事故で車が走行不能になったり、価値が無くなったりした場合を「全損」と言います。
全損には走行できない状態の「物理的全損」と、走行できたり修理できたりするものの、価値が大幅に下がってしまう「経済的全損」があるため、車の状態を見極めた上で廃車や修理など適切な対応が求められます。
また、修理の際に保険を使うケースは多くの方が知っていますが、実は買い替えに使える保険もあります。
この記事では、車が全損状態で買い替えを検討する方向けに、取るべき対応や保険の使い方、特約について紹介します。
全損した車を買い替える際は保険が使える
車が全損状態になった時、廃車や買い替え手続を行いますが、その際は車両保険を使えます。
車の買い替えには数十万円〜数百万円と費用がかかるため、保険を使ってまとまった出費を減らす方法がおすすめです。
なお、修理や買い替えにおいて車両保険を使えるものの保証される金額は全額ではありません。支払われる補償金額は車の時価をもとに算出するため、場合によってはいくらか手出しが必要でしょう。
保険を使う選択肢やお得な処分・買い替え方法を把握することで少しでもコストを抑えて手続を進められるようにしましょう。
車が全損した際の対応方法
ここからは、事故で車が全損になった場合の対応方法を2つ紹介していきます。
1つ目の対処法は、全損状態にある車を廃車して、新たに車を購入する方法です。
全損で走行できず価値がない車は廃車(スクラップ)の手続が必要です。なお、廃車手続きは、解体と書類の提出を済ませる必要があります。
まずは車を業者に依頼して解体してもらいましょう。その上で車を廃車してもう乗らないことを証明する「永久登録抹消」の手続きを取ります。
永久登録抹消は各地域の陸運支局(普通自動車の場合)、もしくは軽自動車検査協会(軽自動車の場合)で手続を行います。
必要書類を揃え、平日に手続を行いましょう。なお、この廃車手続きは買取業者や廃車を行う業者などに代行してもらうことも可能です。
2つ目の対処法は、修理に出して乗り続ける方法です。
経済的全損の場合、価値は下がるもののまだ乗れる状態や修理によって走行可能な場合もあります。その場合は車両保険を使い修理を行い、引き続き乗れるでしょう。
ただし、骨格部分から修復した場合、完全に歪みを修復することが難しかったり、見えない部分の劣化が早くなっていたりと車の耐用年数が短くなる可能性があります。
今の車に思い入れがある場合や年式が新しいものは修理も検討しましょう。ただし、全損の場合は修理費用が高額になる可能性もあります。修理費用が100万円を超える場合は買い替えも視野に入れましょう。
全損した車の買い替えに利用できる車両保険
ここからは、全損状態にある車の買い替えを検討する方向けに、車両保険の使い方や仕組みを紹介します。
保険はなかなか使う機会がないため、流れを把握してすぐに動き出せるようにしましょう。
車両保険に加入している場合、全損と判断された時点で補償を受けられます。全損の判断を行うのは一般的に保険会社です。車の所有者から連絡を受け、車の状態を確認した上で全損か否かを判断します。その際、修理業者との連携も必要な可能性があります。
車の状態から全損と判断された場合、修理か買い替えか所有者が選択します。車両保険に加入している場合はいずれの場合も補償を受けられるため車の状態はもちろん、ライフプランや支払い計画を元に判断しましょう。
全損状態にある車を処分し、買い替える場合に注意したいのは所有者の移転です。
車両保険を使って車の買い替えを行う場合、所有権は保険会社へと移ります。そのため、廃車手続きを行う場合は保険会社と連携しながらの進行が必要です。
全損した車の買い替えに利用できる特約
ここから、任意保険の中でも全損状態にある車の買い替えに使える特約を紹介します。
自分の保険商品についている特約を保険証券などで確認して、買い替えに利用できるものがないかチェックしてみましょう。
全損時諸費用特約は、車が全損状態にあり、かつ買い替えや廃車手続きを行う際の諸費用を補償します。
買い替えの車両本体価格ではなく、かかる諸費用への補償です。具体的には廃車を業者に依頼する場合の費用が挙げられます。廃車手続きには数万円かかることもあるため、特約がついているとその費用を抑えられます。
