自動車を所有している方にとって車検は欠かせないものですが、車検を受けるには自賠責保険に加入している必要があります。そして、自賠責保険証と車検証が必要になります。もしどちらかが欠けていると車検を受けられなくなってしまいます。
では、車検で欠かせない自賠責保険と車検証にはどのような関係があるのでしょうか?それぞれが車検時に必要な理由や紛失した場合のリスク、再発行の必要性とその方法などを詳しく説明します。
自賠責保険・車検・車検証の重要性
自動車を所有する上では、自賠責保険も車検証も欠かせません。両者の関係を説明するためには、車検制度について知っておく必要があります。
以下では、自賠責保険・車検・車検証のそれぞれの関係性と重要性について確認していきます。
まずは自賠責保険・車検・車検証について知ろう!
自賠責保険と車検証の関係を把握するために、まずは自賠責保険・車検・車検証の3つの内容や役割などについて押さえておきましょう。
どれも自動車やバイクの持ち主にとって、なくてはならない重要な事柄です。
自賠責保険は、正式には「自動車損害賠償責任保険」といいます。自動車損害賠償保障法という法律にもとづいて運用されており、ごく一部を除く全ての車は、この保険に必ず加入しなければなりません。
自動車損害賠償保障法が制定されたのは、戦後の高度成長期に交通事故が多発し「交通戦争」という言葉が生まれた時代です。自動車による交通事故が発生した際、加害者の責任と被害者に対する最低限の補償を明確にするために作られました。
補償内容や保険料などは全国一律で体系的に決められており、自動車保険の年齢条件などのように、契約内容の一部を調整して保険料を安くすることはできません。
物損事故は補償対象外で、人身事故のみ補償されます。
被害者およびその遺族が受け取れる保険金額もあらかじめ決まっています。怪我の場合は120万円、後遺障害の場合は程度に応じて75万円~4,000万円、死亡の場合は3,000万円が上限です。
車検制度は、正式には「自動車検査登録制度」といいます。公道を走る車が道路運送車両法上の安全・環境基準を満たしているか定期的にチェックするものです。
一部のバイクなどを除き、全ての車の所有者にはこの検査を受ける義務があります。そのため、車検を受けていない車両や受けたものの不合格になった車両、あるいは車検で合格した証である車検証の有効期限が切れた車は公道を走れません。もし違反して走行すれば処罰されます。
ただ、車検は普通乗用車だと2~3年おきに受けるので、車の安全性を担保するには不十分です。そこで車検とは別に、車の故障や不具合を確認する法定点検を受けることも全てのドライバーに義務付けられています。しかし、法定点検は受けなくても罰則はありません。
車検は車が新車として登録される際も行われています。新車・中古車に限らず、公道を走っている全ての車は車検に合格していることが前提だと言えます。
上記で車検制度について説明しましたが、その車検に合格することで交付されるのが車検証です。
車で公道を走る際、車検証は必ず携帯しなければならず、そのルールは道路運送車両法によって定められています。車検証を携帯せずに公道を走行すると処罰されてしまうため、注意が必要です。
また、有効期限が切れた車検証を携帯していても意味がなく、有効期限が来る前に更新する必要があります。つまり、公道を走っている全ての車は、車検に合格しており、なおかつ車検証を携帯していると言えるでしょう。
多くの場合、車検証はメンテナンスノートや自賠責保険証と一緒にグローブボックスなどに収納されています。
なお、車検証は車検に合格した証であるだけでなく、いわば車の身分証明書でもあります。車台番号や登録番号など車に関する全ての情報が記載されており、他人に悪用されるケースもあるので、盗難や紛失した際は注意が必要です。
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自賠責保険と車検の関係とは?
