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パーツ取付・交換
更新日:2017.12.20 / 掲載日:2017.12.20

スバルサンバーを懐走仕様! ブレーキシリンダーOH

SUBARU Samber V-KV3[1995]

3月末車検で洗浄だけ行ったブレーキまわり。過去にどのような状況だったか知るべくもなく、ゴム製品は新しいほうがよいとブレーキまわりのOHを敢行。意外にも最近メンテされていたようでゴムまわりはほぼ健康だった。昔は定期メンテ必須だったドラムブレーキのカップ交換を詳細に解説してみたぞ。

ドラムブレーキのシリンダーカップ交換は結構複雑だぞ

 3月末に動体のほうがメンテしやすいということで急遽車検に通したKVサンバーだが、目的:車検通過ということで、保安基準を満たしていればいいというメンテしか行っていなかった。その中でもブレーキは最重要項目であり、動いたものが止まらないほど危険極まりないものはない。そこで外観洗浄だけ行ったブレーキをOHしてみた。フロントディスクブレーキは構造が簡単なのでOHしやすいのだが、リヤドラムブレーキはちょっと構造が複雑で、さらに外からは動作が見えないなど、メンテビギナーには触れたくない部分だ。その昔はブレーキまわりのカップなど、ゴム製品は車検ごとの定期交換が義務づけられるほどだったが、パーツの精度や品質が向上したおかげで定期交換部品からは外された。とはいえゴムは劣化するパーツであることに間違いない。
 23歳を迎えるサンバーはきちんとディーラーメンテを受けていた車両なので、23年間そのままということはないはずだが、ブレーキトラブルでご臨終は避けたいところ。まずはリヤブレーキから手をつけてみることにした。
 サンバーは働く車ということで、メンテの頻度が少なくてすむドラムブレーキをリヤに採用したと聞く。ブレーキライニングの減りがディスクに比べて少なく、ほぼメンテフリーということらしいのだが。
 ブレーキライニングをドラムに押し付ける役割をしているのがホイールシリンダーという油圧作動のピストンで、ペダルを踏むとピストンが飛び出して、ブレーキライニングをドラムに押し付ける。このホイールシリンダーのピストンにゴムパーツが使用され、ブレーキフルードの気密を保っている。
 ドラムに隠れていて普段は見ることができないという点がデメリットで、万が一フルード漏れが滲んだように発生した場合には目視で確認できないのだ。盛大に漏れてしまえばブレーキが利かないばかりか地面にシミができるので分かるが、微妙なレベルだと分かりづらい。本来はこの段階までに交換しておきたいパーツなのだ。
 今回は新たにKV系を入手したというビギナーにも分かりやすく、写真点数を多くしてみた。ブレーキまわりメンテでの失敗は危険が伴うので、できれば経験者にそばについてもらうのが一番。しっかり作動確認を行いながら、確実な作業でブレーキまわりのメンテを完了させてほしい。次号ではブレーキライニング交換を予定しているので、じっくり読んでイメトレだ。

KV系のリヤドラムは、ドライブシャフトがドラムに差さっている構造なので、センターロックナットを緩める作業から分解は始まる。

まずはブレーキフルード流出を最小限にするため、ゴムの部分でホースピンチを使ってロックさせる。プラ製よりも金属製のほうが確実。

センターロックナットに差さっている割りピンは太いので爪を起こし、ニッパーなどで挟んでテコの応用で引き出して抜く。再使用不可。

ロックナットは36ミリ。インパクトレンチがない場合は割りピンを抜いた段階でタイヤを装着してブレーカーバーを使って緩める。

インパクトレンチを使う場合は、この段階までサイドブレーキを強くかけてドラムの空転を防いでおく。意外と忘れがちだ。

ロックナットを外すとコーンワッシャーが入っている。組み立て時にOUTの刻印が外になるようにすることを忘れずに。

構造
ドラムを外したブレーキ全体の構造図(写真)。組み立て時に迷ったら、まずこの図に戻って確認することが大切。意外と知恵の輪状態になることも……。

1)ロックナットが外れたら、サイドブレーキをリリースして、ちょうど根元にある調整ボルトをドライバーで緩める。10回転緩めたことを記憶。

2)ドラムが手で抜けてくるはずだ。固着している場合はプラハンで周囲を軽く叩く。それでもダメならタイヤをつけて揺すってみる。

3)3月末車検だったので、その後約半年間で溜まったブレーキダストが抜けたドラムに残っていた。結構な量で、ちゃんと利いていることを確認!?

