自動車保険の契約スタイルの一つに、店舗に出向いて担当者と対面式で保険契約を結ぶ代理店型保険があります。
代理店型保険は、担当者にアドバイスしてもらいながら保険会社が選べます。ただ、対応が悪いなどの理由で途中で代理店を変更したいという人もいるかもしれません。そんな時、保険契約途中でも代理店変更は可能なのかについて見ていきましょう。
また知っておくと役立つ、もう一つの契約スタイルである「通販型保険」との違いや、保険会社そのものの変更、等級への影響なども解説していきます。
自動車保険の契約スタイル
自動車保険は大きく分けて2つの契約スタイルがあります。
- ネットや電話を通じて保険契約を申し込む「通販型保険」
- 保険代理店を通じて対面型で保険の申し込みや契約手続きを行う「代理店型保険」
この2つの契約スタイルには加入方法をはじめ、保険料や補償内容の決め方など様々な違いがあります。
交通事故が起きた場合の対応や事故後、保険金を請求するまでのやり取りに関しても違う点があるので、2つを比較しながらどちらの契約スタイルが良いかを見極めましょう。
通販型保険は、ネットや電話などの手段によりダイレクトに保険会社と保険契約を行うスタイルであり、ダイレクト型とも呼ばれています。いつでも自分の都合のよい時間帯に、ネット環境があれば場所を選ばず申し込みや手続きができるのでとても効率的です。
基本的にネットを駆使して自分で自動車保険の補償内容、保険会社などを調べて決めます。質問がある時はネットや電話で問い合わせ、保険会社のスタッフに相談もできます。
実際に交通事故が起きると、保険会社のスタッフが現場に駆けつけるイメージがあるかもしれませんが、通販型保険では保険会社のスタッフは事故現場には来てくれません。自分で交通事故が発生した場合の連絡先にアクセスし、指示を仰ぐことになります。ただし、中には警備会社と提携しており、交通事故の際は警備会社が現場に来てくれる「駆けつけサービス」を提供している保険会社もあります。
また、交通事故発生後の賠償に関しては、自ら保険会社と直接やり取りをしなければなりません。
代理店型保険は、店舗を構える保険代理店に出向いてスタッフと対面式で保険契約を行うスタイルです。保険会社と契約者の間に、代理店が中間業者として介入する点が保険会社と直接契約する通販型保険と異なります。
保険代理店の担当者が、補償内容や保険会社について説明し相談に乗ってくれるので、保険の知識がない人でも必要な補償をカバーした保険を契約することが可能です。ただし、代理店を通す分だけ手数料がかかり、保険料に上乗せされます。
交通事故が起きた際は連絡すれば事故現場に駆けつけてくれる代理店もあります。しかし、人手が足らない場合は来てくれないこともあるので、必要なら事前に確認しておくと良いでしょう。
交通事故のやり取りは保険会社との間に立ち、契約者に代わって賠償請求を行ってくれることもあります。もちろん契約者が保険会社と直接交渉を行うことも可能です。
通販型と代理店型の違い①事故対応
通販型保険と代理店型保険は、交通事故後の対応に違いがあります。
契約者が保険会社の事故担当サポートデスクにまず電話連絡をしなければなりません。そこで事故の詳細について説明し、今後の対応についても指示を仰ぐことになります。
まず馴染みの代理店の担当者に連絡を入れることで、保険会社へ取り次ぎをしてもらえます。場合によっては事故現場に来てくれることもあるので、事故で動揺し不安な場合も安心できるでしょう。ただし、代理店を通さなくても自分で直接保険会社の事故担当サポートデスクに連絡を入れ、通販型保険と同様に対応することも可能です。
事故後の賠償金などに関する示談交渉は、保険会社が行う決まりになっているので代理店の担当者が介入することはできません。代理店に取り次ぎだけしてもらったら、後は契約者と保険会社のやり取りになります。そのため、事故対応に関しての顧客満足度は通販型保険も代理店保険もあまり変わらないというアンケート結果もあります。
通販型と代理店型の違い②サポート体制

自分で保険会社や補償内容をネットなどの情報を収集して調べる必要があります。情報を精査して、自分や家族に必要な補償をカバーしている保険を選び、契約手続きを行います。
調べていく中で分からない点があれば、ネットのチャットやメール、コールセンターへの電話を通じてスタッフに質問することは可能です。
