長期休暇などで実家や親戚の家に行き、車を運転する機会があるかもしれません。その際、自分が運転しても親族の自動車保険が適用されるか不安に思うこともあるでしょう。
自動車保険がどのような補償内容になっているかで、補償されるかされないかは変わってきます。
この記事では、別居の親族が運転する場合の自動車保険の補償について、運転者限定特約の視点から詳しく解説していきます。
自動車保険における「同居」と「別居」
自動車保険における「同居」と「別居」については、一般的な感覚と異なるため気を付けましょう。
同居することは、同一家屋に住んでいることを意味しており、住民票に記載されている状況で判断されることはありません。
例えば、住民票は同居になっている子供が大学進学のため地方に住んでいるケースでは、住民票を移していない状態であっても別居として扱われます。
また、構造上は同じ敷地内にある家屋であっても、二世帯住宅になっておりキッチンなどを共有していない状態であれば、別居扱いになることもあります。
つまり、同居は「生計を同一にしているかどうか」「扶養関係の有無」「住民票記載の有無」は関係ないと言えます。
ただし、同居や別居については各保険会社によって細かい差異がありますので、不安な時は保険会社に問い合わせると良いでしょう。
運転者限定特約について
自動車保険には、対人・対物賠償補償や車両保険など事故を起こした時に補償される内容とは別に「特約」というものがあります。
その中で保険料が変動しやすい「運転者限定特約」について、どのような内容なのか知っておくと自動車保険を正しく利用することができるでしょう。
ここからは、運転者限定特約について詳しく解説していきます。
本人限定特約は、運転者の補償範囲を記名被保険者本人のみにする特約のことです。
本人限定特約は、運転者限定特約の中でも最も割引率が高い特約です。車を運転するのが自分だけであれば保険料を抑えることができるため、本人限定特約にすることをおすすめします。
しかし、本人限定特約は運転者の範囲を自分のみとするため、当人以外が運転中に事故を起こした場合は、自動車保険の補償を受けることができません。
もし他の人に自分の車を運転してもらうケースが多い場合は、本人限定特約をつけないほうが安心です。
本人・配偶者特約は、運転者の補償範囲を記名被保険者本人とその配偶者に限定する特約のことです。
配偶者の定義は原則「法律上の婚姻をしている夫婦」ですが、保険会社によっては事実婚・内縁関係でも補償を受けることができる場合があります。
内縁関係を証明するには、一緒に住んでいる事実を住民票で行う方法があります。保険会社によっては一緒に住んでいる期間が3年以上を目安にしているところもあるようです。しかし、各保険会社によって判断基準が異なる部分なので契約前に確認しておくと良いでしょう。
家族限定特約は、運転者の補償範囲を「家族だけ」に限定する特約のことです。血縁関係があれば、自分の親や配偶者の親といった同居している親族であれば補償対象となります。
ちなみに、親族の定義は「6等身内の血族」「3親等内の姻族」を指します。血族は血縁関係にある人のことで、姻族は婚姻によって親戚関係になった人のことです。
具体例を挙げると、記名被保険者のいとこの場合は4親等の血族になるため、自動車保険の補償対象になります。また、配偶者の叔母や叔父の場合も3親等の姻族になるため補償対象となります。
ただし、家族限定は「同居」が条件になりますので注意しましょう。
運転者限定なしは、運転者の補償範囲が年齢問わず友人や知人も含めて補償されます。そのため、自分の車を様々な人が運転するという場合は、運転者限定なしにすると良いでしょう。
しかし、運転者を限定していないため保険料は高くなります。誰が自分の車を運転しても、自動車保険の補償を受けられるからです。
運転する人が増えれば、その分事故のリスクも上がります。そのため、保険料が高くなることは知っておきましょう。
本人・配偶者特約や家族限定特約といった運転者を限定した場合には、「年齢条件特約」を組み合わせることも可能です。その際は、一番若い運転者の年齢に合わせて年齢条件を選ぶことが大切です。
運転者の年齢によって事故のリスクが異なるため、どのような年齢の人が車を運転するかで保険料が変動します。
