【トヨタ 86／スバルBRZ】走り好きに朗報！　100万円台の予算で買えちゃいます

　「マニュアル車」、「後輪駆動」、「2ドア」。これは、今も昔も小型スポーツカーの三種の神器である。最近、スポーツカーが少ない…と嘆くひとが多いかもしれないが、1000万円以上の価格帯はむしろ新型スポーツカーは増えている。でも、20代までの若者がなんとか買える100万円~150万円のクルマとなると、ため息が出るほど数が少なくなった。まず、この予算だと新車はまず絶望的。となると中古車になるが、これまた意外と価格が高くて、良質な物件のクルマをねらうとなれば、たとえ10年落ちでも選択肢が少ない状況なのである。

　2012年、トヨタはそんな状況に一石を投じるべく、「86」というコンパクトスポーツカーを発売した（なおスバルからは姉妹車であるBRZもデビュー）。前述の、スポーツカー三種の神器はきちんと揃った待望のモデルだったが、装備を簡略化した最廉価仕様でも199万円、標準グレード「G」ですら241万円だったから、新車当時は若者にはとても手が出る価格帯ではなかったのだ。そんな理由もあって、86は経済的にゆとりのある40代以降のミドルエイジ達が、かつての「AE86型 カローラレビン／スプリンタートレノ」を懐かしんで購入するケースがほとんどだった。若者に乗ってほしいクルマだけど、メーカーのもくろみどおりにはいかなかったのである。

　86は、コンパクトスポーツカーとしての完成度が高いクルマで、ストリートで乗っても楽しいし、ちょっとイジって、サーキットで草レースするのにも向いている。それゆえ登場から5年経っても全体の相場は、じつはデビュー当初からあまり変わらない。しかし、中古車物件数は増えているのも事実で、最近は価格帯の下限が広がっている。つまり高年式、低走行車は相変わらず高いが、根気よく探していけば、100万円台前半の予算でも買えるのである。これなら、まだ20代の貴方だって、頑張れば買えそうな気がしないだろうか？

　あと、トヨタ 86には、兄弟モデルとしてスバル BRZが存在する。外観は微妙に異なるが、基本的には同じメカニズムを採用しているので、スバルファンならこちらも気になるはず。今回は、中古車物件が豊富な86をメインに相場情報を掘り下げ、最後のセクションでBRZにも触れていく。

　86は、前述のように専用のFRシャシーに、200馬力のスバル製2.0L 水平対向4気筒エンジンを搭載。トランスミッションは、6速MTまたは6速ATから選べる。グレード体系は、装備を徹底的に省いた「RC」、標準グレード「G」、上級グレード「GT」、そしてトップモデルの「GTリミテッド」が用意されている。どのモデルでもエンジンなどの主要なメカは同一だから、動力性能に大きな差はない。ただし2016年の改良以降、6速MT車は207馬力と微妙にパワーアップしている。また、「GT」以上のグレードは17インチアルミホイール（「G」は16インチアルミ、「RC」は16インチスチール）が装着されるほか、トルセンLSDも標準装備。さらに「GTリミテッド」は、スポーツブレーキパッドなどが与えられるなど、足まわりを中心に機能的な差があるので注意しよう。

　では、まずグレード別の中古車平均価格の違いを見ていこう。

●RC：192万円
●G：171万円
●GT：199万円
●GTリミテッド：206万円
※中古車平均価格はグーネット2017年9月28日現在のデータによる。

　もっともお買い得なのが「G」で、「GT」、「GTリミテッド」の順に価格が高くなっていく。中古車は、グレード間の価格差が新車時よりも小さい傾向にあるが、86の場合は上級グレードの高さが際立っており、その法則はあまり当てはまらないようだ。物件数は、「RC」はもっとも少なく、「G」、「GTリミテッド」、「GT」の順に多くなっている。とくに「GT」は市場の大半を占める。

　物件数と相場を考慮すると、ねらい目のグレードは「G」または「GT」のどちらか。この両者はホイール径とLSDの有無という差があるので、クーペの雰囲気で乗るカジュアルユーザーなら前者、スポーツドライブを積極的に楽しみたいユーザーなら後者を選びたい。

