車検・点検・メンテナンス
更新日:2018.05.30 / 掲載日:2018.05.30

エアコンメンテ塾 除水タイマーと抗菌グッズ

エアコン使用時のエバポはかなりの水を含んでいる。

カビ臭予防に効く!? エバポの除水タイマーと抗菌グッズの活用

冷房時はエアコンユニット内部のエバポレーター(エバポ)に凝縮水が発生するが、この水分がエアコン停止後に湿気を上昇させてカビの温床を作る原因となってしまう。そこで水分を減らす送風運転を行うタイマーを装着してみた。

冷房で発生した水は大量にA/Cユニット内に残る

カーエアコンにフィルターが装着されるようになって、エバポに付着するホコリの量は激減した。それでも長期の使用では汚れが付着するし、抗菌コートが実施されたエバポでもカビやバクテリアでニオイが発生する。

 A/C(冷房)使用中のクルマでは、路上に凝縮水(ドレイン水)がポタポタ流れ出ているのがよく見られる。これは空気がA/Cユニットのエバポレーターを通過して冷やされた時に、飽和水蒸気量が少なくなり空気中に取り込めなくなった水蒸気が凝縮して水となったものだ。エアコンを使うと空気の温度が下がると同時に除湿も行われるので梅雨時や冬季に利用すると、カラッとした空気が循環して窓も曇らなくなる(除湿暖房)。
 しかしこの凝縮水は、エアコンを止めてもしばらくはユニット内に残っている。試しに外した中古エバポレーターに水を掛けた直後の重量増加は250gだった。つまり約250ccの水が保持されていることになる。その周囲を覆っているユニットのケースにも多少は溜まっている。連続でエアコンを運転している時は問題ないのだが、止めて放置されると、自重で床下に出て行く水もあるが、自然に蒸発して湿気となって分散するものもある。そうなるとエアコンユニットの内部は湿度100%の状態で長時間放置されることになる。
 冷えていたユニット温度も常温になってくると、空気中の雑菌によってカビが発生し、これが繁殖すると、あの独特のカビ臭や酸っぱいニオイの原因となる。
 そういったことはエアコン全般にいえる問題で、家庭用では室内機の乾燥運転機能や送風運転を行うものもある。クルマでこれと似たことを行う場合、クルマを止めてからA/Cスイッチを切り、ブロワーだけを回す必要があるが、これから降りようとする時に実施するのは非常に面倒なものだ。そこで、降車しても自動的に数分間ブロワーだけを回す除水タイマーを装着してみることにした。

ラジエーターやコンデンサー、エバポレーターといった熱交換器のアルミフィンは、単に屏風状に曲げてあるだけでなく、細かい刻みが入れてある。

水分はフィンの間や刻みで保持されるので、あたかも水を吸ったような状態になる。 エアコンの凝縮水はフロア下のゴムパイプから車外に排出されているが、この水にもバクテリアが含まれている。

基本実験 エアコンオフのままブロワーを駆動してみる

エアコン吹き出し口から温度と湿度を測りながら、コンプレッサーを切り替えてみた。これはエアコンが入って間もなくの状態で温度は下がっていない(表示が追い付いていない)が湿度はグンと下がっている。

こちらはエアコンをオフにして3分後。湿度はどんどん上がっていった。

エアコン(冷房)停止後に送風すると効果がありそう 降車後にブロワーのみ駆動するタイマーを装着

15A遅延タイマーリレーTIMC
P-Factory 2940円
赤:常時12V 黒:アース 緑:プラス信号入力1 青:プラス信号入力2 黄-白:リレー(リレーONで導通)
様々な用途に使えるセミオーダー式の遅延リレーがネットオークションで販売されている。ライトやオーディオ、ドライブレコーダーの遅延オンまたは遅延オフなどにも使用可能。タイマー時間は基本の設定範囲を半固定ボリュームで調整できる。今回は1~15分。

小型リレー 204円
パナソニックのDC12V、1C接点リレー。除水タイマー作動時にリレーをオンにして、ブロワーモーターの制御線を純正の信号回路と外部信号の回路に切り替える。
左がリレーON信号、右は1C接点でブロワーの制御線を切り替え。

スイッチ
左は貼り付け型プッシュスイッチ(743円)。設置場所が自由で穴加工不要。

オルタネイト型。押しボタンはタイマーのキャンセルスイッチ。1C回路でモーメンタリー型。押した時だけオフになる側を使う(1つのみ使用)。

秋月の信号発生器キット 2222円
秋月電子の「XR2206使用ファンクションジェネレーターキット」。ジャンパーや出力部の使い分けで、方形波(矩形波)、三角波、サイン波の信号が得られる。出力周波数は0.02Hz~1MHz。電源は10~26VDC。消費電流19~25mA。

