期限切れなどで自賠責保険に未加入の状態になった車は、公道を走れません。また、加入していても自賠責保険証を携帯せずに公道を走るのは禁止です。これらのルールに違反すると罰金や懲役、免停など厳しい処分を受けることになります。

この記事では、処罰の内容や自賠責保険が切れた場合の再加入方法、自賠責保険証の紛失時の再発行方法などを解説します。万が一、どれかに該当する場合は速やかに手続きを行いましょう。

自賠責保険と罰則

自賠責保険と罰則
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法という法律に基づく制度です。同法は民法の特別法にあたり、自動車による交通事故が発生した場合の措置や、加害者の責任と被害者に対する賠償の内容を規定しています。

一方、自賠責保険には加入義務と保険証券の携帯義務があり、違反すれば処罰されることから、同法には刑法とは別の特別刑法としての性質も備わっています。

では、自賠責保険に関する罰則の体系はどのようになっているのか、車検との関係も含めながら見ていきましょう。

自賠責保険とは?

自賠責保険とは?
ドライバーには、自賠責保険に加入する義務と保険証券を携帯する義務が課せられています。

まず、自賠責保険はどのようなルールで成り立っているのかを見ていきましょう。

根拠法とは?

自賠責保険は、自動車による交通事故が発生した際、加害者の責任と被害者への損害補償を明確にするために国によって作られました。

その根拠法は自動車損害賠償保障法で、昭和30年代の交通事故が全国的に多発した時期に作られた法律です。

自賠責保険は、人身事故のみ補償している点や保険料・補償内容の体系が全国一律で決まっている点が特徴的です。これらの内容は全て自動車損害賠償保障法に記載されていて、条文の中には罰則も記載されています。

自賠責保険における違反行為と罰則には大きく2種類あります。

1つは自動車の所有者は必ず自賠責保険に加入しなければならないという「加入義務」についての違反行為です。

そして、もう1つは自賠責保険に加入したことを証明する保険証券を、公道での走行時には常に携帯しなければならないという「携帯義務」に対する違反行為です。

いずれか、あるいは双方に違反すると厳しく処罰されます。

補償内容とは?

自賠責保険の補償内容は、あらかじめ全国一律で体系的に決まっています。

その最も大きな特徴は、自動車事故によって死傷者が出た場合、つまり人身事故の場合に限り被害者の受けた損害を補償するという点です。モノだけが壊れる物損事故では自賠責保険は使えません。

また、自賠責保険は加害者が被害者に対して補償するためのもので、ひき逃げなどで加害者が不明の場合は使えないという難点もあります。

支払われる金額は、被害者が死亡すれば3,000万円が、怪我の場合は120万円です。また後遺障害の程度によって75万円~4,000万円の保険金が下り、これで補償しきれない分は任意加入の自動車保険で賄われることになります。

自賠責保険の補償内容は全国一律ですが、保険料は一部の離島などで異なっています。しかし、こうした違いも含めて最初から体系が決まっているので、自動車保険のように年齢条件の設定などで保険料を節約することはできません。

加入義務がある

ごく一部を除くほぼ全ての自動車は、自賠責保険への加入を義務付けられています。このことから自賠責保険は「強制保険」とも呼ばれています。

これとは反対に、加入するかどうかやその契約内容を自由に決められる自動車保険は「任意保険」です。

自賠責保険に加入していないドライバーは処罰されます。その罰則は意外と重いので、加入・更新の手続きを自分で行わなければならない一部のバイクなどは特に注意が必要です。

自賠責保険証の携帯義務がある

自賠責保険に関するもう1つの義務として、自賠責保険証の携帯義務が挙げられます。

自賠責保険に加入していることを証明するのが自賠責保険証となり、自動車で公道を走る際は必ず携帯していなければなりません。これはバイクも同様です。

実際には保険証券を携帯しているかチェックするために警察からいちいち止められることはありませんが、万が一事故に遭遇したりすると、車検証と自賠責保険証は必ずと言っていいほど提示を求められます。

自賠責保険と自動車保険の関係

先に自賠責保険は「強制保険」で自動車保険は「任意保険」だと説明しましたが、どちらか一方に加入しているだけでは十分とは言えません。

その理由は、自動車保険で補償するのは自賠責保険で補償しきれない部分に限られるからです。

自賠責保険に未加入だと、本来自賠責保険で支払われるはずだった分は自己負担となります。それを超える分から自動車保険で支払われる仕組みなので、両方の保険に加入することで自動車保険の補償は初めて充実すると言えるでしょう。

自賠責保険に関する罰則について

自賠責保険に関する罰則について
ここまでで、自賠責保険という制度がどのようなルールの上に成り立っているのかを見てきました。

ここからは、自賠責保険に関する罰則の体系はどのようになっているか、車検制度との関係も踏まえながら確認していきましょう。

罰則の根拠法は?

