自動車保険を契約する際、使用目的を選ぶ必要があります。この使用目的の種類によって保険料の金額も違ってきます。
仕事で車を使うという方も多いので、業務使用とはどのような要件になっているのか、保険料は他の使用目的とどの程度差があるのか知っておくことは大事です。
この記事では、他の使用目的と比較しながら業務使用について詳しく解説していきます。使用目的は万一の事故の際に補償されるか否かにも関わってくる重要な項目なので、きちんと理解しておきましょう。
自動車保険の保険料は様々な要素で決まる
自動車保険の保険料は、車の型式や運転者の年齢や範囲、走行距離などの要素によって決められています。車両や運転者の条件は個々のケースによって異なるので、当然保険料も違ってきます。
ただし、交通事故が起きた場合に契約内容が事実と異なると補償されない場合もあるので注意が必要です。また、保険が強制解約となってしまうケースもあります。
そのため、契約途中で契約内容に変更が生じた場合は、速やかに保険会社に連絡しなければならないと決められています。
自動車保険の使用目的について
車の使用目的というのは、自動車保険において契約車両を使用する際の主となる使い方のことです。一般的には、業務使用、通勤・通学使用、日常・レジャー使用の3つに分けられています。
それぞれの使用目的には、使用頻度などの条件があるので以下で詳しく説明していきます。
業務使用は、定期的にかつ継続して車を業務で使う場合が当てはまります。具体的な頻度としては1週間のうち5日以上、1ヶ月のうち15日以上という日数が条件として設けられています。
業務というのは、無報酬で行うボランティア活動は含みません。労働に対し、給与や報酬などの対価が発生する業務に限ります。
また、車のボディに企業名や会社のロゴなどがペイントされている車も業務使用とされます。そして、車両を主に運転する記名被保険者が法人の場合も当てはまります。
業務使用にはあてはまらず、年間を通じて1週間に5日以上もしくは1ヶ月に15日以上の頻度で車を通勤・通学に使用する場合は、通勤・通学使用となります。
通勤は業務形態に関係ないので、正社員でも、パートやアルバイトでも同じです。また、通勤通学する本人が運転していなくても、家族が職場や学校まで車を使う場合は通勤・通学に含まれるので注意してください。
ただし、電車で通勤、通学するために最寄り駅まで本人を送迎する場合は目的地までの使用ではないので、通勤・通学には含まれないとしている保険会社もあるので確認しておきましょう。
そして、学校とは学校教育法に規定された学校であるため、子供の保育園への送迎は通学に含まれません。
業務使用でもなく、通勤・通学の条件にも当てはまらない場合の車の使用目的は日常・レジャー使用となります。
買い物や病院への通院、子供の習い事への送迎、週末のレジャーにおける遠出やドライブなどが当てはまります。
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使用目的によって保険料は異なる
自動車保険に使用目的の条件が設けられているのは、使用目的によって保険料が違ってくるからです。
それぞれの使用目的では、車を使用する頻度や予想される走行距離も異なります。
業務使用の場合だと、1日中仕事で車を走らせている場合もあるので、他の使用目的よりも走行距離が多くなります。また、通勤・通学もほぼ毎日のように車を使うことが多いので、運転の頻度が高くなるでしょう。
走行距離が多いほど、また運転の頻度が高いほど交通事故の発生率、遭遇率が高くなると言えます。そうなると、自動車保険を使う機会が増え、事故の程度によっては補償額も大きくなるので、保険会社としても支払いのリスクを抱えていることになります。
万一の事故の際の補償負担を考慮し、保険会社側も使用目的別で保険料を設定し、金額に差をつけているのです。
使用目的ごとの保険料を比較
3つの使用目的のうち業務使用は運転頻度が高く、走行距離も多くなるため交通事故の発生リスクが高くなります。そのため、保険料は一番高い傾向にあります。
次いで高いのが通勤・通学使用、一番安いのが日常・レジャー使用になります。
保険料の金額差は各保険会社によって違いがありますが、一般的に年払いで業務使用と通勤・通学使用の差額は3,000円~5,000円ほど、業務使用と日常・レジャー使用の差額は5,000円~7,000円ほどです。
