車検・点検・メンテナンス
更新日:2018.04.27 / 掲載日:2018.04.27

足回りの達人 2:KYBのショックアブソーバーへグレードアップ

走行22万km デリカD:5
新車以上の走りと快適性を獲得!

車高の高いミニバンで有効な乗り心地改善

KYB NEW SR SPECIAL

乗り心地をゴツゴツさせずロールや揺り返しなどの余分な動きはしっかり制御してくれるグレードアップタイプのショックアブソーバー。圧縮側はフロントの微低速を上げ、しなやかさとハンドリングのレスポンスを両立。

 ショックアブソーバー(SA)は走行するに従って内部のオイルが劣化するなどして、少しづつ性能が低下してくる。理想的には、5万km程度で交換したほうが良いとされている。ここでは、22万kmを走破した三菱デリカD:5で、SA交換を行って、その効果を確認してみた。
 実は、D:5では走行8万km時点でSAやバンプラバーおよびスプリングシートを純正の新品に交換している。その時は、それほど大きな乗り味の違いは見られなかったこともあり、今回はグレードアップを図ってみる。つまり、使用距離14万kmの純正SAをアフター品へと交換することになる。
 現状の不満は、同乗者でも分かるボディの揺れの収まりの悪さがあり、さすがにSA自体がゆるくなってきた感じがしている。とはいえ、いかにも強化したというものではなく、路面の段差はしっかり吸収しつつ、揺れやロール、ピッチングといったボディコントロールは抑えの効いたものにしたい。
 そこで選んだのが、KYBのNEW SR SPECIAL。純正品のサプライヤーとしてもSAを知り尽くしたKYBが、耐久性などのクオリティはそのままに、乗り心地を悪化させずにクルマの「走る・曲がる・止まる」の基本性能をしっかりグレードアップするコンセプトで作られている。峠を攻めるなどではなく、あくまで実用領域のコシを出すのが狙いだ。

フロントではショックアブソーバーとその周辺パーツ、スタビライザーの支点ブッシュを交換。ミニバンタイプのボディはワイパー周りから外す。ワイパー下のカウルトップパネル部をすべて外すとストラットタワーが見える。あらかじめストラットセンターのロックナットを緩めておく(外さない)。ロワアームから車高センサーのリンクを外しておく。

ストラットは上側3本、下側2箇所の固定
ストラットとナックル部を固定するボルト2本を緩める。工具は1/2角のロングハンドルがあるとラク。ブレーキ配管および配線のクリップを外す。ナックル部を分離。アッパーマウントのナット3箇所を外し、ストラットを取り出す。スプリングコンプレッサをセットして縮める。巻き数が少ないので、中間をしっかりと縮める。

スプリングの遊びを確認し、ピストンロッドの平行部を9mmのスパナ(隙間があり、インチサイズっぽい)で固定し、ロックナットを緩める。スプリングを外す。ブーツを外してみると、ピストンロッドと固着気味だった。バンプタッチ領域も高い頻度で使うようだ。スプリングのアッパー側ゴムを外す(以前交換しており再使用)。

新しいショックアブソーバーにはダストブーツから組み込んでいき、スプリング、スプリングシート、ベアリング、アッパーマウントと組んでいく。最終的に、上下スプリングシートの向きを合わせる(8φの棒を通す)がD:5では位置決め穴がある。また、スプリング端面やベアリングの嵌め合いもズレないようにチェックする。

ストラットを車両に装着。アッパーマウントのボルトをボディに通し、ナットを取り付ける。ストラットとナックルの固定部のボルトは、115N・mで締め付ける。今回はこのあとにスタビライザーブッシュの交換を行なっている。

ショックアブソーバー周辺のパーツ確認も大切

 SAの交換作業については、フロント側でちょっとした準備が必要になる。ミニバンのデリカでは、フロントスクリーンやワイパー部がエンジンルームに覆いかぶさっているため、まずワイパーやカウルトップ部を取り外す必要がある。樹脂部分では、クリップもあるので、内装外し工具のほか、年式的に新品クリップを用意しておくのが良い。一度抜いてしまうと、嵌合が緩くなるからだ。また、リヤのアッパー部は内装側にサービスホールがあり、簡単にアクセスできるが、メーカーによってはリヤセクションの内装を大規模に外さないと作業できない場合もあるので、もしDIYを考えている場合は事前作業の行程についても把握しておきたいところ。リヤは簡単だろう……と甘く考えていると、思わぬ作業数の多さに泣きを見る場合もある。
 SAの周辺パーツもゴム製パーツは予算が許す限り交換をしておきたい。アッパーマウントはもちろん、スプリングのゴムシートも変えたほうがより新車に近い振動吸収特性になる。SAが縮みきった時に作用するバンプラバーは、ゴム製の場合は耐久性が高いため(欧州車に多いウレタン製は加水分解するので寿命が短い)再使用できることも多いが、今回のデリカ(初期型)で取り寄せた新品では少し形状が変わっていて、内部に突起が設けてあった。恐らく改良段階で変更されたのだろう。
 フロントのSA交換ではスプリングコンプレッサーが必要だが、リヤはSAが単体で装着されているので、サスペンションアームをジャッキで支えてから脱着する。特にスプリングまで脱着する場合、アームの動きが円弧を描くので外れないよう十分注意したい。

