車を運転している限り、事故に遭う可能性は少なからずあるものです。もらい事故で自分には100%過失がない場合、自分の保険を使えるのでしょうか?

この記事では、もらい事故に遭ってしまった場合に使える保険や事故時の対応、その他注意すべき点を解説します。

もらい事故と自分の自動車保険について詳しく知ろう

もらい事故と自分の自動車保険について詳しく知ろう
もらい事故は歩行者としてであれ、車の運転者としてであれ、遭遇してしまう可能性のある事故です。予測ができないため自分ではどうすることもできませんが、事前に自分が入っている保険を知っておくことで、いざという時に助けになるでしょう。

ここからは、もらい事故に遭ってしまった場合に自分の自動車保険がどのように役立つのか、解説していきます。

もらい事故とは何ですか?
もらい事故とは、自分には全く過失がなく相手側に100%責任のある事故のことです。車が破損したり、自分がケガをしたりした場合、修理費や治療費は基本的に相手側の自動車保険から支払われます。しかし、加害者が任意の自動車保険に入っていない場合、車が破損していても補償されなかったり、支払われる治療費が足りなかったりする可能性があります。
もらい事故の代表例とは?

もらい事故と言える代表的なケースを歩行中と車の運転中に分けて説明していきます。

歩行中の場合は、青信号で横断歩道を歩行している時に車にはねられてしまうことが考えられます。

車の運転中の場合は、駐停車中(信号待ちなど)に追突されたり、青の右折信号で右折したところ、赤信号を無視した対向車と衝突してしまうことが考えられます。

また、対向車線の車がセンターラインを越えてきて衝突したり、法定速度内で走行中に後ろから追突されることもあります。

もらい事故の時に自分の自動車保険はどう使う?

もらい事故であっても、加害者側からの補償が期待できない場合は自分の保険を使うことを検討しなければなりません。

まずは、自分の自動車保険が役立つのかどうか、見ていきましょう。

もらい事故に遭ってしまった時に自分の自動車保険を使うことはできますか?
もらい事故の場合、基本的には相手の加害者側から治療費などは支払ってもらえますが、自分の自動車保険を使用することも可能です。使える保険は自動車保険の契約内容によって変わってきます。
もらい事故で注意すべき点は何ですか?
もらい事故で注意すべき大きな点は、自分が加入している保険会社は示談の交渉ができないことです。自分に非がなく賠償が発生しないことから保険会社は無関係となり、示談交渉を行うことは弁護士法により禁じられています。そのため、自分で交渉するか交渉を弁護士に依頼しなければなりません。
使える自動車保険①人身傷害保険

使える自動車保険①人身傷害保険
もらい事故の場合に役立つ自動車保険の一つとして、人身傷害保険があります。これは、交通事故により保険の対象となっている人(本人/家族/搭乗中の方)のケガや死亡に対して実損額の補償を受けられるものです。

自分の過失の割合とは無関係に補償されるため、加害者が保険に加入していない場合のもらい事故だった時は特に助かります。ただし、加害者の自動車保険から賠償金を受け取った場合には、その額を差し引いての補償となります。

人身傷害保険を使った場合、翌年の等級が気になるかもしれませんが、この保険のみであればノーカウント事故となり、等級には影響がありません。

なお、人身傷害保険には「限定タイプ」と「一般タイプ」の2種類があるので、その違いについても知っておきましょう。

限定タイプは、保険料が安めに設定されている分、保証範囲は狭く、契約している車に乗っている時の事故によるケガや死亡が対象です。

一般タイプは、保険料はやや高めであるものの補償範囲は広いです。契約している車以外に友人の車、バス、タクシーなどに乗っている時、さらには歩行中の事故も対象となります。

使える自動車保険②搭乗者傷害保険

使える自動車保険②搭乗者傷害保険
搭乗者傷害保険も、もらい事故で役立つ自動車保険です。これは、契約している車の運転者や同乗者が死亡またはケガをした場合に補償されます。

