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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.05

スーパーカー大先生、池沢早人師 ミツオカ大蛇(オロチ)に乗る

ぜひ一度「生オロチ」を見てほしい

東京都江戸川区葛西にあるオロチ専門店では常にオロチが展示される。ぜひ一度「生オロチ」を見てほしい

東京都江戸川区葛西にあるオロチ専門店では常にオロチが展示される。ぜひ一度「生オロチ」を見てほしい

【本記事は2007年7月にベストカーに掲載された記事となります。】あれは忘れもしない’01年の東京モーターショー会場。一般入場に先立って行なわれるジャーナリストを対象としたプレスデーにて、その日一番の注目を集めたのはトヨタでも日産でもホンダでもなく、光岡自動車のブースだった。あれから6年、ついに夢の結実である国産スーパーカーオロチが走り出す。本誌は「スーパーカー」といえばこの人、まさにその言葉を全国区にした立て役者である池沢早人師氏に試乗を依頼するとともに、池沢氏自身の愛車でもあるフェラーリF430と比較までしてもらった。

あまりの美しさにハッとしてしまうほど

グラマラスで細部まで念入りに作り込まれたボディラインは、一度見たら忘れられないインパクトを持つ。パール系特別塗装は30万円のオプション設定だが、近くに寄って見るとあまりの美しさにハッとしてしまうほど。すべて職人さんの手塗りだそう

グラマラスで細部まで念入りに作り込まれたボディラインは、一度見たら忘れられないインパクトを持つ。パール系特別塗装は30万円のオプション設定だが、近くに寄って見るとあまりの美しさにハッとしてしまうほど。すべて職人さんの手塗りだそう

まず最初に、光岡自動車という富山の小さなメーカーが、1050万円という価格でスーパーカーを作ったことを讃えたい。噂には聞いていたが、実物を見てみるとその完成度に少なからず驚いた。正直いってもっと単純な造形で、安っぽいクルマなのではないかと思っていたからだ。「スーパーカー」と呼ばれるクルマには、いくつか条件がある。それは人によって違うだろうけども、私の場合はまず「スーパーカーと呼ぶにふさわしいデザインを持っていること」というのが第一にくる。そしてその条件を、オロチは充分満たしていると私は思う。フロントマスクの造形が特に複雑でいい。このクルマのデザインで特にすばらしいな、と思うのは、「どんなクルマにも似ていない」というところだ。最近はフェラーリやランボルギーニでさえ、「どこかで見たことがあるな」というカタチだ。しかしオロチは違う。デザインの独創性については、フェラーリにだって勝っているといえるのだ。今回私のF430と並んで街中を走っていたが、注目度は断然オロチのほうが高かった(担当注/撮影で訪れた葛西臨海公園の駐車場では、観光に来てた若者に「これなんていうクルマですか?」と再三聞かれました)。いよいよ乗り込んでみる。広大なサイドシルを乗り越えて車内に入る感覚はまさにスーパーカーそのもの。着座位置やミラーを合わせてみると、「視界」もいい。低くて狭くて「スーパーカーらしさ」が備わっている。Aピラーがドライバーに向かって攻め込むように寝ているのもいい。通常こうした視界を持つスーパーカーは取り回しの時に視認性の悪さで苦労するのだが、両サイドのフェンダーが盛り上がっているため、タイヤの位置がわかりやすいのはいい。意外と取り回しは楽だった。ボディサイズは全長×全幅×全高が4560×2035×1180mm。F430よりひと回り長く、広く、そして低い。やはり存在感はオロチのほうが上といえよう。内装の雰囲気もまずまず。革張りの継ぎ目はしっかりと作られているし、メーター回りの雰囲気も「オロチらしさ」を演出している。ただ2点だけ注文があって、まずスピードメーターが180km/hまでしかきれていないのは残念。もちろんリミッターが付くのは当たり前なのだろうが、こういうところが醸し出す「雰囲気」は大事にしてほしかった。ふたつめはシフトゲージやセンターコンソールの細かい部品に既製品(おそらくトヨタ車と同じもの)が使われているところ。価格を考えると仕方ない部分もあるけれど、これもスーパーカーらしさを考えると、ちょっと減点だ。まあもちろんそれを引いても合格点であることに変わりはないのだけれど。いよいよエンジンをかけ、走り出してみる。私のF430などと比べるとエンジンや足回りは「普通のクルマ」だ。例えばカローラやマークXと比べると若干足は固めのセッティングになっているものの、F430とは差が目立つ。私の理想とする足回りは(もう若くないこともあって(笑))ベンツAMGの固さなのだが、それよりももっと柔らかい感じ。タイヤサイズはフロント245/45ZR18で、リアが285/40ZR18。このサイズにしては乗り心地がよくて少し驚いた。