年齢条件が適用されるのは、次の方が対象です。
- 記名被保険者(契約している車を主に運転する方)
- 記名被保険者の配偶者
- 記名被保険者とその配偶者の同居している親族や子供
別居している親族や子供は年齢条件の対象になりません。
一般的に年齢条件は、全年齢対象、21歳以上補償、26歳以上補償、35歳以上補償があります。保険会社によっては、さらに年齢が細分化しているケースもありますので、事前に確認しておきましょう。
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家族限定特約の補償範囲について
ここまで、運転者限定特約についてお伝えしてきました。
しかし、家族限定特約の補償範囲について分かりにくい点があるかもしれません。どのケースであれば補償を受けられるのか知っておいたほうが安心です。
ここからは、家族限定特約の補償範囲について、ケース別に詳しく解説していきます。
運転者年齢条件を26歳以上に設定した場合、妻が25歳であれば補償はされないので注意しましょう。
運転年齢条件を26歳以上にして、家族限定特約にしたとしても、妻は26歳になるまで補償を受けることができません。そのため、今回のケースでは運転者年齢条件を21歳以上補償にすることで妻も補償を受けられるようになります。
ポイントは、家族限定特約に運転者年齢条件も追加する際、家族の運転者で一番若い方の年齢を基準にすることです。
運転者年齢条件を35歳以上に設定した場合、別居する21歳の子供(未婚)は、結論から言えば補償されます。
家族限定特約は「別居の未婚の子供」に限り、運転年齢条件に関係なく補償を受けることができます。
年齢条件が35歳以上になっていても、21歳で未婚(婚姻歴のない)の子供であれば、年齢条件を問わず補償されます。そのため、地方に進学して帰省した未婚の子供は、家族限定特約があれば、車を運転しても補償を受けられる点は知っておくと良いでしょう。
運転者年齢条件を26歳以上に設定した場合、同居する27歳の子供(既婚)は、結論から言えば補償されます。
結婚した子供と同居している場合、年齢条件については同居家族内の運転者で一番若い人に合わせる必要があります。それにより年齢条件が26歳以上になっているため、27歳の既婚の子供であれば補償を受けることが可能です。
子供が結婚していても同居しているのであれば、家族限定特約を適用できます。年齢条件の設定が間違っていなければ、補償を受けられることになります。
運転者年齢条件を26歳以上に設定した場合、別居している27歳の子供(既婚)は、結論から言えば補償されません。
家族限定特約は「別居で未婚の子供」が補償対象になるため、別居している既婚の子供に関しては、年齢条件に関係なく事故を起こした時に補償を受けることができません。
ちなみに未婚とは、婚姻歴がないことを指します。そのため、離婚歴のある子供に関しては未婚ではないため補償対象にならないということになります。
先述しましたが、婚姻歴のない別居の子供については年齢条件が適用されないため、年齢に関係なく補償を受けることができます。この違いについては覚えておくと良いでしょう。
2017年5月に、損害保険料率算出機構が算出している参考純率で「家族限定」に関する契約方式が廃止されました。それによって、各保険会社でも2019年1月から家族限定特約を廃止しているケースも増加しています。
家族限定特約の廃止になる要因として、ライフスタイルや世帯構成が変化している点が挙げられます。
この特約が導入された1970年代は二世帯・三世帯の家庭は多く存在していました。しかし、近年は単身世帯や核家族化が進んでいます。
同居の親族や別居する未婚の子供のみ対象にする家族限定特約はニーズと合わず、契約数の減少にもつながっています。そのため、保険会社としても家族限定特約を取り扱わないケースが多くなっています。
その一方で、本人限定特約は増加傾向です。運転者が本人のみであれば、割引率も高く設定されているので保険料を抑えることが可能です。
車の使用状況に応じた特約選びをすることで、自分に合った補償範囲にすることができます。その点も考慮しながら自動車保険を選ぶと良いでしょう。
別居している親族が補償を受けるためには?
