中古車を探しているとき、年式や走行距離が同じでも同条件の他の車よりも車体価格が低い車があれば、それは事故車かもしれません。値段だけで考えるとお買い得ですが、いくつかの注意すべき点を分かっていないと、購入後のトラブルに巻き込まれるかもしれません。
今回は事故車の購入を検討している方に向けて、事故車を購入した後の不安をなくすためにおさえておくべき注意点について紹介します。この記事を読めば、事故車の購入にまつわる心配事を軽くできるでしょう。
事故車を購入するときは注意点を意識しよう
中古車探しで事故車の購入を検討している場合、購入前に注意しておきたいポイントがいくつかあります。
見た目はきれいに修復されている分、パッと見ではおかしな部分もなく、金額もお手ごろなため、「購入しても良いかな…!」と、感じるかもしれません。
しかし、事故車は購入後のトラブルに見舞われやすいのも事実です。購入後のトラブルを防ぎ、安心して車に乗るためにも、これから紹介するポイントを守って購入を検討してみてください。
事故車とは?
中古車における事故車にはどのような特徴があるのでしょうか。
ここからは、事故車の定義や事故車に該当しないパターンについて紹介します。
安心して中古車を購入するためにも、これから紹介するポイントは必ず理解しておきましょう。
事故車とは、事故に遭遇して損傷した車を指します。
「事故によって修理した車=事故車」と考えられがちですが、自動車査定協会によると実際は以下のように定義されています。
骨格部分に該当するパーツは以下になります。
・サイドメンバー
車体の左右に配置された車の骨格部分
・クロスメンバー
車体の横方向に付けられた、車体の剛性や強度向上のためのパーツ
・インサイドパネル
エンジンルームの左右に設置されたパネル
・ピラー
ボディと車の屋根部分をつないでいるパーツ
・ダッシュパネル
エンジンルームとキャビンの間にある隔壁板
・ルーフパネル
車の屋根部分を構成する外板
・フロア
車の床部分
・トランクフロア
ラゲッジスペースの床部分
「修復歴」と「修理歴」の区別がつきにくいと感じている人も少なくないでしょう。
修復歴と修理歴は厳密には異なっています。例えば、車体の側面をこすって傷がついた場合に行われる修復は「修理」に該当し、修復歴には含まれません。これは修理箇所が車体の骨格に該当しないからです。
また、骨格付近を修理したとしても、ねじ止め部分は骨格に含まれていないため、ねじ止め部分の修理のみであれば修復歴には含まれません。
事故車を購入するメリットはある?
一般的に購入後のリスクが高いとされる事故車を購入することにメリットはあるのでしょうか?
長い目での利用を考えるとリスクがあるようですが、短期的な利用であればお得に活用できるのが事故車です。
ここからは、事故車の購入にまつわるメリットについて紹介します。
事故車は同条件であれば他の中古車よりも車体価格が低く設定される傾向にあります。そのため、購入時の初期費用をおさえられることがメリットです。
長期出張や転勤期間など、一時的に車が必要な場合であったり、次の車に乗るまでのつなぎになる車が必要な場合に費用をおさえて活用できます。
また、購入金額が低いことから、運転中にぶつけたとしてもそれほど落胆することがありません。新車であれば傷が少しでもつくと大きなショックを受けますが、中古車かつすでに事故に遭遇している車であれば、新車ほどのショックを受けることは少ないでしょう。
乗れないほど状態の悪い事故車は販売できないため、中古車市場にはそれなりの状態の車が流通しています。そのため、店頭で販売されているような事故車は問題なく乗れるでしょう。
修復内容によるものの、修復後の安全性能に問題ない個体も事故車の中には含まれているため、まずは中古車販売店に修復内容を確認することをおすすめします。
一方で、中古車を探している中で他の同じモデルに比べて車体価格が明らかに低い場合は、設定された値段に何かしらの理由が隠されています。