代理店のスタッフから保険会社や必要な補償内容などの説明を受けることができます。質問があればその場で聞いて疑問がすぐに解決できるので効率的です。相談に乗ってもらいながら、一番適した保険を選び契約することができるので心強いと言えるでしょう。
また、保険契約に関しても書類などを整えてくれるので、自分でチェックする必要もなくとても楽です。ただし、あまりに担当者任せになってしまうと、自分でどんな補償内容だったかをきちんと把握しないまま、契約に至る人もいるので注意が必要です。
通販型と代理店型の違い③保険料

契約者が直接保険会社とやり取りして契約に至るので、中間マージンが発生しません。そのため純粋な保険料しか徴収されないのでお得です。
代理店の担当者が保険契約を仲介するので「中間マージン」が発生します。
この手数料は保険料に上乗せされているので、結果的に契約者が支払う保険料は通販型保険よりもやや高くなっています。そのため、できる限り保険料を安くしたい、自分で動いてでも保険料を抑えたいという場合は通販型保険の方が良いでしょう。
通販型保険は、わざわざ代理店に出向くのが面倒、忙しくて時間がないという人に適しています。代理店での担当者とのやり取りや、人に相談して意見されるのが煩わしと感じる人にもおすすめです。
自分で自動車保険について調べてみたい、ネット検索などが好きで少しでも自分に適した保険をじっくり選んで決めたい、という人にも向いています。
しかし、補償内容の但し書きなどを見落としたり、契約内容の細かな部分まで理解できていなかったりしたまま契約することもあるので注意が必要です。
代理店型保険は、自動車保険に詳しくないので自分で調べて保険会社を探せるか不安だという人に向いています。専門知識が豊富なスタッフにアドバイスしてもらいながら、相談して必要な補償や適した保険会社が決められるので安心感があります。
その上、保険契約の書類なども担当者が準備し、書き方も説明してくれるので面倒がありません。書類などが苦手、スムーズに手続きを進めたいという人にも良いでしょう。
ただし、手数料が保険料に上乗せされるので通販型保険よりは保険料がやや高い点は、頭に入れておく必要があります。
担当者任せにすると自分でどこの保険会社に加入し、どのような補償が受けられるかしっかり把握できていない場合もあります。自分でも補償内容はきちんと知っておくことが大事です。
保険代理店の種類
保険代理店は保険会社の代理として、その人に適した自動車保険や補償に関して相談に乗り、乗り換えや加入を促す役割を担っています。
保険会社は、代理店が自社の自動車保険への乗り換えや加入などで顧客を増やす手伝いをしてくれるリターンとして、マージンを渡すという仕組みになっています。
保険代理店の仕事内容は主に業務としては、以下の5つがあります。
- 保険契約の締結や保険会社からの指示があれば契約の仲介を行う
- 保険契約内容で変更や解除の申し出があれば手続きを行う
- 保険料の徴収や領収書、保険証券などの発行を行う
- 保険契約者からの交通事故の連絡があれば現場でサポートを行う
- 保険金請求に関して保険会社との仲介役になり取り次ぎを行う
保険代理店の種類は、いくつかのタイプに分けられています。
1社の保険会社の自動車保険商品のみを扱う代理店です。1社専属なのでかなり商品に関する知識が豊富だと言えるでしょう。
複数の自動車保険を扱う代理店なので、保険商品を比較して顧客に適した保険会社を選んでもらえるという利点があります。
複数の自動車保険に関する知識が豊富で、家族構成や車を使う頻度などの情報をもとに、希望に沿った保険会社を選んでくれます。
自動車保険の契約期間は、通常年単位での契約になっています。基本的には1年契約で満期日を迎える前に、更新手続きをして継続していきます。
ただし自動車保険によっては、2年もしくは3年間の長期契約も可能です。長期契約にすると、毎年の更新手続きの手間が省ける、一括払いにすれば月払いよりも保険料が割引になってお得といったメリットがあります。
一方で、長期契約を扱うのは主に代理店型保険が多いので、通販型保険よりも手数料がかかる分、元々の保険料がやや高めに設定されてしまうという一面もあります。
強制保険である自賠責保険は、月単位の契約が可能です。ただし、便宜上車の購入時に加入手続きを行い、車検時に更新していくことになっています。そのため、次の車検までの期間を保険期間として設定するので、2年3年という契約期間になるのが一般的です。