4)ドラムが外れるとハブベアリングとドライブシャフトスプラインが露出してしまうので、洗浄時のグリス流出防止のために保護する。

5)ブレーキライニングを固定しているバネは外しにくい。バネがフローティング状態なので、「押してつまんで90度引く」をイメトレ。

6)目視で洗浄前にブレーキシリンダーにフルードの漏れがないかをチェック。漏れていればこの辺りがべっとり濡れていたりする。

7)ライニングがフリーになったら、アッセンブリーごと下にスライドすると、上下の爪から外れるので、シリンダー側を手前に引く。

8)サイドブレーキワイヤーが裏側で固定されているので、バネをラジオペンチでずらすようにするとワイヤーの頭が抜けてくる。

9)ダストキャップをめくるとシリンダーピストンが抜けてくる。固着している場合どちらかのピストンは動かないこともある。

10)左右のピストンはフリー状態。ピストン途中に見えるのがカップシール。

11)フルードは水分を吸収するのでピストンのサビが目立つ。カップシールはいくらか劣化のヒビが見られるものの、開き具合などは良好。

12)社外品のカップシールキット。これはミヤコ製。5/8サイズのものであればほぼ同じで、心配なら純正をオーダーしてもいい。

13)ピストンはスムーズに動いたものの、シリンダー内部は若干腐食していたので、ホーニングブラシをドリルに装着して内部を洗浄。

14)ストレートのブレーキシリンダーブラシもある。24ミリサイズを使用。洗浄だけであればこれ。内部損傷の場合はホーニングする。

15)シリンダー内部を覗いてみると下部に若干虫食いの跡があるが、カップシールが移動しない中央部分なので、洗浄だけにとどめた。

16)ピストンはシールをカットして外し、#400耐水ペーパーで円周方向にサンディング。縦方向はグリスが流れてしまうので絶対に不可。

17)ざっと周囲を磨くとサビが取れるはず。あまりに腐食やサビがひどい場合はピストンごと交換してしまったほうがいい。

18)ピストン先端の虫食いはどうしても取れなかった。触指で平らになるところまで確認、シールよりフルード側なのでそのまま使用。

19)コーンにグリスをたっぷり塗り、シールをスライドさせて広げてピストンに押し当てながら一気にシールを移動させると簡単にはまる。

カップ装着にはストレートのシリンダーカップコーンを使用。これがないとシールを広げるのが大変なので、ぜひとも購入したい。

ブレーキグリスは安心のWAKO,SスーパーSGを使用。流れ出ることがなく長時間安定した粘度があるのでいつもこれを使っている。

シールの向きを確認しながらダストキャップを取り付けて裏返しにしておくと、ピストン挿入が楽になるというウラワザ。

20)ピストン全体に薄くグリスを塗って片側をシリンダーに挿入し、軽く押さえながらスプリングと反対側のピストンを入れる。

21)ダストキャップをこの状態で元に戻すと、溝にはめやすい。特に裏側がきちんとはまっているか確認。ピストンを回すと分かる。

完成!
22)全体を洗浄してあるのはもちろんだが、まるで新品のように綺麗になった状態。当分見ることはないので、しっかり目に焼き付けよう。

23)組み上がったら、ピストン左右をつまんで左右に揺すったり、押したりして、動きが滑らかであることを確認しておく。

白いブレーキグリスを塗り終えた状態。次はライニングの組み込みへ。

あまりにも腐食が多い時はホイールシリンダー交換も視野に

 ドラムブレーキのカップ交換はそこにたどり着くまでが結構複雑なので、実作業では頻繁に写真を撮影しておいて迷ったらそれを手がかりに確認するというのが基本かもしれない。なおKVサンバーはドラムにハブボルトが付いているタイプなので、ブレーキライニングの取り外しが比較的容易だ。
 ホイールシリンダーをばらした時はゴムパーツ交換であればカップキットとして販売されているものでリペアできるが、内部の損傷によってはピストンごと交換、ホイールシリンダーアッセンブリー交換というのも視野に入れておこう。ブレーキフルードは吸水性があるので、何年もブレーキフルードの交換を行っていないとピストンにサビが発生して固着したり、シリンダー側のアルミに腐食が盛大に発生して完全固着や引っかかり、片側だけ動くなどの症状が出ることも。
 カップキットならば、パーツを入手しておいてから「ヒマな時に作業しよう」でもいいのだが、分解してから分かることもあるので、しばらく車両を動かさなくてもよい状態という時間に余裕を持った作業をするといい。
 また余計な出費になるかもしれないが、全交換という手もある。ブレーキまわりのパーツは規格品が多く、この年式あたりであればまだまだ純正を含めて部品は出るので、一気にリフレッシュもよいかもしれない。
 基本的には5/8インチのカップキットならほぼ使える。ちなみに赤帽は3/4インチを使用して、高積載時のブレーキの利きを高めている。これはウラワザとして赤帽仕様に簡単にチューンできるのか?いつか試したい。

→次回はブレーキライニング交換

提供元:オートメカニック

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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