自動車保険には、保険契約を解約時に中断できる制度があります。その際に保険会社より発行されるのが「中断証明書」です。
中断証明書を発行しておけば等級が維持できるというメリットがありますが、詳しく知らないという方も多いでしょう。
また、中断証明書には有効期間が設けられており、期限が来るまでに保険を再契約しなければ等級はリセットされてしまいます。
この記事では、中断証明書の詳しい有効期間や有効な活用法などを紹介していきます。
中断証明書は等級を維持できる制度
自動車保険の等級というのは、保険料の割引率や割増率の区分のことです。
事故により保険を使えば等級が下がり、保険料が高くなります。逆に無事故であれば翌年の等級が上がり、保険料が安くなる仕組みです。
ただし、事情により車を運転しないため自動車保険を解約すれば、積み上げてきた等級はリセットされてしまいます。そして、新たに自動車保険に加入する際には6等級からのスタートとなるでしょう。
それでは積み上げてきた等級が無駄になってしまうため、自動車保険では中断証明書が発行できることになっています。
中断証明書は、保険解約時の等級が一定期間維持できるというものです。中断すれば積み上げた等級がリセットされることもなく、保険を再開できるのでお得です。
中断証明書の有効期間について
中断証明書には有効期間が設けられているので、確認しておくことが大事です。
中断というのは自動車保険を解約するか、満期を迎えるタイミングで行うことになります。自動車保険契約中に、契約を継続させたまま中断することはできないので間違えないようにしましょう。
中断できるのは車を売却、譲渡、廃車など手放した時など条件が決められています。また、車を所有していても長期に海外渡航する場合は中断が可能となり、海外特則として決められています。
そのため、中断の起点となるのは、自動車保険の満期日や解約日、海外渡航の際は出国日です。
自動車保険は期間を決めて契約するため、満期を迎えると契約終了となります。
契約期間は長期にすることも可能ですが、自動車保険の場合は1年契約が多いです。その場合は1年ごとに満期日を迎えて、契約が終了となります。
満期日までの1年間に保険を使わなかった場合や使っても等級ダウン事故に該当しなければ、満期日を境にして等級が1つ上がる仕組みになっています。
そして、一般的に満期日までに更新手続きをして保険を継続させるか、やめて別の保険会社に乗り換えるかを判断しなければなりません。
自動車保険を中断する場合、満期日に併せて手続きすることができます。その場合、満期日の翌年から10年間が中断証明書の有効期間となります。
自動車保険の契約期間満了を待たずに、途中で解約することも可能です。自動車保険を解約後に中断する際は、解約日の翌日から10年間が中断証明書の有効期間となります。
前年に自動車保険の更新を行う際に、年度の途中で解約や中断するかもしれないならば保険料の支払方法を考慮しておきましょう。
保険料の支払いは、主に年払いと月払いの2つの方法があります。年払いで途中解約すれば、残りの保険期間の保険料も解約返戻金として返金されます。
しかし、解約返戻金は短期率という係数を用いて計算され、月割りで計算するよりも返金額が少なくなるのが一般的です。そのため、保険料は多少割高にはなりますが、中断する可能性があるなら月払いにしておくと損はないでしょう。
留学や転勤などで長期間、海外へ渡航するという方もいるでしょう。自動車保険では長期に渡る海外渡航をする場合は中断証明書を発行することができます。
海外渡航が理由の場合は、有効期間が異なります。その期間は日本を出国した翌日から10年間です。
手続きは出国前に済ましても、出国するまでの期間は有効期間に含まれないことになるので注意しましょう。
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自動車保険を再開する期間について
自動車保険の中断証明書を発行してもらい、中断がスタートしてから再び車を所有して運転するようになる場合もあります。
車を所有して運転するとなると自動車保険に再び加入することになる、つまり再開するための手続きが必要です。
中断後に自動車保険を再開するまでの期間に関しても、決まりがあるので知っておきましょう。
例えば、再開は新たに車を取得してから1ヶ月もしくは1年以内、海外渡航の場合は帰国日から1年以内などと決められています。期限を過ぎると中断証明書が使えずに、自動車保険の新規加入時と同様に6等級からのスタートとなってしまうので注意が必要です。
