車を所有していると、「自賠責保険」という言葉を耳にするでしょう。
しかし、「なんのために入る保険なのか?」「いつ払うのか?」「保険料はいくらなのか?」など、よく分からないまま加入している方も多いかもしれません。
この記事では、それらの疑問を解決するために自賠責保険について詳しく解説していきます。
自賠責保険とは?
自賠責保険とは、交通事故による被害者を救済するために全ての車に加入が義務付けられている保険です。二輪自動車や原動機付自転車も対象となります。
具体的には、車の所有者が運転によって他人の生命や身体を傷つけ、損害賠償責任を負った場合に補償するというものです。
人身事故のみが補償の対象なので、交通事故に遭った被害者の車の損害は対象外となります。また、事故を起こした運転者自身が怪我をした場合や、自分の車が破損した場合も同様に補償されません。
自賠責保険は、あくまでも被害者自身を救うための保険だということを覚えておきましょう。
自賠責保険の保険料はいくら?
自賠責保険の保険料は、普通自動車や軽自動車、原付自転車などの種類によって金額が決められています。
また、保険の適用期間によってもそれぞれ定められています。そのため、取り扱う損害保険会社や共済などの違いで保険料が変わることはありません。
ちなみに保険の適用期間は、12ヵ月・13ヵ月・24ヵ月・25ヵ月・36ヵ月・37ヵ月と、6つから選ぶことができます。
なぜ12ヵ月と13ヵ月のように1ヵ月違いで期間の種類が設けられているかというと、車検と自賠責保険の満期の時期が多少ずれて、次の車検の前に自賠責保険の満期が切れるといった事態を防ぐためです。
ここでは普段の生活に身近な車種を3つ取り上げて、それぞれについて本州の場合の保険料を説明します。離島や沖縄県の場合は本州とは違う金額になりますので、ご注意ください。
普通自動車のなかでも、自家用乗用車の保険料を説明します。
- 12ヵ月……12,700円
- 13ヵ月……13,310円
- 24ヵ月……20,010円
- 25ヵ月……20,610円
- 36ヵ月……27,180円
- 37ヵ月……27,770円
(2022年4月1日現在)
次に軽自動車の保険料を説明します。
- 12ヵ月……12,550円
- 13ヵ月……13,150円
- 24ヵ月……19,730円
- 25ヵ月……20,310円
- 36ヵ月……26,760円
- 37ヵ月……27,330円
(2022年4月1日現在)
次に原付自転車の保険料を説明します。
原付自転車とは、道路交通法上では総排気量50㏄以下、道路運送車両法では125cc以下の原動機を備えた二輪車のことを指します。
- 12ヵ月……7,070円
- 24ヵ月……8,850円
- 36ヵ月……10,590円
- 48ヵ月……12,300円
- 60ヵ月……13,980円
(2022年4月1日現在)
※車検がないため、記載月が他と異なっています。
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自賠責保険料が改訂されるのはなぜ?
前述では、2022年4月1日現在の金額をご紹介しました。しかし、自賠責保険の保険料は毎年改定されます。
近年は保険料が徐々に安くなってきている傾向があります。その理由として挙げられるのが、交通事故の減少です。
自動ブレーキなどの先進安全技術を備えた車が普及したことと新型コロナウイルスによって外出する機会が減ったことで、交通事故が格段に減りました。そのため、保険金として支払う金額が抑えられ、滞留資金が増えていくと考えられています。
自賠責保険の保険料は、利益や損失を出さないように計算されます。滞留資金が多ければ保険料に補填できるため、おのずと保険料が安くなるのです。
交通事故が減少していると説明しましたが、実際どれくらい減っているのでしょう?
