車を所有していると自賠責保険に必ず加入することになりますが、加入・更新の際に支払った保険料に対して領収書も発行されます。あまり意識されることはありませんが、これは自賠責保険証書と一緒になっています。

では、この領収書はどのくらいの期間保存するといいのでしょう。個人の場合と法人などの場合について説明します。また、この領収書の使い道や、紛失した場合の再発行の必要性とその方法なども詳しく解説していきます。

自賠責保険料を払うと必ず領収書が発行される

自賠責保険の加入・更新の手続きの際、保険料の支払いに対して必ず領収書が発行されます。

領収書の発行は民法で定められた義務です。保険会社でも、その日のうちに証書とあわせて発行することがルールとなっています。

自賠責証書・領収書ともに即日発行が原則

自賠責証書・領収書ともに即日発行が原則
自賠責保険の証明書と領収書は「即日発行」が原則なので、保険料を支払ったら必ず交付されます。

発行する際のルールや現在のシステム、また例外としてWebで手続きを行った場合などについて、以下で説明します。

自賠責証書と領収書は同時に発行される

自賠責保険料を支払うことで発行される自賠責証書と領収書は、「e-Jibai」という仕組みによってシステム化されていることから、その場で機械によって印刷されます。これは、保険会社でも代理店でも同様です。

そもそも、代金が支払われた時に領収書を発行することは、民法486条でも義務付けられています。損害保険の保険料についてもこのルールは同じで、領収書を即日発行することは保険業界のルールです。

e-Jibaiシステムが導入される前からこのルールは厳守されており、以前は複写式の領収書綴りを使って、手書きの領収書が発行されていました。収納印などもスタンプで押されていましたが、現在は全て印刷されてきます。

また、領収書の発行は郵便局で自賠責保険の加入・更新の手続きをした場合でも変わりません。

原付バイクなど車検を受ける必要がない車両は郵便局やコンビニで手続きすることができますが、いずれも証書・領収書共に同時発行となります。

e-Jibaiシステムとは?

e-Jibaiシステムとは、保険の事務や管理、決済業務を行う共同利用型のシステムのことです。各種契約内容をネットワークでつなぐことで、損保会社の基幹業務をカバーしています。

このシステムを導入するには専用回線の設置などが必要ですが、一度導入すれば代理店でも自賠責保険の証書や領収書をその場で印刷して即日発行することが可能です。

e-Jibaiシステムを使用している代理店では、証書等は全て手書きではなく印字されたものになります。

損保業界では10年以上前からe-Jibaiシステムを使用しており、各保険会社共通の内容となっています。

自賠責証明書のサイズは、A4の半分が基本ですが、同システムで使える用紙はA4のみです。そのため、用紙の左側に証書、右側に説明書きと領収書が印字されます。

e-Jibaiシステムは保険会社やその代理店に限らず、共済や郵便局でも使われています。どこで手続きをしても証書と領収書が同じ様式で発行されるのは、このためです。

e-Jibaiシステムが使えない場合

e-Jibaiシステムは大変便利ですが、停電や通信障害などが原因で使えなくなる可能性もあります。自賠責証書と領収書は即日発行するのがルールなので、この場合は複写式の綴りを使って手書きで発行することもあります。

もしも窓口に綴りがない場合は、最寄りの窓口を案内されることになるでしょう。また、原付バイクなどの検査対象外軽自動車の場合はナンバープレートに貼るステッカーも必要ですが、これも窓口にない場合は別の窓口を案内されます。

Webで手続きを行った場合

ここまで、自賠責保険の証書と領収書は「即日・同時発行」が原則であることを説明しました。e-Jibaiシステムの導入により、証書と領収書は必ず同時に発行(印刷)されるものだということが分かったでしょう。

しかし、例外となるケースもあります。現在はWeb上でも自賠責保険の加入・更新の手続きができますが、この場合は自賠責保険の証書などは後日郵送となり、それらが手元に届くまでは1週間程度の時間を要します。

普通乗用車の自賠責保険は、車検の際に業者によって加入・更新されるので、Webで手続きをするのは原付などの検査対象外軽自動車に限られるでしょう。ナンバープレートに貼るステッカーも、証書と同じく手元に届くまで時間がかかるので注意が必要です。

Webで手続きをすると領収書も発行されません。必要なら契約内容や契約した事実が確認できるように画面を保存・印刷しておくと良いでしょう。

自賠責証書と領収書の関係

自賠責証書と領収書の関係
現在、自賠責保険の証書と領収書は、e-Jibaiシステムによって一枚の紙にまとめて印刷されることがほとんどです。

では、証書と領収書はどのような関係にあるのか、その重要度や必要性の観点から以下で解説していきます。

自賠責証書と領収書の違い

前提として、自賠責証書と領収書はシステムの都合により一枚の紙に印刷されているだけで、そもそも「無関係」です。法律により定められている重要性や必要性、使い道などの観点から両者の違いを説明します。

