オイル交換
更新日:2017.12.08 / 掲載日:2017.12.08

禁断のクルマ実験室 ガソリンエンジンを軽油や灯油で作動

直噴なら、ポート噴射より低質燃料が使いやすい!?

 一時期、セルフガソリンスタンドで誤給油が多発し、軽自動車に軽油を入れるという事例が話題となっていた。軽自動車もガソリンエンジンを使っているので、軽油を入れたら、ガソリンとの混合比によっては重大なトラブルを起こす。
 ここでは、そのような誤給油を再現してみるという狙いのほか、ビスタの3S-FSEは直噴ゆえに軽油や灯油にもある程度対応できるのでは?という興味もあってテストを実行してみた。このエンジンは、トヨタ初の成層燃焼直噴ということもあり、世界初のベーンタイプ吸気VVT、独立スワールポート、スワールコントロールバルブ、深皿キャビティピストン、高圧スワールインジェクターなどを備えていて、燃焼をよくするであろうメカが多く付いている。直噴であれば、燃焼室へ直接霧化した燃料を送れるので、軽油や灯油のような粘度があって揮発性がない燃料に対しても有効だと思われる。大昔のテストではポート噴射式エンジンに灯油を3割くらい入れたところで白煙が大量に出て、思うように走れなくなった記憶があるが、技術進化がこの壁を突破してくれるかもしれない。
 テスト方法は、ガス欠症状が出るまで走ってタンク内のガソリンを極力少なくしたところから軽油を少しずつ足していくことにした。ガス欠の残量はせいぜい1Lくらいでは?と推定するが、まず3Lはないだろうから、準備した軽油を5L足せば、最低でも50%を超える濃度になると思う。
 初回は、軽油30%混合ガソリン1Lを足して走ってみたが、ほとんど変化が見られず普通に走ってしまう。そこで、軽油を足していくのだが、3L加えたところで黒煙が出てノッキングも大きくなってきた。その音は、まさに昔のディーゼルそのもので、カンカンとした甲高いもの。最後は残った軽油を全部入れてみた。そうするとアイドリングからカラカラ音が出て、アクセルレスポンスもひどく低下してくる。当然、煙の量、臭いも強いが、その状態でも走れてしまうのだ。濃度的には、軽油が大半になっているはずだが、さすが直噴の威力はスゴイ。
 ただし、一旦冷えてしまうと始動できなくなるので、冷間始動と暖機はガソリンをインテークに直接入れて行った。それでも、徐々に調子は悪化して、失火が目立つようになり、ついに初爆しか起こらないようになった。やはり長続きはしないのである。


※専用施設等において専門家の指導のもと取材しています。

ディーゼルと同じ直噴……ではないが、軽油もイケるのでは?

世の中には、D-4のDをディーゼルと勘違いしている人もいそうだが、ホントに軽油を入れたらどうなる?

最初はおっかなびっくりで、ガソリンに軽油を30%混ぜたものを給油するところから始めた。

灯油も使ってみたが、ディーゼルオンという潤滑剤を併用(ガソリン直噴では用途外)。

D-4パワー炸裂!音もディーゼルと同じになってきた!!

ガス欠までガソリンを使い切ったとはいえ、ガソリンと軽油の混合燃料を足す程度では、調子の変化が小さい。

そこで、軽油100%をジョッキで1Lずつ足していった。3Lくらい足すと、ノック音や黒煙が昔の不調なディーゼルのようになってきた。

室内でも臭う!