ここまで、自賠責保険・車検・車検証のそれぞれの内容と役割について説明しました。
次に、自賠責保険と車検はどのような関係にあるのかを確認していきましょう。
車検制度の対象となっている乗用車は、車検を受ける際に自賠責保険も更新されます。この手続きは黙っていても車検を行う業者によって行われます。つまり、車検を受ける場合は、自賠責保険証が必須ということです。
自賠責保険証がなければ、そもそも車検は受けられません。そのため、車検と自賠責保険の有効期限はほぼ一致していることがほとんどです。
いわゆる原付バイク(原動機付自転車)や、排気量が250cc以下のバイクなどは「検査対象外軽自動車」に分類され、車検を受ける必要がありません。
そのため、車検時に自賠責保険が更新されるということがなく、車両の持ち主が自分で手続きを行うことになります。
自賠責保険への加入・更新の手続きは、損害保険会社の窓口や代理店、コンビニや郵便局でも行えます。「e-Jibai」というシステムの普及により、自賠責保険証は即日発行されるのでとても便利です。
ただし、Web上で加入・更新する場合は例外で、新しい自賠責保険証は郵送となります。手元に届く前に古い自賠責保険の有効期限が切れてしまうと、公道を走行できない期間が発生することになるので注意が必要です。
なおバイクなどの場合は、自賠責保険証の携帯とあわせて、自賠責ステッカーとも呼ばれる「保険標章」をナンバープレートに貼る義務があります。保険証と一緒に交付されるので、忘れずに貼っておきましょう。
車検を業者に頼まず、車の所有者が自ら実施することで車検代を節約できる「ユーザー車検」という方法があります。
ユーザー車検は、管轄の陸運(支)局で行うことになりますが、自賠責保険の更新手続きも自分でやらなければなりません。
更新手続きができる場所は、陸運(支)局や損害保険会社の窓口などです。陸運(支)局の近くにあるユーザー車検の代行業者に依頼することもできます。
車検を行う業者は、車検と自賠責保険の更新という2つの手続きを行っています。
車検を行えるのは、地方運輸局長から認定された認定工場や指定工場に限られます。また、自賠責保険の更新も特定の損害保険会社の代理店として行われています。
つまり車検業者は、車検を行う認定工場・指定工場としてだけでなく、保険会社の代理店としても手続きを実施していると言えるでしょう。
車検で必要!自賠責保険証と車検証について
車検を受けるためには、自賠責保険証と車検証が必要です。この2つの書類について、その重要性と紛失してしまった場合の再発行方法などを説明します。
車検を受ける際の必要書類はいくつかありますが、前回の車検で交付された車検証は必須です。
車検証は、その車が前回の点検の際に法律に定められた基準を満たしていたことの証明になります。そして、車検が無事に完了すると、次の有効期間が記されている新しい車検証が発行されます。
公道を走行する車は、車検で無事に合格したという証明書を常備していなければならないということです。
何らかの理由で車検証を紛失したら、すぐに再発行手続きを行いましょう。犯罪などで悪用されることもあるので、もしも盗難に遭った可能性があるなら警察にも届け出る必要があります。
車検証を携帯せずに公道を車で走るのは道路運送車両法違反となり、行政処分はないものの50万円以下の罰金を科されます。
また、車検証は「車の身分証明書」でもあるため、これがないと車検や自動車保険の手続き、廃車の手続きもできません。
再発行の手続きは、普通自動車ならナンバーを管轄している陸運(支)局で、軽自動車なら軽自動車検査協会で行います。申請書や理由書などの必要書類を用意し、受付時間に気を付けてそれぞれの施設へ出向きましょう。
自分で手続きをする時間がなければ、業者に手続きを依頼することもできます。その際は代行手数料と委任状を用意しましょう。
手続きそのものは難しくありませんが、必要書類を準備する手間なども踏まえて、余裕をもって行うといいでしょう。
自賠責保険証も車検を受ける際の必要書類のひとつです。これがないと車検は受けれません。
自賠責保険契約の更新も車検と同時に行われるので、車検が完了すれば、車検証とあわせて新しい保険証が交付されます。そのため、車検証と自賠責保険証はセットでグローブボックスなどに保管されています。
車検の際にこちらから特に何も言わなくても、業者でメンテナンスノート等と一緒にしてくれています。
自賠責保険証がない場合
自賠責保険証もまた、車検証と同じくらい重要な書類です。そのため、紛失した場合は何らかの方法で改めて入手しなければなりません。以下では、その方法を3つ紹介します。
もしも自賠責保険証を紛失したら、すぐに再発行手続きをしましょう。
再発行申請書などの必要書類を揃えて、自賠責保険を契約している損害保険会社の窓口に直接出向くか、電話などでも手続きができます。手数料はかからないことがほとんどです。
万が一、契約している損害保険会社が不明であれば、加入・更新の手続きをしてくれた車検業者などに問い合わせてみましょう。
