自動車を保有している人の多くが加入している自動車保険(任意保険)です。これから車を購入して加入する場合、どういった内容なのかということを知る必要があります。

また、すでに保険に加入している方の中には、よく分からないので保険の内容が毎年同じだったり、値段重視で補償内容をあまり深く考えないでズルズルと契約し続けてしまっていたりするかもしれません。加入している保険が、本当に「自分の車の使い方に合っているのかどうか」を見極めていないこともあります。

そこで今記事では自動車保険の基本事項から知っておきたい特約のこと、さらに加入方法などの特徴についても詳しく解説します。

自動車保険の基本の内容を確認していこう

自動車保険の基本の内容を確認していこう
はじめに、自動車保険の基本から確認をしていきましょう。自動車保険の基本的な項目には、大きく分けて4つ保証があります。

  • 交通事故が起きた場合に相手方のケガなどに対する補償の「対人賠償」
  • 交通事故の相手の車や家屋、ガードレールや電柱といった物に対する補償の「対物賠償」
  • 自分自身や車に同乗していた人のケガなどに対する補償である「人身傷害」
  • 自分自身の車の修理費などに充てることができる「車両保険」

ここでは、この4つの項目である補償のそれぞれに注目し、どういった補償が受けられて支払うことができるのか、という点について詳しく見ていきます。

相手自身に対する補償(対人賠償)

相手自身に対する補償(対人賠償)
まず、相手自身のケガなどに対する補償である「対人賠償」について詳しく見ていきます。

事故相手のケガなどに対する補償と聞いて「自賠責保険にも同じ項目があるのではないか」とピンときた人もいるかもしれません。これはまさにその通りで、自動車保険(任意保険)の対人賠償は、自賠責保険の対人賠償で賄いきれない部分をカバーするといった位置付けになっています。

ちなみに、自賠責保険の対人賠償について軽く確認すると、交通事故の相手方に対するケガの補償については最高で120万円、死亡してしまった場合は最高3,000万円、後遺障害が残ってしまった場合には最高4,000万円の補償ができるようになっています。

ケガを例に挙げてみると、120万円という補償額は高額そうに見えて、実はそうでない場合が多いです。

交通事故によるケガなどの治療は、皆さんが加入している健康保険が適用されない「全額自己負担」となってしまいます。骨折などで入院をすると、あっという間に120万円を使ってしまいますし、死亡させてしまった場合の慰謝料などは相手方の年齢にもよりますが、数億円にまでのぼってしまうというケースがありました。

高額な治療費や慰謝料を現金で支払うことができれば問題ありませんが、容易に払える金額ではありませんので、任意保険に加入しておいてもしものときに備えることが必要です。

相手のモノに対する補償(対物補償)

相手のモノに対する補償(対物補償)
次は、相手の車や家屋、ガードレールや電柱といった、いわゆる「物(所有物)」に対する補償でもある「対物賠償」について詳しく見ていきましょう。

注意すべきポイントとして、これ以降の補償については、自賠責保険ではカバーできない補償です。任意保険に加入していない場合は、全額自己負担でお金を支払わなくてはなりません。

特に自動車同士の交通事故の場合、事故の度合いにもよりますが、相手の車の修理費は比較的高額になっていくケースが多々あります。

例えば、軽い追突事故を起こしてしまった場合、リアバンパーの交換で数万円で済めばまだいい方で、リアバンパーだけでなくそれに付随する部品(リアゲートやテールランプなど)まで破損していれば、さらに修理費がかさんでしまいます。最悪の場合、フレーム修正まで行くような破損となってしまうと、修理費は数十万円といった額にあっという間に到達してしまうでしょう。

相手の車以外にも、住居に誤って突っ込んでしまった場合には家屋の修理費なども高額になります。

ニュースなどでよく見られる、アクセルとブレースの踏み間違いによってお店などに突っ込んでしまうといった場合もあるかもしれません。そうした場合には、お店の修理費だけでなく、修理する間のお店の売り上げの補填といったケースも発生します。

交通事故は相手自身だけでなく、それに付随する物に対する補償の方が高額になってしまう可能性もじゅうぶんにあり得るため、対物賠償は加入必須の内容です。

自分自身や同乗者に対する補償(人身傷害)

自分自身や同乗者に対する補償(人身傷害)
「対人賠償」と「対物賠償」は交通事故の相手方に対する補償でしたが、ここからは自分自身に関係する保険の補償内容です。

ここでは、自分や同乗者の身体に対する補償(治療など)に付随する「人身傷害保険」に関する内容を詳しく見ていきましょう。

交通事故の場合、相手方だけでなく自分自身や同乗者もケガをする可能性が出てきます。そういった場合には治療費がかかりますが、前述した通り交通事故は全額自己負担(10割負担)の治療となるため、普通に病院に通うよりも治療費が高額になります。そうした治療費をカバーするために加入するのが人身傷害保険です。