自動車保険を保険代理店を通じて契約した場合、通常は1年契約である場合が多いでしょう。
しかし、一般的には途中で代理店を変更することは可能です。そもそも任意の自動車保険は強制保険である自賠責保険と違い、自分の自由な意思で加入するかどうかを決められます。
法律による縛りもなく、必ずしも代理店を通じて契約しなくても良い、通販型保険のようにネットだけで契約しても何ら問題ない自動車保険です。そのため、代理店の変更は顧客の正当な権利だと言えます。
ただし代理店によっては、例えば契約途中の変更について制限を設けている場合もあるので注意が必要です。
自動車保険は基本的に1年単位での契約なので、契約期間がまだ途中、つまりまだ満期までに期間がある時期での変更は承認されない場合があります。
代理店は保険会社との結びつきが強く、代理店の変更は代理店側にとっては契約途中で他の代理店に顧客を取られることになります。代理店側の対応が悪かった、顧客から不満が出たので変更されたと保険会社に思われると、信用を無くすかもしれません。そのため、代理店に変更の申し出をすると何か理由をつけて断られる場合もあります。
保険代理店を変更するケースとしては、引っ越しをして住所地が変わった場合などがあります。
保険加入の際に住所地を設定しますが、住所が変わったら住所変更の手続きが必要となります。もし住所変更しないと、保険に関するお知らせなどの通知が住所地に届かないので、更新を忘れることもあるからです。
また契約内容に変更が生じたら、報告しなければならないという義務もあります。自宅近くの保険代理店で保険の相談や契約などを行っている人も多いので、引っ越すと馴染みの保険代理店が遠くなるため足を運ぶのも面倒になってしまうかもしれません。引っ越しを機に新しい住所地近くの保険代理店に変更することもできます。
保険代理店は店舗によって、保険相談や交通事故発生時のサポート体制に違いが生じることもあります。また、店舗内で担当者が変更になると接客態度が悪くなる、交通事故の際の対応が不親切にだったということも珍しくありません。
そうなると保険代理店への不満も高まるので、もっと親切で手厚くサポートしてくれる保険代理店に変更したいという気持ちになるのも当然でしょう。
ちょうどいい機会なので、今加入している自動車保険の契約内容の見直しを検討するのもいいかもしれません。別の保険会社に切り替えるために、別の保険代理店に相談するという形で変更するのが望ましいと言えます。
保険代理店を途中で変更しても、自動車保険自体の等級に影響はなく、そのまま引き継がれます。保険代理店はあくまでも保険会社と契約者を仲介しているに過ぎず、特に手数料や違約金なども発生しません。
代理店に変更を申し出ると、等級に影響する可能性があると引き留められることもあるかもしれませんが、等級は保険会社を変更する際でも、過去の事故歴によって関係してくるものだということを覚えておいてください。
保険代理店を変更する場合、代理店の担当者に直接連絡を入れたり店舗を訪れて変更する旨を伝えると、強く引き留められる可能性が高いでしょう。
代理店は保険に加入させ、顧客に更新してもらうことで保険会社からマージンを受け取っています。もし代理店を変更されると顧客を失うことなり、利益を失います。そのため、やや強引にでも説得して、顧客を引き留めようとするかもしれません。
スムーズに手続きしたいなら、代理店に連絡するのではなく直接契約している保険会社に連絡してください。事情を話して、自分の意思で代理店を変更したいという旨を伝えることが大事です。
自動車保険自体も変更できる
保険代理店を変更するタイミングで、一緒に保険内容を見直して保険会社を変更するというのも効率的です。保険会社を変更すれば、前の保険を解約して別の保険に乗り換えることになるので、代理店も変更しやすいと言えます。
保険契約期間途中でも乗り換えはできますが、代理店側が変更を渋って説得してくる場合が多く、なかなか手続きが進まないということにもなりかねません。代理店とのトラブルを避けるためにも、できれば保険満期日を待って保険会社ごと乗り換えた方が色々とお得です。
保険会社の変更には前の保険の保険証券や運転免許証、車検証などが必要なので覚えておいてください。また代理店の変更を申し出るよりも、いい機会なので通販型保険に変えてしまうというのも一つの手です。
