交通事故などで車が破損した場合、修理に出す間に移動手段がない方だと代車が必要となるかもしれません。
代車にかかる費用は、過失割合によっては交通事故の相手方が負担してくれることもあります。また、自動車保険で代車特約を付帯していれば、自身の自動車保険から代車費用が補償されることもあります。
そこで、この代車特約というのはどのような補償内容なのか、利用には条件があるのかなどを詳しく見ていきましょう。
事故で破損した車の修理中の代車
交通事故で車が破損すると修理のために修理工場に数日間預けなければなりません。また、突然車が故障し、乗れなくなった場合も同様です。
しかし、毎日のように車を使う人にとっては修理期間中、通勤や買い物などの足がなくなるのは困ります。そうなると、修理中に自家用車の代わりとなる代車を借りるケースも多いでしょう。
ただ、代車を借りるにも費用が必要となります。この代車費用は事故で保険に加入していても、自己負担となってしまうのか疑問に思う方も多いかもしれません。
万一の場合に備えて、交通事故の際の代車費用や手配に保険が使えるのかなど、知っておくことも大事です。
車の修理中に代車を借りるにも費用がかかります。その費用は自己負担しなければならないのか、それとも自動車保険で補償してもらえるのかは気になるところです。
単独事故でなければ交通事故には必ず相手方がおり、交通事故が起こる原因を作ったのはどちらか一方か、もしくは両方にあります。
また、自分と相手方双方の過失割合によっては、事故の補償額も違ってきます。過失割合は「8:2」や「7:3」のように責任の度合いを数字で示していて、双方合わせると1になるような設定です。そして過失割合が大きい方を加害者、小さい方を被害者としています。
ただ、過失割合には明確な算出式はありません。道路交通法などの法律に違反の有無などを加味して保険の調査員が決めます。
相手の方が過失割合が大きければ、自分の代車の費用も負担してもらえる可能性があります。また、自分で加入している自動車保険から代車費用がカバーされる場合もあるので知っておきましょう。
交通事故の相手方の過失割合が大きいと、代車費用を負担してもらえる可能性が高まりますが、全てのケースにおいて負担してもらえるというわけではありません。
賠償請求において、まずは代車の必要性が高いかがポイントとなります。どうしても生活に代車が必要かどうか、どの位必要かが図られるというわけです。
まずは、車以外の交通手段が乏しい地域に居住している場合が挙げられます。通勤や通学、定期的な通院、また業務で使う場合は、配達などの仕事で日常生活に車が欠かせないと客観的に認められれば、代車の必要性は高いでしょう。
逆に、電車やバスなど他の交通手段で代用できるような状態なら認められないかもしれません。近くに親族などが住んでおり、車を借りられる状況にあるかどうかなどが判断材料になることもあります。
そして、目的地までの距離や所要時間が短い場合も、代車の必要性の是非が問われることになります。例えば車で5~10分位かかるなら、自転車や徒歩でも移動できる場合などです。
代車の必要性と共に、どの位の期間必要かも判断ポイントとなります。代車使用期間が長くなれば、その分代車にかかる費用もどんどんかさんでいきます。
代車費用を負担する事故の相手方にとっては、できる限り代車の必要期間は短くしたいものです。基本的には代車の必要期間は交通事故発生時もしくは、事故で破損した車を修理に出して、修理が完了し所有者の元へ戻ってくるまでの期間になります。
ただし、希望する代車がなかなか見つからないなど、代車の手配に時間を要することもあるかもしれません。そのため、代車の見積もりから実際に借りることができるまでに、数日かかることもあります。
この代車の準備期間も必要な期間に含まれる場合もあるので、保険会社やレンタカー会社とのやりとりを記録に残しておくことも大事です。
代車を頼む際にレンタカーを選ぶ場合では費用面での注意が必要です。
レンタカーの場合は、自分で手配するとなると好きな車種やグレードの車を借りることができてしまいます。しかし、1日当たりの支払限度額というのは決まっていて、主に自分が支払っている保険料によって支払われる金額も違ってきます。
支払い限度額が高ければ、それなりの装備やグレードの車をレンタルできるでしょう。逆に保険料を抑えるために最低限の限度額にしている場合は、予算を考えると希望通りの車がレンタルできないこともあります。
