事故車は世間一般的にネガティブなイメージを抱かれますが、必ずしも選ぶのを避けたほうがいいとは限りません。実は事故車にも個体差があり、実態に比べて割安で販売されているものもあります。

この記事では、事故車がなぜ安いのか、どんなメリットとデメリットがあるのか、事故車の見極めポイントについて解説していきます。

事故車がなぜ安いのか知っておくことが大事

事故車がなぜ安いのか知っておくことが大事
事故車が同条件の中古車より格安な理由は、主に以下の3つが挙げられます。

  • 車両としての価値が低い
  • 事故車に対するイメージが悪い
  • 故障が起こりやすく安全性能が低い

事故車には必ず車両情報に修復歴が記載されています。修復歴とは、車両の骨格部品を修理・交換したことを証明する情報です。

中古車販売においては、販売表示に修復歴を記載することが義務付けられています。したがって、中古車販売店や中古車サイトで明らかに価格が安い車両を発見したら、修復歴の情報が載っていないか確認しましょう。

事故車が安い理由は3つ

事故車が安い理由は3つ
ここからは、事故車が安い3つの理由について深掘りします。

安いからといって、安易に事故車を購入するのは危険です。車は自分の命を預ける大切な乗り物のため、判断は慎重でなければなりません。

1.車両としての価値が低いから

事故車の価格が中古車より格安なのは、もともとの買取額が低いためです。

中古車査定において、修復歴の存在は大幅なマイナス評価を受けます。査定額の下がり幅は修復歴の数や内容によって異なりますが、おおよそ1.5割〜3割程度が相場といわれています。

購入を検討している人の中には「きちんと修理されているなら問題ないのでは?」と、疑問に思う方もいるでしょう。確かに、販売できる程度まで復元しているなら問題ないと考えるのも無理はありません。

しかし、修復歴に当たる車両の骨格部分(フレーム)は、本来換えが難しい部品です。たとえ修理・交換したとしても完全に元に戻るわけではありません。

言い換えるなら事故車は「かろうじて走行できる状態にまで戻した車」ともいえます。したがって、相対的な価値が下がる理由から、事故車は安く販売されています。

2.事故車に対するイメージが悪いから

「事故車」と聞くと、ほとんどの人が悪いイメージを抱くでしょう。事故車が安い理由は、事故車の需要が低いことも挙げられます。

例えば、車の購入予算が十分足りているなら、わざわざ事故車を選ぶ人は少ないでしょう。価格が安くても「なんか危なそうだから」といった理由で事故車を避ける人も少なくありません。

このように、事故車は買取数に対して購入したいと思う人が少ないため、できるだけ買いやすいよう販売側も低価格にせざるを得ないのです。

3.故障が起こりやすく安全性能が低いから

「事故車は買ってもすぐ壊れそう」そんなイメージを抱かれやすいですが、あながち間違っていません。

前述したように、格安で売られている事故車は修理によってかろうじて走行できる状態に戻されています。走行中になんらかの故障や不具合が起こる可能性も0ではありません。

また、修復歴や事故歴がある車は、修復歴の箇所以外にも複数修理してたことが疑われます。修復歴はあくまで骨格部分にあたる修理の証明で、骨格部分以外の修復は原則として記載義務がありません。

もし修復歴が残るほど大きな事故なら、修復歴の箇所以外にもどこか修理が必要だったはずです。車両情報では細かい修理跡や不具合は記載されていないため、走行中に故障するリスクはある程度許容しなければなりません。

事故車を選ぶメリット

事故車を選ぶメリット
事故車は様々な悪い理由から価格が安く設定されていますが、事故車ならではの利点も存在します。

ここからは、中古車購入で事故車を選ぶメリットについて解説します。

初期費用をおさえられる

事故車はほかの中古車よりも圧倒的に低価格です。同条件の中古車と比べ何割か低い価格で販売されているため、初期費用を抑えられます。もし車の購入予算に余裕がない場合は、事故車も視野に入れましょう。

