徹底分析中古車相場
更新日:2018.11.14 / 掲載日:2017.12.21
【マツダ ロードスター】スポーツカー好きなら、あえて先代が買い? その意外な理由とは
先代ロードスター(NC型)ならではの魅力とは?
オープンスポーツカーの代名詞であるマツダ ロードスターは、2015年にフルモデルチェンジを受けて、現在は4代目(ND型と呼ばれる)。ND型は、ボディサイズを縮小して原点回帰をしたのが見どころで、最軽量のグレードだと車両重量が1トンを切り、排気量は歴代最小の1.5L(日本仕様、RFを除く)と、現代の水準から考えると非常に小型かつ軽量なのが特徴だ。初代のユーノスロードスター(NA型)も同じように軽くて、小さくて、軽快に走る楽しいクルマだったから、当時のファンはND型が発表されたとき、その洗練された外観と相まって、「あのときみたいに、もういちどロードスターに乗ってみよう!」と思ったひとは数知れない。実際販売も好調で、街中で見る機会も多いはずだ。
では、なぜ現行型ではなく、いま先代(NC型)に注目するのか。それはロードスターをリアルスポーツカーとして考えたとき、過去のロードスターからもっとも大きく進化しているから。原点回帰を目指したND型とは対照的に、こちらはスポーツカーに不可欠なボディ剛性、動力性能を高める方向を選んだ。だからサーキットなどでのスポーツ走行をするなら、むしろND型よりも好ましいと考えるひとも少なくない。とくに排気量は歴代モデル最大の2.0Lに拡大され、最高出力も170psと、少量生産された限定車などを除けば歴代で最高の値を誇る。一方シャシー面では、ロードスターの基礎となるパワー・プラント・フレームの断面をZ型にしてボディ剛性を高め、安定感の走りを実現した。
ちょっと難しい話になってしまったが、全4世代の歴代ロードスターのなかでも、NC型はとくにスポーツ寄りの設計となっていて、その立ち位置がほかの世代と異なっている。さらにコンディションのよい中古車が充実し、価格も手ごろだから、コンパクトスポーツカーとして、非常に魅力のある選択肢なのだ。
ベストバイのグレードおよび年式はどれ?
NC型ロードスターが登場したのは2005年8月で、2015年の生産終了までおよそ10年間販売された。これは歴代ロードスターでも最長。その間さまざまなモデルが登場し、ひと口にNC型と言ってもバリエーションは意外と多い。
グレードを整理すると、大きく分けて4モデル存在する。もっともベーシックで装備を抑えた標準車(2008年以降は「S」)、ビルシュタイン社製ダンパー、トルセンLSD、フロントサスタワーバー、17インチホイールを装着した「RS」、タンカラーのクロス製トップやレザー内装の「VS」、そして装備を簡素化したモータースポーツベース車「NR-A」が基本ラインアップ。トランスミッションは5速MT(標準車および「S」のみ)、6速MT、6速ATの3タイプを設定する。さらに、NR-Aを除く各グレードに、電動開閉式ハードトップの「RHT」が用意されるから、選択の幅はとても広い。
ここでは、ソフトトップ仕様のグレード別中古車平均価格を見てみよう。
グレード | 中古車平均価格 |
S | 92万円 |
RS | 120万円 |
VS | 82万円 |
NR-A | 127万円 |
デビュー時の新車価格は220万円~260万円だから、中古車は当時の半額以下の予算でねらえるのがわかる。ベーシックな「S」とレザー内装の「VS」の相場が逆転していることも興味深く、グレードごとの価格差よりもコンディションの良し悪しで相場が決まっているようだ。そのなかでも「RS」が高いのは、やはりいちばん売れるからだろう。とくにNC型は先に述べたように、走り重視のユーザーが多く、「RS」の需要が高い。ちなみに物件数がもっとも多いのもこの「RS」である。
次に、MT/AT比をチェックしてみよう。グーネットのデータによると5:1で、圧倒的にMTが多い。これも走り好きには嬉しい状況と言っていいだろう。
またNC型は10年間におよぶモデルライフのうち、2度のマイナーチェンジを行っている。最初の改良は2008年12月で、ツリ目が印象的なフロントデザインとなり、5連メーターやレカロ社製バケットシートの採用など、スポーツカーらしい進化を遂げている。さらにエンジンのレブリミット上限も引き上げられ、走りが一段と楽しくなった。続く2012年7月の改良では、フロントバンパーのデザインが改められ、スロットル制御プログラム変更による加速性能のアップなど、再び内外装と走りに手が加えられた。それを踏まえて、年式別の中古車平均価格をチェックしてみたい。
年式 | 中古車平均価格 |
2005年式 | 86万円 |
2006年式 | 90万円 |
2007年式 | 106万円 |
2008年式 | 123万円 |
2009年式 | 154万円 |
2010年式 | 171万円 |
2011年式 | 177万円 |
2012年式 | 171万円 |
2013年式 | 203万円 |
2014年式 | 217万円 |
これを見ると、マイナーチェンジ直後の2009年式と2013年式で相場がグンと上がっており、最終型フェイズでは平均価格が200万円以上とまだ高値。しかもこちらは物件数が少なく、ねらいにくいのが難。グーネットがオススメしたいのは、2008年12月以前の前期型だ。2006年式以前なら平均価格は100万円を切り、しかも物件のボリュームも前期型がもっとも豊富。
ロードスターの場合、度重なる改良はあるものの、エンジン出力など機関系はモデルライフを通して共通だから、どの年式でもロードスターの走りはしっかりと享受できる。なお、走行距離は3万km未満の物件が2割未満と、ここ最近は低走行の個体が減少傾向にある。比較的丈夫なクルマだが、ソフトトップの傷み具合は、購入前に必ず確認しておこう。
いまになってRHTが再評価? その相場動向をチェック!