「人身傷害保険」は、基本的には契約対象の自動車に乗っているときに適用されます。他にも、契約内容によっては、車に乗っていないときの事故(歩行中に車と接触した場合や、契約対象以外の車に乗っている場合)にも保険金が支払われるといった場合もあります。

車を複数台保有している場合には補償が重複しているケースもありますので、しっかりと内容を確認しておいてください。

自分の車に対する補償(車両保険)

自分の車に対する補償(車両保険)
最後に、自分自身の車に対する補償の「車両保険」を紹介します。

車両保険は交通事故だけでなく、うっかりガードレールにこすってしまった、などの修理費も保険でカバーすることができるものです。また、被害が甚大になってしまう豪雨災害による水没に対しても修理費が支払われる万能の補償内容ですが、契約内容によっては意外な落とし穴があったりもします。

車両保険の場合、補償内容が「一般型(保険会社によってはフルカバー)」と「車対車+A(保険会社によってはエコノミー型)」という2つの契約プランがあります。この2つのプランは、前者よりも後者の方が保険料が安いです。保険料が安くなるということは、それだけ補償内容が限られてしまうということになります。どういった事故が補償されて、どういった事故が補償されないのか、ということをしっかりと確認しておく必要があります。

特に「エコノミー型」については、前述したガードレールなどにうっかりこすってしまった、といったようないわゆる「自損事故」については補償されません。分かりやすく説明をすると、「相手方が車以外の接触事故」については保険が適用されないということです。

初めて車を買うといった人の場合、車両保険は安いからという理由で「エコノミー型」を選択してしまうと、のちのち後悔してしまう可能性がありますので、気を付けましょう。

基本の内容をさらに充実させる「特約」ってなに?

基本の内容をさらに充実させる「特約」ってなに?
自動車保険(任意保険)には、前段で説明した基本の4つの項目の補償をさらに充実させる「特約」と呼ばれるオプションがあります。

保険に追加できる契約で、自動車保険に追加することで補償を充実させることができ、安心したカーライフを送ることができるようになるでしょう。

以下の項目では、自動車保険に追加することができる特約について解説し、おすすめの特約についても紹介していきます。

自分で選ばなくても付帯される特約

特約には、保険会社の指定によって基本プランに自動付帯されるものがいくつかあります。ここでは、3つの特約について紹介していきます。

他車運転危険補償特約

通常の自動車保険は、運転手ではなく契約対象の車に対して保険がかかっています。例えば、友人の車を借りて事故を起こしてしまった場合、事故を起こした人の加入する保険ではなく、車の所有者の加入する保険を使うことになってしまいます。

そこで、この特約があれば「記名被保険者」もしくは「その家族」が所有している車以外の車両を臨時に借りて運転して事故を起こした場合に、その車にかけている自動車保険を使う必要がありません。

つまり、自分の自動車保険を使って借りた車を修理したり、相手方に補償をすることが可能になります。この特約があることで、車を貸してくれた人に迷惑をかけずに済むでしょう。

次に紹介する2つは、範囲を決めておくとお得になる特約です。

運転者限定特約
運転者年齢条件特約

これらの特約は「契約対象の車を運転することができる人」の年齢と範囲(本人だけ、家族だけなど)を絞ることで、保険料を安くすることができます。

特に年齢条件については、「年齢が若い=運転経験が浅く、事故のリスクが高い」という認識となるため、ある程度年を重ねている人(21歳以上、26歳以上、35歳以上)が自動車保険を契約すると保険料がお得になります。

入っておくと役に立つ特約

自動的に付加される特約について紹介しましたが、こちらでは自分で契約をしないと付加することができない特約について紹介をしていきます。

自動車保険に加入している人の多くが付加している特約である以下の3つです。

  • 対物超過
  • 新価特約
  • 車両全損時修理特約

これらについて詳しく見ていきましょう。

対物超過特約

対物超過特約
まずはじめに紹介する対物超過特約は「対物賠償」の補償内容をより充実させる特約です。

一般的に対物賠償で支払われる保険金は、壊してしまった相手の財産の「時価」相当しか支払われません。

例えば、購入時からだいぶ年数が経ってしまい、30万円くらいしか価値が付けられていない車に追突事故をしてしまったケースで考えてみましょう。該当の事故で相手の車はひどい損傷をしてしまい、板金工場から出た見積額が50万円になったが、保険会社が定めた時価が30万円だったため、修理費は最高額の30万円しか支払われないということです。

