車検・点検・メンテナンス
更新日:2018.02.01 / 掲載日:2018.02.01
走れR-2 「いよいよレストア開始 エンジンを降ろす」の巻
「いよいよレストア開始 エンジンを降ろす」の巻
昭和44年8月、ロングセラーだったスバル360の後継車種として誕生。基本構造を継承しながら、広い室内とモダンな外装を得た。走りの良さからハードミニの愛称を持つ。
エンジン本体の程度はかなりよさそう
キャブレター、車体側ではブレーキやハブまわりのOHなど、通常整備の延長線上的な整備やチェックをして、もう公道を走れる雰囲気になってきたR-2。実際にガレージ内での移動は自力で動けるようになっているので、ナンバーを取得するのも夢ではない感じだ。とはいえ、エンジンは2ストオイルを循環させるポンプからオイルがポタポタ落ちる状態だし、ボディの穴開きも補修したい。できれば、エンジン内部までチェックしておきたいところでもある。特に2サイクルエンジンは、シリンダーが焼き付くことがあるので、最低でもシリンダー内壁の状態は確認しておきたい。
というわけで、今回からエンジンも含めた本格レストアをスタートさせるのだが、エンジンを降ろす前にコンディションをチェックしてみることにした。まずは圧縮圧力の測定だ。サービスマニアル(原題ママ)によると、暖機時の基準値が9.1kg/cm2とのことだ。チョークを少し引いて、セルを回すと燃料ポンプがキャブレターにガソリンを送るタイムラグがあるが、始動性は素晴らしく一発で掛かる。難点は、空吹かしでの回転上昇がスムーズでないことで、アクセルを踏むと回転が付いてこなくて、しばらくしてからビィーンと上がってくること。これはキャブレターのOHで、フロートレベルを大幅に変えたことが悪かったか、あるいは点火系の進角が正常でないのかもしれない。ここは要調査だが本体の故障ではないと思われる。エンジンが温まったところで、コンプレッションを測ってみると、10.5と10.1(kg/cm2)とで基準値を余裕でクリアしている上に、バラツキも少ない(相互差の限度は1.1kg/cm2)。これは、コンディションのよさが期待できる! 2ストの場合、吸排気のバルブがないから、可動部で気密を保っているのはシリンダーとピストンリングとピストンだけである。むしろ、なじみ(あたり)が出ていると考えられるので、下手にいじらないほうが得策ともいえる。
分解する前にエンジンをチェック
まずは補機類を取り外す
エンジン本体には問題ないことがほぼ確定したので、いよいよエンジン降ろしに入る。リヤエンジンで全体が見渡せないので、これもマニアルを参照しながら作業した。まずは、エンジンフードを開けた部分での作業だ。スロットルやチョークのワイヤー、ダイナモやオルタネーターの配線、2ストオイルの供給ホースを外していく。バッテリーのプラス側メインハーネスは、シリンダーカバーの脇を通って、セルモーターのB端子に接続されていた。これらは割と順調に外すことができた。さらにエンジンフードの上から冷却風を取り込んで、強制空冷用ファンに導入するゴム製の大型ダクトがあるので、これを締め付けているホースバンドも外しておく。
次に、リフトアップしての作業だが、マニアルには「アンダーカバーを外す」と書いてある。残念ながら、現状は取り外されている状態。これでもなんの違和感もなかったが、使ってないネジ山がいくつかある。ポルシェでもそうだがフロアの平らさはRRならではのものなので、一度はカバーを付けた時の風景を見てみたいものだ。下まわりの作業では、スペースの狭さにちょっとだけ苦労する部分もでてきた。まず、シフトレバーの接続部が外れない。ナットを外したが、すき間が狭くてレバーのブッシュがスタッドボルトから抜けないのだ。これはエンジンを降ろすのと同時に抜き取ることにした。ギヤをRに入れた時に作動するバックアップランプスイッチの配線も奥深いところにあり、ギボシ端子を外すのに手間取った。
