自動車保険を契約する際に、免責金額をいくらにするか決めなければなりません。しかしながら、免責とは何を指すのでしょうか。はっきりと内容を理解している人はあまり多くありませんが、保険料の負担額に直結する重要なポイントです。
この記事では、自動車保険の免責について知らない人に向けて、その内容と金額の設定方法、また自己負担をなくすケースについて解説します。
この記事を読めば、自動車保険を適切に契約するための知識が身につくでしょう。
自動車保険の免責は保険料や負担額に影響を与える
免責は「責任を免れる」といった意味を持っています。そのため、自動車保険を契約する際に決めなければならない免責金額とは、何かしらの損害が発生した際に保険会社が保険金を支払う責任を回避する基準を意味するのです。
この金額は契約における金銭に関わる内容であり、決めた金額によって保険料は変わります。そのため、内容を把握せずに契約を結んでしまうと思いのほか損をしてしまうケースも少なくありません。
お得に賢くカーライフを楽しむためにも、紹介する内容について理解を深めていきましょう。
自動車保険の免責とは?
自動車保険における免責とは、主に車両保険を付帯する場合に決める項目です。
自分の車に起きた損害を補償するために付帯する車両保険ですが、突発的な自然災害など保険会社によっては補償対象外と定める事由が存在します。そのような、保険金を支払わない範囲の対象となるのが「免責事項」です。
詳細な内容は車両保険だけでなく、対人補償や対物補償についても設定します。重要説明事項や約款に明記されていることが多く、該当する部分はすなわち、自己負担しなければならない部分に該当します。
設定金額によって保険料や負担額に影響を与える重要なポイントです。
自動車保険を契約するにあたって定める目的は、保険制度の健全性を維持し、契約者の利益を保護することです。負担範囲を設けると小さな損害に対する請求が減るため、処理にかかる事務コストを削減できます。
不要なコストを減らすことで、保険料への価格転嫁を防ぎ、金額の上昇を抑えられます。その結果、適正な料金で十分な補償を受けられることが契約者への利益にもつながる仕組みです。
また、自己負担額に相当するため、契約者も事故を起こさないよう注意して運転します。自己防衛に対する意識が向上すれば、事故が起きにくくなるため保険請求の件数も減少するでしょう。
保険会社の負担が減れば保険料は安くなる傾向にあります。その結果、事故を起こさなければ高額な修理費用などを支払う必要はなく、保険料の負担も軽減できる点がメリットです。
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免責金額とは?
自動車保険における免責金額は、事故によって補償対象の車に損害が発生した場合における、自己負担で支払う修理代金の金額です。事前に負担範囲を設けることで、少額請求における事務処理コストを削減し、契約者の金銭的な負担を軽減できます。
設定する金額は保険会社や契約内容によって様々です。保険会社によっては、事前に一定の範囲を設定し、希望する金額を契約者に選ばせる方法をとる場合があります。
免責金額を設定する理由
なぜ免責金額を設定するのかというと、大まかな目的は前述の通り、「保険制度の健全性を維持すること」と「契約者の利益を保護すること」の2つです。これらの目的を深堀りすることで理由が見えてきます。
ここでは、設定する理由として、不正請求を防止すること、保険料の負担を軽減すること、これら2点について紹介します。
1つ目の理由に不正請求の防止があります。自動車保険は交通事故や自然災害、盗難などといったやむを得ない事情で発生した損害に対して補償してもらえる制度です。
しかしながら、中には損害をでっちあげて不正に補償を請求する人も少なくありません。特に相手のいない単独事故や自損事故でそのような請求がなされるケースが多く、保険会社は正当性を確かめるために調査します。
調査が多ければ、保険会社の事務処理コストは増えてしまうため、未然に不正請求を防ぐ目的として設定されています。免責金額があれば、一定金額を契約者本人が支払わなければならないため、容易に保険請求しないような環境づくりにつながっているのです。
2つ目の理由に保険料の負担を軽くすることが挙げられます。前述の通り、契約者による自己負担額に相当します。そのため、保険会社は該当分を負担する必要がありません。
負担する金額が少なければ保険料を安く設定できます。自動車保険の中でも、車両保険は対人賠償保険や対物賠償保険と異なり、加入の是非が盛んに議論される保険です。修理費用の補償は受けたいものの、その分保険料が高くなるためです。
