自動車保険は解約もしくは満期が過ぎて更新しないと、契約が無効になります。そうなると、せっかく無事故で保険を使わずに積み上げてきた等級も消えてしまうことになるでしょう。
しかし、自動車保険には保険契約は無効になっても等級が一定期間維持できる中断制度が設けられています。中断には中断証明書の発行が必要ですが、その発行には条件があります。
自動車保険が不要となる時に備えて、中断証明書の発行条件や発行手順、有効期間などを知っておきましょう。
自動車保険は解約すると等級が消える
自動車保険に用いられているのは、事故歴に応じて保険料の増減率を適用する「等級制度」です。
事故を起こして保険により補償を受けると、翌年の等級が1等級もしくは3等級下がります。そのため、保険料が高くなってしまいます。
逆に、事故を起こしても等級に影響のないノーカウント事故により保険を使った場合もしくは無事故の場合は、翌年等級が1つ上がるため保険料が安くなります。
ただし、保険契約を解約し、そのまま新しい保険に加入しなければせっかく積み上げた等級は消えてしまうことになるので注意しましょう。
自動車保険を解約する時は中断証明書を発行しておこう!
自動車保険に加入してから、1年間無事故であれば翌年は1等級上がります。無事故のまま数年が経過すれば、等級が大分高くなっているでしょう。
車を廃車したり、売却してもう乗らない場合、保険契約を解約すれば、等級はそこでリセットされてしまいます。そのため、もしもう一度車を所有し、保険に加入することになっても、以前の高い等級で契約することはできません。
しかし、自動車保険には中断制度があります。これは保険の満期や解約に伴い手続きを行って中断証明書を発行することで、中断時の等級が一定期間維持できるというものです。
中断証明書を取得しておけば、保険を再契約する場合も中断当時の等級をそのまま引き継ぐことができます。
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中断証明書が発行できる条件
中断証明書の発行には、保険の解約日や満期日までに満たしていなければならない条件があります。
まず自分の手元に車がない状態であることがポイントになります。また、車があっても既に公道で走行できない状態であることも条件となります。
ここからは、中断証明書が発行できる条件について詳しく説明していきます。
自動車保険の満期日や解約日までに車を所有していないことが、中断の条件の1つとなっています。
車を廃車にして手続きも済んでいる、他人に譲り渡している、中古車買取業者などに売却が済んでいる状態が当てはまります。
車のリース契約をしていて、リース車に乗りながら万一に備えて自動車保険に加入しているという方も多いでしょう。その場合は、リース契約が終了もしくは解約し、リース車を業者に返還する手続きが終わっていなければ中断の手続きを行うことはできないので注意しましょう。
車で公道を走行するには、車検を受けて合格していなければならないと法律で規定されています。つまり、無車検車や車検期限が切れた車は公道を走行できず、事実上運転することはできません。
自動車保険の中断は、車検の有効期限が切れており、新たに車検を受けていない状態というのも条件となっています。
車が盗難に遭い、手元にない状態もいつ戻ってくるか分からないので自動車保険の中断の理由になります。
また、大雨や台風などによる水害で車が水没してしまう、火事で燃えてしまうといった災害による滅失も車が実質的に使えない状態になるので中断の条件に当てはまります。
盗難や災害の場合、次の車を所有するのに時間を要する場合も多く、しばらく車を運転できない状態になるケースもあるので中断の手続きをしておくことをおすすめします。
車の抹消登録には、一時的に車が公道を走行できないようにするため車の登録を停止させる「一時抹消登録」と、廃車にして永久的に車の登録を消す「永久抹消登録」があります。
自動車保険の解約日までに、どちらかの抹消登録の手続きが完了していれば中断することができます。
一時抹消登録を行うとナンバープレートを返納するので、車があっても公道を走行することができません。ただし、再び車を運転するために再登録すれば、自賠責保険や自動車保険を再契約することができます。
中断証明書が発行できる等級の条件について
中断証明書の発行には、中断時の等級が7等級以上でなければなりません。また、中断前に事故で保険を使って等級が下がる場合、下がった等級が7等級以上でないければならないという条件もつけられています。
ここからは、中断証明書が発行できる等級の条件について詳しく説明していきます。
自動車保険を中断する時点で、解約日や満期日までに等級が7等級以上でないと中断する意味がありません。その理由は、自動車保険を新規で加入すると6等級からのスタートとなるからです。
そもそも中断のメリットは、中断時点の高い等級が一定期間維持できるという点です。もし中断時点で6等級なら新規契約したとしても同じなので中断する意味がありません。
交通事故により受けた損害を保険を使って補償すると、翌年の等級が下がる場合があります。その場合、等級が下がるまでに中断してしまえば問題ないと思う方もいるでしょう。
しかし、中断前の事故により保険を使った場合でも、等級が下がった状態が7等級以上でないと中断することができないので注意しましょう。
例えば、中断前に9等級だったとして、その後に3等級ダウン事故を起こして保険を使うと3等級下がって6等級になります。そうなると中断の条件を満たさないため、手続きをすることはできません。
妊娠や重度な傷病、海外渡航する場合は中断証明書を発行できる?