なお、この特約は車両保険をつけている場合に自動的につく保険会社が多いです。また、保険会社によっては買い替えにかかった費用に応じて諸費用の補償額も異なるため詳細を確認しましょう。
新車特約は、新車で全損状態にある車が50%以上など制限以上の損害を受けた場合に、もう一度新車を購入できる補償です。
新車は購入価格が高くローンを組んでいても、まとまった出費がかかり家計に与えるダメージが大きい傾向にあります。
ローンを組んでいるのに車が使えなくなると不安や見通しが立たなくなるため、免許を取ったばかりで新車を購入する場合におすすめの特約と言えます。
対物超過修理費用特約は、相手がいる事故において、実際にかかった車の修理費用と時価額の差が補償される特約です。
事故の加害者になった場合は自分の車の修理だけでなく、相手の修理にかかった費用を支払うことになります。その場合、修理費用が対物賠償保険のみでは収まらないこともあります。
支払いが補償を超える場合に対物超過修理費用特約をつけていると、出費を抑えられるでしょう。なお、この限度額は保険会社ごとに異なります。
これまで紹介した特約以外にも、保険会社によって様々な特約があります。
- レンタカー特約
- 車内手荷物などへの特約
- 地震・噴火・津波時に補償される特約
車が全損になった場合、修理や買い替えまでに代車の手配が必要です。代車は修理業者が貸し出してくることもありますが、期間によってはレンタカーの手配も必要です。その場合にレンタカー特約をつけていると出費を抑えられます。
また、全損時に車だけでなく車内にある荷物まで損害を被ることもあります。その場合に、中の荷物まで手厚い補償がつく特約を選択すると貴重品(パソコンや家電器具など)まで守れるでしょう。
さらに、基本的に補償されない地震や噴火、津波などの災害に一部保証を受けられる特約もあります。
自分が加入している保険会社の特約をこの機会に確認するのもおすすめです。
全損した車を買い替える際の注意点
ここからは、全損状態にある車において、買い替え時の注意点を3つ紹介します。
保険を使って買い替えを行う場合においては、具体的な金額を確認してから買い替え車種の選択や廃車手続きを行いましょう。
手元に資金がなく、かつ補償金額が明らかでない場合は支払いが滞ってしまったり、家計を圧迫したりする可能性があります。キャッシュフローに見通しを持つために保険会社や修理業者に金額の確認は必ず行いましょう。
全損が確定した場合、すぐに保険会社の担当者に連絡して補償金額や手続きの流れを確認しましょう。
補償は全損や事故が発生してから一定期間が経つと受けられなくなる可能性があります。また、支払われる金額は車の時価や保険商品ごとに異なるため、ネット上の情報よりも直接聞くほうが正しい情報を得られるでしょう。
すぐに連絡が取れるよう、普段から財布や免許証を入れるケースに保険証券のコピーや担当者の連絡先を入れておくとスムーズに動けます。
いざという時に「連絡先が分からない」「自分の車の情報が分からない」と焦る方が多いため、事前の備えがおすすめです。
保険会社に補償金額を算出してもらったら、修理業者に修理の見積もりも出してもらいましょう。物理的全損の場合、修理工場への持ち込みが困難なため、レッカー異動を依頼したり工場が近い場合は直接来訪してもらったりします。
見積もりで修理費用が分かったら買い替えと修理どちらがコストを抑えられるか判断します。修理費用が100万円を超える場合は中古車を購入したり、少し手出しは発生するものの新車を購入したほうがお得なケースもあります。
補償金額で修理が賄える場合は修理を選び。難しい場合は買い替えを選択するのがおすすめです。
事故による全損かつ相手がいる場合、当人同士で金額や補償内容の話し合いは控えましょう。トラブルの原因になります。
事故の場合、基本的に双方の保険会社に介入してもらい対応を進めます。訴訟の問題になる場合も弁護士を介入してやり取りを行うと、トラブルを拡大ぜず、かつ極力スムーズに進められるでしょう。
保険によっては弁護士を保険対応で活用できる商品もあります。自分で手続をやると労力がかかるだけでなく事態が悪化する可能性もあるため、専門家の力を借りましょう。