このクルマでは、エンジンとミッションを一体で降ろすが、アクスルシャフトは、デフ側で分離する。これはスロッテッドピンがあり、それを抜けばスプライン部が分離できるので、ミッションオイルが出てくる恐れもなく、今のFFに比べても同等か簡単な作業である。これはレガシィやインプレッサのフロント側でも過去に採用されていた方法だ。
サブフレームごとエンジンを降ろす
完全なアナログ時代のクルマなので、現在のクルマのような多数のコードが詰まったコネクターを分離する作業は全くなかったが、電気配線、燃料やオイル配管、操作系のワイヤーやロッド、ドライブシャフトなど、10か所くらいの接続部を切り離したので、1時間くらい掛かった。それでも、ほとんどはマニアルに書いてある方法で外すことができ、順調に作業が進行。いよいよエンジン本体の取り外しを始めていく。このクルマでは、マフラーが付いたまま降ろすことになるのだが、その前にリヤバンパーを外して、その内側にあるボディパネルも取り外す必要がある。つまり、リヤ側は囲いがなくなる状態になり、さらに作業性はよくなるのだ。そこで、バンパーのボルトを外すのだが、なんだかボルトの頭の形状や長さが混在している。どうやら以前に外しているようなのだ。さらにボディパネルを外そうとするが、上向きのボルトはサビが進んでいて、途中まで緩んだところでネジが回らなかったり、全く回せないのが出てきた。腐った部品の逆襲である。このボルトも、複数の形状があるので非オリジナルも交ざっている。
そこで思い切って、ボルトを削り取ることにした。当初ディスクサンダーを使ってみたが、これだと砥石の反力で先端が弾かれることが多く、キワまで削りこんでいこうとした時に、削りたくないところまで削ってしまうことが多くなる。そこで、エア駆動のベルトサンダーにチェンジ。これだとフラットに削れて、保持するのも安定するので、ボルトの頭だけを削りやすい。また、途中まで緩んだほうは金ノコでカットして削除した。たかだか2~3本のボルトだが、工具+浸透性潤滑剤で緩めるところから、やっつけるのに小1時間掛かってしまった。
リヤパネルが外れたら、やっとエンジンマウントの取り外しだ。今回はある高さにジャッキとウマで支えておき、マウントやクロスメンバーを切り離してから、ボディを持ち上げて分離させた。
ちょっとだけ状態をチェック
ボディと分離したエンジン/ミッションは、まだジャッキとウマに支えられているので、これを分解作業場所に移動しなくてはならない。そこであらかじめ用意しておいた台車に移動。チェーンブロックを使うまでもなく、大人3人で持ち上げることができるが、100kg前後というところだろうか? さすが、360ccの2ストロークだ。強制空冷なので、シリンダーやヘッドは鉄製のシュラウドで覆われて大きく見えるが、これを外すとバイクのような(それもかなり古い)こぢんまりとしたフィンが現れてくる。
早速シリンダーヘッドを外してみる。4サイクルエンジンと違ってヘッドはフタと燃焼室上部の形状を構成するだけで、水を抜くといった事前の準備も不要。6本のボルトを緩めれば、パカッと外れる。今まで白煙がものすごかったので、大量のカーボン堆積を想像していたが、ヘッド内壁、ピストンクラウンともに黒い膜がある程度。もともと燃やす前提のオイルを使っているため、現在の直噴エンジンよりキレイなくらいである。
シリンダー壁を見るために上がっていたピストンを下げる際にも、クランクプーリーを握って回すと、あまりにも軽くて驚いた。これは構造が簡単なのはもちろん、クランクにボールベアリング、コンロッドにローラベアリングを使っているからだろう(一般的なプレーン型メタルは起動トルクが大きい)。
肝心のシリンダーは、2~3本の縦キズはあるものの、高温になる排気ポート周辺もキズが見られず極めてよい状態だった。白煙の量やオイルポンプのワイヤーが短すぎることから、恐らくオイル供給過多になっていると思われるが、それが焼き付き防止になっていたのかもしれない。金属部は、暖房用のダクトが真っ赤になっているくらいで、全体的にはコンディションはよい。しかし、ゴムやパッキンの劣化はあるので、自作も含めパーツが入手できる限り交換を進めていったほうがよさそうだ。
提供元:オートメカニック