友人など他人の車を借りて運転する際に事故を起こしても、自動車保険が使えるのか確認しておくことはとても重要です。
友人の車を運転中に事故が起きてしまうということは、可能性として十分考えられます。その際に自動車保険が使えないとなると、莫大な賠償金を自己負担することになってしまうでしょう。
自動車保険は補償条件や対象などが決まっており、他車を運転中の補償に関しても特約として備えができるようになっています。
この記事では、万一に備えて、他人の車を運転する際の自動車保険の補償について詳しく見ていきましょう。
他人の車に対する自動車保険の扱いとは?
自動車の事故は、車同士の衝突や当て逃げ、単独事故、車と歩行者の事故など様々なケースがあります。また、事故を起こしたのが契約車両以外の場合や運転者が名義人ではない場合などもあるでしょう。
全てのケースで自動車保険が適用されるとなると保険会社の利益が出ないため、自動車保険で補償できる範囲というのは細かく決められています。
中でも他人の車を運転中に事故を起こしたという場合、自動車保険の基本補償ではカバーできないケースが多いとされていますが、補償対象者の範囲や特約付帯の有無によっては補償される場合もあるので、きちんと理解しておきましょう。
自動車保険の名義について
自動車保険を契約する際は、3つの名義があることをまず知っておきましょう。
1つ目は保険に加入する「契約者」です。保険料の支払い義務を負っています。
2つ目は保険の補償対象となる「車の所有者」です。車検証の所有者に記名されている人となります。
3つ目は「記名被保険者」です。契約車両を主に運転する人のことで、保険の補償の中心となります。
通常は自分で車を所有し、自動車保険を契約して契約車両を主として使うというパターンが多いですが、中には親や祖父母が所有の車を子供や孫が主として使うケースもあります。
その場合、車の所有者や記名被保険者は子供や孫で、自動車保険の契約は親や祖父母が行い保険料を支払うというパターンもあるので、3つの名義人は全て同一人物ではないこともあるでしょう。
自動車保険において、保険の契約者と車の所有者は同一人物であることが一般的です。
例えば、親名義の車を子供に使わせ、自動車保険に加入した時の保険料を親が負担する場合、保険の契約者と車の所有者は親で、記名被保険者は子供にするなどのケースがあります。
また、保険の契約者と車の所有者が異なる場合もあるでしょう。保険会社では配偶者や同居の親族の名義であれば、自分以外の名義の車を契約車両として自動車保険に加入することは可能だとされています。
つまり、配偶者や同居している親から車を譲渡してもらい、保険だけ自分で加入する場合が当てはまります。この場合は、記名被保険者と契約者が同一で、車の所有者が別人物ということになります。
車の所有者が友人や知人などの家族や親族ではない場合は、全くの他人の車ということになるため、車を契約車両として自動車保険に加入することはできません。
友人などから車を購入・譲渡された場合、まずは名義変更をして所有者を自分に変えてから自動車保険の加入手続きを行うことになります。
友人の車の名義変更や自動車保険の解約、自分が自動車保険に加入する流れやタイミングについては、友人が加入している保険会社に問い合わせてから行いましょう。
友人などの他人名義の車を購入もしくは譲渡する際に、車のローンの支払いがまだ残っているケースもあります。
ローンを組んでいれば、車の名義は友人ではなくローン会社や車の購入先であるディーラーになっている可能性が高いです。
車検証の所有者、使用者の記載を確認しましょう。友人が所有者ではなく使用者なら、売却や譲渡の権利を有していないのでできません。
通常はローンの返済が終わってから本人へ名義変更され、売却や譲渡が可能となります。
ただし、近々ローンを完済する予定であれば、名義変更をしていなくても車を購入するもしくは譲渡される自分名義で保険契約が可能な場合もありますので、保険会社に確認してもらいましょう。
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他人の車を自分が運転中に事故が起きた場合について
友人が所有する車を友人が運転して出かけ、途中で自分が運転を代わるという場合もあるでしょう。また、車が必要だけど所有していないので、友人などに車を借りて運転するという機会も日常生活の中でよくあります。
このように自分が他人名義の車を運転する時、交通事故を起こした場合は自動車保険で補償されるとは限りません。保険が使えないと損害賠償を請求された際に全て自己負担で支払わなければならず、経済的な負担が大きくなります。
