新車試乗レポート
更新日:2020.10.30 / 掲載日:2020.10.29
【試乗レポート マツダ MX-30】CX-30にはない、ふたつの個性
マツダ MX-30
文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス
新発想のSUVとしてデビューしたマツダMX-30。話題の多いこのモデルにさっそく試乗することができた。
「わたしらしく生きる」というキャッチコピーは正直なところ「何を言いたいのか分かるような分からないような……」という気がしなくもないが、それを“個性”と捉えるならば、クルマ自体の個性はいくつもある。大きなものはふたつ。ドアと駆動方式だ。
MX-30には従来のようなグレード構成はない。装備やオプションを組み合わせたり、セットオプションをセレクトする方法を採用している
取材車両のボディカラーはセラミックメタリック(3トーン)
観音開きする「フリースタイルドア」の使い勝手
フリースタイルドアを開くと柱のない広い開口部が現れる
ドアは、4枚のドアを備えるものの後席ドアは小さく、後方へ向かって開くタイプで、前席ドアを開けた状態でないと開閉できない。
そのかわり、前後ドアを同時に開くとセンターピラーのない広い開口部が実現。結論からいえば後席に人が乗り降りするのには向かないが、乗る時に後席へ荷物を置く(降りるときに取り出す)のには都合がいい。基本は2ドアで、後席ドアは補助的なものだと理解すればいいだろう。普通の4ドアと同等の使い勝手とはいかないが、2ドアよりはずっと便利だ。
クロスと合成皮革(グレー/ホワイト)のシート
MX-30 ラゲッジ
MX-30 ラゲッジ
MX-30 ラゲッジ
マイルドハイブリッドから販売開始。EVは2021年1月発売予定
パワートレインは2L直4エンジンにモーターを組み合わせた「e-SKYACTIV G」を搭載
もうひとつの個性はパワートレイン。2019年秋の東京モーターショーでは「マツダ初の量産電気自動車」として紹介され、日本でも電気自動車(EV)として発売されるものだと思っていたのだが……。正式に発売された日本仕様はなんとガソリンエンジン。そこへ小さなモーターを組み合わせた「マイルドハイブリッド」としてスタートした。
「あれれEVでは……?」と思ったら、2021年1月からは日本でも電気自動車の販売が始まるとのこと。さらにマツダの丸本社長はMX-30の発表時のスピーチにおいて「ロータリーエンジンを発電機として使用するマルチ電動化技術の開発を進め2022年前半から市場投入する」と明らかにした。マルチ電動化技術というのがハイブリッドなのか、プラグインハイブリッドなのか、それともレンジエクステンダーなのかは現時点では不明だ。しかし、ついにマツダの伝統であり、待望のロータリーエンジンが復活するというのだから楽しみすぎる。そんなパワートレインもMX-30の大きな個性だ。
今後のパワートレイン展開が興味深いMX-30だが、いずれにしろ現時点での設定はマイルドハイブリッドのみ。エンジンは一般的な2.0Lガソリンの「スカイアクティブG」で156ps。そこへ6.9psのモーターを組み合わせて「e-SKYACTIV G」と呼ぶ。ちなみにこのパワーユニットは日本初登場で、「モーターを組み合わせた(もしくはモーターのみの)パワートレインとする」というのがMX-30のこだわりのようだ。
参考までに、マイルドハイブリッドはトヨタ「プリウス」などに比べるとモーター出力が小さく燃費向上効果も少ないものの、最小限の価格アップで多少なりとも燃費向上を期待できるバランスの良さが魅力。242万円からというMX-30の価格もお手事感がある。
マイルドハイブリッド「e-SKYACTIV G」を試す
「e-SKYACTIV G」はアイドリングストップからの復帰がスムーズ
では「e-SKYACTIV G」に試乗してみよう。
結論からいえば、モーター感はまるでなく、普通のガソリンエンジンと変わらない運転感覚(これは他車のマイルドハイブリッドモデルと同じ)。ただ、停止からの発進加速ではモーターなしの2.0Lガソリンエンジンに比べてほんのわずかにトルク感があり、立ち上がりがスムーズに思えた(明確な差は感じられないレベルではあるが)。ここにモーター付きのメリットが出ているのかもしれない。
あと、一般的なアイドリングストップ車とはエンジン始動方式の違うことにより、アイドリングストップからの復帰は信じられないくらいスマートなのが好印象。これは明確なメリットだ。
これは2つの見方ができそうだ。ひとつは「モーター感がないのならハイブリッドとしての魅力に欠ける」というもの。もうひとつは「モーターを感じさせずガソリン車のフィーリングを保っているのはうれしい」というもの。対極でありそのどちらを受け取るかはその人次第だが、個人的には後者に感じられた。
操縦性は素直で、CX-30より全体的にやわらかい印象
運転感覚は、他のマツダ車と共通する素直さ、乗り心地のよさがある
今後、二酸化炭素排出規制の強化からパワートレインにモーターを組み込む「電動化」が避けられない。そんなとき、たとえばもしこれがMX-30ではなくスポーツカーの「ロードスター」だったとしたら。モーター感を出すよりは、ガソリンエンジンのフィーリングを邪魔されないことのほうが喜ばれるに違いない。そんな可能性を「e-SKYACTIV G」から感じることができた。
操縦性や乗り心地は、素直な動きなどマツダらしい仕立ての良さがありつつも、全体的には兄弟関係のCX-30より柔らかい印象。ドアなどとは違い、個性を主張していない気がした。
マツダ MX-30
■全長×全幅×全高:4395×1795×1550mm■ホイールベース:2655mm■車両重量:1520kg■エンジン種類:直4DOHC+モーター■排気量:1997cc■エンジン最高出力:156ps/6000rpm■エンジン最大トルク:20.3kgm/4000rpm■モーター最高出力:6.9ps/1800rpm■モーター最大トルク:5.0kgm/100rpm■サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム■ブレーキ前・後:Vディスク・ディスク■タイヤ前後:215/55R18