事故で車が軽く接触した際、見た目に大きな損傷がなければ修理に出さずにそのまま運転し続ける方もいるでしょう。
しかし、事故に遭った場合はどんなに軽微なものでも一度車を点検に出すことをおすすめします。自分では気づいていない箇所に破損があり、走行しているうちに重大な事故につながる可能性があります。
車はメンテナンスを適切に行わなければ自分だけでなく周囲の方を巻き込む可能性もあるため注意が必要です。
この記事では、事故車を走らせたい場合に点検せずに乗るリスクについてと適切な対処法を解説します。
事故車はすぐに修理に出そう
車の事故はできれば遭遇したくないですが、運転している限り可能性はゼロではありません。そのため、車を所有する方は常に「もしも」を想定して運転することが大切です。
万が一、事故にあった場合は事故処理を行った後に車を点検に出しましょう。事故の際に軽く衝突した程度だと凹みもなく問題ないと考えられますが、念のためディーラーや修理業者にチェックしてもらうと安心できます。
問題ないと思っていても、実はバンパーが外れかけていたり、サビの原因になる傷が隠れている可能性もあります。
事故車は修理に出すべき?
ここからは、事故車を運転する前に修理すべきかどうかを紹介します。
結論として、どんなにささいな事故であっても点検に出しましょう。取越苦労になる可能性もありますが、命を守るために必要です。
事故を起こしたり巻き込まれた場合はまず、警察や救急車を呼んで初期対応を行います。警察が到着したら事故現場の検証や聞き取りが行われます。
事故処理が一通り終わったらそのまま帰宅したいところですが、ディーラーや修理会社に事故の連絡を入れましょう。また、万が一修理が必要な場合は自動車保険の手続きも必要なため、保険会社にも連絡します。最初に関係各所に連絡すると、修理が発生した場合に早めに対処してもらえます。
事故に遭った際はパニックになったり、あまり頭が働かない状態になる可能性が高いですが、修理業者と保険会社に連絡しておくと、自分ではわからない適切な対処方法をアドバイスしてくれます。そのため、普段から修理業者と保険会社の連絡先が分かる状態にしておきましょう。
万が一、整備不良の状態で車を走行させてしまった場合は、たとえ気づいていなかったとしても罰せられる可能性があります。
道路交通法第62条では道路運送車両法に定められた保安基準に適合しない車両を運転すると「整備不良違反」とみなされる旨の記載があります。
なお、保安基準に適合しない車は車検にも通りません。また、違反になった場合は3ヶ月以下の懲役、または5万円以下の罰金の定めがあり、違反点数も2点です。
整備不良の車は危険が伴うだけでなく、法律違反にもなるため注意しましょう。
整備不良の車とは?
ここからは、具体的に整備不良にあたる車の例を紹介します。
整備不良の基準は目に見える状態のものから、自動車整備士をはじめとした専門家がチェックしなければ判断できないものもあるため、個人での判断は避けましょう。
タイヤが摩耗していたり切れたりしていると整備不良と判断されます。
事故で急ブレーキを踏んだ場合や、衝突してタイヤが摩耗している可能性もあります。
タイヤの損傷は見極めが難しいため「問題ないだろう」と判断して乗っているうちに損傷箇所が広がり、バーストすることもあるでしょう。
また、タイヤの摩耗はブレーキの効きが悪くなったり、走行が不安定になったりするため、点検で確認したい項目です。
クラクションが破損している場合も整備不良に該当します。
事故の衝撃でクラクションの部品が壊れたり、配線に問題が起こったりしている場合は万が一の時に活用できず新たに事故を起こす可能性があります。
クラクションは他のパーツと比べてあまり鳴らす機会がなく、問題ないように感じますが、重要なパーツのため修理を行いましょう。
事故の衝撃でライトが割れている場合も整備不良に該当する可能性があります。
ライトが割れており、かつ点灯しない状態では無灯火と判断され、整備不良どころか無灯火運転で罰則の対象になります。また、ウィンカーがうまく点滅しない場合も歩行者や他の車に危険が及ぶことから修理が必要です。
ライトの破損は修理で済むため買取査定に影響はありません。安全な走行のためにも早めの修理をおすすめします。
オイル漏れが起こっている状態も整備不良です。
オイル漏れの原因は事故の衝撃の他、パッキンの劣化も挙げられます。なお、オイル漏れは他の液漏れと区別がつきにくいため、漏れている液体の色で見極めましょう。
- 透明の場合…排水
- 緑色や赤色の場合…冷却水
- 黒っぽい色や茶色の場合…オイル漏れ
- 桃色の場合…ガソリン
オイル漏れやガソリンの場合、引火して火災を起こす可能性があるため極めて危険な状態です。できるかぎり早くエンジンを止めて修理を依頼しましょう。車に引火すると大規模な爆発が起こる可能性もあります。
事故車は廃車と修理どちらがいいの?
