車を廃車にする機会はあまりないため、突然事故を起こした場合にどう車を処理すればいいのか分からないと悩む方は多いでしょう。
この記事では、事故車を廃車として処理する流れと手続きに必要な書類の揃え方、手続きの注意点について解説します。
修理が難しい事故車は廃車が必要
事故車は破損が少ないなら修理すべきですが、全損や著しい破損なら廃車手続きをして乗り換えたほうがよいこともあります。
しかし、車の廃車手続きはお金と手間がかかります。ただ手放すからといって、無料で引き取ってくれるわけではありませんし、手続きの労力もかかります。
廃車手続きは、自分で済ませるか業者に依頼して確実に行いましょう。
事故車を廃車手続きする方法
事故車の廃車手続きは、個人で手続きする方法と専門業者に依頼する方法があります。
ここからは、その2つの方法について詳しく説明していきます。
個人の廃車手続きは、書類の用意や記入、解体の依頼を自分で行わなければなりません。必要書類の用意はほとんど即日で発行できますが、解体に関しては数日必要です。
たとえ車のパーツや改造に詳しい人であっても、個人での車両の解体はリサイクル法で禁止されているため、解体は必ず解体業者へお願いしましょう。
廃車専門業者や買取店の場合、車両の解体から手続きまで一括で代行してくれます。
費用は業者によって様々ですが、レッカー車の手配や代行手数料など各種費用を合わせて相場は2万円〜8万円です。
なお、無料で代行してくれる業者も稀に見られますが、サービス内容に書類代行が含まれていなかったり、解体場まで車を自分で持っていく必要があったりするため作業範囲の確認が欠かせません。
廃車手続きを業者に依頼する場合の流れを解説
廃車手続きを業者に代行してもらう場合、必要手順は以下のとおりです。
- 代行業者を選定・申し込みする
- 市役所等で必要書類を準備する
- 業者へ必要書類を提出・車を引き取ってもらう
個人の廃車手続きと違い、流れは非常にシンプルです。ただし、代理申請用の委任状や譲渡証明書など、必要書類が個人の場合と異なります。
ここからは、廃車手続きを業者に依頼する場合の業者選定と必要書類について説明します。
まずは、お住まい地域の周辺で廃車手続きを代行してくれる業者を探しましょう。
廃車手続きに対応している業者は「ディーラー」「中古車販売業者」「廃車専門業者」などがあります。
通常、個人で手続きするには手間がかかりますが、代行業者なら手続きの手間を大幅に短縮してくれます。ただし、業者選びには注意しなければなりません。
例えば、廃車専門業者なら車両を買い取ってもらえますが、中古車販売業者やディーラーだと車両の買い取りをしていないところがほとんどです。
廃車専門業者は「できるだけ費用を抑えたい」という方におすすめです。車の買取額を、代行費用にあてられるため、車種や車両の状態がよければ代行費用と相殺、場合によっては収支がプラスの可能性もあります。
ただし、買取といっても中古車の状態で売却するより査定額はグンと落ちます。廃車の査定は「車」ではなく、使えそうなパーツや資材だけ売却する「資源」として数えられるためです。
一方、中古車買取業者やディーラーを選ぶ利点は「乗り換えがスムーズ」な点です。例えば、車通勤や郊外暮らしの方は、車がなければ普段の生活に支障をきたします。特に突然の事故だと、買取査定をいちいち待ってはいられないはずです。
「急を要する」そんな方は、廃車手続きと同時に車の乗り換えができる中古買取業者やディーラーをおすすめします。即購入とまではいかなくとも、代車を立ててくれるのもポイントです。
そのほか、代行業者選びで共通の選定ポイントとして、以下の点に注目しましょう。
- 対応が丁寧
- 費用の内訳が明記されている
- 解体から手続きまで対応してくれる
お住まい地域によって業者の選択肢は異なります。あまり遠方の業者に依頼するとレッカー車の手配にかかる費用が増えるため、できるだけ近場で探すのが賢明です。