マグネットクラッチ作動後10分以内ならブロワー駆動

 除水タイマーは簡単にいうとエアコン版ターボタイマーみたいなもの。もしエンジンを回していてもいい状況なら、エアコンを切ってブロワーを7割くらいの強さで回しておき、10分後にエンジンを止めるようにセットしておけば、エバポの水分はかなり抜ける(家庭用で1時間ほど掛かるらしいので乾燥は無理と考える)。しかし、アイドリングストップが当たり前の時代にふさわしくないし、周囲への騒音やガレージ内では排ガスの問題もある。そこで、ブロワーだけを設定時間、そこそこ強い風量で回すようにする。
 用意したのは、ネットオークションで売っている遅延タイマーリレーと汎用リレーやスイッチ。さらに、電子制御されたブロワーを駆動するための波形発生キットである。これを新車時からカビ臭が出ているマークXに装着した。

無段階駆動を行うため、単純な電源投入では動かせない ブロワーモーターの駆動回路を追加する

モーターの駆動回路の計測

無段階制御のブロワーモーターでは、ブロワーパルスコントローラー方式やパワートランジスター方式があるが、マークXは前者のようだ。

エアコンユニット下のパネルを外し、モーター部の制御線の信号線にオシロスコープ(ここではパソコン接続型)を繋ぎ、ブロワーを回した時の信号を読み取る。

モーター部のプラス線は常時電源なので意味なく触らないこと。

A/Cアンプはユニットのフロアトンネル側にあり、今回利用するのは40ピンコネクター側。

デューティー比で制御

オシロの画面。左側はブロワーモーター制御部A11の信号。これはオンの割合が多い。出力は5V、オン/オフ時間は2ミリ秒。

右はマグネットクラッチ用信号線(A5)作動時の信号。電圧のピークはバッテリー電圧と同じ模様。ここで採れない時は、マグネットクラッチリレー後から採ることになる。

信号線の接続

ブロワーモーターの制御線にそのまま外部信号を入れても動くのだが、通常作動時に間違って作動させた時に信号が混じるとよくなさそうなので、リレーで回路を切り替えられるようA11線をカットする。

両端にはオスメスのギボシを装着し元に戻せるようにする。下はアンプ線への接続。事故防止のためバッテリーマイナスを外したほうがいい。

ブロワーモーターはPMW制御でモーター自体に制御部が付く

回路図内のクーリングユニットモーター&ファンがいわゆるブロワーモーター部。A11の制御部とアンプ(エアコンディショナーアンプリファイヤーASSY)間に、小型リレーのノーマルON回路を接続。リレーのもう片方を信号発生器の信号線に繋ぐ。

遅延タイマーリレーのプラス信号入力1(緑)にマグネットクラッチ信号線のA5を繋ぐ。マイナス線はグランド線A20へ。エンジンコントロールコンピューターやマグネットクラッチリレーはエンジンルーム内なので、できるだけアンプ側で結線したい。

キットの制約上、三角波としたが駆動は可能だった、信号発生器キットの調整と取り付け

デューティ比の周波数は調整幅が広く、大きくはコンデンサー容量で決める。

今回は103を使用し、微調整は基板上のボリュームで行う。

デューティ比調整ボリュームで比率調整できるが、方形波モードだと電圧値が5Vにできないため、電圧調整が可能な三角波モードに切り替えた。

外部信号でブロワーが回った!