ここからは、事故車を廃車にするか、修理して乗り続けるかで悩んでいる方向けに、判断基準となるポイントを解説します。
車の状態によっては修復ができず廃車の可能性もあるため、愛車の状態を確認して適切な方法を取りましょう。
事故で車が全損となった場合や水没した場合は廃車にするのが適しています。
例えば、修理に100万円以上かかる場合は状態がよい中古車を購入したほうがよいでしょう。事故車よりも年式が新しい車を購入すると低燃費の車だったり車検まで数年ある有利なものもあります。
車に特別な思い入れがある場合は修復を検討したいですが、乗り換えも一つの選択肢としておすすめです。
事故が原因の破損が軽微で「修理」に該当する場合は修理をすませて引き続き車に乗る選択がおすすめです。
バンパーが割れたりボディが凹んだりした場合は自費や保険を使って修理可能です。ただし、保険を使う場合は一定期間等級が下がり、保険料が割高になります。修理費用を保険で賄う場合は保険と使う場合と、高くなる保険料の差額を比較しましょう。
車の骨格部分から直す場合は修理ではなく修復になります。
骨格部分とは、ピラーやフロア、ルーフパネルなどのフレーム部分を指します。
骨格部分を修復した場合は「事故車」として認められるため、買取時に減額などの影響を及ぼします。
修復歴があると買取で不利になる
ここからは、修復歴がある車を買取査定に出す際、知っておきたい注意点を紹介します。
修復歴があると買取査定では減額されたり、販売時に不利になるため把握しておきましょう。
車に修復歴がある場合は査定の減額対象です。
修復歴以外にも査定における減額項目はいくつかあります。
- エンジンやブレーキなどの機能に問題がある
- 外装や内装に損傷がある
- 改造した形跡がある
- 総走行距離が長い
修復歴だけでなくカスタマイズしている場合も減額対象になる可能性があります。また、業者によっては凹みや傷も減額対象のため、査定時にどこまで含まれるか内訳の確認が欠かせません。
車の査定基準は、一般財団法人日本自動車査定協会の「中古車査定基準」に基づいて決められています。そのため、業者ごとに大きく金額が異なる可能性は低いでしょう。
ただし、事故車の場合は状態によって数万円〜数十万円と減額の幅があるため、現地見積もりで具体的な金額を出してもらうのがおすすめです。
事故車の場合、なかなか買い手が見つからないケースもしばしばあります。中古車を購入するお客様の中には「この車は事故車ではありませんよね?」と確認される方もいます。
高いお金を出して車を購入する場合、できるかぎり状態がよいものや新車に近いものを選びたいのは仕方がないことです。そのため、事故車の場合はネガティブなイメージが先行し、買い手が見つからない可能性があるでしょう。
事故車はそのリスクから販売価格は低めに設定されています。それを考慮して買取査定時も大きな減額が見込まれます。
査定額を大幅に減額されたり、買い手がつきにくいからといって、虚偽報告は厳禁です。
事故車であることを伝えないまま査定、売買契約に進み、次のオーナーが購入してから破損が認められたり、事故が起こったりした場合は責任問題が降り掛かってくる可能性が高いでしょう。
引き渡し後にトラブルを起こさないためにも、事故車の修復歴は必ず伝えましょう。
事故車の処分方法
ここからは、事故車に乗りたくないと感じた方向けに、車の処分方法を紹介します。
大切な車であっても事故の記憶がよみがえることから手放したいと感じるのは仕方がありません。できるだけ費用や手間をおさえて処分する方法を紹介します。
今後、車に乗る予定がない場合は廃車専門業者に依頼して解体してしまう方法があります。
廃車には「永久抹消登録」と「一時抹消登録」がありますが、車を解体する場合は永久抹消登録が該当します。
永久抹消登録は陸運支局や軽自動車検査協会で手続きを行いますが、必要書類が多かったり手間がかかるため、業者への依頼がおすすめです。