一口に事故車といっても、修理の程度は損傷箇所や規模によって異なります。前述したように、事故車は需要の低さが低価格の理由として挙げられます。しかし、言い換えれば「実態より価格が安く設定されている」ともいえるでしょう。

イメージの問題で価格が下がっているなら、事故車の状態次第ではかえってお買い得です。車両によっては実は損傷が限定的だったり、走行にまったく問題がなかったりするため、車両の情報はよくリサーチしましょう。

運転が苦手でも気兼ねなく乗れる

もし運転していた車をぶつけたら修理や罰金が不安という方もいるでしょう。そんな時に事故車なら、ある程度プレッシャーを下げられます。

事故車は低価格で既に1回修理しているため、運転に対する緊張感を和らげられるかもしれません。車の運転にはプレッシャーが伴うものです。緊張感のおかげで運転に集中できるともいえますが、その緊張感がかえって悪い方向へシフトする方も当然います。

事故車なら軽い擦り程度の傷ならあまり気にしなくてもよいため、比較的安心して運転できるでしょう。ただし、安心が慢心に変わると、気の緩みから思わぬ事故を起こす可能性があります。事故車であっても車は十分危険な乗り物なため、安全運転を心がけましょう。

数年間の利用に最適

次の車までのつなぎとしての役割や出張など、一定期間だけ車が必要な場合に事故車の安さがメリットとして働きます。

事故車なら初期費用を抑えられるため、急な出張や単身赴任で車が急に必要な場合にもハードルが低くおすすめです。

同様の条件ならリースも選択肢として検討されますが、短期リースは費用が高く、期間終了後は車を返却しなければなりません。

一方、事故車は購入価格が安い上、必要な期間が終わったら中古車か廃車として買取に出せます。事故車は数年間だけの利用に最適です。

事故車は買っても良いのですか?
事故車の詳細を熟知した上で購入する分には、なんの問題もありません。事故車は価格が安く初期費用をおさえられるため、予算が足りない方にとっては大きな魅力といえます。ただし、故障のリスクや売却価格の低さなど、事故車のデメリットを理解し、よく検討した上で慎重に判断しましょう。
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事故車を選ぶデメリット

事故車を選ぶデメリット
ここからは、事故車のデメリットについて解説します。

事故車は世間一般的に悪いイメージを持たれやすいため、デメリットについてよく知った上で購入することをおすすめします。

実際のところ事故車はメリットよりもデメリットが多いものです。価格だけでなく、事故車を持つ影響や処分までよく考えて購入しましょう。

ネガティブな印象を持つ人が多い

事故車を買うと、周囲の人から「事故車なんて乗って大丈夫?」「やめといたほうがいいよ」など、否定的な意見を言われる可能性があります。

事故車は骨格部品に修復歴がある車のことですが、事故車の定義について知っている人はそう多くありません。世間一般では「事故で壊れかけの危ない車」の認識なため、事故車に乗っているだけで自身にも悪いイメージを抱かれる可能性があります。

例えば、友人や友人の子供を車に乗せる際「事故車にうちの子供を乗せるのはちょっと…」と言われる可能性も0ではありません。実際、事故車は通常の車に比べて車体の強度が落ちていることがあります。

事故車を買う際は、周囲の人への影響も考慮しましょう。

故障のリスクがある

購入時は問題なさそうに見えても、事故車の場合は運転中に故障するリスクがあります。故障する箇所や損傷具合も予想がつかないため、ある程度修理費がかかることを頭に入れておきましょう。

車は通常、無償で修理してくれる保証期間が存在しますが、事故車の場合は保証期間がないことがほとんどです。したがって、購入直後に故障が発生しても実費で賄わなければなりません。

もし事故車の販売情報に「現状販売」や「現状渡し」と記載があれば、価格が安い代わりに保証や整備がないことを意味します。これは中古車探しにおける落とし穴なので、価格が極端に安い車を見かけたら、この2つの記載がないか確かめましょう。