業務使用の保険料が高い理由について
業務使用の保険料が高い理由は、社員が仕事で車を使用することになるため運転者が限定されていないことが多く、運転に不慣れな人は交通事故を起こすリスクが高いからです。
さらに、どうしても走行距離が多くなるため、車を長く、頻繁に走行させているのと同様に交通事故のリスクも高くなると言えます。他にも、商品を積んでいると事故で破損した際の補償が高くなるからといった理由も挙げられます。
業務使用は、会社が所有している社用車も含まれます。社用車は社員が営業先に出向く場合などに使われます。1台ずつ特定の社員に使わせているケースや、数台の車で複数人の社員が運転するというケースが多いでしょう。
社員の中には、毎日のように運転している、運転経験が長いなどの理由で運転に慣れている人もいますが、一方で免許取りたての人や普段は公共交通機関しか使わないのに仕事の時だけ車を使用するため運転に不慣れな人もいます。
運転者の運転技能に差が生じる場合が多いため、交通事故の発生リスクも運転者によって違ってくるでしょう。
保険会社は交通事故の発生率が高い場合に重点を置く必要があるため、不特定多数の運転者がいることを考慮し、あらかじめ保険料を高く設定しています。
営業などの業務使用で車を使う場合、顧客先を回るため車の使用頻度も高くなると共に、走行距離も多くなる傾向にあります。近距離を走行する場合であっても、車の使用回数が増えればそれなりに走行距離も伸びるでしょう。
また、出張などで遠方の取引先に出向くなど都道府県をまたぐ遠距離移動になる場合もあるので、当然走行距離も多くなります。さらに、高速道路を使う機会も増えるでしょう。
車を使用する頻度が高く、走行距離が多い、高速道路を使うとなるとやはり交通事故のリスクは高くなります。そのため、業務使用は他の使用目的に比べると保険料が高めになっているのです。
業務使用の車は会社に勤める社員が複数名で共有するため、運転者が定まっていない場合が多いです。1日中業務で走り回っていることもあるので、走行距離も多い傾向にあります。
通勤・通学使用も目的地の場所によっては走行距離が多くなりますが、基本的に運転する人は本人か家族なので限られています。
また、日常・レジャー使用は車を使う頻度は高くても近距離の移動になる場合が多く、業務使用と比べると走行距離は少ないです。
トータルで考えると、使用目的の中で業務使用が一番交通事故の発生リスクが高いと言えます。
交通事故が度々起こり、自動車保険を使って補償を賄っていれば保険会社の利益率も下がります。そうならないように、交通事故の発生リスクが高い使用目的は保険料を高く設定してあるのです。
業務に使用する車は、会社の商品を積んでいるケースも多々あります。交通事故に遭遇して車が破損し、運転者や同乗者がケガを負うのみならず、積載物である会社の商品なども破損する可能性があります。
積載物の破損に関しては、積載物動産特約などの特約をつけることで、保険会社からの補償が受けられる場合もあります。特約はオプションなので、付帯するかどうかは契約者の判断に任されるものです。
ただし、特約を付帯したとしても商品の価値によっては補償が多額になる可能性もあります。事故に遭遇すると積載物が破損するリスクが高い業務使用の場合、保険料の金額に影響を及ぼしていると言えるでしょう。
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業務使用でも保険料を安くする方法
使用目的が業務使用となると、どうしても保険料が高くなります。少しでも保険料を抑えるためには、運転者をできる限り絞り、年齢を限定しておくことが大事です。
また、走行距離によっても保険料は変わります。走行距離がかさみやすい業務使用では、走行距離区分指定のない保険を選ぶのもポイントになるでしょう。
他にも業務に使用する頻度を抑え、業務使用の要件に当てはまらないようにするなどの工夫もできます。
保険料は運転者の年齢によっても変わってきます。若い人は運転経験が浅く運転技能が未熟だと判断され、高齢者は身体能力や認知機能が低下してくるので、運転技能に不安を感じる方も多いでしょう。そのため、一般的に保険会社では20歳以下もしくは60歳以上の人は特に交通事故のリスクが高いとしています。
