車は私たちの生活を豊かにする乗り物ですが、購入や修理に費用がかかります。自分では安全運転を心がけたり、メンテナンスを行ったりしていても、不慮の事故で修理になる可能性があるでしょう。
特に屋根部分は自然災害により思いがけないタイミングで損傷するため注意したい箇所です。
この記事では、車の屋根が全損状態になった場合に知っておきたい対処法を紹介します。ボンネットやガラスなどと比較してあまり注目されない箇所ですが、万が一への備えが欠かせません。
車の屋根の状態によっては全損に該当する
車の屋根は他のボディ部分と比較して傷や凹みが目立ちにくいことから、修理をしなかったり損傷に気づきにくいこともあるでしょう。
しかし、屋根も状態によっては車の価値が著しく低下する「全損」に該当する可能性があります。全損になると修理にお金がかかったり、車の乗り替えが必要になったりすることが考えられます。
屋根は自然災害で損傷する可能性が高い箇所ではありますが、できる限りリスクに備えることが大切です。車周辺の環境を見直したり、保険を検討したり動き出しましょう。
車における全損の定義
まずは全損の定義から解説していきます。
一口に全損と言っても細かく2種類に分けられます。自分の車がどちらに当てはまるのか確認して適切な対応を取りましょう。
物理的全損は、車の修理が難しいほどに損害を受けた状態を指します。
先ほど紹介したように、全損は車の骨格部分が該当します。具体的な箇所としては下記の通りです。
- クロスメンバー
- サイドメンバー
- インサイドパネルやダッシュパネル
- ピラー
- 屋根(ルーフ)
- フロア
屋根の場合、ピラーの損傷から発生した凹みや修理なども該当します。
骨格部分の修理になると修理費用が高額になったり、期間を要したりします。さらに、修理後も乗っているうちに故障しやすい、トラブルが起きやすいといった懸念点が多いため慎重な扱いが必要です。
経済的全損は、車の価値が修理費用を下回る場合が該当します。
例えば、車の時価が50万円だったけれど、事故により屋根とピラー部分が破損し修理を行った結果、修理費用が80万円かかると言われたというケースが挙げられます。
この場合、本来の時価よりも修理費用が30万円高いため、経済的全損として認められます。
車の時価よりも修理費用が高いと収支がマイナスになってしまうため、修理だけでなく買い替えも視野に入れましょう。修理費用と同じ予算で中古車を購入できる可能性もあります。
物理的全損と経済的全損とは別に「分損」という概念もあります。
全損は物理的に修理できなかったり、修理がコストに見合わなかったりすることに対し、分損は修理金額が時価額を下回る状態を指しています。
分散の場合、車両保険の補償内容で修理が行えるため、修理費用が発生したり買い替えを検討したりする必要性は低くなります。
なお、車が盗難にあった場合も全損とみなされます。車が手元にない場合、価値がなく修理もできないという状態にあるため、全損と同様の扱いになります。
盗難の場合、しかるべき手続きをふむと保険金を受け取れるため、万が一の時は速やかに警察に届け出ましょう。
車の屋根が全損になりそうなケース
ここからは、車の屋根が全損になりそうなケースを4つ紹介します。
いずれもエリアを問わず起こりうるもののため、普段からリスクへの備えが欠かせません。
雹の落下による屋根の全損は起こりうる問題です。場合によっては車の廃車や買い替えが検討されます。
大気が不安定な状態で降る雹は非常に大きく、かつ硬いもののため車のボンネットや屋根を凹ませます。稀にこぶしほどの大きさの雹が降り、車の屋根が凹んでしまったというケースも見られます。
降る状態によっては凹みの範囲が大きく、全損扱いになる可能性もあるでしょう。気候変動は人の力で避けられないため、車を守る対策が必要です。
普段シャッター付きの車庫に車を停めている場合は屋根の損傷が起こりかねません。
例えば、シャッターを必要最低限の高さまでしか上げていなかった場合、見込みが甘く屋根がシャッターに当たってしまう可能性があるでしょう。また、シャッターが古くなっている場合、不意にシャッターが降りてきて屋根に当たる可能性もあります。
この場合、普段からシャッターの開け閉めを徹底したり、メンテナンスを行ったりなどの対策が大切です。