そうなってしまうと、残りの20万円は相手方が自己負担をするか、追突してしまった人が自腹で支払うしかなくなってしまいます。そこで、この対物超過特約を付加しておくことで、相手の財産の時価相当額に最大50万円を加えた金額までを補償してくれるようになります。

最近は車の保有年数が長くなってきており、こういった事例がよく起こるため、入っていて損はない特約と言えるでしょう。

車両新価特約や車両全損時修理特約

車両新価特約や車両全損時修理特約
次に紹介する特約は、自分自身の車に対する補償である「車両保険」の補償をより充実してくれる特約です。

車両新価特約

車両新価特約は、新車時から5年程度の期間しか付加することができない、少し特殊な特約です。

通常の車両保険は、年数が経過すると車両の価値が年々下がっていきますが、この特約を付加することで新車時に設定した車両保険金額を固定することができます。これに加えて、新車時に設定した車両保険金額の「半額以上の損害(=半損)」が認定された際には、車両保険金額の満額が支払われるようになります。

つまり、半損以上の事故に遭った場合には、無条件で新車に乗り換えることが可能です!

例えば、水害で車両が冠水(水没)してしまうと、半損以上になることが良くあります。そういった危険が考えられる場合は、入っておくと思わぬときに役立つかもしれません。

車両全損時修理特約

車両全損時修理特約は、車両新価特約とは違い、5年以上経過した車におすすめしたい特約となります。

この特約の特徴は、前述した対物超過特約の車両保険版というイメージです。少し古くなって、30万円の価値になってしまった愛車が事故や洪水で壊れてしまったときに、プラス50万円~80万円までであれば修理を受けることや保険金を受け取って次の車の資金に充てられるようになります。

これも車両新価特約と同様に、もしものときに入っていて良かったと思える特約と言えるでしょう。

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場合によっては付帯させておきたい特約

次に紹介する特約は、全員が加入すべきという特約ではありませんが、自身の使用状況によっては加入しておくと便利な特約です。

また、ここで紹介する3つの特約は、大原則として「1家族で1契約」となります。そのため、それ以上加入しても重複契約となってしまい、保険料が無駄になってしまいます。

ひとつひとつ内容を確認していきましょう。

ファミリーバイク特約

ファミリーバイク特約
自宅でオートバイに乗っているという人も少なくはないでしょう。

オートバイはオートバイ、車は車と分けて保険に加入していても、全く問題はありません。しかし、もし乗っているバイクが125cc以下のバイクだという場合には、「ファミリーバイク特約」として、自動車保険にセットすることで保険料を抑えることができます。

125cc以下の小型バイク用の保険には2種類あり、「自損型」と「人身障害型」です。前者の方が補償範囲がやや狭いため保険料が安く、後者の方が補償範囲が広いため、保険料がやや高めの設定の保険となっています。

自動車保険に付帯させると通常で加入するよりも保険料が安価にすることができるため、「ファミリーバイク特約」を付帯させる際には、「人身傷害型」にすることがおすすめです。

弁護士費用特約

弁護士費用特約
交通事故にあった場合に、示談交渉が難航してしまうケースもあるかもしれません。特にお互いに過失がある場合は、過失割合の交渉から慰謝料や治療費、修理費の交渉と様々です。

お互いに過失がある場合は双方の保険会社同士での交渉となりますが、相手が100%の過失がある場合は保険会社が交渉してくれないこともあります。そういったケースでは、自分自身で交渉するしかありません。

相手方が事故処理に慣れている保険会社となるので、交渉が非常に困難となることが想定されます。そういった際に弁護士に依頼をすると費用もかかります。

そんな時に「弁護士費用特約」に加入しておけば、示談交渉などにかかる弁護士費用をある程度カバーすることが可能です。自動車事故に限って使用できる特約ではありますが、加入しておくと、もしものときに役立つことでしょう。

また、同居の家族を含め複数台の自動車を保有している場合は、1契約のみ有効となるため重複しないように注意してください。

個人賠償責任特約

「個人賠償責任特約」は自動車保険とは一線を画した特約です。

この特約でカバーできる補償範囲は、日常生活において契約者自身、またはその家族が、偶然な事故により法律上の損害賠償責任を負担することにより被った損害を補償する、といったものになります。示談交渉もセットになっていることが多い特約です。

例を挙げると、小さい子供がいる家族が買い物に行った際に、子供が店内でふざけて店の商品を壊してしまった際にも、この特約に入っていれば保険上限額までの範囲であれば補償されます。また、自転車事故に対しても補償されるため、万能の特約と言えるでしょう。

この特約は自動車保険以外の保険、例えば火災保険などにも付加されていることがあるので、契約前にそちらも確認することをおすすめします。

自動車保険はどこの会社がオススメ?