　あと気になるのは、MTとATの相場動向だろう。MT：AT比は6：4で、MTのほうが多い。また中古車平均価格は前者が222万円、後者が195万円となっており、MTのほうがやや高めの相場となっている。いずれにしても、走り派、雰囲気で乗りたい派のどちらも買いやすい状況と言えそうだ。

　冒頭にも述べたが、86は人気のあるスポーツカーで、まだ現役のモデルなので中古車相場は全体的に高値。だから、手放しで「安いクルマです！」とは決して言えない。でも、年式や走行距離を見極めれば、決して無理なクルマでもない。まずは、年式別の中古車平均価格と、それぞれの価格帯をチェックしてみよう。

●2012年式
中古車平均価格：189万
中古車価格帯：110万円~220万円

●2013年式
中古車平均価格：196万円
中古車価格帯：140万円~250万円

●2014年式
中古車平均価格：204万円
中古車価格帯：118万円~255万円

●2015年式
中古車平均価格：246万円
中古車価格帯：139万円~270万円

●2016年式
中古車平均価格：246万円
中古車価格帯：188万円~309万円

●2017年式
中古車平均価格：246万円
中古車価格帯：238万円~300万円

　86はスポーツカーゆえ、年次改良を繰り返して進化し続けている。とくにボディ剛性や足まわりは、頻繁に手が入っているようだ。2016年7月には内外装のリニューアルを含む大改良が行われ、ストリートでの快適性を増しながら、より気持ちのよい走りを実現した。それを踏まえて上記の相場動向を見ていくと、やはり注目したいのはデビュー年の2012年式の安さ。じつはこの年式がもっとも物件数が豊富で、平均価格は189万円と現実的なプライスゾーンにある。さらに、修理歴無しという条件で絞っても価格の下限が110万円となっていることに注目。150万円以下の物件もこの年式ならちらほら存在するから、新車のコンパクトカーを買う予算があれば、86だって乗れてしまうのだ。ただし、走行距離は、この価格帯だと5万km前後かそれ以上となるのは覚悟したい。3万km未満の低走行車をねらうなら、180万円以上の予算は用意しておこう。

　ちなみに、2016年7月以降の後期型が気になるひともいるはず。こちらは物件数がまだかなり少なく、平均価格は250万円が相場。中古車としてのお買い得感はないので、買い時はしばらく先になりそうだ。

　トヨタ86とスバルBRZは、シャシー＆メカニズムを共有する姉妹車である。ただ、よく見るとエクステリアデザインが若干違っており、ヘッドライト、バンパー、リヤコンビランプ形状が差別化されている。そのほか、じつは走り味も異なっているのをご存知だろうか。エンジン特性は同じだが、サスペンションの味付けは、86がややオーバーステア傾向となっており、BRZはリヤがどっしりした走りとなっている。簡単に言えば、クルマのコントロールを楽しみたいなら86、グリップ走行でタイムを出したいならBRZという感じだろうか。

　また、中古車市場の物件数も異なっており、BRZは86の3分の1程度と、やや少ない。しかし、相場は86とほとんど変わらないので、好みに応じた選択が可能となっている。トヨタファンとスバルファン、ともに楽しめるのがこのクルマの大きな魅力だ。

　ただ、限定車の類は両社オリジナルなモデルが存在することも知っておこう。86のスペシャルモデルと言えば、2015年12月に100台限定で販売された「GRMN」が有名。こちらは、Gazoo Racingが開発したチューニングモデルで、吸排気系チューニング、エンジン内部パーツの低フリクション化によって最高出力は219馬力にまで高められた。リヤウイング、カーボンボンネットを装着するなど、かなり本気のモデルなのだが、中古車平均価格は618万円と超高額。プレミア価格が付いている。一方、BRZにはSTIが手がけた「tS」が存在する。こちらはSTI製ホイール、サス、ブレーキ、大径ドライブシャフト、レカロ社製シートなどが与えられた300台の限定車で、中古車平均価格は290万円となっている。予算があれば、このようなモデルをねらってみるのも楽しいだろう。