業者を選定し代行手続きの申し込みが完了すれば、手続きに必要な書類を用意しましょう。
もともと廃車は、所有者しかできない手続きです。業者に代行手続きしてもらう場合は、委任状や印鑑証明書など正式な代理申請を証明する書類が必要です。
業者に依頼する際は、以下の書類を用意しましょう。
- 車検証
- ナンバープレート
- 名義人の実印
- 名義人の印鑑証明書
- 名義人の押印がある委任状
- 名義人の譲渡証明書
手続き用の申請用紙の記入や提出は業者が代わりにやってくれます。ただし、市役所で発行が必要な本人確認書類に関しては代行してもらえないので注意しましょう。
廃車手続きを個人で行う場合の流れを解説
廃車手続きを個人で行う手順は、以下のとおりです。
- 市役所で必要書類を準備
- 解体業者の選定・解体の申し込み
- 必要書類一式を持ってお住まい地域の運輸局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)にて各種申請用紙へ記入・提出
- 手続き完了後、契約した保険会社へ連絡し自賠責保険を解約
ここからは、廃車手続きを個人で行う手順と必要書類の揃え方について解説します。
個人手続きの場合、解体業者へ車の解体を依頼しなければなりません。
解体は主に解体工場で請け負っており、費用相場はおよそ1万円〜2万円といわれています。ただし、解体業者によってスクラップ費用が異なるうえ、レッカー手配が有料かどうかで費用は変動します。
解体業者が行ってくれる作業は以下の2つです。
- 車体の解体作業
- 車体パーツの引き取り
解体業者が請け負っているのは、あくまで解体と車体パーツの引き取りに限ります。車は手元からなくなりますが、廃車手続きが終わったわけではありません。
車検の登録情報を抹消して自動車税や自賠責保険の支払いを止めるには、運輸局(軽自動車なら軽自動車検査協会)で手続きして、自賠責保険を契約している保険会社へ連絡する必要があります。
解体業者で車体を解体すると「解体報告記録」と「使用済自動車引取証明書」がもらえます。この2点は後の永久抹消登録の手続きに必要なため、大切に保管しましょう。
永久抹消登録とは、自動車登録を完全に削除する手続きです。永久抹消登録が完了すると自動車の維持にかかる各種税金がストップし、場合によっては自動車税や自動車重量税の還付が受けられます。
永久抹消登録の手続きには、以下の書類が必要です。
- 車検証
- ナンバープレート2枚
- 自動車リサイクル券
- 手数料納付書(手続きの場所にて入手可能)
- 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 名義人の実印
- 各種申請用紙(手続きの場所にて入手可能)
- 解体報告記録
- 使用済自動車引取証明書
なお、軽自動車の永久抹消登録は「解体返納」と呼びます。必要書類は普通自動車とあまり変わりませんが、印鑑証明書が不必要である点と、手続き場所が軽自動車検査協会である点に注意しましょう。
ちなみに、永久抹消登録は例外として解体なしでも登録が可能です。参考までに、永久抹消登録には「解体」と「滅失・用途廃止」の区分があり、用途廃止を選んだ場合は車の解体が不要です。その代わり、車両は手元に残ります。
もし、廃車した後に車両を物置やコレクションとしてガレージに置いておくなら「用途廃止の区分」で永久抹消登録しましょう。
個人の手続きで一番時間がかかるものは必要書類の用意です。本人確認書類や印鑑証明書の発行はもちろん、申請用紙も複数枚記入します。各書類の入手先もバラバラで、市役所・解体工場・運輸局、場合によっては警察にも行かなくてはなりません。
また、他人名義の車を廃車にする場合や、車検証と本人確認書類で記載情報が異なる際は、名義変更手続きや別の証明書類が必要です。
友人から譲ってもらった車や車の購入後に住所・名字の変更があった方は、先に車検証の情報を確認しましょう。
事故車のうち廃車が必要な基準は?