全損した車を買い替える際に確認するポイント
ここからは、車が全損した後に新しい車を買うべきか修理すべきかで悩んだ場合に役立つ2つの判断基準を紹介します。
修理後の見通しやローン残高などを確認し、適切な判断を行いましょう。
修理をする場合、安全性を確保して車に乗り続けられるかを確認しましょう。
修理はできるものの完全に骨格部分から完全に直ることは極めて稀で、多少なりとも車にダメージは残ります。そのため、何年も乗っているとだんだんと故障することが多くなったり、運転する中で違和感を覚えたりすることもあります。
特に年式が古いものや走行距離が長いものは元々経年劣化が激しいため、そこに事故の名残りが合わさって故障する確立が高まります。年式や走行距離をはじめとした車の状態を見極めた上で「修理して問題なく乗れるか」を判断しましょう。
なお、修理においても一社のみの料金やアドバイスを真に受けるのでなく、複数社に電話やメールで問い合わせて比較するのがおすすめです。
全損状態にある車にまだローンが残っている場合は資金繰りを確認して修理か買い替えかを選択しましょう。
車を購入してからまだ期間が経っていなかったり、数十万円ローンが残っている場合は買い替えると二重ローンになる可能性があります。
二重ローンは家計をひっ迫させたり、支払いが複雑で見通しが持てないため、できる限り避けましょう。万が一、新車の購入が困難な場合は中古車という選択肢もあります。
全損した車の引き渡し先
ここからは、全損状態にある車の引き渡し先を3つ紹介します。
全損の車は状態によって引き渡し先を変えると買い取ってもらえたりする可能性があります。
全損の中でも経済的全損で、損傷が大きくない場合は中古車買取業者がおすすめです。自走できるのであれば価格は低くなるものの買い取ってもらえる可能性があります。
なお、事故により全損状態になった「事故車」の場合は査定額が大幅に下がります。事故車はネガティブなイメージを持たれ、買い手が少なく故障のリスクもあるため査定額を落とし、かつ安い金額で販売されています。
車がフレーム部分(骨格)から歪んでおり、修復が難しい場合は海外に販路を持つ買取業者に見てもらうのがおすすめです。
国内では事故車へのネガティブな印象が先行し、査定額が大きく減ったりそもそも買取を断られる場合もあります。
しかし、海外では「日本の車は丈夫で品質が良い」と言われているため、事故車であっても需要があり、買い取ってもらえる可能性があります。
車が完全に修復困難な場合は廃車買取業者に連絡しましょう。廃車を専門に扱うため、手続きを代行してもらえたり部品に価値を見出してもらえたりします。
廃車手続きは個人で進めると必要書類が多かったり、方法が分かりづらかったりするため、依頼するのがおすすめです。
全損した車を買い取ってもらえる理由
最後に、ここからは全損した車が買取可能な2つの理由を紹介します。
全損の場合、走行できず車そのものの価値がないと考えられがちですが、扱い方によってはまだ価値を見いだせるでしょう。
全損になったからと言ってすぐに諦めるのではなく、できる限り費用を抑えたり買取価格に反映させられる方法で車の処分を行いましょう。
全損の場合、車としての価値は低くなります。しかし、各パーツごとの価値はあり、部品買取として役に立つ可能性があります。
例えば、衝突事故で車が全損状態になり見た目は廃車の場合でも、エンジンがまだ使える状態のケースや、タイヤやホイールのみ使えるケースもあります。
使えるパーツを買い取ってもらい、それを廃車用や車の買い替えに充てる方法も可能です。
パーツ単位で買取を依頼する場合は、ディーラーや中古車販売店でなく部品買取に特化した業者選択がおすすめです。
全損状態の場合「もう直せないのでは?」と考えます。しかし、高い板金技術を持つ業者であれば走行できる状態まで戻せる可能性もあります。
車の骨格部分まで歪みが生じると、修復が困難です。しかし、多くの車に携わってきた業者の場合は、なかなか難しいと思われる周知を済ませて売却まで進むこともあるでしょう。
技術力や多くの販路を持っている業者を選ぶと買取価格アップに効果的です。