交通事故が一番多かった時期は2004年です。その年の事故発生件数は952,720件、死傷者数は1,191,053人でした。
そこから年々減少し続けており、2020年には交通事故発生件数が309,000件、死傷者数が371,440人となっています。
どちらも交通事故発生件数と死傷者数が、2004年と比べて3分の1以下になっていることが分かりますね。
自賠責保険と任意保険の違い
自賠責保険は、先ほども説明した通り被害者を救済するために必ず入らなければならない保険です。補償対象は、被害者側の人的損害に限られます。
一方、任意保険は加入するかどうか自由に決められます。また、補償対象も自分が好きなように内容を変更することが可能です。
例えば、自賠責保険では被害者側の人的損害に限られましたが、自分が怪我をした場合の治療費などを補償してくれるものがあります。
保険の補償内容に、相手や自分の車の損害をカバーするという内容があれば、車の修理にも利用できます。
また重大事故の場合は、自賠責保険の限度額以上の補償が必要になることがあるかもしれません。任意保険でその部分を補償する内容に入っていれば、しっかりとカバーしてくれます。
自分のライフスタイルに合わせて、補償内容と保険料のバランスを取りながら、任意保険を決めると良いでしょう。
また、自賠責保険は損害保険会社によって金額が変わりませんが、任意保険は保険に加入する損害保険会社によって金額が変わります。最近では、インターネットから申し込める任意保険もありますので、内容をよく確認して判断するようにしましょう。
自賠責保険の保険料は減少傾向です。しかし、任意保険の保険料は値上げ傾向にあります。
大手損害保険会社は、2020年1月以降続々と保険料の値上げを行いました。値上げの理由としては、消費税率の引き上げや民法改正に伴う支払保険金の増加などが挙げられます。
また、保険料自体には消費税はかかりませんが、保険会社が支払う修理費などには消費税がかかります。そのため、消費税増引き上げによって増える分を見越して保険料が高くなっているのです。
さらに、自動ブレーキシステムなどには、高額な電子部品が使用されるため、そのようなことも原因の一つと言われています。
任意保険料を安くする方法
自賠責保険の保険料が安くなっても、任意保険の保険料が高くなってしまえば、値下げ分が相殺されてしまいます。任意保険料を安くできるのであれば、家計的にも嬉しいでしょう。
ここからは、任意保険料を安くするための方法を3つ紹介します。
任意保険料は、保険会社によって保険料が違うので、保険会社を変えるだけで安くなる可能性があります。
特に現在代理店型の保険会社にお願いしている場合、ネット型の任意保険に変えると大幅な減額が見込めます。ネット型の任意保険であれば、代理店手数料などの費用を削減できるからです。
ネット型の任意保険にもたくさんの種類がありますので、選択肢は様々です。しかし、手続きを自分で行ったり、分からない時に助けてくれる人がいなかったりなどのデメリットもあります。
メリットとデメリットがありますので、バランスを見ながら自分に合った保険を選ぶようにしましょう。
任意保険の中でも車両保険にあたる部分は、全体の保険料に大きな影響を与えます。長い間同じ車を乗っている場合は、金額を見直すのも一つの手です。
車は毎年毎年価値が下がります。しかし、車両保険の金額を新車で買った時と同じように設定していては、実際の車の価値とは差が大きくなる一方です。そのため、現在の車の価値に見合った金額にするとガクッと保険料が安くなるかもしれません。
また、免責金額を高くする方法もあります。免責金額とは、車両保険を使用する際に自己負担する金額です。この金額を高くすると保険会社が負担する分が減るため、保険料が安くなります。
しかし、いくら保険料が安くなるからといって、免責金額を高くしすぎると万が一の時に自己負担金額が大きくなり、家計が苦しくなります。無理のない範囲で支払える金額を設定しましょう。
任意保険は、運転者を限定したり年齢条件を制限したりすることで、保険料を安くすることができます。
運転者は、以下の4つから選ぶことができます。
- 本人限定
- 本人・配偶者限定
- 家族限定
- 限定なし
ここでいう「本人」とは、記名被保険者のことです。その人を中心に、他に誰が乗るかを考えて補償対象を限定します。
年齢条件が適用される主な範囲は「記名被保険者」「記名被保険者の配偶者」「記名被保険者と同居している子供や親族」になります。
条件の内容は「全年齢補償」と「21歳以上補償」や「26歳以上補償」などの年齢範囲で決められています。
そこからさらに「26歳以上補償」を、「30歳未満補償」「30歳以上40歳未満補償」「40歳以上50歳未満補償」「50歳以上60歳未満補償」「60歳以上70歳未満補償」「70歳以上補償」と、分けている保険会社もあります。
同じ26歳以上でも、30代と70代では交通事故を起こす割合に違いがあります。その部分を保険料の割引に反映させるため、このように年齢ごとに分けられています。
自賠責保険の名義変更は必要あるの?手続きの仕方も教えます!
自賠責保険料はいつ納めるの?
自賠責保険料は郵送で請求書が届くといったことはないので、いつ払われているのか分からないという方もいるでしょう。
また、自分の車が自賠責保険に入っているかどうかも分からないということもあるかもしれません。
自賠責保険料の支払いは、車検の時に車検費用と一緒に払うのが一般的です。一見この2つはなんの関係もないように思えますが、実はほとんどセットになっていると言っても過言ではありません。
車検費用の請求明細書を確認すると自賠責保険料が含まれているはずなので、よく読んでみましょう。
では、なぜ車検と一緒に自賠責保険を更新するのでしょう?
