車に乗っている以上、事故に遭う可能性はゼロではありません。どれだけ注意して運転していても巻き込まれることもあるでしょう。

もし事故に巻き込まれ、車が全損状態になった場合は買取に出すことが難しくなるため、廃車手続きが必要です。

この記事では、車の全損時に知っておきたい廃車手続きの概要を紹介します。

車が全損状態にあるときは廃車を検討しよう

事故により車が全損状態にある場合の選択肢として廃車手続きが挙げられます。

車両保険を使って車を修理する方法もありますが、修理に100万円以上かかる場合は廃車手続きをして新しい車の購入を検討しましょう。

廃車手続きは、なかなか行う機会がないため見通しを持てない方も多くいます。廃車は陸運支局や軽自動車検査協会に書類提出を行うため、流れや必要書類を把握して不安なく進められるようにしましょう。

そもそも廃車とは?

そもそも廃車とは?
まずは廃車の定義や必要な手続きについて紹介していきます。

廃車手続きをする機会はなかなかないので、必要書類や流れの把握が大切です。

公道を走行できない状態にすること

廃車は該当する車が公道を走行できない状態にする手続きを指します。ここで指す、走行できない状態とは「車の登録を解除する」ことです。

車を所有する場合、新車・中古車問わず陸運支局に登録を行ってから使用することができます。この手続きは購入前にメーカーや中古車販売業者が行っているため自身で行う機会はないでしょう。

廃車の場合、今後公道を走らないことになるため陸運支局に必要書類を提出して登録手続きを解除します。なお、一口に廃車と言っても2種類に分けられます。

1つ目は、車を解体して物理的に乗れない状態にする「永久抹消登録」です。こちらでは解体業者に車を解体してもらい、その後発行される解体証明書と他の書類を持参して陸運支局で手続きを行います。

車が全損状態にあり、見通しが持てない場合に利用します。

2つ目は、車は残しておくものの書面上の登録を解除する「一時抹消登録」です。こちらは一時的に車に乗らない方が書類の提出とナンバープレートの返却を行う手続きです。

海外への転勤や子どもに車を譲り渡すまで期間がある場合などに行う手続きです。

手続きは陸運支局に書類提出が必要

廃車手続きは先述の通り、手続きは陸運支局で行います。なお、軽自動車の場合は自動車検査協会で行います。

各機関に書類の提出は自分で行えるものの必要書類が多く、かつ平日に行く必要があるため仕事で忙しい場合は業者に依頼する方法もおすすめです。

なお、解体作業は自身で行えないため必ず業者へ依頼しましょう。許可を受けていない方が自動車の解体をすると自動車リサイクル法において処罰の対象となります。

廃車手続きの必要書類や流れを紹介

廃車手続きの必要書類や流れを紹介
ここからは、廃車手続きの具体的な方法を紹介します。

必要書類や手順を確認してスムーズな廃車手続きを行いましょう。

必要書類を集める

まずは廃車に必要な書類を集めます。永久抹消登録と一時抹消登録とでは異なるので注意しましょう。

永久抹消登録の必要書類
  • 永久抹消登録申請書
  • 手数料納付書(手数料は無料)
  • 所有者の印鑑(登録)証明書
  • 所有者の委任状(実印の押印)
  • 自動車検査証
  • 自動車登録番号標
一時抹消登録の必要書類
  • 一時抹消登録申請書
  • 手数料納付書
  • 所有者の印鑑(登録)証明書
  • 所有者の委任状(実印の押印)
  • 自動車検査証

手続きに必要な書類は似通っていますが、永久抹消登録の場合は解体報告記録がなされた日や解体にかかる移動報告番号など、いわゆる解体の証明になる情報が必要です。

車を解体する

必要書類を集めながら、車の解体も進めます。

車の解体は解体業者への依頼が必須です。車の解体を行える業者は自治体の公式ホームページで確認できる他、広報誌でも記載があります。

参考までに、自動車の解体にかかる条件が厳しくなった背景には処分場の不足や不法投棄などの課題が潜んでいます。また、車の部品には環境汚染につながるものもあるため認定を受けた業者が正しい処分を行う必要があります。

適切な解体業者に依頼することで、正しいルートで廃車手続きが行え、かつ環境への配慮も叶うでしょう。

陸運支局に書類を提出する

車の解体後は書類の提出を進めます。印鑑登録証明書や委任状などの書類に加え、解体時に業者から知らせてもらえる解体の証明情報を申請書に記載します。

なお、所有者以外が書類提出を行う場合や、車検証と現在の住所が異なる場合など、条件によっては別途書類の提出が必要です。

もしも不安な場合は、国土交通省のポータルサイトを確認したり、最寄りの陸運支局に問い合わせたりしてからの来訪がおすすめです。

また、陸運支局は平日のみ開庁していて時間も決まっています。そのため、仕事で休みを確保したり休憩時間を工夫したりが欠かせません。スケジュールに見通しとゆとりを持って進めましょう。

