車の歴史
更新日:2021.01.21 / 掲載日:2021.01.21

国産エンジン歴史絵巻 TOYOTA 1960年代編

U型はパブリカに求められた厳しい要求性能(耐久性や最高速度100km/h以上など)とコスト制約を両立するため、コンパクトな697cc2気筒水平対向ユニットに、比較的高い圧縮比(7.2:1)を可能とするOHVが組み合わされている。走行性能についてもパブリカの軽量ボディ(580kg)のおかげもあって、最高速度は110km/hを記録するなど、国民車構想が想定していた性能をクリアしていた。

現代のエンジンに通じる技術が確立された跳躍の時代

U型(製造開始年:1961年)

  • スポーツ800に搭載される2U型は、シリンダーボアを5mm拡大することで排気量を790ccまで拡大。

  • 圧縮比も9.0:1に高めることで最高出力は45PS/5400rpm、最大トルクは6.8kg・m/3800rpmまでパワーアップしている。カタログ記載の最高速度も155km/hになる。

  • 冒頭のパブリカ。

  • U型の冷却システムは、フロント側に配置される電動ファンによりエンジン本体を強制的に冷やす仕組み。

  • 燃焼空気はエンジン上部のエアフィルターを介して内部に送り込まれる構造だ。

基本性能は著しく向上、伝統の直6エンジンも登場

 トヨタのエンジン刷新のスピードは1960年代に入るとさらに加速する。この時代にエンジンヒエラルキーも整理され、現代のトヨタに近いラインナップが確立されるが、いずれも語るに十分な個性的なエンジンが揃っている。
 1961年に登場したU型は、1950年代に国が掲げた“国民車構想”向けに開発された大衆車のパブリカ用のエンジンとして設計されたユニット。経済性や製造コストを考慮した結果、強制空冷の水平対向2気筒が採用され、排気量は697cc。最高出力は28PS/4300rpm、最大トルクは5.4kg・m/2800rpmを発揮する。当時の主力エンジンであるR型と比べると、スペック面は大きく見劣りするが、半球型燃焼室を持つクロスフロー弁配置や空冷ファンを用いる強制冷却構造が採用されるなど、安価で丈夫という当初の目的は達成していた。ちなみにトヨタ初のスポーツカーとなったスポーツ800にもこのU型が採用されている。ただスポーツ800のエンジンは排気量が790ccに拡大され、性能アップのためツインキャブ仕様に変更されている。それに伴い、最高出力は45PS/5400rpm、最大トルクは6.8kg・m/3800rpmに向上している。
 また小型車規制枠(搭載エンジンの排気量上限が1500ccから2000ccへ)が変更されたことを契機に、2リッタークラスの存在感が高まったのもこの時代だ。1965年に2代目クラウンに投入されたM型エンジンは、1988cc直列6気筒にトヨタ初採用となるSOHCが組み合わされ、最高出力は105PS/5200rpm、最大トルクは16.0kg・mを発揮。2つのキャブとハイオクガソリン仕様が組み合わされる上位ユニットは125PSまで出力向上が図られるなど、当時としては比較的自由度の高い設計ができることも強みとしていた。実際にこのM型は、様々な改良を加えられ続けて歴代クラウンに採用されたほか、マークIIやソアラ、スープラなどの上級モデルを中心に1990年代半ばまで採用されている。
 また初代カローラの登場に合わせて開発された直列4気筒のK型も、1960年代を代表するエンジンの一つ。U型と同じく大衆車に搭載することを前提としたため、比較的コンパクトに設計できるターンフロー構造のOHVを採用するが、5ベアリングのクランクシャフトやアルミ素材のシリンダーヘッドを用いることで、高回転時でも燃焼効率を一定以上のレベルに保つことができる工夫も施された。また排気量を1077ccに設定しライバルのサニーに対してプラス100ccほどの余裕を持たせることで、動力性能の余力感も強めている。カローラはサニーとの熾烈な競争を繰り広げたことでも有名だが、最終的にカローラが勝利したのは、従来のエンジン以上の性能を詰め込んだK型の貢献も大きかったはずだ。ちなみにこのK型は多くの小型車に採用にされ、息の長い活躍を見せるエンジンである。