車の走行中に飛来物が落下し、屋根に損傷を受ける可能性もあります。実際に、台風が接近している時に飛んできた金属で屋根やボンネットが凹んだというケースも見られます。
車のボディは剛性が高いとは言うものの、風に乗って飛んできたものにより傷つく可能性は否めません。なお、飛来物の場合は所持者を特定できないことも問題の一つです。
例えば、台風でどこかから瓦が飛んできて車の屋根に当たったが、どの家のものか分からないというケースが挙げられます。
瓦の形や色からおおよその家は特定できますが、確証が持てず請求できなかったり近所付き合いを考えて請求をためらったりすることもよくある例です。
飛来物を避けるのはなかなか難しいため、天候によっては屋根のある場所への駐車やカーカバーの導入を検討しましょう。
車を止めているカーポートの倒壊により、車が損傷する可能性もあります。
例えば、地震によりカーポートが倒壊、積雪によりカーポートが潰れてしまうといった場合が挙げられます。また、災害時でなくともカーポートの経年劣化が進んでいたり、必要以上に負荷がかかったりした時も注意が必要です。
特に豪雪地帯ではこまめな雪下ろしを行い、カーポートに負荷をかけない意識が欠かせません。また、カーポートの雪下ろしを行っていても周辺の雪の影響も考えられます。
例えば、カーポートの横にある母屋の屋根雪が落ちてきた、基礎のコンクリートが弱く柱から曲がって倒壊したというケースも見られます。
カーポートが倒壊すると車の屋根だけでなく、車両全体が潰れたり損害を被ったりするため注意しましょう。
車の全損時に取るべき行動
ここからは、車が全損状態になった場合に取りたい行動を紹介します。
車の全損は屋根だけでなく他の部分においても起こりえます。もしもに備えて対策を知っておくと、慌てずに行動に移せるでしょう。
車が全損状態で修理が難しい場合、廃車手続きを行います。廃車手続きは車の登録を抹消し公道を走れなくするものです。
なお、この廃車手続きには「永久抹消登録」と「一時抹消登録」があります。
永久抹消登録は車を解体し会社手続きを行う方法です。一方、一時抹消登録は一定期間乗らない車の登録を抹消し、自動車税の支払いをなくすメリットがあります。
全損の場合は永久抹消登録を行うことがほとんどです。
永久抹消登録をする際は車の解体作業が必要になるため、解体業者に依頼しましょう。
また、永久抹消登録の手続きは廃車専門業者やディーラー、中古車販売店でも依頼することが可能です。解体業者が見つからなかったり、手続きが煩わしいと感じたりする場合は業者への依頼を検討しましょう。
解体作業が完了したら陸運支局に必要書類を提出します。永久抹消登録を行う場合に必要な書類は主に下記の通りです。
- 永久抹消登録申請書(OCR申請書第3号様式の3)
- 手数料納付書(手数料自体は無料)
- 所有者の印鑑(登録)証明書(発行から3ヶ月以内)
- 自動車検査証(車検証)
- 自動車登録番号標
業者に廃車手続きを依頼する場合は別途委任状が必要になります。
車検証の住所と現在の住所が異なる場合は別途必要になる書類があるかもしれません。もし必要書類が不明な場合は、陸運支局に詳細を問い合わせたり、国土交通省のホームページで確認しておいたほうが安心です。
なお、陸運支局は平日のみの開庁で場所によって時間が決められています。自分で手続きを行う際は事前に最寄りの陸運支局の情報を確認してから行きましょう。
車が全損状態にあっても修理して乗りたいという方は、業者に修理や見積もりを依頼しましょう。
車の状態によっては修理を受け付けてもらえない可能性もあります。その場合は修理を諦めて車の買い替えが必要になります。
なお、全損状態の車であっても部品だけの買い取りを行っているところもあります。修理が難しい場合はパーツ専用の買取業者へ依頼してみるのもおすすめです。
全損状態にある車を処分し、新しい車に変えたいと思った場合は、車を下取りまたは買取査定に出しましょう。
下取りは車購入の際に割引として適用される仕組みです。一方、買取査定は車の買取を前提とし金額を見積もってもらえます。
全損状態の車では価値が低くなるため、複数社に相談するのがおすすめです。2〜3社に候補を絞り、高い価格を提示してくれて信頼できそうな業者を選ぶとよいでしょう。