それは、自賠責保険が法律によって義務付けられた保険だからです。義務付けられたということは、自賠責保険に加入していないと車検の継続ができないということです。そのため、車検の際に次の車検まで間に合う期間の自賠責保険に加入します。
もしも、自賠責保険に加入していないことが分かれば、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられます。それにプラスして交通違反の6点減点となり、すぐさま免許停止です。
そうならないためにも車検のタイミングと同時に、自賠責保険に加入しているかをチェックしています。
車検と同時に更新するなら24ヵ月分の自賠責保険に加入すればいいと思う方もいますが、自賠責保険は車検満了日より1日でも長くなければならないため、安全策として25ヵ月のものに加入する場合もあります。
その点については、加入するタイミングによって車検を行う業者と相談するようにしましょう。
廃車や売却した場合は戻ってくる?
自賠責保険料は車検時に、次の車検までの期間分を前払いしています。そのため、車を売却したり廃車にしたりする場合は自賠責保険料が戻ってきます。
戻ってくるのは、自賠責保険に加入した時に支払った自賠責保険料を保険期間の月数で割り、自賠責保険解約の手続きが完了した月の翌月から残った月分の金額です。
例えば、東京に住んでいる人が2020年6月に軽自動車の継続車検を受けるとします。その際に24ヵ月の自賠責保険に加入しました。そして、次回車検の前に車を売却するために、2022年4月中旬にすべての手続きを完了したと仮定しましょう。
この場合、まず自賠責保険料は24,140円となります。(2020年の自賠責保険料を参照しています。)
2020年6月からなので2022年5月までが自賠責保険の有効期間です。
2022年4月に手続きを完了するため、その翌月の5月分が返金されます。これを計算式で表すと次の通りです。
この例の場合は、1,005円の返金があるということが分かります。
ほとんどは保険会社で計算してくれますが、このように自分で計算することもできるので、確認してみると良いでしょう。
車を廃車にすると、自賠責保険も自動的に解約になると思われがちですが、自賠責保険の解約手続きは別に行わなければなりません。
廃車の手続きが終わってから、自賠責保険の解約手続きを行うとスムーズに進むでしょう。解約手続きを行うために問い合わせる先は保険会社です。問い合わせた後に、廃車完了の書類などの必要書類を郵送する作業が必要となります。
また、自賠責保険を加入する際に代理店を通していた場合は、代理店に連絡すると解約手続きがしやすくなるでしょう。
還付金が減る可能性があるので、いずれにしても早めにこの手続きを完了させることをおすすめします。
自転車にも自賠責保険は必要?
全ての車が自賠責保険に入る義務がありますが、自転車はどうなるのでしょう?
自転車には、自賠責保険というものはありません。しかし、「自転車保険」への加入義務化が進んでいます。
自転車保険とは、自転車事故による被害者救済と加害者の経済的負担のために設けられた保険です。
近年、国内では自転車による事故が後を絶ちません。そのため、自転車による事故でも高額な賠償金を請求されるケースがあります。そのような場合に備えるための保険なので、基本的な考え方は自賠責保険と同じです。
ただし、完全なる義務にはなっておらず、現在は自治体ごとの条例による義務化の流れが広がっています。
自転車保険には、様々な種類があります。一律に「この保険に入らないといけない」というわけではなく、自分に合う保険から選ぶことができるのが特徴です。
例えば、一人で入れるプランや家族全員で入れるプランがあります。
賠償金の設定額によっても毎月の保険料が異なるため、自分の生活バランスを考えて選ぶと良いでしょう。
ただし、どの保険にも共通して言えることは、加害事故を起こした時に被害者への補償ができる保険でなければならないということです。
保険を選ぶ際は、しっかりと「個人賠償責任補償」がついている保険かどうかを確かめてから加入しましょう。
保険料は入る保険の種類や内容によって異なりますが、だいたい月々1,000円未満で加入することが可能です。
自賠責保険で支払われる保険金はいくら?
自賠責保険でもらえる保険金には限度があり、その限度額も支払事由によって異なってきます。
例えば、交通事故で怪我をした場合は、治療費や休業損害、慰謝料などで最高120万円までの保険金が支払われます。
後遺症があるくらいのひどい怪我の場合には、逸失利益や慰謝料、怪我による損害などで75~3,000万円までの保険金が支払われます。
このように事故の内容によって保険金の幅が大きいのが特徴です。
ただし、第1級で常時介護を要するほどの後遺症がある場合には、最高で4,000万円まで保険金が支払われます。
そして死亡の場合には、葬儀関係費や逸失利益、慰謝料などを含めて最高3,000万円と決められています。
自賠責保険は、加害者からの請求だけではなく被害者からも請求が可能です。しかし、被害者側の悪意による損害の場合は、保険金が支払われません。
また、1台の車に2つ以上の自賠責保険がかけられている重複保険の場合も同様です。
自ら事故に遭いたいという人は滅多にいませんが、万が一保険金のために悪事を働いても不信点があればすぐにバレます。
あくまでも自賠責保険は被害者救済のための保険だと心得ておきましょう。