廃車手続きは難しいですか?
廃車手続きは、車を解体する「スクラップ」と書類を提出する「廃車手続き」に分かれます。解体は業者に依頼するため難しいことはありません。廃車手続きは書類を揃えたうえで陸運支局に提出することから難しくはないものの労力がかかります。
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廃車は2種類ある

廃車は2種類ある
ここからは、2つの廃車手続きを詳しく解説します。

車が全損状態にある場合、多くの方が永久抹消登録を行いますが、思い入れのある車の場合はスクラップにすることが惜しいと感じます。一時抹消登録という選択肢も理解して、後悔のない手続きを行いましょう。

永久抹消登録

永久抹消登録は車を解体(スクラップ)し、陸運支局で登録を抹消する方法です。車が全損状態にあるケースにおいて行います。

車の状態が極めて悪く、買取で価値がつかない場合は永久抹消登録を行いましょう。

なお、永久抹消登録を行うと場合によっては納付済みの自動車重量税の還付を受けられます。その場合はあわせて下記の書類も必要です。

  • 自動車重量税還付申請書
  • 所有者の記名のある委任状(代理人の場合)

いずれも永久抹消登録における申請書と委任状と併用できます。

一時抹消登録

一時抹消登録は、車の登録自体を抹消するものの、車は保有できる手続きです。長期間車に乗らないことが分かった場合に行うケースがほとんどです。

例えば、「仕事の海外赴任が決まり家族全員で3年間移住が決まった」「二人乗りのスポーツカーだから、子どもが生まれて乗れない。子どもが大きくなるまで大切に保管しておきたい」という場合が挙げられます。

登録を抹消するため公道の走行は不可能ですが、自動車税の支払いがなくなる点がメリットです。また、解体を伴わないため、書類提出のみで比較的スムーズに手続きを行えます。

しかし、車の保管には注意しましょう。長期間、車に乗らない状態が続くと劣化が加速します。そのため、車用のカバーをかけたり屋根のある場所で保管したりするのがおすすめです。

また、次に乗り始めるときは「中古車新規登録」を行います。車検を受けて陸運支局に申請が必要です。

期間があいた車の場合、基幹部分の経年劣化が激しいため車検時に修理が必要になるケースも多いです。そのため、資金にゆとりを持っておくようにしましょう。

車の全損は2種類ある

車の全損は2種類ある
ここからは、車の全損について説明します。

これまで車の全損後の手続きに触れてきましたが、全損の定義は2つあります。

車の状態が「物理的全損」と「経済的全損」どちらに該当するかを確認し、廃車もしくは他の対応を行いましょう。

物理的全損

物理的全損は、修理のしようがない程度に壊れた状態を指します。具体的には車の骨格部分から損傷した場合が挙げられます。

骨格部分の損傷は車の安全性能や価値に大きく影響するため、修理後もトラブルが起こったり査定額が激減したりと課題を多く抱えます。

なお、買取査定において「事故車」「修復歴」という用語が多く見られますが、これは骨格部分の修理を行った車を指しています。

車の骨格部分は主に下記が挙げられます。

  • ピラー
  • ルーフ
  • センターフロアパネル
  • フロアサイドメンバー
  • トランクフロア など
経済的全損

経済的全損は、車が損害を受ける前の時価額よりも修理費用が上回る場合を指します。

例えば、車の時価が70万円の状態で事故に遭い、全損状態になった場合を想定しましょう。修理に100万円かかった場合は30万円のマイナスが発生します。

この場合、車を修理に出すよりも中古車を購入したり頭金を用意して新車を購入したりする方が経済的です。

車の本来あるべき価値よりも修理に費用がかかる場合を経済的全損と呼びます。

廃車手続きを依頼することができる業者

廃車手続きを依頼することができる業者
ここからは、廃車を決めた際に解体や手続きを依頼することができる業者を3つ紹介します。

いずれも手続きを行えるものの、利用するメリットとデメリットがあります。気になるポイントや目的に合わせて適切な選択を行いましょう。

廃車専門業者

廃車専門業者の場合、廃車を前提とした契約のため手続きの流れがスムーズかつ費用を抑えられるメリットがあります。そのため、車に価値がつかなかった場合に検討しましょう。