下取りや買取査定をして資金を少しでも確保できれば、新しい車の購入も叶うかもしれません。
車の屋根を修理する際の注意点
ここからは、車の屋根が全損状態にあり修理を考えている方に注意点を3つ紹介します。
修理して車に乗ると車購入の手間を省ける反面で将来、査定金額に影響する可能性があります。現在の状態だけでなく数年先を見通して廃車か修理かを選択しましょう。
車を修理し数年間乗った後に売却する場合、修復歴がある車は査定額が大幅に減額されます。減額は様々な条件によって決まりますが、数十万円の減額になる可能性もあるでしょう。
修復歴があって減額される理由としては「売却後に故障する可能性が高いこと」「修復歴のある車はニーズが低いこと」が挙げられます。
修復した車は現在問題がないと考えられていても、年数が経つうちにトラブルが発生しやすいとみなされます。また、一度事故や修復のあった車は「不吉」と捉えられ、購入するユーザーが少ないことも原因として挙げられます。
今、修理して乗れたとしてもゆくゆく買い取りに出す場合は査定額が低くなることを理解しておきましょう。
査定時に減額を避けたいからと言って修復歴を隠すのは厳禁です。修復歴を申告せず、売買契約を結んだ後にバレてしまうと瑕疵担保責任に問われ、売買契約が破棄になったり賠償問題に発展したりする可能性があります。
修理する際は、業者に修復歴に該当するか確認し、車の売却時は正しい情報を伝えましょう。
一度修理したとしても、全損車の場合は故障の可能性が高まります。
屋根をはじめとした骨格部分の修復は、一見綺麗に直したとしても、完全に元の状態には戻りません。そのため、少しの歪みが乗るうちに異変や故障につながる可能性が高くなります。
一度大掛かりな修理を行った車は定期的にメンテナンスを行ったり、少しでも異常が見られる場合は点検に出したりが欠かせません。
保険を使って修理を行う場合、等級が下がり保険料が一定期間高くなるデメリットがあります。
修理に保険を利用すると手出しの修理費用を抑えられますが、数年間保険料が高くなります。具体的な期間や金額は保険商品や修理の程度によって異なりますが、1年から3年程度が多いでしょう。
全損状態の場合、保険を使ったほうが費用を抑えて修理できますが、値上がりする保険料を担当者に確認しておくと、出費に見通しが持ちやすいでしょう。
車の屋根を守る対策
ここからは、車の屋根を守る対策方法を3つ紹介します。
車のトラブルを防ぐには普段からリスクを避ける行動が欠かせません。特に屋根部分は少しの工夫で守れるため、できることから実践しましょう。
車を駐車する場合は、できる限り屋根のある場所に停めましょう。上からの落下物を予防できます。
自宅にカーポートがある場合は少々手間でも、毎回カーポート内に駐車しましょう。また、天候の悪い日に商業施設に出かける場合は立体駐車場に入れると損傷のリスクを軽減できます。
特に雨や雪で路面の状態が悪い場合は、他の車がスリップしたり、視界不良で事故を起こしたりして巻き込まれる可能性が高くなるので注意しましょう。
自宅にカーポートがある場合は定期的に機能の確認をしましょう。特にゲリラ豪雨や地震の後はカーポートが損傷している可能性もあります。
また、今後カーポートを建てる場合は耐久性に注目することがおすすめです。参考までに、カーポートの耐用年数は15年程度と言われています。もちろん15年経ったからと言ってすぐに建て直す必要はありませんが、15年を超えるとメンテナンスが必要です。
耐用年数は使われている素材や設置場所、寒暖差によって大きく異なります。特にカーポートに負荷がかかりやすい豪雪地帯では、雪に強い補強材をオプションで取り付けておくとより安心できるでしょう。
雪の降る地域では、車の屋根やカーポートの雪下ろしをこまめに行いましょう。雪の重みで車が少しずつダメージを負ったり、カーポートの劣化につながったりします。
雪は一見軽いように思えますが、積もると屋根やカーポートに数百キロの重みが加わります。特に雪の後に雨が降るとさらに重さは増し、車やカーポートに負担をかけるでしょう。
近年は異常気象により、普段雪が降らない地域でも降雪が見られます。北陸や東北だけでなく、四国や九州で雪が降り話題になった年もありました。
車の屋根を守るには、車そのもののメンテナンスだけでなく、周辺設備のケアも十分に行いましょう。