ここからは、他人の車を運転中、同乗中の事故において自動車保険が使えるのかどうか確認する項目を詳しく説明していきます。
自分が他人の車を運転している時に事故に遭い、損害が生じた場合に自動車保険が使えるかは、車を貸す側、つまり友人などの他人が加入する保険の運転者の範囲が限定されているかがポイントです。
自動車保険の契約では、運転者を限定することで保険料を抑えることができます。
運転者の限定は、以下の3つに分けられます。
- 保険契約の記名被保険者のみが補償される「本人限定」
- 記名被保険者と配偶者のみが補償される「本人・配偶者限定」
- 記名被保険者と配偶者、その同居の親族のみが補償される「家族限定」
保険証券を確認し、この3つのどれかに運転者が限定されている場合は、自分が他人の車を運転する際の事故における損害は保険で補償されないので注意が必要です。
車を貸す側、つまり友人などの他人が加入している自動車保険の運転者が限定されていない場合は、誰が運転していても事故が起きた時は自動車保険で損害が補償されます。
ただし、運転者の限定がないと保険料が高くなるので、事情がない限り保険料を抑えるために運転者を限定しているケースが多いのが現状です。
他人の車を借りて運転する際に、他人が加入している自動車保険が運転者限定なしで使えたとして、事故の際に保険で補償してもらうとしましょう。そうなると、その人の自動車保険の等級に影響してきます。
自動車保険は事故で保険を使うと翌年の等級がダウンする場合があります。事故の形態がノーカウント事故ならば、等級には影響しませんが、等級ダウン事故に該当する場合は、1等級もしくは3等級のダウンとなります。
等級は保険料の増減に関わってくるので、1等級下がるだけでも前年よりも保険料が高くなり、友人に金銭的な負担をかけることになってしまうでしょう。
自賠責保険の補償は被害者の身体への損害のみなので注意
自賠責保険は法律で加入が義務付けられている強制保険なので、必ず加入しているでしょう。
自賠責保険の補償対象は、契約車両を運転中であれば誰が運転していても事故の際の損害は補償されます。しかし、その補償範囲には注意が必要です。
自賠責保険は交通事故の被害者救済のための保険で、事故の相手方が死傷した場合のみの補償となります。つまり、対人賠償のみであり、相手や自分の車、建物などの破損や同乗者、運転者が死傷した場合の補償は対象外です。
また、対人賠償の金額も少なく、自賠責保険のみで事故の補償をカバーしきれないことが多いです。
他車運転特約の補償範囲について
他車運転特約は、補償対象者や補償対象となる車両が決められています。該当しない場合は特約を付帯していても使えません。
事前に自分が対象者に含まれるか、他人の車は対象車両に該当するかを確認しておくことが大事です。
また、他人の車を使用するといっても、日常的な使用は特約の補償条件とならないので注意しましょう。
他車運転特約を契約している場合の補償対象者は、以下になります。
- 記名被保険者
- 記名被保険者の配偶者
- 記名被保険者もしくは配偶者の同居の親族、別居の未婚の子
さらに、補償対象車両となる「他人の車」とは、家族や親族ではない友人や知人などの車であることが条件です。
つまり、記名被保険者やその配偶者、記名被保険者もしくは配偶者の同居の親族が所有もしくは主として使用する車ではないことを意味します。
また、車が自家用8種に該当しなければ他車運転特約の補償対象とならないので注意しましょう。
自家用8種とは、以下の車種のことになります。
- 普通乗用車
- 小型乗用車
- 軽四輪乗用車
- 軽四輪貨物車
- 小型貨物車
- 最大積載量5t以下の普通貨物車
- 最大積載量0.5t超2t以下の普通貨物車
- 特殊用途自動車(キャンピングカーなど)
また、用途は全て自家用でなければなりません。
他車運転特約の補償内容は、自動車保険の基本補償の内容と同じです。
- 事故の相手方の身体に対する損害をカバーする「対人賠償」
- 相手方の車や他人の建物、ガードレールなどの損害をカバーする「対物賠償」
- 運転者や車の同乗者の身体に対する損害をカバーする「人身傷害保険」
- 事故で車が破損した場合の修理費用をカバーする「車両保険」
車両保険は借りた車の時価額を限度額とした車両保険に加入していれば補償されます。また、補償範囲が限定されたタイプの車両保険だと補償されないこともあるので注意しましょう。
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他車運転特約の対象外になってしまう場合について
他車運転特約は補償内容や条件などが決まっており、対象外となるケースもあるので気を付けましょう。
例えば、同居の親族は他人には含まれないので、同居の親族の車を運転中の事故は対象外です。