中断証明書を取得後、有効期間の10年以内に再び車を所有し運転することになれば、自動車保険に加入する必要性が出てきます。
中断証明書の有効期間内であっても、契約の再開は新しい車を取得してから1年以内でなければなりません。
つまり、新しく車を取得してからしばらく乗らないにしても、1年以内に中断証明書を使って自動車保険を再開させなければ中断証明書は無効になってしまうので気を付けましょう。
長期間の海外渡航における中断証明書の取得の場合、海外赴任が10年以上にも及んだ場合は、中断証明書は使えません。
また、10年以内に帰国したとしても、帰国日から1年以内に自動車保険を再開しないと、同様に中断証明書は無効となります。
帰国後にすぐに車を運転しないにしても、1年以内に自動車保険を再開させないと積み上げてきた等級はリセットされてしまうので気を付けましょう。
妊娠により車の運転を控えるという方もいるでしょう。車に乗らないなら、自動車保険の保険料を払い続けるのはもったいないです。
妊娠による自動車保険の中断を認める「妊娠特則」を設けている保険会社もありますが、条件が決められています。
妊娠による中断は二輪車に限定している保険会社がほとんどなため、残念ながら自動車には適用されません。また、有効期間は中断日から3年間と短い保険会社もあります。
妊娠を理由に自動車の中断をする場合は、車を手放すなど通常の条件を満たさなければなりませんが、有効期間を10年確保できるので、検討してみましょう。
中断証明書の再発行は期間を要するので注意
自動車保険の中断証明書を使って再開する際に、中断証明書を紛失してしまったことに気づく方もいるでしょう。引っ越しや海外渡航などで、荷物を移動させた際に紛失するケースは少なくありません。
自動車保険を再開するには中断証明書が必要となるので、再発行の手続きをしなければなりません。
まず、保険会社に連絡を入れて中断証明書の再発行依頼書を送ってもらい、必要事項を記載してから返送します。
中断証明書は書類が保険会社に到着してから約1~2週間で再発行されると言われています。保険会社への連絡から再発行まではトータルで3週間前後はかかると見ておいたほうが良いでしょう。
特に保険を再開する直前に紛失に気づくと、中断証明書の有効期間や再開の期限までに間に合わない場合もあります。早めに中断証明書の所在を確認し、必要なら再発行手続きをしておいてください。
車を手放してから自動車保険の解約後、もしくは満期を迎えてから中断証明書を発行していないという方もいるでしょう。
中断証明書の存在を知らなかった、もしくは時間がなくて手続きできなかった場合などが当てはまります。そういった方も、諦めるのはまだ早いです。
解約後や満期日の直後に中断証明書を発行していなくても、解約日もしくは満期日から起算して5年以内ならまだ発行することができます。そのため、保険会社に連絡して確認してみましょう。
解約日や満期日から起算して、5年ではなく13ヶ月以内と短い期間を設定している保険会社もあります。
5年だと思い込んでいて、中断証明書の発行手続きを後回しにしていると、間に合わない可能性もあります。そうなると、無事故で積み上げた等級が無駄になってしまいます。
加入している保険会社の中断証明書の発行可能期間がどの位なのかも早めに確認しておくようにしましょう。
中断証明書の有効期間をカウントする際に注意したいのが、いつから有効期間が始まるかという始期日です。
始期日は、中断する日ではなく、正確には中断日の翌日から数えて10年間となります。つまり、保険の解約日や満期日からではなく、その翌日から10年間なので間違えないように気を付けましょう。
また、長期間に海外渡航する場合は出国日の翌日が始期日となります。
中断証明書を申請してから手元に届くまでの期間は、保険会社によって異なります。
まず加入している自動車保険の保険会社に連絡して、必要な書類を送ってもらいましょう。届いた書類に必要事項を記載してから返送します。
前述しましたが、中断証明書は書類が保険会社に到着してから約1~2週間で発行されると言われています。書類の記入漏れなどがあると訂正に時間を要し、もう少し日数がかかることもあるので、余裕をもって申請しておきましょう。