冷えると始動できないので、ガソリン直入れでかけて暖機

ほとんど軽油に切り替わってからは、朝の始動が大変。サージタンクのバキュームパイプより、スプレーのガス(LPG)やガソリンを垂らしてエンジンを始動する。

ここで習得したのはオイラーを使った「指キャブレター」。エンジンがかかったら、指からガソリンを伝わせて吸引させる。

指から飛んだガソリンは、パイプ付近で負圧によって白っぽくなり、霧化が始まっている。意外にも安定した回転が得られて、暖機も順調に進んだ。

作動は長続きせず、3気筒が死亡。ムリな始動で強烈なバックファイアーが発生

次の日の朝は、指キャブレターでも始動しにくくなった。

ぐずるエンジンを無理やり回していると、コレクター内で強烈なバックファイアーを起こし、パイプから火が出てきた。エアクリーナーへも煙が到達。

また、パルセーションダンパーから燃料漏れが発生。これでますますガソリンが使えなくなった。

<実験結果>軽油濃度が高くても作動するが、激しいノッキングと出力低下に見舞われる

ビスタの加速特性を、ガソリン、軽油添加初期、軽油濃いめの3パターンで比較。軽油添加初期では、全開加速すれば差が出るという程度で、普通の走りは可能。しかし、軽油が高濃度になってくると、徐々に出力低下が目立ち、ガソリン比で半分以下の加速性能となる。グラフ上では緑がそれだが、加速Gが途中で0.05Gまで下がって、失速しているのが分かる。

<実験結果> エンジン作動不能の原因を調査!カーボン堆積でスパークプラグが最悪の状態に

電極でスパークしたのは1本のみ

灯油を使うと、かなりのロングランが可能

 エンジン不調の原因を探るため、まずは点火プラグをチェックした。このエンジンは、長い吸気マニホールドがヘッドカバーに被さっているので、マニホールドの分割から始めなくてはならない。余談だが、外したコレクターにはコールドスタートインジェクターがあり、ここに別経路でガソリンを流すようにすれば、冷間時専用の燃料系を比較的簡単に付けられそうだ。
 プラグを抜いてみると。4本とも見事に真っ黒。ガソリン使用時でも、ごく短時間の始動停止を繰り返していると、プラグが汚れてしまい始動不良になることがあるが、軽油で使ったプラグはカーボンの質が違っているようだ。
 外したプラグにスパーク装置を繋いでテストしてみると、電極でスパークしたのは1本のみ。ほかは、絶縁体にリークしたり、ネジ径部内側でスパークしている。これではたとえガソリンを供給したとしても始動しないのは当たり前。不調の原因は異常なカーボン堆積による絶縁不良だろう。
 そこで、カーボンをトーチで焼き切ってから、テストすると4本とも電極でスパークするように回復。エンジンに戻すと、今までの不調がウソのように一発で始動してスムーズに回り、吹け上がりも問題なし。
 そこで、灯油を入れて走らせてみる。 灯油は、昔の農発では当たり前に使われており、軽油よりもカーボン生成は遥かに少ないはず。 走行を始めると加速初期にカリッとノッキングするものの、フィーリングはガソリンに近いもので、普通の加速は難なくこなしてくれる。走行中にガス欠(灯欠?)を起こしたが、そこで補充したのは灯油のみ。それまでの軽油もあり、残留ガソリンはなくなっていると思われるが、再始動も問題なくできた。
 短時間であれば、直噴と灯油のマッチングは悪くない印象だ。灯油のオクタン価は40程度なので、大幅にパワーダウンしているだろうが、一般走行では必要十分なパワーを発揮していた。これはビスタが電子制御スロットルだから感じにくいのかも。問題は、排気臭が強烈なこと。軽油とは違う、いかにも不完全燃焼した感じの生臭いものなのだ。

インテークマニホールドを外してスパークプラグをチェック

インテークマニホールドは2分割式で、ヘッド周辺の作業を行えるよう考慮されている。

コールドスタートインジェクターもあり、コレクター内へガソリンを吹くようになっている。

プラグは真っ黒で、一本のみ電極でスパークでき、接地電極に白い点(カーボンが飛んだ部分)がある。スパークさせると、温度上昇して煙が発生する。

絶縁体へリークした場合

プラグの奥でスパークしているのもある

電極でスパークしないものでは、奥でスパークしているものもある。ジーッという音を立てながら、スパークが左右にランダムに動いていて、時々カーボンが燃えて明るい光を発生していた。

カーボンを焼き切ると、再びスパーク!!

トーチで十分加熱してカーボンを焼き切ると元通りに電極でスパークするようになった。軽油ではカーボン堆積対策が難しそう。

プラグをクリーニングしたら、これまでと変わらず一発始動で、走りも快調。この時は灯油100%で走行しているが、軽油のような不調は起こらなかった(長期では、いろいろ起こるかもしれない)。





提供元:オートメカニック


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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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