保険料が高額になるとして、加入を見送る人も少なくありません。しかし、自己負担分を設定すれば保険料は低く抑えられるため、車両保険に加入するハードルは低くなります。契約者の負担を減らして、手厚い補償を受けてもらおうとする保険会社の意図があります。
自動車保険の免責金額の決め方は主に2種類
保険会社と契約者の双方にメリットのある制度ですが、どのように金額を決めているのでしょうか。
決め方は「定額方式」と「増額方式」に分かれています。それぞれの仕組みによってメリット・デメリットがあるため、自分にあった契約方法を検討するうえで内容を理解しておいた方が良いでしょう。
ここでは、自動車保険の免責金額を決める方法について紹介します。
定額方式とは、事故の回数に関係なく、発生した損害に対して自分で負担する金額が常に一定になる決め方です。金額は自由に決められます。
例えば、設定金額を20万円として定額方式を採用した場合、保険期間中に何度事故を起こしたとしても、車両保険を利用すれば毎回20万円までは自己負担しなければなりません。20万円を超えた内容に対して保険金が支払われます。
この定額方式を採用した場合、保険証券には「20-20万円」もしくは「20万円」と記載されています。
この設定方式は、あまり事故を起こさないような人や自己負担額がまとまった金額であったとしても支払いに余裕がある人におすすめです。しかし、自己負担額が高額になりがちな点がデメリットでしょう。
増額方式とは、事故の回数によって自分で負担する金額が増額していくような仕組みです。1回目の事故より2回目の事故に対する自己負担分が高額になります。
保険証券上は「0-5万円」や「5-10万円」と記載されています。「0-5万円」といった表記であれば、1回目の事故に対する金額は5万円、2回目以降は回数に応じて5万円ずつ増額していくようなイメージです。
事故を起こさなければ免責金額を低く設定でき、かつ保険料も低く抑えられます。この設定方式は運転に不慣れな方や自己負担をとにかく下げたい人に適しています。
2回目以降の金額が高額になるため、事故を起こさないように意識することにもつながるでしょう。
そのメリットは、事故が起きた際の自己負担額が少なくて済むことです。事故による故障や損害は高額になるケースが少なくありません。そのため、自己負担額が高ければその分、急な出費として家計に大きなダメージを与えるでしょう。
一方で、自己負担額が少なければ、手厚い補償を受けられます。自己負担を減らすことで突発的な影響を受けにくいメリットが特徴です。
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免責金額の範囲
自分で設定できる金額の範囲はどの程度あるのでしょうか。
通常、自動車保険の免責金額は0円~10万円の範囲で指定できます。多くの保険会社では金額の組み合わせを勧めており、例えば「0円-5万円」「0円-10万円」「5万円-10万円」などの組み合わせが一般的です。
前述した増額方式で金額を「0円-5万円」と決めておくと、初回の事故に対する免責金額は0円ですが、2回目以降は5万円ずつ増額していきます。初回は自己負担なく補償を受けられますが、2回目以降は負担額が大きくなるため、事故を起こさないよう注意を促す効果も期待できるでしょう。
定額方式であれば、一定金額を許容できるような人が適しています。
自動車保険の免責の支払い方法
免責金額は契約者の自己負担額と説明しましたが、実際にはどのように支払えばよいのでしょうか。
事故によって何かしらの修理が発生した場合、通常であれば自己負担額分を修理工場へ直接支払えば問題ありません。
とはいえ、業者によって支払うタイミングはまちまちである点に注意しましょう。修理完了時に支払う場合もあれば、修理して納車されたタイミングで支払う場合もあるためです。
そのため、支払うタイミングについては事前に問い合わせておくと良いでしょう。保険会社によっては提携している修理工場もあります。そのような場合においては、保険会社に紹介してもらい修理を受けると、免責分の支払いについて知識や経験を有していることが多いため、支払いはスムーズです。
免責金額を設定する際に考慮すること
自分にあった金額や負担度合いで設定できる点が特徴ですが、設定時に考慮しておかなければならないポイントがあります。