なお、廃車はディーラーや中古車販売店でも行えますが、廃車専門業者のほうが費用を抑えて依頼できます。業者によっては車の移動にかかるレッカー代を負担してくれるケースもあります。
今後、車の購入予定がない場合は地域にある廃車専門業者へ依頼しましょう。
まだ車が新しい場合や修理して乗れる状態の場合は買取がおすすめです。
廃車の場合、返ってくるお金は期待できませんが、買い取りの場合は売却費用を得られる可能性があります。
修復歴のある事故車の場合、査定時に数万円〜十数万円と減額されてしまいますが、手元にお金は戻ってきます。次の車を早めに購入したい場合や少しでも資金を残したい場合におすすめの選択肢です。
事故車がどうにもならない状態の場合は自分で解体業者に連絡し、解体・廃車手続きを行いましょう。
解体業者に依頼する場合、車の解体はしてもらえても手続きは自分で行うケースもあります。その場合は解体後にもらう各種廃車証明書と他の必要書類を揃え、永久抹消登録を行いましょう。
なお、車が自走できない状態の場合はレッカー移動が必要です。自分で廃車手続きを行う場合は解体場までレッカー移動する必要があるため、手配を行いましょう。
先に触れたように、事故車を廃車にする場合は永久抹消登録が必要です。
永久抹消登録はまず車の解体を行い、解体を証明する書類を入手したうえで運輸支局や軽自動車検査協会で手続きを進めます。
永久抹消登録に必要な書類は下記のとおりです。
- 印鑑証明書
- 所有者の印鑑
- 代理人が申請する場合のみ
- 印鑑証明書の印鑑(実印)が捺印された委任状
- 対象車の解体報告記録がなされた日や移動報告番号
- 車検証
- 申請書(第3号様式の2と記載があるもの)
印鑑証明書は自治体の役所以外に、マイナンバーを持っていればコンビニでも発行可能です。ただし、発行日から3ヶ月以内と有効期限があるため注意しましょう。
所有者が他の人に手続きを依頼する場合、別途委任状が必要です。委任状や申請書は国土交通省の公式ホームページでもダウンロードできます。
なお、お住まいの地域によっては必要書類が異なるため、最寄りの運輸支局に確認しておいたほうが安心です。
一時抹消登録は転勤や病気などで一定期間車を使わない場合、一時的に公道を走れなくして税金の支払いを止めることができる手続きです。両者の大きな違いは車を復活できるか、できないかです。
事故車を運転する前に考えたいこと
事故車は点検をせずに公道を走れるケースもありますが、万が一の場合は誰かが命を落としたり、今後の人生が変化する可能性があります。
ここからは、事故車を運転する際に考えておきたいことを3つ紹介します。
事故後、車の点検をせずに走行させると再び事故を起こす可能性があります。
例えば、前の衝突事故でタイヤがゆるんでおり高速道路を走った際に外れてしまったり、ライトが事故の衝撃で壊れており無灯火で運転して衝突事故を起こしてしまうことが考えられます。
車両の整備不良は自分だけでなく周囲をも巻き込みます。
例えば、事故の衝撃でウィンカーがうまく作動しなかった場合、通行人が曲がる車に気づかず巻き込まれる可能性があります。また、サイドミラーが外れた状態でバック駐車をしている時に周囲の通行人を巻き込む可能性もあるでしょう。
車の整備不良は自分だけでなく多くの人を危険に晒します。人を巻き込んだ事故の場合、法律で罰せられる可能性も高いため、事故後の整備不良は避けたいものです。
車の整備不良は大切な人を悲しませるかきっかけにもなります。
自分が事故を起こしたり怪我をした場合、家族は不安になったり療養で心配からストレスを抱えます。また、命を落とす最悪のケースでは、家庭が崩壊する可能性もあるでしょう。
事故車を検査せず乗る場合、他の車よりもトラブルのリスクが高いため、家族のためにも必ず点検を行ったり廃車手続きをとったりしましょう。