保険の解約日や満期日を経過してからでも中断証明書の発行は可能ですが、新たに車を購入して中断証明書の発行、再開を行う場合は注意が必要です。
中断証明書は申請から発行までに時間を要します。そうなると、新たな車を購入して実際に通勤や通学などに使うタイミングに中断証明書の発行と保険の再加入手続きが間に合わない可能性もあります。
例えば、新車を購入してから中断証明書が発行できることに気づき、申請しても納車や通勤で使う日が発行よりも前だった場合です。
中断証明書を使い、高い等級で自動車保険を再開したいとなると、発行されるまで車の運転を控えなければなりません。一方で、保険未加入のまま運転すればリスクが高くなります。
中断証明書の発行にかかる時間を頭に入れて、新たな車を購入するタイミングを考えましょう。
中断証明書の有効期間の活用法について
中断証明書には「10年」という比較的長い有効期間があります。中断証明書を発行しておくと、今後活用できる時が来る可能性もあるでしょう。
例えば、自分が10年もあれば今は車が不要でも、必要となって所有する機会があるかもしれません。
また、等級は配偶者や同居の家族に引き継げます。中断する時に等級が高ければ、子供にその等級を引き継がせれば保険料を抑えることも可能です。
また、事故を起こして保険を使うと等級が下がる場合もあります。配偶者や同居の家族も車を運転する以上、いつ事故を起こすか分かりません。等級を引き継がせたほうが良いという状況に備えて、中断証明書を取得して等級を維持しておくと安心です。
中断証明書は、自分が使わなくても家族に引き継がせて再開させることが可能です。ただし、引き継がせられる家族には条件があります。
自動車保険を再開させた際の新たな契約の記名被保険者と車の所有者が、旧契約の記名保険者や車の所有者と同居している親や配偶者、子供または配偶者の親などの親族であることが条件です。
親族でも同居が条件となるので、例えば子供に引き継がせる場合は同居している間に手続きを済ませることがポイントです。
特に子供が運転免許を取得して車を購入し自動車保険に加入する際は、新規の登録だと6等級からのスタートとなります。その上、年齢が若いと保険料は高くなる傾向にあるため、保険料支払いの経済的な負担も大きくなります。
しかし、親が中断した自動車保険を子供に引き継げれば高い等級からのスタートとなるので、保険料の負担軽減に役立つでしょう。
同居の家族が既に車を所有して自動車保険にそれぞれ加入しており、等級もそれなりに高い場合は中断証明書を取得しても意味がないように思うかもしれません。
しかし、今後の事故により等級が下がるリスクを考えたら、念のために中断証明書を取得しておいて損はないでしょう。
例えば、中断する保険の等級が12等級で、同居の子供も自動車保険に加入済みで同様に12等級だったとします。交通事故が起こり、保険を使えば翌年の等級は3等級もしくは1等級下がります。
もし3等級下がるとなると一気に9等級にまでダウンします。その上、事故歴ありとなしでは割引率が異なるため、同じ9等級でも保険料が高くなるのです。
事故で等級が下がった場合、中断しておいた親の等級を引き継ぐことで保険料アップを阻止することができます。
中断証明書を取得し、有効期間内に再開する場合は前契約と同じ保険会社と再び契約しなければならないという決まりはありません。
保険料や補償内容などをよく吟味して、より保険料が安くて手厚い補償を受けられる保険会社に再開する時に乗り換えることも可能です。
車を手放さずに自動車保険を解約し、他社に乗り換えたいというケースもあるでしょう。
自動車保険の保険料や補償内容などを見直すと、よりお得で手厚い補償が受けられる保険会社に変えたいという方も多いですが、ただ単に他社へ保険を乗り換えたい場合は、中断証明書を発行する必要はありません。
ただし、保険の解約日から7日以内に次に保険会社との契約を結ばなければ等級が引き継げないので注意しましょう。
また、乗り換えのタイミングは保険の満期日に合わせると損が少なくて済みます。
保険を使わなければ、満期日のタイミングで等級が1つ上がりますが、満期日より前に解約や乗り換えを行うと、等級はその乗り換えた日の1年後に上がることになるので少し損をすることになります。
前の保険の満期日と新しい保険の乗り換え日を同日にすれば空白の期間もなくなり、安心できます。ただし、保険期間を1日でも重ねることはできないの気を付けましょう。
自賠責保険の名義変更は必要あるの?手続きの仕方も教えます!