何らかの理由で自動車保険を中途解約した時に、未経過分の保険料が返金されるケースがあります。これを解約返戻金と言います。
解約返戻金はどのような場合に受け取ることができるのか知っておくと、自動車保険の解約を考える際に役立つでしょう。
この記事では、自動車保険における解約返戻金について算出方法や解約手続きの手順、自動車保険を乗り換える時の注意点、経理処理のための仕訳方法を詳しく解説していきます。
解約返戻金とはどのようなもの?
解約返戻金とは、自動車保険を中途解約する際に戻ってくるお金のことです。自動車保険は掛け捨ての保険なので満期返戻金はありませんが、一括払いで保険料を納めた時には、例外を除いて残りの補償期間に応じて解約返戻金を受け取ることができます。
保険期間中であれば違約金などが発生することはなく、自動車保険の解約が可能です。しかし、一括払いであっても契約満了日まで1ヶ月未満のケースでは、解約返戻金を受け取ることができません。
そして、月払いであれば基本的に解約返戻金が受け取れないことも注意が必要です。
それ以外に気をつけておきたいことは、特約で人身傷害保険をつけていたとすると、契約していた車での事故だけでなく、他の車に乗車中の事故や歩行中の自動車事故も補償されます。しかし、解約日以降はその補償も受けられなくなるので注意しましょう。
自動車保険の解約をする際は、内容を確認の上、慎重に手続きすることが大切です。
解約返戻金の算出方法について
自動車保険は保険期間中であれば解約できることが分かりましたが、解約返戻金の算出方法はどのようにして行うのか疑問に思う方もいるかもしれません。
解約返戻金は計算式が決まっているため、知っておくと役立つでしょう。
ここからは、その算出方法について詳しく解説していきます。
保険料が年払いだった場合は、解約返戻金について保険会社が定める短期率で算出されるケースと月割計算で算出されるケースがあります。
短期率とは、契約期間で保険契約を解約する際、返還する保険料を算出するために用いられる係数です。この料率によって経過期間の保険料を決定し、すで支払っている保険料から差し引いた金額が返還されます。
短期率を用いた解約解約返戻金の計算方法の式は、以下の通りです。
1年契約で一括払いを行い、自動車保険を5ヶ月で解約した場合、残り7ヶ月分が未経過期間になります。しかし、短期率で計算すると7ヶ月分の保険料が受け取れるわけではありません。
例えば、年間保険料が6万円で経過期間が5ヶ月、既経過期間5ヶ月の短期率が65%の場合の解約返戻金は以下のようになります。
ただし、保険会社によって短期率の基準は異なっています。中途解約をする時には、前もって保険会社に問い合わせておくことが大切です。
月払いで自動車保険を契約している際は、一般的に解約返戻金を受け取ることができません。その理由は、自動車保険の保険料は日割り計算を行わないからです。しかし、考え方を変えれば未経過期間を支払わずに済むとも言えます。
例えば、自動車保険を7ヶ月利用して解約する際は、7ヶ月分の保険料を支払った状態で解約することができます。つまり、未経過期間である5ヶ月分は支払う必要がないため、その分が解約返戻金であるということです。
ただし、毎月の保険始期日と同様の日を1日でも超えてしまうと1ヶ月分の保険料を支払うことになります。そのため、中途解約する時期については、日時に気をつけて解約することが大切です。
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自動車保険の解約手続きについて
解約返戻金について説明をしてきました。それでは、自動車保険の解約手続きはどのように行えば良いのでしょう?
ここからは、解約手続きの流れについて詳しく解説していきます。
一般的に自動車保険の解約手続きの流れは以下の通りです。
- 自動車保険を解約する意思を保険会社に電話で連絡する
- 手続き書類が送付される
- 手続き書類を記入して返送する
- 手続完了
- 解約返戻金があれば指定口座に返金される
代理店の連絡先は、保険証券や保険契約継続証、更新案内などに記載されているので見てみましょう。
現在ではインターネットで手続きができる保険会社も多数ありますので、サイトで入力すれば完了できるケースもあります。書類の記入と同様に解約日や必要事項の入力を行います。その際、画面上で内容確認して問題がなければ手続完了です。解約返戻金があれば指定口座の入力も必要になります。
サイト以外で解約する場合は、代理店でも手続きすることができます。また、解約返戻金がどの時期に受け取れるかは、各保険会社によって異なります。書類に不備があった場合は、さらに受け取れる日が遅れますので注意しましょう。
途中解約した場合の等級について
自動車保険を途中解約した時に、現在の等級が引き継がれるかどうか気になる方も多いでしょう。
ここからは、途中解約時の等級について詳しく解説していきます。
現在使っている自動車保険を解約すると、今まで上がった等級は引き継がれます。
しかし、気をつけなければいけないのは、解約日の翌日から起算して7日以内に自動車保険の契約を行うということです。そうすれば、以前と同じ等級を継続することが可能です。
もし解約日の翌日から8日目以降に自動車保険を契約すると、新規で自動車保険に加入することになり、一般的に6等級からのスタートとなってしまいます。そのため、期日を確認して次の自動車保険を契約することが大切です。
また、現在の自動車保険で1年間、保険料を受け取るような事故を起こしていない時に満期日から他の保険会社に乗り換える場合は、等級が1つ上がった状態で新しい保険を利用することができます。そのため、今の等級を引き継ぎたいなら、満期日で乗り換えや更新を行うのが好ましいと言えます。
自動車に一定期間乗らないため、自動車保険を解約するケースもあるでしょう。例えば、海外転勤などで車を使用しなかったりする場合です。
そういった時に何も手続きを取らずに解約日の翌日から7日を過ぎてしまったら、次回加入する時は新規契約になり、最初の6等級から加入することになります。積み上がった等級がリセットされてしまうので、等級の違いから保険料が大きく変動してしてしまいます。