中断証明書の発行条件は、身体の状態に関するものもあります。妊娠中や記名被保険者が重度のケガや病気により、継続的な運転ができない場合、保険の中断をすることはできるのでしょうか?
また、海外渡航するため長期間、車を運転しない場合も中断手続きは可能なのでしょうか?
ここからは、妊娠や重度な傷病、海外渡航する場合に中断証明書を発行できるのか、詳しく見ていきます。
妊娠したので念のため運転を控えようと考える方もいるでしょう。また、医師の安静指示により、しばらく運転できないというケースもあります。
妊娠を理由とする中断は保険会社によっては認められています。しかし、車種が決まっていて、原付や二輪車に限るとしている場合がほとんどです。そのため、自動車は妊娠を理由として中断できないので、気を付けましょう。
自動車保険の記名被保険者が、重度なケガや病気により一定期間、車を運転できない場合、中断できる保険会社もあります。
重度な傷病に関しては、どのようなケガや病気であるか具体例は示されていませんが、医師の判断によるとされています。
この条件を採用している保険会社は少ないですが、もし条件に当てはまれば車を所有した状態で自動車保険を中断できます。そのため、再開する時はよりスムーズに車の運転に戻れるでしょう。
自動車保険では、海外渡航を理由に中断証明書を発行することができます。これを海外特則とも言います。
海外特則の場合、自動車保険の契約者または記名被保険者が、保険の解約日や満期日から遡り、6ヶ月以内に海外へ渡航することが条件となっています。
等級は海外に出発した翌日から10年間維持されます。そして、帰国した日の翌日から1年以内に自動車保険の再開手続きを行えば等級を引き継ぐことが可能です。
ただし、海外特則は観光などの短期滞在ではなく仕事や留学などの長期的な理由での渡航でなければいけないので注意が必要です。
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中断証明書の発行に必要な書類
中断証明書を発行するのに必要な書類もチェックしておくことをおすすめします。
まず、保険会社から郵送される「中断証明書取得依頼書」が挙げられます。この書類に必要事項を記入しておきましょう。
さらに、中断の条件を満たしていることを証明する書類も準備しなければなりません。
- 車を売却や譲渡している場合は「売買契約書」
- リース車を返還している場合は「リース契約書」
- 車を廃車している場合は、車検証の内容が記載されている「登録事項等証明書」または、一時抹消登録を行った際に交付される「登録識別情報等通知書」
- 車検切れの場合は「車検切れの車検証や軽自動車検査証」
これらの他にも、盗難の場合は警察へ届け出なければなりません。届出受理番号を聞いておき、保険会社の盗難証明書などに記入して提出する必要があります。
保険会社によって提出が必要となる書類が異なる場合もあるので、確認しておきましょう。
中断証明書を発行する時の流れ
中断証明書の発行の流れは、とてもシンプルです。
まず、保険会社に中断したい旨の連絡をすると、中断証明書取得依頼書が郵送で届くので必要事項を記入します。
そして、中断理由を証明する必要書類を準備して中断証明書取得依頼書と共に保険会社に返送しましょう。書類に不備や記入漏れがあれば、返送される場合もあるので注意が必要です。
後は保険会社側が書類を確認して手続きを行い、中断証明書が郵送で届くという流れになっています。
中断証明書が届くのにかかる期間は、一般的に申請から2週間前後とされています。
また、中断証明書は解約日や満期日から13ヶ月もしくは5年以内なら発行することができます。
中断証明書の有効期間は、自動車保険の解約日や満期日の翌日から10年間と決められています。
また、長期に渡る海外渡航の場合は出国日の翌日から10年という期限が設けられています。
ただし、中断証明書を使って保険を再開する場合は、中断証明書の有効期間以外にも、新たな車を取得した日から1ヶ月もしくは1年以内に手続きをしないと中断証明書が無効になってしまいます。
また、海外渡航の場合は帰国日から1年以内に保険を再開させないといけないので注意しましょう。
車を手放すなどの理由で自動車保険の解約、もしくは満期となって更新しなかったけれど、中断証明書を取得していなかったというケースもあるでしょう。
時間が経ってしまっても、中断証明書は解約日や満期日から5年以内であれば発行することが可能です。ただし、保険会社によっては発行可能期限が13ヶ月となっている場合もあるので注意が必要です。
この発行可能期間については、加入していた保険会社に確認しておきましょう。
自動車保険を中断するメリットとは?