最初に自動車に関係する法律と、それぞれで定められている罰則を整理しましょう。

まず自賠責保険には無保険と保険証の不携帯に対する罰則がありますが、これは自動車損害賠償保障法という法律で定められています。

これとは別に、ひき逃げや飲酒運転、スピード違反などは道路交通法で罰せられます。

さらに2013年には、特に危険な状態で運転し事故を起こした人に適用される自動車運転処罰法が成立しました。

また、車検証の不携帯や無車検についての罰則は道路運送車両法に基づいています。

このように自賠責保険をはじめとする自動車関連のルールと罰則には様々なものがあり、特に刑法以外で罰則規定がある法律は「特別刑法」と呼ばれます。

もともと罰則を伴う違法行為(犯罪)は刑法で規定されるのが基本ですが、処罰の種類が増えるたびに刑法を改正するのは大変です。そこで、特別刑という個別の法律に罰則規定を設けたものが運用されています。

自賠責保険証を携帯しなかった場合

車で公道を走る際、自賠責保険証を携帯していないと摘発の対象となり処罰されます。自動車損害賠償保障法の第8条に基づき、30万円以下の罰金です。

また、原付などの検査対象外軽自動車は、ナンバープレートに自賠責ステッカー(保険標章)を貼る義務があります。これに違反した場合も、保険証不携帯と同じ罪になります。

車検証を携帯しなかった場合

車で公道を走る際に携帯する義務があるのは、自賠責保険証だけではなく車検証も同様です。

普通自動車の場合、両者は同じケースに入ってダッシュボード等で保管されていることが多いので、一方が不携帯の場合はもう一方も不携帯であることがほとんどです。

車検証の不携帯は、道路運送車両法第66条第1項により罰金50万円となります。

自賠責保険証が不携帯だった場合の30万円と合わせると80万円なので、摘発されれば80万円以下の罰金を支払うことになります。

自賠責保険に加入していなかった場合

自賠責保険証を携帯していないだけでなく、そもそも自賠責保険に加入していない、あるいは有効期限が切れた状態で公道を走行した場合は「無保険車走行」となります。

この場合、懲役刑と行政処分が科されます。具体的には自動車損害賠償保障法第5条違反となり、50万円以下の罰金または1年以下の懲役、違反点数6点、免停30日間というペナルティが科されるでしょう。

また、普通自動車の場合は自賠責保険が切れていれば車検も同時に切れている可能性もあります。

車検切れの場合

自賠責保険の更新は車検と同時に行われることが多いので、自賠責保険が切れていると車検も切れている可能性が高いです。

その状態で公道を走れば、道路運送車両法第58条と自動車損害賠償保障法第5条に同時に抵触することになります。

罰則は、道路交通法施行令や刑法併合罪47条の規定も関係し、1年6カ月以下の懲役または80万円以下の罰金、違反点数6点、そして免許停止です。

ただし、初犯なら略式裁判での罰金処分のみで済むケースもありますが、ケースバイケースと言えるでしょう。

自動車保険に加入していなかった場合

自動車保険に加入していなかった場合は、法律上の罰則は特にありません。自賠責保険は加入義務がある「強制保険」なのに対し、自動車保険は加入するしないも契約内容も自由に決められる「任意保険」だからです。

とはいえ、先述したように自賠責保険の補償にも限界があるので、事故の損害内容によっては自賠責保険の保険金では足りないこともあります。その場合、自動車保険に入っていないと自腹で支払うことになるでしょう。

被害者側から見れば、このような「無保険」の車から事故を起こされると、適正な損害賠償が行われず大変な思いをするかもしれません。自腹で支払うと言っても、加害者側にそのための財力があるとは限らないからです。

さらに、自動車保険に加入していると、示談も保険会社の担当者が行ってくれるので、交渉もスムーズに進むことが多いです。一方で、加害者が無保険だと被害者自身が交渉にあたらなければなりません。

自賠責保険証がないと車検を受けられない

自賠責保険証がないと、車検も受けられないので注意が必要です。たとえ保険証を持っていたとしても、有効期限が切れていれば意味がありません。

まずは、速やかに自賠責保険証の再発行や保険の再加入手続きを済ませましょう。

車検切れの車は公道を走れませんが、市町村役場や陸運(支)局に申請して「仮ナンバー」を取得すれば一時的に走行可能です。

ただし、これも自賠責保険証がないと取得できないので、まずは保険証券の入手が最優先ということです。

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自賠責保険の有効期限が切れてしまったら

自賠責保険の有効期限が切れてしまったら
ここまでで、自賠責保険に関係する罰則にはどのようなものがあるか確認しました。

ここからは、自賠責保険の有効期限が切れてしまった場合はどうすればいいか、車検も一緒に切れている場合や検査対象外の軽自動車の場合も含めて説明します。

とにかく自賠責保険に加入する

更新しないまま自賠責保険の有効期限が切れてしまったら、速やかに加入し直しましょう。加入の手続きは簡単です。

普通自動車なら損害保険会社の窓口や代理店、具体的にはカー用品店やガソリンスタンドなどで行えます。

手続きを済ませれば、運転時に必要な自賠責保険証は即日発行されます。これは「e-Jibai」というシステムによって、自賠責保険の加入状況がネットワーク管理されているおかげです。

ただし、ガソリンスタンドだけは即日発行できないこともあるので注意しましょう。

再加入時に必要なものは以下の3つになります。

  • 車検証
  • 自賠責保険証(有効期限が切れたもの)
  • 保険料

車検証はいわば車の身分証明書のようなもので、これによって車台番号などを確認しながら手続きが行われます。

もしも自賠責保険証を紛失していたら、今まで加入していた損害保険会社へ直接問い合わせて手続方法を確認しましょう。

加入先が不明の場合は、前に手続きを行った業者や店舗に確認すればすぐに分かります。

車検も切れている場合は?