人身傷害保険と似ていますが、大きく異なる点は、人身傷害保険は実際の損害額が支払われるのに対し、搭乗者傷害保険はケガをした箇所や状態によって定額で支払われるという点です。

そのため、搭乗者傷害保険はそれほど大きな金額にはならないものの、実損額が確定する前に保険金を受け取ることができます。さらに、加害者からの賠償金とは別の計算となるため、二重取りには該当しません。

搭乗者傷害保険を使った場合、翌年の保険の等級には影響しないため、もらい事故の際に助かるポイントと言えます。

細かい保険の内容は各保険会社によって異なりますので、事前に確認しておくと良いでしょう。

使える自動車保険③車両保険

使える自動車保険③車両保険
もらい事故による車の損害を加害者の保険で補償してくれない場合、車両保険を使うこともできます。

車両保険とは、交通事故や盗難、台風、津波、雹といった自然災害による車の損害を補償してくれるものです。なお、自然災害の中に地震は基本的に含まれていません。

車両保険を使用する際に注意が必要なのは、使用してしまうと翌年以降の保険の等級が下がってしまい、保険料が高くなることです。自腹で修理する場合と車両保険を使って修理する場合、どちらが長い目で見て安いのかを検討する必要があります。

車両保険の無過失事故に関する特約

もらい事故に遭い、自分には非がないにも関わらず、車両保険を使用すると等級が下がってしまうのは納得がいかないかもしれません。

自分の過失が全くなく、加害者の車の登録番号、運転者の住所や氏名が確認できれば、車両保険の無過失事故に関する特約が使用できます。

無過失事故に関する特約は、車両保険に加入すると自動でセットされていることが多いです。この特約を使用することで、翌年以降の保険の等級を下げることなく、車両保険の補償を受けることができます。

しかし、当て逃げのような加害者の身元が不明である場合、無過失事故に関する特約を使用できませんので注意しましょう。

車両保険の代車費用特約

車両保険に加入している場合に任意で追加できる特約として、代車費用特約があります。これは、事故によって車が走行不能となり、修理が必要になった場合、修理している間の代車費用が保険で支払われるものです。

保険会社によっては、「レンタカー費用特約」「事故・故障時代車費用特約」など名称が変わる場合もあります。そして、実際にかかったレンタカー費用を支払ってくれるタイプと、代車を保険会社が用意するタイプもあるでしょう。

また、基本的には30日が上限です。保険会社によって事故日からなのか、車を借りた日からなのか、条件が異なるため確認しておくことをおすすめします。

代車費用特約だけの使用であれば、ほとんどのケースで保険の等級には影響がありません。しかし、車両保険も同時に使用した場合には翌年の等級は下がるため、注意が必要です。

代車費用特約をつけると、それなりに保険料も高くなります。車がないと生活が成り立たないというような場合には、もらい事故に備えて特約をつけることを検討するのも良いかもしれません。

使える自動車保険④無保険車傷害保険

使える自動車保険④無保険車傷害保険
無保険車傷害保険とは、加害者が無保険で損害の賠償を行えないものの、被害を受けた運転者や同乗者が死亡または後遺障害が残った場合に保険金が支払われるものです。また、後遺障害の残らないケガには保険金の支払いはありません。

無保険車傷害保険は、基本的に自動車保険に加入すると自動でセットされています。使用したとしても翌年の等級は下がらないため、保険料に影響はありません。

なお、加害者の無保険とは単純に保険に未加入であるということだけを指すのではなく、以下のようなケースがあります。

  • 加害者は保険に加入しているものの、賠償額が補償額を上回る
  • 加害者が対人賠償保険に加入していない
  • 加害者が、運転していた車にかけられている対人賠償含む保険の対象年齢範囲外(保険未加入扱い)
  • 加害者は対人賠償保険に加入しているものの、何かの理由で補償の対象外となっている
  • ひき逃げなど、加害者の身元を特定できない
使える自動車保険⑤弁護士費用特約