どの車をレンタルするかは、基本的に制約を受けることはなく自由です。しかし、レンタル料のことを考えずに借りてしまうと、後で補償額をオーバーしていることもあります。
支払限度額を超過分はどんな事情でも自己負担となってしまう場合がほとんどです。そうなると、せっかく保険が使えても、結果的に自腹となり損してしまうことにもなりかねません。
レンタカーを準備する場合は費用や車種、グレードなどに気を付けましょう。
任意保険では特約を付帯できる
加入するかどうか自由に決められる任意の自動車保険は、基本の補償を手厚くするためのオプションとして特約をつけることが可能です。特約の内容や種類は保険会社によって異なります。
特約には、補償を限定的にして保険料を抑えるタイプもあれば、基本の補償範囲を広くするためのタイプもあります。例えば以下の特約が挙げられます。
- 相手に事故の損害賠償を求める際、弁護士に相談すると発生する費用を補償してくれる「弁護士費用特約」
- 保険の契約車両以外の車を運転中に交通事故を起こした場合、その損害を補償する「他車運転特約」
- 原付に乗っている際に起こした事故の損害を補償する「ファミリーバイク特約」
- 自転車を運転中の事故など日常生活において他人にケガをさせる、他人の財物を壊した場合などに損害を賠償する「個人賠償責任特約」 など
特約は保険会社によって違いがあり、また付帯するかどうかも自由です。特約を付帯させるとその分全体の保険料が上がる場合が多いので、付帯させる時はどの位かかるかも注意する必要があります。
任意保険の代車特約とは?
自動車保険には、代車費用に関しても「代車費用特約」という特約があります。これは交通事故により破損した車の修理中、代車を手配して費用を補償するという内容の特約です。自分で借りたレンタカーの代金を負担してくれる特約もあります。
保険会社によって「代車提供特約」や「レンタカー特約」など呼び名が異なります。
ただし、代車特約はどのようなケースでも利用できるわけではありません。例えば車の修理は保険会社と提携している修理工場を使うなど、特約を付帯していても利用条件があるので知っておくと役立つでしょう。
また、代車が全車出払っている場合は貸し出せないとする保険会社もあるので注意してください。
代車特約を自動車保険に付帯させるには、車両保険に入っていることが条件となる場合がほとんどです。
車両保険というのは自身の車の修理費などを補償する保険で、車同士の交通事故や落書きなどのいたずらによる破損、電柱にぶつかるなどの単独事故や当て逃げ、故障などによる契約車両の破損により、修理費がかかるケースで適用される保険です。盗難や台風、地震などの災害による車の損壊も車両保険によっては補償対象となる場合もあり、修理以外にも、修理不可により車を買い替える際の費用も含まれることがあります。
車両保険に入るか否か、補償の範囲などは契約者が自由に決めることができ、車両保険の補償額を高めに設定すれば、その分保険料も上乗せされます。そのため、一般的に新車の場合は加入し、数年経過した車には車両保険をつけないというケースが多いです。
補償範囲によって保険料も違ってくるので、保険料を抑えるためにつけないという人もいます。
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代車特約の補償内容
代車特約というのは、代車にかかる費用を保険で補償してもらえるという特約です。代車そのものを準備して無料で貸し出してくれるのが一般的です。
しかし、契約者自身が借りたレンタカーの費用を保険会社で支払ってもらうというパターンもあります。レンタカーを借りる際は、実際にかかったレンタカーの代金、つまり実費での補償となります。
ただ、予め決められたレンタカー代の上限を超えるグレードのレンタカーを借りてしまうケースもあるかもしれません。その場合は、オーバーした分のレンタカー代は補償されず、自己負担となってしまうので注意が必要です。
代車特約における代車補償費用はいくらでもよいというわけではありません。1日当たりの支払限度額が決まっているので、代車を借りるうえで確認しておきましょう。
日額5000円、7000円、1万円と保険会社や補償内容によって上限金額が異なります。