なお、自賠責保険証にちょっとした汚損・破損がある程度であれば、再発行をする必要はありません。文字が読めないほどでしたら手続きしましょう。
自賠責保険は、二重契約をしても特に問題ありません。そのため、とりあえず車検を受けるために新しく自賠責保険に加入して、当座の自賠責保険証を入手するという方法もあります。
ただし、普通自動車の場合は原付バイクなどと違って加入・更新の手続きをコンビニなどで気軽にできるわけではありません。二重契約の手続きのためには、損害保険会社や代理店に足を運ぶことになります。そうなると再発行するときと同様なので、この方法は理論上は可能というだけで実際に行われることはほとんどないでしょう。
ちなみに、自賠責保険で二重契約を結ぶと、事故に遭った際に保険金が下りるのは最初の契約だけで、2つ目以降の自賠責保険は免責(保険金が支払われない)となります。そのため、二重契約そのものに大きなメリットはありません。
原付や排気量250cc以下のバイクなどの検査対象外軽自動車の場合、更新時期が近くなるとハガキが届きます。それをコンビニなどへ持って行って手続きをすれば、古い保険証がなくとも自賠責保険の更新ができます。
これは、更新手続きを自分で行える検査対象外軽自動車の強みと言えるでしょう。自賠責保険証を紛失していたとしても更新ハガキさえあれば、コンビニのマルチコピー機を使って新しい自賠責保険証を入手できるのです。
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紛失による様々なリスク
ここまでで、自賠責保険証と車検証、そして車検の関係について詳しく説明してきました。
最後に、自賠責保険証と車検証を紛失したままにしておくと、車検が受けられない以外にどのようなリスクを負うことになるのかを見ていきましょう。
車検証を紛失した状態のままだと、公道を走れば違反になりますし、車検を受けることもできません。さらに紛失の理由が「盗難」だった場合は、盗難車の販売などで悪用される恐れもあります。
車検証は車の身分証明書のようなもので、車の持ち主の個人情報や車台番号、登録番号などの情報が記載されています。また、車検に合格したということは安全性の証明にもなるため、車検証があれば似ている別の車両の転売にも使えるでしょう。
実際の盗難では、車検証だけを抜き取られるケースはほとんどありません。車を丸ごと盗まれた際に、車内に保管していた車検証や自賠責保険証なども一緒に盗まれるということが多いです。そのため、車検証を盗まれて全く気付かないのは稀です。
車を盗まれて、車検証を盗まれたことに気付いたら、すぐに警察へ盗難届を出し、悪用されてしまう前に必要な手続きを済ませるようにしましょう。
自賠責保険証を紛失したままだと、車検を受けられなくなる以外にもいくつかのリスクを抱えることになります。
まず、その状態で公道を走れば違反になり、紛失・不携帯が発覚すれば30万円以下の罰金が科されるでしょう。
また、保険証を紛失した上に自賠責保険そのものの有効期限が切れている「無保険」の状態であれば、さらに罪が重くなります。この場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に加え、違反点数が6点で免許停止となります。
また、自賠責保険証も車検証と同様に、盗まれて悪用される可能性があります。
車検証がないと車検を受けられないので、紛失したまま放置すると、いずれ車検切れを迎えてしまいます。そして、車検が切れるということは多くの場合、自賠責保険の有効期限も切れます。
こうなると、そのままでは車を公道で走らせることができなくなるので、いざ車検を受けようとしたり、自賠責保険の再加入や車検証の再発行をしようとしたりするときに大変面倒です。
車検証を紛失したら放置せずに速やかに再発行手続きを行いましょう。
自賠責保険証を紛失したまま放置すると、車検の時期が来ても気付かないかもしれません。
前述しましたが、自賠責保険は重複加入することができます。車検を受ける際に車検期間+1ヶ月で加入すれば問題なく車検が受けられますが、自己負担額が増えてしまいます。
そもそも、自賠責保険証がなければ公道を走行することはできません。それに加えて、自賠責保険の有効期限が切れた状態であれば、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に、違反点数6点(免許停止)の重い処分が下されることになります。
このように、保険証がないと自賠責の更新時期を確認する方法がひとつ失われるだけでなく、期限切れで処罰されるリスクが高くなります。
自賠責保険証の紛失に気付いたら速やかに再発行しましょう。
なお、再発行手続きは特に難しいことはありません。車検証や軽自動車届出済証・標識交付証明書(検査対象外軽自動車の場合)があれば可能です。それらも紛失している場合は、購入した販売店などに問い合わせるようにしましょう。