なお、廃車専門業者の場合はレッカー移動が必要な車の費用をサービスしてくれるところもあります。依頼先を決める場合は費用だけでなくサービス内容も確認しましょう。

廃車専門業者の探し方としては、オンラインで探す他、お住まいの地域で配布される広報誌や自治体の公式サイトがあります。

2〜3社ほどに問い合わせて対応が丁寧だったり費用が抑えられたりする業者を選びましょう。

中古車販売店

次に中古車を購入する場合、中古車販売店で廃車手続きを行う方法もあります。この場合、廃車から納車までスケジュール調整がスムーズなメリットがあります。

中古車販売店を選ぶ場合は自分が希望する車種を扱っているか確認が欠かせません。廃車にかかる費用が抑えられても、次の車に納得できなければ後悔する可能性もあります。

オンラインで1度取り扱い車種を確認してから現地で相談するのがおすすめです。

ディーラー

次に新車の購入をする場合は最寄りのディーラーで廃車手続きを行うこともできます。また、普段からディーラーとの付き合いがある方はおすすめの方法です。

ディーラーでは新車を豊富なサポートを受けながら購入することが可能です。ただし、廃車にかかる費用としては廃車専門業者よりも割高になるため注意しましょう。

廃車手続きを業者に依頼する場合、かかる費用はどこも同じですか?
廃車にかかる費用はディーラーや中古車販売店、廃車専門業者で若干異なります。ディーラーや中古車販売店は廃車手続きの費用が高い傾向にあります。業者によって異なりますが、5万円程度かかることもあるでしょう。廃車専門業者の場合は廃車前提での対応のため無料で行えることもあります。大きく差があるため、事前に見積もりや相談しておくことが大切です。

廃車にする際の注意点

廃車にする際の注意点
ここからは、車が全損状態にあり、廃車を考えている方に向けて注意点を3つ紹介します。

本当に廃車にしてもいいか確認する

まずは廃車手続きを取り、後悔しないかを確認しましょう。

車に思い入れがある場合、解体後に「やはり取っておけば良かった」と後悔する可能性があります。また、自分では廃車で構わないと思っていても、家族としては「廃車はもう少し待ってほしかった」というケースも考えられます。

もしも、車に思い入れがあり後悔しそうな場合は修理を検討した上で、難しい場合に廃車を決める流れがおすすめです。

廃車の費用は適切か

廃車は費用がかかります。書類にかかる費用だけでなく、解体や代行に数万円かかるため自分が依頼しようとしている業者が適切な価格設定か確認しましょう。

廃車にかかる費用は無料から数万円と依頼先により異なります。自分が出せる予算を決め、かつ複数社に見積もりをとってから契約に進みましょう。

なお、車が自走不可能でレッカー移動が必要な場合はその費用も含めて検討しましょう。

次の車の手配はどこで行うか

車が継続して必要な場合、次の車もあわせて手配しましょう。

もしもできるだけ早めに車が欲しい場合は、中古車販売店での購入がおすすめです。新車と比較して納車までの日程を短縮できます。

ただし、車種やグレードの選択肢が業者ごとに大きく異なるため、予算と併せて希望の車をある程度チェックしてから選びましょう。

なお、廃車から新しい車が納車されるまで期間があく場合は代車の手配やレンタカーの契約が必要です。車がない期間の対処法も考えておきましょう。

廃車にする前にチェックしておきたい車の買取

廃車にする前にチェックしておきたい車の買取
ここからは、廃車前に知っておきたい買取について解説します。

車の状態が良い場合は買取査定に出し、結果を見てから廃車手続きに進む方法もあります。次の車にかかる資金を用意したい場合は1度買取査定に出してみましょう。

買取のメリット

買取のメリットは売却金を得られる点です。

車が全損状態の場合、価値がつかないと考える方も多いでしょう。しかし、全損であっても部品のみ買い取ってくれるパーツ専門の業者もあります。そのため、あきらめずに1度査定に出してみましょう。

さらに、車に愛着があると解体するのが惜しいと感じることもあるでしょう。買取で価値がつくと解体以外の選択肢も出てくるため、おすすめの選択肢です。

買取のデメリット

買取のデメリットは全損の場合、移動が難しい点です。

自走できない車の場合はレッカー移動が必要になるため、価値がつくか分からない車に費用をかけるのは惜しいと感じる場合もあるでしょう。

その場合は、出張買取を依頼したりオンライン見積もりを活用しましょう。出張買取の場合は担当エリアが業者ごとに限られているため、お住まいのエリアで探す方法がおすすめです。大手から個人店まで選択肢は多いため、2〜3社ピックアップして比較するのがおすすめです。

車の買取はどのような方法で業者を探せばいいですか?
買取業者はオンラインで探すと効率的に見つけられます。検索エンジンで「〇〇(お住いのエリア) 買取」と入力して検索すると、近くの店舗が見つかります。ただし、1社のみではなく複数社への相談がおすすめです。全損した車の場合は業者によって査定を断られたり価値がつかなかったりするため、複数社に問い合わせましょう。

まとめ

①車が全損状態になった場合は廃車手続きが必要
②廃車手続きには「永久抹消登録」と「一時抹消登録」がある
③永久抹消登録を行う場合は業者に車の解体を依頼する
④廃車手続きは専門業者のほか、ディーラーや中古車販売店に依頼することもできるが、費用が異なる
⑤廃車手続きを行う前に本当に解体しても良いかを家族とも話し合う
⑥廃車前に車を買取査定に出してみる方法もおすすめ

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