もつかめないため、なかなか予定が組めない支出と言えます。
特に二台持ちの場合はその費用は二倍になるので、固定費よりも余裕を持った計画が必要です。
変動費はこのような性質があり節約が難しいため、固定費で節約することを考えたほうがいいでしょう。
二台持ちにするメリット
総務省の統計では、二台以上所有する世帯が多いとされています。
なぜ二台持ちにする家庭が多いのかというと、そこには二台持ちならではのメリットがあるからです。
二台持ちの場合は経費がかさむことがデメリットとなります。しかし、「家族に気兼ねなく使用できる」「利用を二台で分け合うため、1台当たりの車の消耗が少なくなる」といったメリットも考えられます。
ここからは、車を二台持ちにするメリットについて詳しく紹介していきます。
二台持ちをすることで、通勤や買い物には「軽自動車」、レジャーなどでは「ミニバン」というように使い分けができるので、車種を妥協しないで選ぶことができます。
普段使いには小回りが利いて燃費も良い軽自動車が最適ですが、家族全員で長距離ドライブするならミニバンが良いでしょう。
しかし、全てを1台で済まそうとすると車種選びが難しくなり、かえってどちらにも使いづらい車になるかもしれません。一方、車を二台所有すれば、平日は奥様が買い物やお子さんの送り迎えに軽自動車を使い、休日はご主人が運転するミニバンでレジャーへ出掛けることができます。また、趣味のスポーツカーを選ぶこともできるでしょう。
そして、これからの時代、1台は電気自動車(EV)で、もう1台は航続距離を気にしないで済むガソリン車やディーゼル車という新しい組み合わせも増えるかもしれません。
二台を使い分けると、1台当たりの走行距離が少なくなり、タイヤなどの消耗も少なくなります。
また、走行距離が少ないことで下取り、買い取りともに高い査定になることも予想されます。下取りや買い取り時の査定では、高年式であったり車の状態が良かったりすることが高値の条件であるのはもちろんですが、走行距離も重要なチェックポイントです。
年間走行距離が10,000㎞を超えると、査定額がダウンすることもあります。逆に使用年数に対して少ない走行距離の場合は、査定額がアップする可能性があります。
二台の車を使い分けることで当然のように1台当たりの走行距離は短くなり、結果的に下取りや買い取りの価格が上がるかもしれません。
さらに、走行距離が少なければタイヤの消耗も少なく、車検や点検時に交換する消耗部品も最小限に留まり、1台当たりの維持費も少なくなるでしょう。
自賠責保険の名義変更は必要あるの?手続きの仕方も教えます!
二台持ちにする際は補償内容の重複に注意
二台持ちの場合は、メリットとともに経費の増加というデメリットもあります。本当に二台必要なのかをよく検討しましょう。もしかすると一台でも十分だったり、車種の組み合わせが間違っていたりするかもしれません。
また、複数の車を持っている場合、注意しないと二台目以降の自動車保険の契約で補償内容が重複する可能性があります。補償内容が重複することで保険料が無駄になっているかもしれないため、注意して内容を確認してください。
重複する可能性が高い補償内容としては、「人身傷害保険」「弁護士費用特約」「個人賠償責任特約」「ファミリーバイク特約」があります。どれもどちらか1台に付帯していれば二台目にも適用されます。
あるいは、個人賠償責任特約だと自動車保険以外の傷害保険の特約に入ってるかもしれません。
二台目を保険契約する際には、このような特約が重複していないか確認しましょう。