車検・点検・メンテナンス
更新日:2018.02.02 / 掲載日:2018.02.02
【旧車趣味】NISSAN フェアレディZ その2
比較的維持がしやすいといわれるS30フェアレディZだが、現存台数が多いがゆえに状態を大きく崩している個体もそれなりに存在している。ここでは人気旧車ゆえの注目ポイントにズームアップ。Zの専門家に後悔しない楽しみ方を教えてもらった。
【取材協力】水上自動車工業
TEL048-729-1330
所在地/埼玉県北足立郡伊奈町小針新宿717-1
営業時間/9:00~20:00
定休日/祝日(GW、お盆、年末年始)
URL/http://www.mizukami-auto.com/
幅広く旧車全般を手掛けるが、中でも日産旧車に関して絶大な強みを持つ専門店。敷地内には国産、輸入車を問わず作業待ちのクルマがズラリ。メンテ関係は重整備まで自社内で全て手掛け、特にエンジンオーバーホールは安価な価格設定に加え、迅速作業が売りでもあり、全国から頼られるほど。グローバルジグを用いたボディ補修はレース系の顧客からも高い評価を得ている。
L型は丈夫でパーツも豊富エンジンで困ることはありません
「L型エンジンはアフターパーツが豊富にあって、いろいろなチューニングが楽しめるのでいいですね」と話すのは、埼玉県北足立郡のレストアやチューニングを行う水上自動車の代表・水上公弘さん。ただ、顔出しはNGということで、誌面にはS30マニアの若手スタッフ河原塚玄さんに登場いただいた。
「S30のエンジンはL20の前期、中期、後期、L24、L26、L28と多くのバリエーションがあるのですが、ほとんどすべてのエンジンパーツは入手可能です。純正パーツは欠品していても、国内だけでなく、海外のメーカーからもリプロパーツが出ていますから、修理は可能です。もちろん補修だけでなく、チューニングパーツも豊富にありますから、好みに合わせて様々なチューニングが可能です。ベースとするエンジンによってメニューは異なりますが、一番人気があるのはL28をベースに3.1もしくは3.2Lへの排気量アップ。比較的安価にパワーアップができますし、耐久性も高いので、走りを楽しみたいユーザーには人気です。90mmクランクに交換すれば3.4Lまでボアアップが可能ですが、ここまでするのはレースに参加する方がほとんどです。ボアを広げるもう一つのメリットは大径のバルブが使用できることです。チューニングの自由度も広がりますしね」
ノーマルにこだわりたい場合は?
「ノーマルでもパーツには困りません。ピストンやメタルなどのパーツも純正サイズがリプロで手に入りますから。ただ、ノーマルのSUキャブレターはパーツの手配が大変です。ニードルなどのパーツは欠品ですから、英国車用のパーツを流用するか、古いパーツを補修して使います。また、有鉛ガソリン仕様のままでバルブシートリングが傷んでいるクルマも多いですね。その間乗っている方もいるようですが、早めに交換したほうがいいですね。L20自体は丈夫なエンジンなので、一度きっちり整備をしておけば、あとは定期的なオイル交換ぐらいで大丈夫です」
安直な洗車はサビの元タンクや配管のサビも要注意
ブレーキ周りで注意するポイントは?
「補修パーツに関しては、キャリパーのOHキットやマスターシリンダーなどもリプロパーツがありますから問題ありません。ただ、最近はアジア製のパーツも増えているのですが、ブレーキに関してはモノによっては信頼性が低いものもあるので注意が必要です。止まらないクルマは怖いですからね(笑)。ブレーキのマスターシリンダーはS13シルビア用などの新しく容量の大きなものが流用できるのですが、1972年までの前期型はバルクヘッドの形状が違うので大型のマスターバックを入れることができません」
クラッチマスターも流用できますか?
「クラッチのマスターもS13用で強化できます。日産車は取り付け位置などのパーツの規格が同じものが多く、比較的新しいパーツを流用できるので、補修やチューニングの幅が広いですね。デフも130までポン付けで流用できるので、ファイナルの変更が簡単にできますし、加工すればS15用6速ミッションも組めます」
他にS30に多いトラブルは?
「意外と多いのが、燃料タンクや配管のサビですね。エンジン不調の原因がタンクのサビだったということもありました。タンクは分解して洗浄するか、社外品に交換します。アルミ製やステンレス製のものもあります。あとは足回りですね。新車時からブッシュ類を一切交換していないクルマも多いですね。ブッシュが変形していたり歪んでいたりして、ガタガタのクルマもありました。純正パーツもリプロのウレタン製も選択肢は豊富です。最近の純正ブッシュはゴムの質もよく、しっかりしているので、街乗り重視なら純正ブッシュがオススメです。サスペンションは社外パーツが豊富にあるので、好みのものを選べばいいのですが、ハブベアリングは専用のものとなり、純正でも1個5000円以上と高価です。それと、足回りを整備する時には、アームとハブを繋ぐスピンドル、通称:バカ棒と呼ばれるパーツがあるのですが、ほぼ100%固着していて外れないので、この部分で苦労することが多いですね。切ってしまうことも多いですが、このパーツも1本5000円以上します」
ボディ周りで注意するポイントは?
「サビが出やすいのはロッカーパネルの付け根やフロア、リヤゲートの先端などの定番部分です。屋内で保管しているユーザーが多いですが、洗車したあとなどはしばらく走行して水分を飛ばしてから保管してほしいですね。最近少なくなったスチーム洗車で汚れを落として、アンダーコートをしっかりしてあった昔のクルマは、サビが少ない印象ですね」
サビ以外で注意するポイントは?
「テンションロッドの付け根部分には要注意ですね。ここが歪んでいると足回りのバランスがおかしくなります。中にはサビや歪みをパテや塗装でごまかしているいい加減な修理をされているクルマもありました。最も力がかかる場所だけに、ここはしっかり補修したいです。チューニングエンジンを載せるのであれば補強をオススメします」
バリエーションの多いS30/31の中で、オススメのモデルは?
「人気でいえばZ432が一番、その次は240ZGです。2LのZも1971年までの初期モデルは価値が高いですね。ただ、個人的にはいじって楽しむクルマだと思っていますので、シャシーの剛性が高い1976年以降のS31がオススメです」
提供元:オートメカニック