売却価格が低い

もともとの販売価格が安い事故車は、短期間の使用であっても売却時の高額査定は見込めません。例え使用中に事故を起こしていなくても同様です。

また、使用期間が長い・年式が古い・走行距離が多いなどマイナス要素が重なると、中古車として買い取ってもらえない可能性もあります。この場合、中古車としてではなく廃車として査定されるため、売却額がさらに下がるのは避けられません。

事故車を購入する際は、基本的に売却は視野に入れないのが賢明です。

事故車を購入する際のポイント

事故車を購入する際のポイント
事故車には「状態が相当悪いもの」と「実は状態に大きな問題がない優良なもの」があります。せっかく事故車を選ぶなら、後者を選びたいことでしょう。

そこでここからは、状態の良い事故車を購入するためのポイントについて解説します。

なぜ安いかを業者に確認する

破格の値段で売られている中古車を見かけたら、なぜ安いのか販売店に問い合わせましょう。

修復歴以外にも細かい不具合や保証がないなど、悪い要素が潜んでいる可能性があります。

中古車販売では、原則として修復歴の情報を記載する義務がありますが、修復歴として残るもの以外については、記載義務がありません。販売店によってはマイナスの要素をあえて伏せるところもあるため、購入者が詳細を確認する必要があります。

より確実な情報を知るために「査定表」を提示してもらうのもおすすめです。

査定表とは、プロの査定士が内装や外装の傷や腐食がある部位など車両状態を細かく評価した書類のことです。査定表なら修復歴の詳細も記載されているため、どんな修理内容だったのか確認できます。

試乗してみる

過去の損傷が現状にどれくらい影響を及ぼしているかを確かめるためにも、試乗をお願いしましょう。

事故車の乗り心地は車両情報では分からないため、実際の運転で走行の不具合やハンドリングなど、動作状態に異常が発見される可能性があります。販売店も納得したうえで車を買ってもらいたいため、基本的に試乗を断られることはありません。

事故車の試乗では、主に以下の点に注目しましょう。

  • 直線やカーブの走行で違和感はないか
  • 運転中に異音・異臭は発生していないか
  • 各種メーターや電装品は正常に動作しているか
  • 座席やドアなど直接触れる部位にすきま風やガタつきはないか
  • ハンドリングに違和感はないか

もし車の知識に疎い場合は、車に詳しい人と一緒に見るのがおすすめです。走行中の不具合は初心者だと分かりにくいですが、普段からよく車に乗っている方ならちょっとした違和感にも気づけます。

同じ価格で購入できる中古車がないかをあわせてチェックする

安く購入できる車は、事故車だけではありません。例えば、車種・グレード・年式の古い車なら、事故車と同じ価格帯で中古車として販売されている可能性があります。

同じ価格で中古車を買えるなら、そちらのほうが安全性能が高いため、中古サイトや販売店で同じ価格の中古車がないか探しましょう。ただし、年式が古い車でも新車登録から13年以上経った低年式車や走行距離が10万キロを超えた車には注意が必要です。

まず、新車登録から13年以上経った車は自動車税が通常より15%程度アップします。購入価格は低くても維持費が高くつくため、長期使用では損に転じるかもしれません。

また、走行距離が10万キロを超えた車は「過走行車」と呼び、車両の寿命が近いリスクがあります。買ってすぐ走らなくなっては購入する意味がないため、こちらも避けるのが賢明です。

事故車は危ないのですか?
事故車は、修復歴のない車と比べると、ある程度は強度が落ちます。とはいえ、すべての事故車が劣悪な状態なわけではありません。もともとの損傷具合や修理理由によって性能に個体差があるため、走行性能に問題がない車も当然存在します。

事故車の定義は?