さらに、停車中や駐車中の事故、業務における運転中の事故も他車運転特約の補償は受けられません。
他車運転特約の「他車」というのは、家族ではなくても同居の親族の車は該当しません。
例えば、同居している叔父の車を借りて運転中に事故を起こした場合は、他車運転特約を付帯させていても補償対象にならないこととなっています。
逆に、実家に帰省中に別居の妻の親が所有する車を借りて運転中に事故を起こした場合は、家族でも別居しており、日常的に親の車を使ってはいないので特約の補償対象となります。
他車運転特約における「運転」というのは、実際に車を運転している、走行させている時に限ります。そのため、車に乗っていてエンジンをかけてはいるけれど動いていない、停車や駐車中の事故は補償に含まれないので注意が必要です。
例えば、駅のロータリーで電車通学の子供を迎えに来て停車中に車をぶつけられた場合などが当てはまります。
ただし、保険会社によっては補償対象としているところもあるので確認してみましょう。
ちなみに踏切や信号待ち、道路幅が狭くて対面から相手が走行してすれ違うのを待っている時などは停車からは除外されるので、事故が起きても補償されます。
他人の車を業務のための運転中に事故を起こした場合は、他車運転特約の対象外です。
例えば、整備工場で車の修理を依頼されているお客さんの車を運転中に事故を起こした場合、他人の車にはなりますが業務使用中の事故なので、自動車保険では補償されません。また、運転代行や配達なども業務に含まれます。
一方で、いつもは仕事で使っている会社の車を休日にプライベートで借り、運転中に事故を起こした場合は、業務外での使用となります。そのため、補償対象車両などの条件を満たせば自分の保険の他車運転特約が使えます。
ただし、無断で借りた場合や自分が会社役員を務める会社名義の車の場合など補償されないケースもあるので、確認しておきましょう。
車を貸し借りする場合は「1日自動車保険」に加入しておこう
車を貸す側も借りる側も自動車保険が使えない場合や、等級が下がるので保険を使いたくないという場合は、1日単位で利用できる1日自動車保険に加入するのがおすすめです。
保険会社によって保険料や補償内容は多少異なりますが、1日500円からといったリーズナブルな価格で万一の事故に備えることができます。
また、スマホやパソコンなどから手軽に簡単に手続きできるので、加入しておくと安心です。
他人の車に同乗中に事故があった場合の補償について
運転はしなくても、友人などの他人の車に乗せてもらうという機会もあるでしょう。その場合、もし交通事故に遭遇してケガをしたら保険で補償されるのか気になるかもしれません。
他人の車の同乗者が受けた損害についての補償は、「人身傷害保険」や「搭乗者傷害保険」でカバーできる場合があります。
ただし、加入するタイプによっては補償対象や補償内容が異なるので、きちんと内容を理解し把握しておくことが大事です。
他人の車に同乗中に事故に遭いケガをした時は、他人の自動車保険において、人身傷害保険や搭乗者傷害保険に加入していれば補償が受けられる場合があります。
人身傷害保険は、自動車事故で運転者や同乗者が死傷した際の損害を補償する保険です。補償の範囲はケガの治療費や精神的損害に対する慰謝料、ケガにより就業できなかった期間の収入などを換算した金額になります。また、事故の過失割合に関係なく、実際の損害の損害分が全て補償されます
搭乗者傷害保険は、搭乗している全ての人の死傷が補償の対象になります。しかし、人身傷害保険とは違って、ケガの部位や症状別に支払われる金額が決まっています。
自分の自動車保険における人身傷害保険のタイプによっては、他人の車に同乗中の事故でも補償を受けることができる場合があります。
人身傷害保険には、「契約車両に同乗中のみ補償されるタイプ」と「契約車両以外に同乗中でも補償されるタイプ」があります。
後者のタイプに加入していれば、タクシーやバスを含む他人の車に同乗中であったり、歩行中や自転車を運転中の事故なども自分のケガの治療費などに関しては保険を使うことができます。
他人の車を運転、同乗する場合は保険内容に注意しよう
他人の車を運転する、もしくは他人の車に同乗する際は、万一の事故に備えて保険で補償されるか事前に確認しておくことが大事です。
ただし、他人の自動車保険が使えるとしても、等級が下がる事故だと翌年からの保険料が高くなるので迷惑をかけてしまうかもしれません。できれば、自分の自動車保険が使えるように特約などを見直しておきましょう。
また、1日単位で補償が受けられる1日自動車保険への加入も検討してみましょう。必要な時だけ使える保険は、保険料を抑える意味でも有効的な方法だと言えます。