使える自動車保険⑤弁護士費用特約
もらい事故では保険会社が示談の交渉を行うことができないため、自分で交渉する必要があります。しかし、自分もケガをしているなど心身共に通常の状態でない時に交渉を行うのは難しいものです。

さらに、加害者側が任意保険に加入していない、または交渉がまとまらないといったことも考えられます。しかし、弁護士に依頼するにしても費用がかかってしまうでしょう。

そのような時に役立つのが、弁護士費用特約です。名称は保険会社によって多少異なりますが、補償の内容としては示談交渉・調停・裁判での弁護士費用を補償してくれるものです。

一つの事故で300万円までなどの上限はあるものの、弁護士費用特約を使用したとしても保険の等級には影響がありません。この特約をつけておけば、いざという時に役立つでしょう。

もらい事故で使えるその他の保険

もらい事故で使えるその他の保険
自動車保険以外にも、もらい事故に遭った時に使える自分の保険があります。

どのようなものがあるのか、紹介していきます。

①健康保険

健康保険は、加害者側の保険で治療費が賄える場合には選択肢として考える必要はありません。健康保険の使用を検討するのは、加害者の保険会社による支払いが打ち切られてしまい、自分の自動車保険も使えないような場合です。

この場合、治療が継続して必要であっても、自分で支払わなければなりません。裁判で必要性を認めてもらえれば後で加害者から支払ってもらえますが、一度は立て替えなければならないため、健康保険を利用して健康保険組合に一時的に立て替えてもらうのが良いでしょう。

健康保険組合に立て替えてもらう際には、健康保険機関に以下の書類を提出することが必要です。

  • 第三者行為による傷病届
  • 負傷原因報告書
  • 事故発生状況報告書
  • 損害賠償金納付確約書・念書
  • 同意書(被害者の医療費の内訳等、個人情報の取り扱い)
  • 交通事故証明書
②労災保険

もらい事故に遭ったのが通勤中もしくは仕事中である場合には、労災保険を使うことが可能です。加害者からの損害賠償金と重複している項目の補償は受けられませんが、重複していない特別支給金は受け取ることができます。

しかし、労災保険と健康保険を同時に使用することはできません。労災保険が適用されるケースなのに健康保険を使っているのなら、労災保険への切り替えが必要です。

労災保険を使用するためには、各種給付金の請求書や第三者行為災害届などの書類を労働基準監督署に提出することになります。

③生命保険

生命保険も、もらい事故によりケガをした場合に使用することのできる保険です。ただし、下記の特約がついていることが条件となります。

傷害特約

不慮の事故で高度障害状態または死亡した時に、傷害保険金や死亡保険金などの基本保障に加えて保険金が支払われます。

特定損傷特約

不慮の事故で骨折などの特定の損傷を受け、治療が必要になった場合に所定の保険金が支払われます。ただし、ケガをしてから治療を始めるまでに期間が空いてしまうと保険金を受け取れないことがあるため、注意が必要です。

災害入院特約

不慮の事故を含む災害によるケガで入院した場合、その日数に応じて保険金が支払われます。事故に遭った日から180日以上経ってからの入院は対象外であったりと保険金が支払われないケースもあるため、あらかじめ条件を確認しておきましょう。

災害割増特約

不慮の事故を含む災害によって高度障害状態または死亡した場合に基本の傷害保険金や死亡保険金に加えて保険金が支払われます。

生命保険を使用する際は、生命保険会社に証券番号、保険対象者の氏名、入院日などを伝えると必要な書類を案内してくれるでしょう。

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もらい事故に遭ったときに気をつけるべきこと

もらい事故に遭ったときに気をつけるべきこと
もらい事故は、いつどのように遭遇するか分かりません。そのため、もし遭ってしまった時にどのように対応をするといいのか、あらかじめ確認しておいたほうがいいでしょう。