通常は運転者限定特約にしているが、自分の車を別居している親族が運転する場面もあるかもしれません。その際は、補償を受けられるのか確認しておくと安心です。
頻度が多くなくても、万一に備えて確認しておきましょう。
ここからは、別居している親族が自動車保険の補償を受ける方法について詳しく解説していきます。
別居している親族が補償を受けられるようにする1つ目の方法は、使用する時期に「運転者限定なし」に変更することです。
変更の際は、保険会社に連絡をして手続きを行っておきます。その場合、保険料を追加して支払う必要があります。
基本的に保険料は、本人限定が一番安く、運転者限定なしが一番高いです。そのため、保険料の差額を支払うことになるでしょう。
帰省時などで1ヶ月程度の変更であれば、わずかな差額分で済むことが多いです。しかし、使用しなくなった後は運転者限定特約の設定を元に戻しておきましょう。忘れてしまうと、余計に保険料を支払い続けることになります。変更後の手続きは忘れずに行ってください。
2つ目の方法は、「1日自動車保険」に加入することです。
1日自動車保険とは、1日(24時間)単位で加入できる自動車保険のことです。友人や知人の車を借りて運転する時や実家に帰省をして親の車を運転する時など、他人の車を借りて運転する場合に利用することができます。
1日自動車保険は他人の車を運転することが前提で作られた保険ですので、自分や配偶者が所有している車やレンタカー、会社所有の社用車を運転する時は加入できません。
そのため、加入条件は自分や配偶者以外が所有する「自家用普通乗用車」「自家用小型乗用車」「自家用軽四輪乗用車」が対象となります。
1日自動車保険の補償内容については保険会社によって異なりますが、概ね以下のような補償を受けられます。
- 対人賠償保険
- 対物賠償保険
- 搭乗者傷害保険
- 車両保険
- 自損事故傷害特約
- 弁護士費用特約
- ロードアシスト
基本的に対人・対物賠償保険は、どの保険でも含まれています。それ以外の補償に関しては、状況に応じて加入しておくと安心でしょう。
申し込みは、インターネットやコンビニから加入することができます。保険料は保険会社によって変動はありますが、800円ぐらいです。
月に数回しか車に乗らないのであれば、一般的な自動車保険に比べて、お得な保険料で安心して運転ができるでしょう。
3つ目の方法は、「ドライバー保険」を利用することです。
ドライバー保険とは、車を運転することはあるが、車を所有していない方を対象にした自動車保険のことです。
ドライバー保険を利用することで、他人の車を借りて運転する時に補償が受けられるようになります。そのため、借りた車の自動車保険の契約内容に関わらず、事故を起こした際はドライバー保険を使った補償が受けられます。
ドライバー保険は、記名被保険者が以下の車を借りて運転した際に補償が受けられます。
- 自家用普通乗用車
- 自家用小型乗用車
- 自家用軽四輪乗用車
- 自家用小型貨物車
- 自家用軽四輪貨物車
- 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下)
- 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下)
- 特殊用途自動車(例:キャンピングカー)
- 二輪自動車
- 原動機付自転車
記名保険者や配偶者、同居の親族が所有する自動車に関しては補償対象外になります。
1日自動車保険と異なるのは、キャンピングカーやレンタカーなどの車を運転した時の事故も補償してもらえる点です。
しかし、レンタカーは運営する会社が保険や補償制度を用意しているため、一般的に利用料金に含まれています。レンタカーを利用する際は、この保険を使うことはないかもしれません。
契約期間は通常の自動車保険と同様、原則1年になっており、等級制度や年齢条件によって保険料が変動します。
ドライバー保険は概ね以下の補償を受けることが可能です。
- 対人賠償保険
- 対物賠償保険
- 搭乗者傷害保険
- 人身傷害保険
基本補償として、どの保険会社で契約しても対人・対物賠償保険はつきます。しかし、他の車を借りて運転することが前提になっているため、ドライバー保険は車両保険には加入できません。
そして、ドライバー保険で等級が上がっても、車にかける自動車保険として等級の引き継ぎができない点にも注意が必要です。