NC型ロードスターから設定された「RHT(リトラクタブル・ハード・トップ)」は、電動開閉式のトップを備えるのが特徴。畳んだ屋根はシートバックスペースに格納するから、トランクスペースを犠牲にせず、オープンドライブが楽しめる。重たい屋根を持つため、ロードスターにはミスマッチなモデルかと思いきや、ふたを開けてみれば大ヒット。中古車もNC型ロードスター全体の35%ほどを占めている。その理由は、なんと言っても快適性。たとえスポーツカーでも、ATで快適に走りたいというユーザーが世界にたくさんいる。RHTは静粛性が高く、ワンタッチで屋根を開閉できる利便性と相まって、そんなカジュアルユーザーの声にしっかりと応えたモデルなのだ。また防犯面で有利なのも、RHTの大きな魅力となっている。
では、RHTのグレード別中古車平均価格を見てみよう。
グレード | 中古車平均価格 |
S RHT | 122万円 |
RS RHT | 159万円 |
VS RHT | 143万円 |
相場を見ると、ソフトトップよりも価格が高めで、その人気ぶりがマーケット上でも確認できる。もっとも物件が多いのは「RS RHT」で、逆にスタンダードな「S RHT」は少なめだ。RHTシリーズは、公道を走るような使い方なら、じつはソフトトップと比べても走りに大きな差はない。むしろメリットが多いとなれば、こちらも十分オススメできるモデルである。走行距離にこだわらなければ、100万円を切る物件も数多く揃っている。
初代から現行型まで、各世代別ロードスター相場を一挙紹介
「歴代ロードスターのなかで、どの世代がベストなのか?」という問いがあったとしても、答えを探すのは困難だ。4世代それぞれによさと欠点がある。初代のユーノスロードスターは、現代のオープンスポーツの金字塔と呼ばれる傑作で、1トンを切る車重と専用設計のシャシーが織りなす走りは、これぞライトウェイトスポーツと言える出来栄え。ただし快適性や実用性は、後世のモデルに大きく譲ってしまうのが難点である。
2代目のNB型は、基本的には初代の発展型。ボディ剛性が高められ、途中で吸気バルブタイミングを採用したことで、エンジンの吹け上がりも鋭くなった。さらにリヤウインドウのガラス化(NA型は傷みやすいアクリル製)、トランクルームにあるスペアタイヤの廃止など、実用面も大幅にグレードアップ! ただ初代ロードスターのアイコンだったリトラクタブルライトが固定式になるなど、クルマのキャラクター性では初代には敵わない。
3代目は、この記事ですでに述べたとおりだ。ボディサイズ、排気量ともにアップし、世界に通用する性能を身につけた……が、諸々の拡大傾向が、旧来のファンの心を捕らえきれなかった面もある。これと対照的に原点回帰した4代目は、動力性能よりも走る楽しさを重視。現代のライトウェイトスポーツカーのあるべき姿を提示した。欠点があるとすれば、中古車価格がまだ高いことだろう。
さて、そんな個性的顔ぶれの中古車平均価格を調べてみた。
世代 | 中古車平均価格 |
NA型 | 77万円 |
NB型 | 56万円 |
NC型 | 124万円 |
ND型 | 235万円 |
どの世代も物件は十分に揃っているので、いまでも購入は難しくない。ただNB型以前のロードスターは、その大半が多走行物件で、サーキットなどで酷使された個体も数知れず。フルノーマルの極上品を探すとなると、NC型以降の比じゃないくらい苦労するだろう。そして、そのような車両は価格も強気だから、上の平均価格はあくまで参考程度と言ったところだ。しかし、RX-7やスカイラインシリーズのスカイラインGT-R、S2000のように、同時代の国産スポーツカーに見られるような、極端なプレミア価格はついてないから、現実的な予算でも十分楽しめるクルマとなっている。
最後にもうひとつ。先日マツダはNA型ロードスターのレストアプログラムを発表した。これにより、欠品が続いていたマツダ純正のソフトトップをはじめ多くのパーツが新品で手に入るようになったため、いまあえてNA型を買い、それを直して乗るという道も開けた。もしかしたら今後、NA型の相場が上がるかもしれないから、気になるひとは心に留めておこう。