自動車保険を中断すると色々なメリットがあります。
それは、中断時の等級を10年間維持することができるということ。また、維持した等級は自分で使わなくても、配偶者や子供など同居の親族に引き継ぐこともできます。
中断の手続きは簡単で費用もかかりません。自動車保険を再開する際は前契約と同じ保険保険会社にする必要はなく別の保険会社を選ぶこともできます。
何かと便利な自動車保険の中断について、そのメリットを以下で詳しく説明していきます。
中断のメリットは、やはり中断時の等級を10年間も維持できるということです。
等級は保険料を決める要素となり、1等級高いか低いかで保険料の割増率も変わってきます。中断時に高い等級であれば、保険料も割引されて安くなっているでしょう。
解約や満期により自動車保険が無効となり、再び加入するとなれば6等級からのスタートとなってしまいます。せっかく積み上がった等級がリセットされるのはもったいないので、高い等級を維持できる中断制度を活用しておいて損はないでしょう。
自動車保険を中断する時の高い等級は、自分だけでなく家族に引き継ぐことができるのも大きなメリットの1つです。
自分が今後車を所有し運転することがなくても、例えば子供が近い将来運転免許証を取得して車を所有すれば、自動車保険に加入することになります。新規加入は6等級からとなり、さらに年齢が若いと交通事故のリスクが高いとみなされ、保険料が高くなってしまうでしょう。
こういった場合に親の中断時の等級が高ければ、子供に引き継ぐことで保険料をかなり抑えることができます。
また、今は家族がそれぞれ自動車保険に加入して等級も上がっているので引き継ぐ必要がなくても、今後交通事故に遭遇して保険を使う機会があるかもしれません。事故により等級が下がる可能性も考慮すると、中断証明書を発行しておいたほうが安心でしょう。
中断証明書の発行依頼は、保険会社のホームページなどのサイトからでも簡単にできます。
ある保険会社のサイトでは、自動車保険を解約する際に解約の手続き後に中断証明書の発行を希望するという項目を選べば申し込むことができます。後は中断証明書発行依頼書が郵送されてくるので、必要事項を記載して返送するだけです。
簡単に24時間いつでも手続きができ、手続き自体もシンプルなので面倒はありません。その上、発行手数料などもかからずに無料なのも魅力と言えます。
自動車保険の中断証明書を発行してもらい、その後自動車保険に再加入の必要が出てくる場合もあるでしょう。その際は、中断手続きをした保険会社とは別の保険会社と契約することも可能です。
つまり、再開時は自分で新たに保険会社を探し、条件のよい所と契約できるというメリットがあります。
中断時の保険会社よりも補償が充実しており、保険料も安いところを探して選べれば保険料の節約にもつながります。
また、夫婦や家族で同じ保険会社に揃えるということも可能なので、同じ保険会社にすれば更新手続きなども効率よくできるでしょう。その上、ノンフリート多数割引などの保険料の割引制度も利用できるのでおすすめです。
中断手続きをしておけば損はない!
中断手続きは自動車保険の解約などの手続きと同時にできる上に、すぐに中断の申請をしなくても期限内であれば遅れて中断証明書を発行することもできます。
10年間はとりあえず中断時の等級が維持できるので、発行しておいて損はありません。むしろやっておけばよかったと後悔することにもなりかねないので、自動車保険が不要になったら中断証明書を発行しておきましょう。