自賠責保険は車検の有効期間をカバーして加入することがほとんどなので、自賠責保険の有効期間が切れていると車検も切れている可能性が高いです。そのため、自賠責保険の再加入を済ませたらすぐに車検を受けましょう。

自賠責保険証がないと車検は受けられないので、順序を間違えると二度手間になるので注意が必要です。

また、車検切れの車も公道で走行すると違反になるので、自賠責保険への再加入を済ませたら、地域の市区町村役場で「仮ナンバー」を取得します。仮ナンバーは、使用する日時や理由、走行経路を詳しく決めて申請します。

仮ナンバーの取得手続きに必要なものは以下になります。

  • 運転免許証
  • 認印
  • 車検証
  • 自賠責保険証
  • 手数料(自治体により相違あり)

なお、車検切れの車は積載車やレッカー車で移動させることもできます。車検を行う業者には、こうした車両運搬を行ってくれるところもあります。

また、ロードサービス専門業者、輸送サービス業者などに問い合わせてみてもいいでしょう。

車検がない車(原付など)の場合

車検を受けなくともよい「検査対象外軽自動車」である原付バイクや、排気量250cc以下のバイクは自賠責保険の有効期限が切れたらどうするといいのでしょう?

こうした車両もすぐに再加入しなければいけない点は普通自動車と同じですが、自賠責保険の加入・更新をコンビニや郵便局で手軽に行えるという大きな違いがあります。加入手続きも簡単に行えるでしょう。

コンビニや郵便局で再加入する場合も、自賠責保険証とナンバープレートに貼る自賠責ステッカー(保険標章)は即日発行されます。

必要なものは以下になります。

  • 自賠責保険証明書(有効期限が切れたもの)
  • 保険料
  • 軽自動車届出済証(排気量250cc以下のバイクの場合)
  • 標識交通証明書(原付バイクの場合)

自賠責保険の再加入時には車体番号が分かる書類が必要となるため、軽自動車届出済証もしくは標識交通証明書を用意しなければなりません。

なお、損害保険会社のWebサイトを通して自賠責保険に再加入する場合は注意が必要です。この場合は、自賠責保険証とステッカーは郵送になるので、手元に届くまではバイクに乗れません。

自賠責保険証を紛失してしまったら

自賠責保険証を紛失してしまったら
ここまでは、もし自賠責保険の有効期限が切れてしまった場合の対処法を説明してきましたが、自賠責保険に関する重要な義務には「保険証の携帯義務」もあります。

そこで、もし自賠責保険証を紛失してしまった場合の対処法についても見ていきましょう。

再発行手続き

自賠責保険証を紛失したら、契約している損害保険会社に連絡して再発行手続きを行いましょう。

この手続きは、代理店などではできないため、保険会社の窓口へ連絡しなければなりません。

もしも契約先の損害保険会社が不明なら、加入手続きを行った代理店などに問い合わせればすぐに分かるでしょう。

保険証を汚損・破損したとしても、完全に識別不能になってしまう程でなければ、わざわざ再発行手続きをする必要はありません。

検査対象外軽自動車(原付など)の場合

原付バイクなどの検査対象外軽自動車も、自賠責保険証の再発行方法は同じです。自分が契約している損害保険会社で再発行してもらいましょう。

原付バイクなどは、自賠責保険の更新時期に通知ハガキが届きます。もしもそのタイミングで保険証を紛失したのであれば、再発行せずともハガキをコンビニなどに持参して手続きすれば、すぐに新しい保険証を入手できるでしょう。

なお、普通自動車でも同じことですが、自賠責保険証が盗難に遭った場合は契約している損害保険会社と警察にも連絡してください。自賠責保険証は各種手続きに必要な重要書類なので、悪用される恐れがあるからです。

そのため、自賠責保険証の原本は家などで保管して、コピーを携帯していればいいという意見もあります。実際、保険に加入している事実が確認できればコピーでも問題ないことも多いようですが、これはあくまでも特別なケースなので、公的に認められた方法ではありません。

まとめ

①自賠責保険は自動車損害賠償保障法という法律に基づく制度で、罰則も定められている
②ほぼ全ての車は自賠責保険への加入義務があり、未加入だと罰せられる
③また、加入していても自賠責保険証と車検証を携帯していないと罰せられる
④自賠責保険に未加入(無保険)かつ車検切れの場合は、さらに重罪となる
⑤これらの罰則は自動車損害賠償保障法と道路運送車両法で定められている
⑥自賠責保険証がないと車検も受けられない

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