例えば1日7000円の支払限度額だと、1日7000円以内のグレードのレンタカーを借りれば自己負担はありません。しかし8000円のレンタカーを借りれば、オーバーした1000円分は自己負担となってしまいます。
また、予め保険会社の方で代車費用を決めており、定額での支給としている場合もあります。特約を付帯させる際にきちんと確認しておいてください。
代車特約を利用する場合、代車費用はいつまでも負担してもらえるわけではありません。負担期間が決まっているので注意してください。
原則として代車費用の負担期間は最長でも30日間となっていますが、起算日は保険会社によって異なります。起算日は、主に「事故発生日」と「代車が手元に届いた日」の2つです。
代車の手配に時間を要すれば実質的に代車が借りられるのは30日未満となります。
最大で30日間はフルで代車を使えることになります。修理が30日間で終わらない場合、30日を超えて代車を使用することになり、オーバーした日数分の代車費用は自己負担です。
起算日がどうなっているかも代車を借りるうえで重要なので、チェックしておきましょう。
借りられる代車にも条件があります。
保険会社が代車を準備し、無料で貸し出してくれる場合は基本的には事故車両つまり契約車両とほぼ同等のグレードや車種の車となります。
軽自動車が契約車両なら、通常は軽自動車しか借りられません。ただし、軽自動車の代車が出払っており、保険会社の都合で普通乗用車が代車としてくる場合もあります。
また、代車費用だけを負担してもらい、自分でレンタカーを借りるという場合はレンタカーも代車の対象となります。一方、家族や友人、知人などの車を借りる場合は、代車特約の対象とならず費用も補償されません。
レンタカーを借りた場合でも領収証などの提出が必要となるので、きちんと取っておきましょう。
保険会社によっては代車特約の利用条件が違うので、代車を借りたくても補償してもらえないケースがあります。
例えば、代車特約の対象が交通事故による車の修理にのみの限定している場合などです。この場合は、故障や災害による車の修理中の代車に関しては、補償の対象外となってしまいます。
さらに、事故の過失割合も重要なポイントです。保険会社によっては、契約者の事故における過失割合が0、つまり完全な被害者でなければ代車特約を使うのは難しいとされる場合などがあります。しかし、多少なりとも相手に過失があれば、こちらが代車費用を請求するのは正当な権利だとも言えます。
代車特約を付帯させるのに余分に保険料を支払って万一の場合に備えているのに、いざという時に使えないというのは納得できないという方もいるかもしれません。
もし代車が準備してもらえないということなら、保険会社に代車の必要性などを伝え、きちんと交渉することが大事です。また、どのような条件なら代車特約が使えるのか、予め約款などを確認しておくことおすすめします。
代車として借りられる車のグレードにも注意が必要です。
例えばファミリーカーとして乗っていたミニバンで交通事故を起こし、保険会社に代車を要求したとします。しかし、借りることができたのが4人乗りが限界の軽自動車という場合も十分にありえます。保険会社が代車として貸し出る車がたまたま軽自動車しかなかった場合などです。そうなると家族全員が代車に乗れずに、不便な生活を強いられるかもしれません。
代車として準備される車は、契約車両と同等かもしくはそれよりグレードが低い車だとされている場合が多いです。いざという時に困らないように、代車特約を付帯する場合は代車のグレードに関しても、きちんと確認しておきましょう。
代車特約で補償対象とならないケース
代車特約は、契約車両が普通自動車、小型自動車、軽自動車の自家用乗用車の場合にのみ付帯できる特約です。
保険会社によって補償範囲は異なりますが、あくまで交通事故に起因する車の修理のみに限定されている場合が多いです。
「無免許運転」「酒気帯び運転」「麻薬などの薬物の影響で正常な運転ができない状態」で交通事故を起こし、車が損壊した場合は適用されないので注意しましょう。
代車特約というのは、任意の自動車保険の基本補償にプラスするオプションという形です。そのため、通常の保険料に特約料が加算されるのでトータルの保険料が高くなります。
代車特約を付帯すると年間で「5000円~1万5000円」ほど、付帯させていない場合に比べると保険料が上乗せされることが多いです。
ただし、代車費用の1日当たりの支払限度額によっても特約費用には差があります。各保険会社によっても特約費用は変わってきます。