自動車保険はどこの会社がオススメ?
日本国内では、数多くの損害保険会社が自動車保険を提供しています。実際に保険に入るとなると、どこの保険会社で自動車保険に加入するのが良いのか分からない、悩んでしまうという人も多いはずです。

自動車保険の補償内容については、国内で加入できる自動車保険についてはほとんど変わりありません。補償内容はどこの保険会社で入っても同じですが、保険料が異なったり、契約する場所によってはプラスアルファの価値がついてくるものもあります。

中にはディーラーで加入をすると、等級を下げずに修理費用が安価にできたり、レッカー移動の距離が伸びたりといった特典があるところもあります。こういった各社の魅力的なポイントを把握し、しっかり比較検討をしましょう。

自動車保険は「どこ経由」で入る?

自動車保険は「ディーラーや保険代理店」など、対面で加入するのが主流でしたが、最近では「インターネット」で加入するダイレクト型も増えてきました。この2つを比較すると、前者のディーラーや代理店での加入だと保険料はやや高く、逆にインターネットで加入するダイレクト型の自動車保険は人件費がかからない分、保険料が安かったりもします。

この2つの自動車保険の内容について、どちらの加入形態がすすめなのか、それぞれのタイプでどういった違いがあるのか、という点なども踏まえて確認してきましょう。

代理店での加入

代理店での加入
まずはじめに、もっともポピュラーな加入方法でもある代理店での保険加入方法を紹介します。

自動車保険に加入できる場所として、自動車販売店(ディーラー)や整備工場、保険を専門としたプロ代理店と数多くの場所があります。これらの代理店での加入方法において最大の特徴と言えるのが、自動車保険の内容に詳しいプロの担当者と対面で補償内容について確認をしたり、どういった補償内容にすれば良いのかといった、細かい項目を打ち合わせできるということです。

自動車保険は最初に解説した4つの項目以外にも、様々な特約があります。車の使い方や、他で加入している保険の内容などによっては、入りすぎであったり逆に足りないということもあり得ます。そういった際に、代理店で相談しながら加入することで過不足なく保険に加入できる上、保険に詳しくないという人でも安心して加入することができるのが最大のメリットです。

逆にデメリットを考えてみると、代理店の人件費などを考慮した保険料の設定というものがあります。代理店の店員も給料をもらって仕事をしているという面から、それ相応の対価として保険料を支払う必要があります。

相談料として考えれば高くはない額であると思いますが、車にかかる経費を極力抑えたいという方にとっては負担になるかもしれません。

インターネットでの加入(ダイレクト型)

インターネットでの加入(ダイレクト型)
最近ポピュラーになりつつある自動車保険の加入方法としてインターネットで加入するダイレクト型の自動車保険です。

ダイレクト型の自動車保険の最大の特徴は「保険料が安価」であるところです。代理店型の自動車保険とは違い、保険契約に関わる人が大幅に少ないため、人件費がとても抑えられています。それが保険料に反映されているため、保険料が安く設定されているのです。

場合によっては、ダイレクト型と代理店型で全く同じ内容で契約すると、年間1万円以上変わってくるということもあり得ます。

しかし、自動車保険の更新時期に保険料を考慮して見積りをとったりする際にはいいかもしれませんが、初めて自動車保険に加入する人や、保険に詳しくない人が加入をする場合「どういった補償にすれば良いか」がよく分からないまま契約してしまうというリスクもあります。

ダイレクト型の自動車保険を契約する際には、補償内容をしっかりと把握した上で「こんなはずじゃなかった」と思わないような内容にしなければなりません。つまり、ダイレクト型の自動車保険は「保険の知識をある程度持っている人」が向いていると言えるでしょう。

まとめ

①自動車保険の基本内容は、「対人・対物・人身傷害・車両保険」の4つです。
②「特約」をオプションとして追加することで、より充実した保険の内容になります。
③おすすめの特約は「新価特約」「車両全損時修理費用特約」と「対物超過特約」です。
④「ファミリーバイク特約」「弁護士費用特約」「個人賠償責任特約」は1家庭で1つ加入していると良いでしょう。
⑤代理店で保険加入する場合は、保険料は高くなるが安心して加入できます。
⑥ダイレクト型の保険の場合は、保険料は安いものの、補償の内容を知っている必要があります。

この6つのポイントが任意保険の選び方のコツになります。

「保険料を毎月支払うのはもったいない」と思う方もきっと多いと思いますが、もしものときの備えと車を保有し運転するドライバーとして、しっかりと加入を検討しましょう。


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