ここからは、もらい事故に遭ったときに気をつけるべきことを説明していきます。

もらい事故直後の対応

もらい事故に遭った場合、大切なのは、まず人命救助、次に警察への連絡、そして加害者の身元確認です。

基本的な対応の流れは以下のようになります。

  1. 負傷者を確認し、必要なら救急車を手配
  2. 車を路肩など安全なところに停め、二次被害を防ぐために三角表示板を設置
  3. 警察へ連絡
  4. 加害者の身元を確認し証拠を保全する
  5. 加害者、被害者双方が自分の保険会社に連絡
    ※もらい事故でも被害者は保険会社に知らせることが必要です。
  6. 医師の診断を受ける
  7. 示談交渉、締結
  8. 示談内容に沿って賠償金を受け取る
軽いケガや後からケガが判明した場合

もらい事故で軽いケガをした場合、生活に支障のないものであったとしても、物損ではなく人身事故として警察に届け出ることが大切です。

物損事故にすると、後から治療費が必要になっても請求できないことがあります。ケガが判明したため物損事故を人身事故に切り替えるためには、病院が作成した診断書を警察に提出することが必要です。

診断が遅れると事故が原因でのケガとみなされず、切り替えができない場合もあります。そのような状況を避けるために、事故直後は目に見えるケガはないと思ったとしても、必ず病院で診断を受けることが大切です。

むち打ちは後から出やすい症状の一つですので、整形外科に行くことも検討しましょう。

慰謝料の落とし穴

もらい事故で物が破損しただけならば慰謝料の支払いはありませんが、ケガなど人身損害が発生した場合には慰謝料を請求できます。

慰謝料の額を決める際の基準は下記の3つです。

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準

自賠責基準は最低限、任意保険基準は自賠責と同じくらいかやや高め、弁護士基準は過去の裁判例を基にした金額となります。

もらい事故の場合は、自分の過失がないため満額の支払いとなりますが、加害者の保険会社から提示される金額は大体、自賠責基準か任意保険基準で算出されています。

そのまま合意してしまうと、本来増額できる部分で損をするかもしれません。そのため、特約を使って弁護士に対応してもらうか、自分で弁護士に問い合わせてみましょう。

自動車保険に弁護士費用特約をつけていなかった場合はどうしたらいい?

もらい事故に遭ったものの、自分の自動車保険に弁護士特約をつけていなかった場合、自分で示談交渉をするのかと気が重くなるかもしれません。

しかし、その他の保険に弁護士費用特約がついていないか念の為チェックしましょう。可能性のある保険としては、医療保険・火災保険・バイク保険・クレジットカードに関連する保険・個人賠償保険などです。

自分の保険だけでなく、家族の保険についている場合もありますので、そちらも含めて保険会社に確認してみてください。

ただし、保険に加入したのが事故後である場合、弁護士費用特約が使えないこともありますので注意が必要です。

自分の自動車保険を請求するときに必要な書類について

自分の自動車保険を請求するときに必要な書類について
自分の自動車保険を請求することにした場合、基本的に以下の書類が必要になります。

  • 保険金請求書
  • 交通事故証明書
  • 通院交通費明細書
  • 医師の診断書
  • 診療報酬明細書
  • 休業損害証明書 など

しかし、状況によっては必要な書類が異なりますので、まずは保険会社に詳細を確認しましょう。

まとめ

①もらい事故とは、相手側にすべての責任があり、自分には全く非のない事故のこと
②もらい事故の場合、相手側に補償してもらうのが基本だが自分の自動車保険を使うこともできる
③自動車保険で使える補償は、人身傷害保険・搭乗者傷害保険・車両保険・無保険車傷害保険などがある
④車両保険の無過失事故に関する特約と代車等諸費用特約もついていれば使用できる
⑤もらい事故では自分の保険会社に示談交渉を依頼することはできない
⑥自動車保険にあらかじめ弁護士費用特約をつけておけば、示談交渉などの弁護士費用を補償してもらえる

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