事故車の定義は?
世間一般では事故車に「まっすぐ走らない車」「すぐ故障する車」といった認識を抱きますが、事故車にははっきりした定義が存在します。

ここからは、その定義について解説します。

修復歴がある車を指す

日本自動車検査協会による定義では、車の骨格部分(フレーム)を修理・交換している車を事故車としています。そのため、事故を起こしたからといって、全ての車が事故車とみなされるわけではありません。

事故車かどうかを見分けるポイントは「修復歴」の存在です。原則、車の骨格部分を修理・交換すると、車両情報に修復歴が必ず追加されます。

修復歴はフレーム部分からの故障

修復歴とは、車両骨格部分の損傷を修理した履歴です。

車両の損傷の中で修復歴と見なされる箇所は以下が挙げられます。

  • フロントインサイドパネル
  • ダッシュパネル
  • ルームフロアパネル
  • トランクフロアパネル
  • ルーフパネル
  • フロントクロスメンバー
  • ピラー
  • ラジエータコアサポート
  • フレーム

上記の部品は全て車両の骨格を担う重要な箇所にあたり、歪みや破損を起こすと安全運転や走行性能に大きな支障をきたします。

修復歴は記載が義務付けられていますが、これは販売店側の告知義務違反や瑕疵担保責任によるトラブルの発生を防ぐためです。

傷や凹みは事故車に該当しない

車に大きな傷や車体の歪みが生じたとしても、骨格部分に当たらない場合は修復歴とはみなされません。

例えば、フロントフェンダーやバンパーが大きく損傷した場合でも、定義上は事故車ではないのです。

もし車両価格が格安なのにも関わらず、修復歴がない場合は骨格部分以外で大規模な修理を施した車の可能性があります。車両情報に詳しい記載がないなら、販売店のスタッフに安さの理由を質問するか、査定表を提示してもらい詳細を確認しましょう。

なにも疑わず購入すると思わぬ故障や不具合が発生する可能性が高いため、安い車を購入する際は必ず詳細を確認しなければなりません。

事故車の購入がおすすめなのはどんな人?

事故車の購入がおすすめなのはどんな人?
ここまで事故車の特徴やメリット・デメリットについて触れてきました。

これまでの情報を総括しながら最後に事故車の購入がおすすめな人について解説します。

車を短期間のみ乗りたい人

事故車は運転に対するプレッシャーが少なく車両価格が低いため、短期間だけ車が必要な人におすすめです。

例えば、急な単身赴任が決まったが自家用車を他の家族も使う場合や、次の車の資金を貯めるまでのつなぎとしての利用が挙げられます。

いつ故障や寿命を迎えるか分からないため長期使用には向きませんが、使用期間が限られているなら事故車は打ってつけといえます。

とにかく初期費用をおさえたい人

なんらかの理由で車を買うための初期費用が足りない場合に事故車はおすすめです。

例えば、前の車のとき無保険で事故を起こして大破した経験がある場合や、相手への賠償でお金に余裕がなくなってしまった時に助かります。

事故車の最大のメリットは価格の安さです。一般的なイメージの悪さと故障のリスクから車両価格が大幅に下げられるため、人気モデルであっても格安で入手できます。

自分で車の状態をある程度見極められる人

車に乗り慣れている、または車の知識が豊富な人は、明確な基準を持って事故車を選定できます。

前述したように、一口に事故車といっても修復内容によって走行性能や走り心地は異なるものです。中には実態に比べ価格が低く設定されているお買い得な車も存在します。

初心者だと、どこが問題でどんな故障が予想されるか判断できませんが、ある程度車に乗り慣れた人なら状態を見極められます。

事故車を買わない方がいい人はどんな人ですか?
事故車の購入を控えたほうがいいのは、一度買ったら長く使用したい方、走り心地を重視する方、初めて車を購入する方などです。
車に愛着を持ちたい場合や車の運転自体に慣れていない場合は、基本的に事故車は避けたほうがいいでしょう。

まとめ

①事故車はもともとの買取額が低く故障のリスクが高いため低価格
②初期費用を抑えられる・運転に対するプレッシャーの小ささがメリット
③周囲のイメージの悪さや突発的な故障のリスクが高いため購入は慎重に
④事故車は「事故を起こした車」ではなく「フレーム部分の修復歴がある車」のこと
⑤短期間だけ車が必要な人や購入予算に乏しい場合におすすめ

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