リヤショックアブソーバーの外観では、ダストブーツがケースと擦れて、塗装が剥げてきている。長年のストロークでつくられたもの。ショックアブソーバーの上側取り付け部は、内装のサービスホールから脱着できる。車両によっては内装全体を取り外す場合もある。

リヤは左側に車高センサーがある。リンクにはロワアームから切り離す。スタビライザーリンクを取り外す。これはスプリング脱着等ロワアームを大きく下げる場合に行う。ボディはウマで支持しているが、ジャッキでリヤサスペンションを支え少し縮める。

ショックアブソーバーの下側ボルトを外す。ボルトに荷重がかからないようにして、ムリに叩かないようにする。アッパーマウントの固定ナットも外し、ショックアブソーバーを手で抑えて縮める。縮んだショックアブソーバーが伸びきる前に取り出す。

8万km時点でメンテしているため、最小限の部品を交換。フロントはアッパーマウント、ベアリング、バンプラバー、スプリングシートの下側。その他スタビリンクの支点も交換。リヤはショック関係のマウントやバンクラバー、スプリングシート上下、スタビリンクと支点も交換。

アッパーマウントはプレートやブッシュの上下をよく確認しながら分解。忘れたときに備えて片側を残しておくのも手。アッパーマウントの上下ブッシュとカラーを組み込む。新品のショックアブソーバーにはバンプラバーとプレートを組み付け、アッパーマウントを装着。トップのプレートを載せ、ロックナットを装着。

スプリングシートの交換に移る。ロワアーム支点側ボルトを緩めておく。スプリングの荷重が加わっているので、ジャッキでキャンセルしながらハブ側ボルトの荷重を抜いて抜き取る。慎重にジャッキを降ろす。スプリングの自由長はとても長い。スプリングシートの上側はヒビが出だしている。ラバープロテクタントをスプレーし、新品を装着。DIYレベルだとスプリングの装着は非常に困難。今回はPPバンド4本でスプリングを縮めた状態にして組み付けたが、リスクが高いのでプロに依頼した方が良いだろう。

絶妙のバランスで余分な動きを起こさない

 8万km走行時に純正の新品SAに交換しているが、当時は変化があまり感じられなかった。シビアに見れば劣化していても基本特性が同じなためだろう。しかし今回は、仕様の違いがハッキリ体感できた。このクルマは車高が高いことから揺れが分かりやすい特性があるが、余分な動きが最初から出なくなった。特に起伏の大きな縁石をゆっくり通過する際のグラツキがなく、頭や上半身を揺さぶられることが無くなっている。
 加減速でも、尻下がりや前のめりの動きが減ったせいか、発進がスムーズな上になぜか惰性走行でも転がり抵抗が少なくなったかのように感じる。ハンドリングでも、タイヤを16インチから18インチにしたかのような、初期からの動きの精度の良さがあり、コーナーで身構えることもなくなった。乗り心地はコシのある感じでストローク感も十分。質感が2ランクくらい向上した感じで、交換のメリットを十二分に体感できた。

スタビライザー系パーツの交換
フロント。スタビライザーは左右のサスペンションアームをつなぐトーションバー(棒バネ)で、ロールを抑える機能がある。フロントのリンクは既に交換済みで今回はサブフレームの支点ゴムを交換。ボルト2本を外し、クランプを外す。ブッシュは割部から外す。クランプに固着したゴムをブラシで除去。新品ゴムを入れて、クランプを装着。サブフレーム後方からの状態。横からより後方からの方が作業性がよい。

リヤ。スタビライザーリンクのナットを緩める。ボルトが共回りする場合はボルトの先端に6角レンチを入れて固定できる。リンクを外す。左右があるので向きをよくチェック。支点部のクランプを外し、ゴムを交換。新品のリンクに交換。

ボールジョイントタイプのスタビライザーリンクはダストブーツが割れやすく、フロントは交換済み。リヤも割れだしてきている。異物が入ったり、グリースが切れると異音が出る。支点ゴムは若干の穴径拡大などヘタリがみられる。

ゴム製のバンプラバーは外観上はさほど傷んでおらず、再使用しても不具合は出ないだろう。しかし、新品(右)を取り寄せると形状が少し違っている。恐らくバンプタッチの初期をソフトにする変更だと思われる。

デリカD:5のボディやサスペンションのクオリティは高く、かなり丈夫に作ってあるのが分かるが、流石にフロントのブッシュにヒビが出だしている。11年22万kmを考えると、交換を検討したい。

完成!
ライトブルーの外観で見た目も鮮やかにリフレッシュ!ドライビングでも、快適な乗り心地と絶妙なチューニングのボディコントロール性能をすぐに体感できた。車高の高いミニバン系は効果が分かりやすいと思われる。

体感POINT
車道から駐車場などに入る際の揺れが収まった
加速がスムーズで転がりが良い感じ
ブレーキングも楽になった
タイヤをインチアップしたようなシッカリ感がでた




提供元:オートメカニック


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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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