満期のタイミングで新しい自動車保険に加入し直す場合、以前の保険会社に特に連絡する必要はありません。しかし、自動車保険の補償を手厚くするための特約をオプションとして付帯させている場合は、注意が必要です。
特約の中には、満期日が来たら自動で保険が更新される特約があります。こういった特約を付帯している場合は、前の保険会社に連絡しないと自動で更新されてしまいます。
また、保険料の割増引率を決める区分として用いられている等級に影響があるのか、乗り換えることで等級が下がることはないか心配だという方もいるかもしれません。等級は無事故の期間が続くと、1年ごとの更新の度に1等級ずつ上がり、保険料の割引率が大きくなるというメリットがあるためです。
しかし、前の保険契約期間中に無事故で保険を使っていなければ、乗り換えた新たな保険契約を締結する際は1等級上がった状態で契約をスタートできます。つまり、保険会社を変更しても等級には基本的には影響が出ないとされています。
中には1年以上同一の保険会社で契約継続させないと等級アップがされないという保険会社もあります。契約から1年未満で保険会社を変えてしまうと事故歴の有無に関係なく等級は上がらず、据え置きになるというわけです。
保険会社を乗り換える場合、今加入している保険会社が等級に関してどのような扱いをしているかを確認しておく必要があります。
保険会社を乗り換えるのに、過去1年間で交通事故により自動車保険を使っている場合は、事故の形態によって等級に影響が出ます。
- 等級が下がるダウン事故
- 等級が変わらない等級据え置き事故
- 等級に影響がないノーカウント事故
等級が3つ下がる3等級ダウン事故は、他人の車や物を壊して対物補償を使う、単独事故などで自分の車が壊れて車両保険を使う場合などです。
等級が1つ下がる1等級ダウン事故は、盗難や落書きなどのいたずらで自分の車が破損し、車両保険を使う場合です。
ノーカウント事故は、車の同乗者の損害を補償する人身傷害保険や搭乗者傷害保険、特約などを使った場合が当てはまります。保険会社を変えても、これまで加入していた保険会社と同様に等級がカウントされます。つまり、過去1年間で3等級ダウン事故を起こして保険を使えば、新たな保険も等級が3つ下がった状態でスタートするというわけです。
また、保険会社によっては5等級以下だと他の保険会社への乗り換えを認めない場合もあります。乗り換えを考えるなら、満期日の1ヶ月以上前から保険会社に問い合わせ、確認しておくと良いでしょう。
自動車保険の契約期間中、つまり満期までにまだ期間がある状態であっても保険会社の乗り換えは可能です。ただし、1年間無事故であった場合でも現在契約中の保険と新しく加入する保険の両方の手続きが必要となります!
等級に関しては、保険期間通算特則制度を導入している保険会社なら、契約期間途中でも新しい保険で等級アップが認められる可能性があります。
例えば前の保険会社で3ヶ月間保険に加入した後、乗り換えを行うとします。以前の保険契約期間3ヶ月と新しい保険会社での契約日数を合わせ、1年が経過して無事故なら満期日を境に等級が上がるということになります。
ただし、前の保険の解約日と新しい保険の開始日を同日にするなどの条件もあるので確認しておきましょう。加えて、保険期間通算特則を採用していない保険会社もあるので注意が必要です。
また、年払いで保険料を支払っている場合、前の保険を解約した時点で残りの保険期間の保険料が払い戻されます。還付金は月割りで計算されるので、満期日に合わせた方がお得です。
保険契約期間中に等級ダウン事故により保険を使い、満期日前に別の保険会社に乗り換えることはできます。しかし、この場合だと保険期間通算特則が使えません。保険会社を乗り換えた後も等級の進みは遅くなってしまい、保険料の負担が重くなってしまいます。
例えば、ある保険会社で13等級のまま3等級ダウン事故を起こしたとします。そのまま別の保険会社に半年で加入し直すとその時点で等級は3等級ダウンした10等級です。半年後もそのままで、さらにその半年後、無事故が続けば乗り換えから1年後に等級が1つ上がり、11等級になります。
つまり、満期で切り替えるよりも半年分10等級の期間が長くなってしまいます。そうなると、保険料がその分高くなるので損でしょう。
事故で保険を使った場合は満期日まで待ってから継続するか、乗り換えるかを決めた方が得策だと言えます。
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