事故車といっても、故障の程度によって廃車手続きの可否が分かれます。
例えば、衝突事故で車の一部分が歪んだとしても、走行可能なら廃車手続きではなく修理すべきです。しかし、歪みが走行不可能なほど激しい場合や、重要パーツが破損した場合はこの限りではありません。
ここからは、事故車のうち廃車手続きすべき車について、ケース別で解説します。
台風や豪雨、津波など災害による水没の場合、浸水の程度によって廃車の可否が分かれます。
もし浸水がタイヤまでなら、あまり問題はありません。
マフラーまで浸水が及ぶと修理可能なケースとそうでないケースにわかれます。なお、エンジンをかけると故障する可能性があるため、無理に走行せず修理業者を手配しましょう。
ドアまで浸かる規模の場合、修理での復活は難しいでしょう。水が電気配線にまで及ぶためエンジン自体が駆動しませんし、動いたとしても残った水がサビを発生させ、大変危険です。
車が水没した場合はドアまで浸水したなら廃車手続きを、マフラーまでなら一度専門業者に判断をお願いしましょう。
衝突事故や転倒など大きな事故で車両が全損した場合、基本的に修理より廃車手続きが賢明な判断です。
貴重な車か相当思い入れがある車でない限りは、新しく買い替えたほうがよいでしょう。
フレームは車のパーツでも特に重要な部分です。フレームの修理は破損の程度によって異なりますが、数十万円~と相当な修理時間がかかります。修理規模によっては買い替えたほうが早いケースも珍しくありません。
また、フレームの修復歴は、事故車の定義に該当するため中古車として売却するときに大きなマイナス要素です。店舗によっては買取拒否される可能性も十分あり得ます。
廃車にするか否かは、修理費用と車両価値の減少を比較して判断しましょう。
ビンテージカーやクラシックカーと呼ばれる年式の古い車は修理用のパーツの廃盤によって修理できない可能性があります。大きな事故の場合、修復は難しいと考えましょう。
修理用パーツの有無は車の年式や破損部位、店舗の品揃えによって異なります。古い車で事故を起こした場合、基本的に廃車を視野に入れておきましょう。
事故の影響で精神的に不調を起こす場合は廃車手続きで手放すことも大切です。車に乗る度に不安になったり症状が出たりする場合は新しい車を検討しましょう。
もしも自分で手続きできる状態ではないなら、代行業者や親族、知人に代理申請してもらいましょう。
事故車の廃車手続きで知りたい注意点
廃車を決断する際は、車検証上の所有者名義が自分であるかどうかとローンの有無を確認してください。心当たりがある場合、すぐに廃車手続きができない可能性があります。
ここからは、廃車手続きの注意点について紹介します。
廃車手続きは、原則として車検証上に記載されている所有者しか行えません。
代理で手続きしてもらうにしても、委任状や譲渡証明書など代理申請を証明する書類が必要です。代行業者へ依頼する場合も同様の書類を用意しなければなりません。
ローン返済中の事故で全損した場合、運転者の都合で勝手に廃車手続きはできません。なぜなら、ローン返済中の所有者はディーラーやローン会社で登録されているからです。
運転者はローンを完済して初めて車の所有権を得られます。もしローン返済中に全損した場合は、ローン残高を一括返済するか、返済期間まで支払いを続けるしか選択肢はありません。
ローン会社によっては融通を利かせてくれるところもあるため、廃車手続きをする際は一度相談してみるとよいでしょう。
「廃車手続きを済ませたら終わり」ではなく、事故の再発防止に努める姿勢も重要です。
なぜ事故が起きたのか、どうすれば同じ事故が防げるのか、対策して次の運転に備えましょう。
例えば、ドライブレコーダーを取り付けておけば、相手と事故の過失割合で揉める心配が減ります。また、安全性の高い車ならケガを最小限にとどめられるでしょう。
事故は自分だけでなく、相手を傷つける可能性もあります。廃車を通して対策を講じ、次の運転に備えましょう。