一般的に設定する金額を高額にしておけば、保険料も低くなるといったメリットがあります。しかし、修理費用をどれだけ負担できるのか、等級が下がることで増額される保険料がどの程度のものなのか、しっかりと考慮しなければなりません。
ここでは、免責金額を設定する際に考えておくべき内容について紹介します。
自己負担額として支払わなければならない金額であるため、損害が発生した場合に出費できる修理費用は考えておくべきポイントの一つです。
負担できる金額の許容範囲を把握しておくことで、無理のない金額を設定できます。大きな出費が予想されるからこそ、日々の家計管理や貯金額をもとに考えなければなりません。
万が一に備えて経済的な負担を最小限でとどめるためにも、しっかりと検討しましょう。
いくら免責分を支払ったとしても、車両保険を利用すると保険等級は下がります。自動車保険における等級とは、保険料の割引率です。等級が高ければ割引率も高く、保険料は抑えられます。
しかし、等級が下がれば、翌年以降の保険料が増額するため、自己負担額と増額分のバランスはよく考えなければなりません。
保険会社によっては、等級の下がり幅と免責金額をシミュレーションしてもらえます。「〇〇万円までを自己負担した方がメリットが大きい」など確かめて検討してみましょう。
あまり運転していないようであれば事故を起こしにくいため、自己負担額を少なくできるような増額方式で金額を設定すると良いでしょう。
経済的に一定の金額を負担できるようであれば定額方式を採用して自己負担額を多く設定することも方法の一つです。無理のない範囲で設定しましょう。
免責金額を設定していても自己負担の必要がないケース
免責金額を設定していたとしても、自己負担しなくて済むケースがあります。そのようなケースにおいては、事故による損害の程度や相手の有無と過失度合いが重要なポイントになるでしょう。
基本的には事故が発生した場合、状況を保険会社に伝えて判断を仰ぎます。しかし、事前に条件を知っていれば、安心して保険金を請求できるでしょう。
ここでは、自己負担が必要のないケースについて紹介します。
事故によって補償対象の車が全損してしまった場合、免責金額を設定していたとしても自己負担しなくても問題ありません。設定している車両保険の全額が補償されます。
全損とは次の3パターンが該当します。
- 物理的全損…自動車が修理できない状態まで壊れること
- 経済的全損…損害を受けた自動車の時価より修理費用が高いこと
- その他…盗難などで自動車が見つからず現実的に修理できないこと
これらのパターンに該当する場合、設定した免責金額は保険金から差し引かれません。
とはいえ、設定している保険金額よりも修理金額が高額になるような場合は自己負担が発生する可能性がある点に注意しましょう。このようなケースにおいては「臨時費用保険金」として契約金額に上乗せした金額が支払われます。しかしながら、保険金額の10%が限度になるようです。
事故によっては相手が原因による損害が発生するケースも少なくありません。そのような場合においては、相手より損害賠償金が支払われます。その賠償金が自己負担額よりも高額であれば、相殺できる分を差し引いた金額で保険金を受け取れるでしょう。
例えば、免責金額を10万円、事故の責任割合を自分は30%、相手が70%であるような場合、自分の車の修理費用が45万円であれば、受け取れる賠償金は31万5,000円です。賠償金のうち10万円が免責金額に充てられ、残りは保険会社に回収されます。受け取った賠償金は優先的に充当されるため、自己負担は発生しません。
しかし、賠償金が設定していた金額より低額であれば差し引いた分を自己負担しなければならない点に注意しましょう。
自動車保険の免責ゼロとは
自動車保険の契約において、「免責ゼロ」があります。車両保険の免責金額を0円に設定できる特約です。
ただし、保険料が割高になる点には注意しなければなりません。自分にあった特約かどうかを判断するためにも、まずは内容の理解が重要です。
ここでは、免責ゼロ特約について紹介します。
保険金の支払い対象となる車が事故にあい、損害を受けた場合において、1回目の事故に限り契約期間中の自己負担額をなくせる特約です。
事故の形態によらず負担金が発生しない点が特徴です。
免責ゼロ特約(車対車)とは、車と車の接触事故において、相手が存在するような事故であれば1回目の免責金額が免除される特約です。そのため、自損事故は対象外になる点に注意しましょう。
また、等級によっては付帯できない特約です。さらに全損扱いになった場合は自分で負担するお金が発生しないため付帯の有無に限らず免責金額は免除されます。