そこで、解約時に中断証明書を保険会社から発行してもらえば、一定期間等級をそのままにすることが可能です。再度、車を所有することになって自動車保険に契約する際は、その等級で加入することができます。
そのため、車に長い間乗らない時には中断証明書を発行してもらい、次に乗る時に役立てましょう。
ただし、中断証明書の発行条件に関しては各保険会社によって異なるケースもありますので、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
ある保険会社の一例を挙げておきます。
<等級について>
中断する契約の次の契約等級が7等級から20等級であること
<手続き期限について>
中断証明書発行の申し出日が中断する解約日から5年以内であること
<車の状況について>
保険契約している車が廃車・譲渡・盗難・一時抹消登録・車検切れになっていること
車の状況に関わらず、契約者又は主に運転する方が解約日から6ヶ月以内に海外に渡航する場合
等級に関して中途解約時に気をつける点は、時期によって等級の進みが遅くなる点です。
例えば、現在の自動車保険始期日が4月1日で、他社に乗り換えた日が8月1日だとします。このようなケースでは、翌年の8月1日に等級が1つ上がることになります。
現在の保険のままであれば翌年4月1日に等級が上がった状態になっていたことを考えると、等級の進みが遅くなってしまいます。もし20等級でこれ以上等級が上がらない時は問題ありませんが、まだ引き上がる際には注意して契約することが大切です。
ただし、保険会社によっては「保険期間通算特例」の制度があります。これは、中途解約をして乗り換えたとしても通常通りに等級が進む特例制度です。全ての保険会社で適用していない点と利用条件がありますので、確認しておくと良いでしょう。
自動車保険を乗り換える時の注意点について
自動車保険を乗り換える際に注意すべきことは、何があるのでしょう?
ここからは、その注意点を4つ紹介していきます。
まず、自動継続特約がある保険の場合は、解約する際に保険会社に連絡をするということです。
自動継続特約がついていない場合、基本的に満期日で更新の手続きを行わなければ更新されることはありません。そのため、新しい自動車保険の契約のみになります。
自動更新される理由は、契約が切れた状態で事故を起こした際、自賠責保険の補償しか受けることができなくなってしまうのを防ぐためです。更新するのを忘れていて補償がない状態になっているとリスクも高くなってしまうため、自動契約特約がついていることが多いです。
また、自動車保険は生命保険とは異なり、複数契約することができません。生命保険であれば複数の保険会社から補償を受け取ることができますが、自動車保険は仮に複数加入していたとしても、一社のみ補償額を受け取ることになります。
二重契約を行うと片方は無効になってしまいますので、乗り換える際は注意が必要です。そのため、解約する旨を必ず保険会社に伝えておくようにしましょう。
次に注意したいのが、自動車保険の空白期間を作らないことです。その理由は2つあります。
1つ目は、空白期間に車を運転して事故を起こした際、補償が受けられなくなることを防ぐためです。
2つ目は、等級の引き継げる期間が過ぎないようにすることです。等級の引き継ぎは解約日の翌日から起算して7日以内のため、それ以降は引き継ぎができなくなってしまいます。
等級が高い状態であれば、無駄にしないことが大切なので、空白期間を作らないように解約と契約を行いましょう。
3つ目に注意したいのが、等級が引き継がれない場合があることです。
基本的に自動車保険は保険会社を変更したとしても等級はそのまま引き継がれます。現在契約している保険会社の等級が17等級なら、変更期間内に引き継いだ他の保険会社でも同様に17等級からスタートできます。
しかし、例外として一部の共済から他の保険会社に乗り換える際は等級を引き継げないケースもあります。そのため、共済から自動車保険に乗り換えを考えている時には注意が必要です。
契約前に等級の引き継ぎが可能であるか、乗り換える保険会社に確認しておくと安心です。
4つ目に注意したいのが、必要な補償が確保されているか確認することです。
自動車保険の見積もりを依頼すると、どうしても保険料に目がいってしまいがちですが、安い時は自分が必要としている補償内容が外されている可能性もあります。
対人・対物補償、搭乗者補償、車両保険などは基本的な補償内容なので見落とすことは少ないですが、特約に関しては各保険会社によって契約プランが異なるケースも多くなります。そのため、保険会社から提示される契約プランを十分確認することが大切です。
現在の補償内容が分かるように、保険証券や補償内容を用意しておいて比較対象とすれば、見落とすことも少なくなります。
同じ保険会社の更新と比べてこのようなリスクがありますので、確認を慎重に行い、契約をするようにしましょう。
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事業用車両で契約している場合の自動車保険における解約返戻金の仕訳方法
事業使用している車で、自動車保険の乗り換えから解約返戻金を受け取った時に、個人事業主や企業で経理処理を行う際、どのような仕訳を行えば良いのでしょう?
経費削減のために、新しい自動車保険に変更することもあるかもしれません。以下で、具体例を挙げて説明していきます。
自動車保険を年払いで100,000円支払った
自動車保険を解約し、解約返戻金を30,000円受け取った(通帳に入金)
【借方】
支払保険料:100,000円
【貸方】
普通預金:100,000円
※自動車保険を年払いで行った場合は、全額「支払保険料」の勘定科目で仕訳を行います。
【借方】
普通預金:30,000円
【貸方】
支払保険料:30,000円
※自動車保険を解約返戻金で受け取った場合は、支払った保険料の返金として処理されるため「支払保険料」の勘定科目を貸方に計上することで仕訳を行います。
基本的に、支払った保険料については借方に「支払保険料」で計上し、解約返戻金については貸方に「支払保険料」で計上するということを覚えておきましょう。