重要度

自賠責証書と保険料の領収書は、それぞれ役割や重要度が全く違っています。

証書は自賠責保険に関する各種手続きで提示を求められることがよくありますが、領収書はそういう機会はまずありません。

まず、車検を受ける時に自賠責証書は必須書類となっています。そして、万が一事故などに遭遇した場合も警察から必ず提示を求められます。詳しくは後述しますが、自賠責証書を携帯せずに公道で車を運転したことが判明すると、処罰されることがあります。

また、自賠責証書は自分が加入している自賠責保険の内容が全て記載されている唯一の書類です。

加入や更新の手続きは全て業者に任せている方も多いでしょう。一方、原付バイクなど自分で手続きをしなければならない方は、自分の契約している保険の有効期限を証書できちんと確かめておくことが求められます。

領収書には、証書のようなこうした役割・機能はありません。法人や個人事業主が会計処理で必要になる程度です。

携帯義務

自賠責証書には携帯義務がありますが、領収書にはそういった義務はありません。

e-Jibaiシステムによって、自賠責保険の証書と領収書はワンセットで同時発行されます。証書は汚損・破損で識別不能になると問題があると言えますが、領収書の部分は仮に破れて紛失したとしても特に問題はありません。

なお、証書の携帯義務は法律によって定められたもので、不携帯で車を運転したことが判明すると30万円以下の罰金が科せられます。さらに自賠責保険に未加入の状態だと、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となるので覚えておきましょう。

このことから、証書を紛失したらすみやかに損害保険会社に連絡して再発行する必要があります。再発行された証書が届くまでは車の運転はできないことになります。

車検の時の必要性

自賠責証書がないと車検を受けることができません。しかし、領収書がない分には特に問題なく車検を受けられるという点も、両者の大きな違いです。

自賠責証書は、車検を受ける際の必要書類の一つとして位置づけられています。証書を紛失してしまい車検を受けられないままで有効期限を迎えた場合、自賠責保険も切れることになるので注意しましょう。その状態で公道を運転して摘発されると、刑事罰と行政処分が科せられます。

紛失したらすぐ再発行すべきか

自賠責保険の証書は、車の運転時と車検時に必要な重要書類ですが、領収書はそうではありません。そのため、自賠責保険の証書は紛失などすれば再発行の必要がありますが、領収書は仮に紛失しても問題ないでしょう。

ただし、e-Jibaiシステムによって証書・領収書はワンセットで発行されるため、領収書だけを紛失することは稀です。しかし、何であれ再発行の必要性が問題になるのは証書に限られると考えていいでしょう。

証書が汚損・破損した場合、実際には多少内容が識別しにくい状態になっただけでは違反になることはほとんどありません。ただし、万が一不測の事態で警察から証書の提出を求められて証書が全く識別できない状態だと、加入の事実が確認できるまで時間がかかる恐れがあります。

そのため、自賠責保険証書に異常がある場合は、すぐ再発行手続きをしてください。

自賠責証書と領収書は、それぞれの代わりになるのか

自賠責証書と領収書は、それぞれの代わりになる部分とならない部分があります。

例えば、保険料を支払ったかどうかが問題になった場合、領収書がなくても証書があれば金額や収納印が印字されているので代わりになると言えます。

もしも法人や個人事業主が、会計処理で必要になるにも関わらず領収書を紛失したという場合は、その意味で証書が代わりになるかもしれません。このような場合は、税理士などの専門家に確認しましょう。

反対に、領収書が証書の代わりになることはありません。車検の際に提出したり車を運転する際に携帯したりする必要があるのはあくまでも証書のほうで、領収書だけを出したとしても自賠責保険への加入の事実は別途確認されるはずです。

しかし、ここに挙げた例はあくまでも一例にすぎません。実際には証書と領収書はワンセットなので、どちらか一方だけ紛失してもう一方で代用することはあまりないでしょう。

自賠責保険の証書と領収書は、全く性質が違う書類だという点だけ覚えておいてください。

愛車の買取相場を知ることで高く売ることができます 愛車のかんたん査定はこちら

領収書の必要性は?