誰もが凝視せざるをえないリアスタイル

誰もが凝視せざるをえないリアスタイル。見とれてしまう

誰もが凝視せざるをえないリアスタイル。見とれてしまう

この柔らかさは評価が分かれるところだと思う。私はもう少し固めてもいいとは思うけれど、この「普通に乗れること」というのを大事にしたい人にはちょうどいい固さだとも思う。奥さんも運転できるスーパーカーだって、あっていい。トヨタ製のV6、3.3L(北米輸出用のクルーガーに搭載)は、いかにも「普通のクルマらしさ」のあるエンジンだった。音も加速もそのままトヨタだった。そもそも車重1.8tのクルーガーを快適に動かすエンジンなのだから、オロチの1580kgのボディを軽快に走らせることは充分できる。この点は開発陣の努力を讃えたい。メーカーのテスト値では高速テストで230km/h巡航を記録(180km/hでリミッター)。乗った感じではゼロヨンで14秒前半といったところだろう。ATのみの設定なのが惜しい。これは全般的に言えることなのだけど、(コスト的、台数的なことを考えると難しいとは思うけれど)光岡自動車はアフターパーツの開発に力を入れてほしい。トヨタ製エンジンは信頼性抜群ではあるけれど、エキゾーストノートがどうしても雰囲気を「日常」に戻してしまう(これは先述の「180km/hまでしかないメーター」も同じ)。ノーマルならこれで構わないしこれはこれで「ストレスなく普通に乗りたい」というユーザーには満足だろうけど、やはり「スーパーカーらしい雰囲気をもっと満喫したい」というお客さんも多いハズ。さてしかし、私はこのクルマをとても評価している。「それでも赤字」と聞いているが、なにより1050万円という価格設定が(庶民には遠いだろうけれども)ちょうどいい。800万円ではボディの継ぎ目や内装の処理がもっと安っぽくなってしまっただろう。1500万円では高すぎる。1050万円で買えるクルマという意味では充分「いいクルマ」だと思える。スーパーカーらしさの第一条件は満たしているのだから。それに何より光岡自動車の「夢をかたちにした」というような心意気がいい。フェラーリ社だってランボルギーニ社だって、設立当初は小さな町工場だった。「日本でも頑張ればこういうクルマを作れるんだ」と、在野に埋もれている第2、第3のオロチ予備軍に夢を与えたということを考えると、計り知れない功績だといえる。常にスーパーカーのことを考え続けた池沢氏らしいお話である。さて続いてはオロチシャシー開発責任者である寺尾公伸氏に、オロチ開発裏話を伺った。

エンジンはトヨタ製のV6、3.3Lをミドに横置きで搭載。北米向けのハイランダー(日本名クルーガー)に搭載されているエンジンで、力強いパワー

エンジンはトヨタ製のV6、3.3Lをミドに横置きで搭載。北米向けのハイランダー(日本名クルーガー)に搭載されているエンジンで、力強いパワー

オロチを最初に出品した’01年の時点では、NSXのシャシーを使っていました。もちろんその時点では(サイズがまったく違いますから)切ったり繋げたりで、とても市販できるレベルではありません。そもそも会社としても、市販できるなんて本気では考えていなかったでしょうしね。出展してみたら大反響で、’02年頃から社内の空気が変わってきました。しかし実際に作るとなるともう絶望的にハードルが高いわけで、「モーターショー出展車」と「市販車」とで、チェックしなければいけない項目がぜんぜん違う。目の前が真っ暗になりそうでした。それでもエンジンとミッションをどんなものにするのか決めないと話にならないので、ホンダさん、日産さん、トヨタさんの順で交渉していきました。ホンダさんからは「もうすぐNSX自体が絶版になるから無理」といわれ、日産さんは好感触だったんですが、最終的なOKが出る前にトヨタさんとの交渉がまとまったので、そちらに決めました。一番最初はウィンダムに載っていた3Lエンジンで開発を進めていたんですが、やはりもうちょっとパワーが欲しいということで、3.3Lにしてもらいました。何度もトヨタのエンジニアの方に来てもらって、なんとかエンジンに火が入った時は感動しましたね。オロチの400台という販売目標は、1年間で100台、それを4年間という計算です。それでペイするかって? もちろん無理です。全部売り切っても赤字でしょう(笑)。1050万円という価格は400台売るための価格で、赤字ぶんはウチの社長と会長の「夢代」だと思っています。オロチの最大の見所ですか?そりゃあエンジニアとしては、「ナンバーが付いて公道を走っていること」です。発表したのは昨年なのに、納車開始が遅れてしまったのは本当に申し訳ありません。昨年末の衝突実験で組み付け部分にミスが見つかり、やり直しに時間がかかってしまいました。それでも私にとっては最高のスーパーカーです。ぜひとも一度、見にきてください。

オロチバイヤーズガイド どんな人が買ってるの?

主要諸元

主要諸元

本文中にあるように、オロチは400台限定の完全受注生産となる。昨年10月の発表以来、現在(6月12日現在)受注台数は50台となっている。今すぐ契約しても納車は1年後になるとのこと。さてではどんな人が購入しているのか?「年齢層は本当にバラバラです。30代の方もいれば60代の方もいらっしゃいます。ご職業は詳しくは申せませんが……会社役員や自由業の方が多いですね。これまでメルセデスやBMWに乗っていた方、フェラーリにお乗りの方もいらっしゃいます。競合ですか? いっさいありません」とはオロチ営業マン。確かに池沢氏の指摘どおり、オロチはどんなクルマにも似ていない。競合するはずもないのか……。試みに見積もりをお願いしてみると、車両本体価格1050万円のオロチ、総支払額(乗りだし価格)は1120万6530円だった。東京都江戸川区には日本で唯一の「オロチ専門光岡ディーラー」(TEL 03-3817-7311)がオープンしている。常にオロチが展示されているので、興味のある方はぜひ覗きに行っていただきたい。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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