購入金額を低く抑えられるからといって、そういった疑問点を調べずに購入するのは危険なため、設定金額の理由や背景は必ず確認しましょう。
事故車を購入するときの注意点は5つ
短期使用に適していたり、事故の内容によっては運転に支障が少なかったりする事故車ですが、購入時に注意しておかなければならないポイントがあります。
ここからは、事故車を購入する際に注意すべき5つのポイントについて紹介します。
中古車はすでに修復歴がある分、修復内容によっては購入後の安全性が担保できないことも少なくありません。そのため、事故車を販売している中古車販売業者選びは慎重に進めましょう。
大前提として、様々な質問や問い合わせについて真摯に対応してくれる業者が望ましいですが、特に次のポイントを満たしている業者かどうかチェックしましょう。
- 購入後のアフターサービスがしっかりしていること
- 万が一、事故が発生した場合は迅速に対応してくれること
- 該当する事故車を試乗させてもらえること
実際に車を確認する場合、どのような点に着目して確認すべきでしょうか。
まずは車の外装のチェックポイントを紹介します。外装を確認する際には、以下のパーツの確認を強くおすすめします。
- ボンネットとフェンダーの隙間は左右対称かつ均一になっているか
- バンパーの隙間は前後ともに均一になっているか
- 塗装の色合いに変わりがないか(塗装がまだらになっていないか)
- 車体やエンジンルームのパーツが左右対称になっているか
事故によって車体の骨格にねじれが生じていれば、運転時の安全性に強く影響してしまいます。そのような車は購入後に不具合をきたして、購入金額より高額な修理費用が必要になることも少なくありません。
素人目には分かりにくい部分もあるかもしれませんが、確認は怠らないようにしましょう。
次に内装もくまなくチェックしなければなりません。
内装をチェックする場合、シートやハンドル部分にばかり注意が行きがちですが、ラゲッジスペースやトランクルームも確認しましょう。
ラゲッジスペースやトランクルームを確認する場合、張地の汚れだけではなく、スペアタイヤやジャッキなどパンク時の応急処置に必要なパーツが揃っているかも重要なポイントです。
また、灰皿の使用状況も気になるポイントです。最近はポータブル灰皿を携帯することが増えているため、分かりにくいかもしれませんが、灰皿に使用した跡があれば喫煙車のため、カーペットやシートの張地にヤニ汚れが染み込んでいる可能性があります。
ヤニ汚れは頑固で落ちにくいため、洗浄したとしても完全に落とすことはできません。もし、喫煙車が受け入れられない場合は購入すべきか考え直しましょう。
中古車は走行距離が長くなるほど車両の価値が下がるため、基本的に試乗は断られます。しかし、事故車を検討している場合は必ず試乗しましょう。
車体は新品同様に修復されていたとしても、骨格部分を修復しているため乗り心地や走行音に違和感を覚える場合もあります。そのため、購入前には必ず試乗させてもらい、走行中の乗り心地や走行音などの確認をおすすめします。
試乗する場合は次のポイントをチェックしましょう。
- 直線を走行中にまっすぐ走れるか
- 走行時、変な音がしていないか
- エアコンやパワーウィンドウなど、電装品の動作に異常はないか
事故車を購入する前には、車に詳しい友人や知人に相談に乗ってもらうことも、購入後の不安を取り除くためには有効です。また、業者の話を聞くときや試乗する際にもついてきてもらえるとなお良いでしょう。
車に詳しい人に同行してもらえると、自分の知らない知識や情報を教えてもらえることに加え、客観的な意見を聞くこともできます。
詳しく聞いて、納得した上で車を購入する必要もありますが、お客様の話を親身に聞かないような業者は、アフターサービスや事故発生時の対応など思った通りのサービスを受けられない可能性があるため注意が必要です。
【事故車を処分したい】事故車の査定額はどれくらい下がる?