保険料を少しでも抑えるなら、支払限度額を一番少額なプランにしておくのも手です。ただし、代車費用は自己負担なしとしたいなら、事故で壊れて修理中の車と、同じグレードの代車が借りられない可能性もあることを頭に入れておいた方がよいでしょう。
交通事故で車が破損し、修理が必要となった際に代車が借りられるというと、ロードサービスの代車提供サービスを思い浮かべる方もいるかもしれません。任意の自動車保険ではほとんどの場合、無料でロードサービスがついています。
代車提供サービスというのは、事故車両がレッカー移動された場合、運転者や同乗者が帰宅するための移動手段としてレンタカーを無料で貸し出すサービスのことです。
ただし、ロードサービスの場合はあくまでも一時的な移動手段を緊急で提供してるだけです。そのため、車の修理中にロードサービスを使って代車を借りることはできません。
車の修理期間中、最大で30日間代車が借りられる自動車保険の代車特約とは全く異なるので、間違えないように気を付けましょう。
代車特約を使った場合、翌年の自動車保険の等級はどうなるのでしょう。
代車特約は車両保険で補償される交通事故に対しての適用です。つまり、車両保険により車の修理代や買い替え費用を補償される場合となるので、当然等級にも影響が出てきます。ただ、交通事故の形態によって等級の扱いも違ってきます。
例えば「3等級ダウン」の交通事故の場合、車両保険を使った時点で翌年から自動車保険の等級は3ランクダウンです。1等級ダウンの交通事故の場合も同様となります。
ノーカウント事故といって等級に影響がない事故もありますが、基本的に車両保険を使う事故は該当しません。そのため、車両保険と代車特約を使うと翌年の等級は3ないし1ランクは下がる可能性が高いと言えるでしょう。
自分の車が修理中に借りていた代車を運転していて、交通事故を起こす場合もあるかもしれません。その場合は代車にかけられている自動車保険で対応することになります。
すぐに代車を手配してくれた保険会社に連絡しましょう。代車として貸し出す位なのでリスクを考え、自動車保険に未加入であったり年齢条件で使えないという場合はほとんどないでしょうが、念のため確認してください。
また、自身が契約している自動車保険が使える場合があります。「他車運転特約」や「臨時代替自動車特約」などの特約を付帯させている場合です。
通常は友人や親族などの車を借りた場合に使われることが多い特約ですが、契約車両以外なので代車も含まれます。
特約が使える条件が決まっているので、使えるかどうかも確認しておくと安心です。
交通事故により業務で使っていた車が破損し、仕事ができなくなるというケースもあります。代車で仕事をしたせいで生じた、いわゆる「休車損害」は補償されるのか気になるところです。
例えば営業車が修理中、貸し出された代車が業務に用いるのに何ら不都合がなかった場合などは補償されません。逆に代車では十分な業務ができなかった場合は、補償される可能性があります。
代車を使ったことにより減収となった分の利益から、業務に必要な経費を差し引いた損害額を賠償したという判例もあります。
ただし、この休車損害は全てのケースで認められるというわけではありません。認められるのはケースバイケースではありますが、補償が受けられる可能性があるなら保険会社に相談してみることをおすすめします。
任意の自動車保険において、代車特約は万一の場合に備えて付帯させておくと便利です。
ただし1日の支払限度額に応じて特約分の保険料が高くなってしまうため、経済的な負担も大きくなります。そのため、必要最小限の補償にしておいた方がよい場合もあります。
また、代車に関しては馴染みの整備工場があり、普段の整備から事故の際の修理までを依頼していれば、代車を無料で貸してもらえることもあるかもしれません。普段から信頼関係を築いておくことで、いざという時に役立つはずです。
事故で破損した車を町の修理工場ではなく、ディーラー併設の整備工場に持ち込み、修理するとなると利益につながります。そのため、代車のグレードなど注文を付けなければ、ディーラーで顧客用に使っている車を貸してもらえる可能性もあるかもしれません。
車が修理中でも他の交通手段で何とかなりそう、そこまで頻繁に車を使わないという場合は代車特約を付帯させなくても済むかもしれないので、よく考えてみましょう。