保険契約では運転者の年齢条件を「全年齢」「21歳以上」「26歳以上」と分けている所が多いです。そして、年齢条件がない全年齢補償が一番保険料が高く、26歳以上が一番安くなっています。
業務使用では、年齢差がある複数人が運転するとなると全年齢の補償にしなければならず、保険料が高くなります。そのため、運転者を26歳以上の人に絞るなどして決めておくと、保険料を抑えることもできるでしょう。
自動車保険は走行距離が区分けされており、走行距離が多いほど保険料が高くなっています。ただし、走行距離の区分けがされていない自動車保険もあります。
業務使用だと営業や商品の配達などで、ほぼ1日中走行しているでしょう。そのため、どうしても走行距離が多くなってしまいがちです。
そこで、走行距離の区分けがない保険を探して加入すれば、走行距離を心配せずに乗ることができます。また、走行距離を多めに設定せずに済むので、結果的に保険料の節約になるでしょう。
車を業務用として使う頻度を減らすことで、使用目的が業務使用から外すことができる場合もあります。
例えば、開業医が週に3回ほど往診で車を使い、週末は家族で買い物やレジャーに出かけるというケースです。この場合、業務使用は週に3回のみで通勤・通学にも使用していないので、使用目的は日常・レジャーに設定できます。
また、同じように個人商店で週に4日配達などで車を使い、それ以外は買い物などの日常使いをしている場合も当てはまるでしょう。
業務で使用するにしても業務使用の条件を満たさない程度に使用回数を減らすことで、保険料をある程度抑えることができます。
使用目的は告知事項かつ通知事項でもある
車の使用目的は、契約時の告知事項、契約後の通知事項となっています。
告知事項とは、事故による損害発生の可能性に関する項目のことで、保険会社が契約の申込書で告知するよう求めてくる内容です。
通知事項とは、告知事項のうち契約後に変更が生じたら速やかに保険会社に伝えなければならないとされている項目のことです。
使用目的が日常・レジャー使用で保険契約をしていたけれど、たまたま通勤・通学途中で交通事故に遭ってしまった場合、保険金が下りるのでしょうか?
その場合、車を使う頻度が週5日以上もしくは月15日以上という通勤・通学使用の要件より使用頻度が低ければ、契約違反とはなりません。
例えば、週に3日、月に12日程度アルバイト先に行くのに車を使った場合などは、使用目的外の使用中の事故でも、保険金が支払われます。
実際は仕事で週に5日以上もしくは月に15日以上車を使っているのに、業務使用にすれば保険料が高いからと日常・レジャー使用で契約するとどうなるのでしょう?
業務中に交通事故に遭っても、たまたま仕事に使っていただけと保険会社に虚偽の申告をすれば分からないと思うかもしれません。しかし、実際に事故が起こると保険会社は補償を行ってもよいか、何か契約上不審な点がないか実態調査を行います。
保険契約に関するプロが徹底的に調べるので、使用目的外での使用は明るみに出ます。結果的に保険金が下りない可能性もあるので、気を付けましょう。
告知事項や通知事項は保険会社の保険料の算出に大きく影響を及ぼし、保険金を支払うか否かの判断を下すカギとなります。
もし保険会社に対し、契約者が故意もしくは重大な過失により契約時に虚偽の使用目的を告知した場合、保険金が支払われない可能性もあります。さらに、虚偽の告知が発覚した場合は保険契約自体を強制解約されてしまいます。
また、契約途中で使用目的が変更になった場合も速やかに通知しないと通知義務違反となり、同様に事故の際に補償されない、強制解約となってしまうので気を付けましょう。
使用目的が変わったら速やかに保険会社に連絡を!
自動車保険契約では、通知事項に変更が生じたら速やかに保険会社に伝えなければならないと決められています。
契約時に告知した使用目的が、契約中にライフスタイルの変化などで変わることがあるでしょう。例えば、契約時はパートで週3回車を通勤に使っていたけれど週5回に増やした場合や、契約中に車を業務使用するようになった場合などです。
こういった際は、使用目的を変更しておかないと万一の事故の際に補償されない可能性もあるので要注意です。
また、通知事項には他にも車の用途車種、ナンバーの変更なども含まれるので確認しておきましょう。