事故に遭った車を処分したくなった場合、事故車に該当することで査定額はどのくらい下がるのでしょうか。
事故車とひとくくりにしても、事故に遭遇した時が新車なのか中古車なのかによって査定ポイントは異なります。また、走行できなくなった事故車を処分する場合には、そもそも廃車にした方がお得かもしれません。
ここからは、事故車の査定額について詳しく紹介していきます。
新車が事故車になってしまった場合は、中古車が事故車になった場合より査定額は大きく低下する傾向にあります。その理由は、新車自体の期待値が高いためです。
販売業者の立場では、新車だったことで走行距離が少ないのにも関わらず、修復歴があるだけで他の同じような条件の車と比べて車両価格を安く設定せざるをえません。
購入希望者の立場では、同じような新古車に比べて車両価格が低ければ、「何かいわくつきではないか…?」と疑い、購入意欲が下がる傾向にあります。
結果、長い間買い手がつかない状況になれば、販売業者にとってデメリットになってしまうため、買取時の査定額は低下してしまいます。
新車以外であれば、年式や走行距離で査定額は変わります。
年式が多少古い場合や走行距離が多い場合は、そもそもの査定額が高値にはなりづらく、事故車だからといって大幅に価格が下がることはありません。
一方で、事故による損傷を修復していなければ、査定額は大幅に下がってしまいます。なぜならば、買取後に修復したとして、走行時の安全性に対して担保がとれないためです。
このように、新車以外であれば車自体の状態が査定額に大きく影響を与えるため、査定に出す前に車の状態は必ず確認しましょう。
もし、事故車の処分を検討しているのであれば、見積もり査定に出したあとに処分するかどうかを決めましょう。
事故車だとしても査定額がつく場合、買い取ってもらえれば多少なりとも儲けになります。そのため、最低額がつかなければ処分を検討しましょう。
一方で、ローンの残債がある場合は要注意です。廃車になったとしても返済義務は消滅しないどころか、所有権をローン会社が保有しているため無断で廃車にできません。
処分に困った場合は、まずローン会社に相談することをおすすめします。
事故車の処分方法は2つ
買取査定によって査定金額がつかなかった場合は処分を検討する必要があります。
その処分方法には、「解体・廃車」もしくは、スクラップとしての「部品のみの買取」の2つがあります。
ここからは、この事故車の処分方法について詳しく説明していきます。
査定額がつかなかった場合は、解体後に廃車手続きをしましょう。
解体と廃車の順番は解体が先です。車が解体された後に交付される解体証明書がなければ、廃車手続きに進めません。
解体後に廃車手続きを進める場合、普通車であれば管轄の運輸支局にて手続きできます。解体した車のナンバープレートや車両番号など、用意すべき書類や情報は事前に調べておかなければなりませんが、手続き自体は簡単です。
また、平日の開庁時間中でしか対応してもらえないため、仕事の都合上、平日に手続きできない場合は業者に委託することをおすすめします。
事故車はスクラップ車として部品を買取ってもらう方法もあります。その場合、廃車買取業者に声をかけましょう。
車としての価値はないものの、各部品が使えればそれ自体に価値が生まれます。事故車と中古車を両方取り扱う業者であれば、各部品を販売できる販路があるため、査定額も高額になる傾向があります。
事故車の購入・売却の心構え
事故車を売りたい人や中古車を安く手に入れたい人など、事故車にまつわるニーズは絶えず、購入者側と売却者側のどちらの立場にもなる可能性は0ではありません。
もし、自分の愛車が事故にあってしまい、安く車を購入したいと思ったら、その時のために心の準備は必要です。
ここからは、事故車を購入・売却する場合の心構えについて紹介します。
事故車の購入を検討している場合、まずは車の状態を丁寧に教えてくれる業者を探しましょう。
事故車の場合、いくら修復されていたとしても目に見えないダメージや将来的に影響のある整備不良が隠されているかもしれません。そのため、購入希望者の不安を取り除いてくれるような、親身かつ誠実な対応を取ってくれる業者選びが重要です。
安心して購入できるようにサポートしてもらえる業者を見つけましょう。
売却する立場になった場合は、事故車を査定に出したときに誠実な対応が求められます。事故の内容を言及する必要はないかもしれませんが、損傷があった部位や修復内容について正直に伝えなければなりません。
売却を検討する場合、民法上の「瑕疵担保責任」として虚偽の申告をした場合には何かしらの罰則を受ける可能性があります。
売却後のトラブル回避のためにも、問題事項があれば必ず正直に申告しましょう。
購入する者・売却する者、どちらの立場であっても事故車の扱いは慎重かつ誠意をもって対応することが重要です。
購入者は購入後の安全性も含めて疑問点があれば解消できるよう質問しましょう。また、売却者は起きたことを包み隠さず申告しなければなりません。
せっかく購入したにも関わらず、よく分からないまま購入したことでまた事故に遭ってしまった、売却できたのに後からトラブルに発展してしまった、といったことが起きないように誠実にふるまうことが大切です。
まとめ
もし希望の車が事故車だった場合、今回紹介した内容をおさえていれば心配事は少ないでしょう。理想の車を手に入れるためにも、ぜひ今後の参考にしてみてください。