領収書の必要性は?
自賠責証書と領収書は無関係で、証書のほうが重要度が高いことを説明してきました。

それでは、領収書を発行する意味は何なのか、その必要性はあるのか、取り扱いで注意すべき点はあるのかなどを以下で説明します。

領収書の必要性はほとんどない

ここまで見てきた内容から、自賠責保険料の領収書はほとんど必要性や使い道がないことが分かります。車検や保険金請求の手続きで必要になるのはあくまでも証書で、領収書がその代わりになることはありません。

そもそも領収書の役割は「支払いの証明」です。ある品物やサービスに代金を払ったことを証明することで、二重請求や過払い、そして組織内の不正などを防止するための書類です。自賠責保険証書とは、役割の方向性が全く違います。

そして、保険業界では申込日と保険料の入金日は必ず同一でなければなりません。現在はe-Jibaiシステムが導入されており、Web上で加入・更新の手続きをした場合を除いて証書は即日発行されるので、領収書をあえて「支払いの証明」として使う機会はほとんどないでしょう。

民法上、代金支払時に領収書が発行されるのは当然のことです。しかし、自賠責保険の領収書について考えられる使い道は、やはり法人・個人事業主の会計処理くらいと言えるでしょう。

気になる点があれば相談を

自賠責保険の領収書には必要性・使い道がほとんどありません。とはいえ、一般的に領収書は偽造等による不正使用も可能なことから、損害保険会社のホームページには、領収書に不審な点があれば相談窓口に連絡するよう書かれています。

e-Jibaiシステムは、全ての損害保険代理店が使っているとは限りません。保険料の領収書が手書きで発行されることもあり、その場合は必ず、その保険会社が指定する様式を使うルールになっています。

さらに、手書きの場合は記入上のルールもあります。記入内容の訂正は無効となり、保険料と領収日付は直接記入してはいけません。そして必ず社印も必要となります。

万が一領収書にこれらに該当する点がある場合は、保険会社のカスタマーセンターなどに相談しましょう。

損害保険会社によっては、手書きの領収書の様式をホームページで確認できます。自賠責保険の手続き後、気になる点があれば確認してみるといいでしょう。

保存期間に注意が必要なケース

保存期間に注意が必要なケース
法人や個人事業主の場合、領収書の保存期間には注意が必要です。では、どのように取り扱うことになるのか、以下で説明します。

法人の場合

法人の場合の領収書の保存期間は、領収書を含む帳簿書類の場合7年が基本です。決算状況にもよりますが、10年保存しておくとさらに安心です。自賠責保険の領収書もこれに準じた形で保管しておきましょう。

領収書などの帳簿書類を7年間保存するのは、法人税法で決められたルールです。いつから数えるのかというと、当事業年度の、確定申告書の提出期限の翌日からスタートして7年間ということになります。

同じく7年間の保存が基本となる帳簿書類としては、勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、貸借対照表や損益計算書が挙げられます。注文書や契約書も同様ですので、覚えておきましょう。

なお、決算が赤字で赤字分を翌年度に持ち越す欠損金の繰越控除を利用する場合、領収書は10年保存しなければなりません。繰越控除を行うと節税につながるので、将来的なことを考えて領収書は「10年保存する」と決めておくとベストです。

個人事業主の場合

個人事業主が領収書を保管する期間は2つに分けられます。所得税法で定められており、青色申告を行っている事業主なら原則7年、白色申告であれば原則5年です。

法人の場合と同じく、保管期間は確定申告の提出期限の翌日からとなります。

ただし、注意点もあります。青色申告は「原則」7年ですが、もしも申告をした前々年の所得が300万円以下であれば、領収書の保管期間は5年となります。

白色申告でも帳簿の保管期間は青色申告の場合と同じく7年なので、万が一の時に帳簿と突き合わせられるように、領収書も7年保管するのがベストです。

また、これは法人にも共通する内容ですが、2020年10月に「電子帳簿保存法」が改正されました。法改正されたことにより、取引形態によっては領収書が不要になります。

領収書が不要になるのは、キャッシュレス決済を行った場合です。この場合は利用明細のデータが領収書代わりになるので、間違えないようにしましょう。

その他の保険では発行しないことがほとんど

自賠責保険では保険料の受け取りに対して領収書を必ず発行しますが、実はこれは保険商品の中では例外的です。

現在はキャッシュレス化が進んでいることもあり、自賠責保険以外で領収書が発行されることはほとんどありません。

そのため、確定申告で必要になる場合や法人が短期契約を結ぶ場合、また契約者が小切手決済を希望する場合など、領収書が必要なときは依頼して発行してもらうようにしましょう。

まとめ

①自賠責保険料を払うと必ず領収書が発行される
②自賠責証書も領収書も「即日発行」が原則だが、Webで手続きを行った場合は郵送になる
③証書・領収書共に「e-Jibaiシステム」で発行される
④自賠責証書と領収書は、その重要度や携帯義務の有無、車検時に必要かどうかなどで大きく違う
⑤自賠責保険証書は紛失したらすぐ再発行すべきだが、領収書は特に問題ない
⑥自賠責証書と領収書は、それぞれの代わりにはならない

※本記事は公開時点の情報になります。
記事内容について現在の情報と異なる可能性がございます。
車の査定は何社に依頼するべき?
愛車の買取相場を知ることで高く売ることができます 愛車のかんたん査定はこちら