M型(製造開始年:1965年)

1965年から1990年代半ばまで、約30年近く製造されていたM型。新開発された直列6気筒には半球形の燃焼室が与えられ、動弁機構は吸排気効率が高いSOHC(シングルオーバーヘッドカムシャフト)が採用されるなど、現代のエンジンに近い設計が注がれている。時代が進むにつれDOHCやターボなどスペック向上を可能とした先駆性を取り入れることができたことも特徴の一つ。搭載車両もクラウンを筆頭に2000GTやマークII、ソアラなどトヨタの看板モデルがズラリと並んでいる。

  • M型エンジンの存在感を一気に高めたのは、2000GTに搭載された3M型だ。ヤマハ発動機がクラウン用の2L直列6気筒のM型をベースにDOHC化された3M型は、ソレックスの3連キャブレターなどのチューニングも施され、最高出力は150PS/6600rpm、最大トルクは18.0kg・m/5000rpmを発揮。

  • 高回転域までスムーズに回りきるDOHCエンジンの走りは、多くのクルマ好きから絶賛されている。

  • 1965年、2代目クラウンに投入されて以来、直列6気筒のM型エンジンは、クラウンにとっても欠かせないエンジンとして年月を重ねてきた。

  • この3代目クラウンにはSOHCベースながらもハイオクを用いて125PSを発揮する高性能グレードも設定されている。

  • 1981年に発売された初代ソアラは、2759ccまで拡大された5M-GEU型を搭載。

  • 目玉のDOHCには吸排気弁の隙間を自動的にゼロ調整するラッシュアジャスター機構を採用するなど、高い性能と耐久整備性を両立したことも知られている。最高出力は170PS/5600rpm、最大トルクは24.0kg・m/4400rpmを発揮。

  • 1986年に発売された2代目ソアラに搭載される7M-GTEU型は、長い歴史を持つM型の集大成ともいえる高性能ユニット。

  • 2954cc直列6気筒DOHCはターボ化され、最高出力230PS/5600rpm、最大トルクは33.0kg・m/4000rpmを発揮。ハイパワー時代の到来を告げる先駆者としても名高い存在だ。

K型(製造開始年:1966年)

  • K型が採用したシリンダーヘッドの片側に吸排気口を設けるターンフロー構造は、エンジンそのものをシンプルに小さく設計できるメリットがあるが、高い回転域で吸排気効率が低下する弱点を持つ。そこでK型はハイマウントカムシャフトを採用することでブッシュリフト量の増大を図るほか、クランクシャフトのベアリングを5つ備えることで、高回転域でも剛性を確保し性能低下を極力抑える工夫が施されている。この優れた基本性能もあって、後年、SOHCエンジンが主流となった時代においても、OHVのままスターレットやライトエースに採用され続けている。

  • 初代カローラ用に設計されたK型は、1077cc直列4気筒OHVで最高出力60PS/6000rpm、最大トルク8.5kg・m/3800rpmを発揮。エンジンのマウント位置も助手席側に20度ほど傾けることで重心を低く抑える工夫が施されている。ちなみにカローラの開発初期には従来のP型を搭載する案もあったが、古い設計のエンジンを嫌った開発陣の反対により、K型の開発がより加速したという逸話もある。

  • 5ベアリングクランクシャフト。

  • ハイマウントカムシャフト。

V型(製造開始年:1964年)

1964年にトヨタとしても、国産メーカーとしても初のV型エンジンとして世に送り出されたV型。オールアルミ製のクラウン・エイト用は、2599ccV型8気筒OHVで最高出力は115PS/5000rpm、最大トルクは20.0kg・m/3000rpmを発揮。ちなみにこのV型は1967年に発売された初代センチュリーにも採用され、1997年まで製造されている。

提供元:オートメカニック

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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