12Vの方形波でも駆動は可能だが、5Vの波形にするにはもう一段回路を入れる必要がある。信頼性を考えて、電圧値を純正と合わせたものとした。

最終的にはこのような波形でも動くことを確認。交流の三角波になっている。5Vをスイッチングする回路を別途付ければ方形波で駆動できるだろう。

スイッチの取り付けと配線

エアコンアンプの常時プラスからヒューズを介して遅延タイマーリレーに電源を供給。

キャンセルスイッチはパネルへ。エーモンのスイッチは内部を加工してモーメンタリー式に。

作動スイッチがセンターコンソール脇で運転席から手を伸ばせる位置。遅延タイマーリレーは純正配線と一緒にタイラップ固定。

A/Cアンプのモーター駆動信号を外部から供給

 当初は、手間なしの自動作動をもくろみ、10分前まで【1】マグネットクラッチが作動 【2】シフトレバーPレンジでドアロック作動の2条件が成立時に、ブロワーをハイスピードで回すものを考えた。しかし、乗降回数が多い時にブロワー運転を繰り返すとバッテリーの放電が多くなるため、【1】の条件を満たして、プッシュスイッチを押した時に作動するものとした。つまり、一日の運転の最後でしばらく運転しないと思われる時に除水運転を実行すればよいのだ。
 とはいえ、実際のクルマに取り付けるとなると、事前調査が必要だ。ブロワーモーターはパルス幅制御(PWM)式で、A/Cユニットのフロアトンネル側にあるA/Cアンプからのデューティ信号で制御されている。この信号は5Vの方形波だ。また、マグネットクラッチの制御もデューティ信号のようで、電圧はバッテリー電圧と同様だがパルス波になっている。幸い遅延タイマーリレーでパルスをキャッチでき、【1】の条件を得るための信号はA/Cアンプから採れることが分かった。その他、遅延タイマーリレーや信号発生装置用の常時電源やアースもA/Cアンプから採れる(小電力なので、分岐可能と判断)。
 ブロワーモーターの制御パルスは、サービスマニュアルに波形の参考値があるが、オシロスコープで実際の状態を計測し、信号発生キットでの基本周波数を合わせておく。ディーティ信号はオンとオフの比率で駆動割合(モーター回転数)を決めるものだが、オン-オフのサイクルの速さ(周波数)は様々である。今回は500Hzに設定。最終的に信号波形キットの制約で三角波としたが、ブロワー駆動は同様に行なえた。

テスト結果 3~5分の設定が可能、降車後もブロワー駆動で除水促進を確認

遅延タイマーリレーの半固定ボリュームを回して、時間を3~5分にセット。最終的に5分にした。

イグニッションオフ後、作動スイッチを押すと遅延タイマーリレーと信号発生器のLEDが点灯。自動的に止まるのを確認。

ブロワーモーターは最大より一段下の速度で作動していて作動時は9Aを消費。

バッテリーが上がるようなことはないが、システムの完成度を上げるとすれば、バッテリー電圧の低い時は作動をキャンセルする仕組みを付けることが考えられる。暗電流は、取り付け前と変化がないことを確認。

吹き出し口の右側には紙の帯を付けてあり、風でたなびいている。

通常使用ではイグニッションオンでの作動なので、カーナビやエアコンパネルの表示が出ているが、タイマー駆動では表示が消えているのが分かる。

タイマー駆動しなくても実験できるが、エアコンを使ったあとにA/Cスイッチを切り、ブロワーを強めに回すと、点滴のように落ちていたドレイン水が連続的に排出される。

ユニット内の水分は確実に減っていると思っていい。

POINT レジスターによるブロワー制御方式への取り付け

レジスター部回路

スイッチ回路

遅延タイマーリレー

遅延タイマー から制御し、 モーター上流へ 12Vを供給(左)。ブロワー スイッチを 直接オンする 際に使用(右)。

昔ながらの段階を持つブロワー制御回路では、モーターのマイナス側にレジスター(セメント抵抗)とスイッチがある。モーターにはイグニッションスイッチ連動のプラス線が接続されているので、別のリレーを経由してプラス線に電源を供給する。ブロワースイッチを入れた状態でタイマーをオンにすれば作動する。

カビ臭の因を積極的に抑える抗菌グッズの装着

カーエアコンメーカーでもあるヴァレオが作った消臭抗菌剤。主成分のアリルイソチオシアネートという、わさび成分が、約1年にわたってエアコンシステムのカビやバクテリアの発生を抑えてくれる。一般の芳香剤や消臭剤とは違いタバコ臭などカビやバクテリア起因でないものには作用しない。エアコンフィルターに装着するだけ。

ヴァレオ
わさびデェール
(株)ヴァレオジャパン http://www.valeo.co.jp/希望小売価格:2362円(税抜)

本体と固定用クリップ、交換時期表示ラベル、取扱説明書が同梱される。姉妹品にスクーターのヘルメットボックスの消臭をする製品もある。

開封した時だけわさびのツーンとした香りがする。

風の流れの下流側に固定。

フィルターを挟んでクリップで固定。

エアコンフィルターのケースに装着。

装着日を示すラベルを貼りグローブボックスを元に戻す。

スプレーで洗浄・抗菌
ピットワーク
エバポレーター洗浄・抗菌6ヶ月
エバポレーターを直接洗浄し抗菌作用を持たせる商品もある。これは日産系の補修用品ブランドであるピットワークの製品。フィルターメンテ時の使用が効果的。

わさび成分の抗菌作用で雑菌の繁殖をストップ

 カーエアコンのカビ臭はエバポに繁殖するカビや雑菌が原因となっているが、ヴァレオの「わさびd’air(デェール)」は、エアコンフィルターに装着するだけで、抗菌作用のある人工わさび成分をA/Cユニット内に拡散し、不快なニオイの発生を効果的に抑制する頼もしい製品。
 カーエアコンメーカーでもあるヴァレオの調査によると、バクテリアやカビはA/C使用後にユニット内部が高湿度になることにより繁殖しやすくなるとのことだ。車外に排出されるドレイン水に含まれるバクテリア数は6月~8月で100万~500万個。9月に入ると少なくはなるが、それでも10万個を軽く超えている。このバクテリア数が1万個以下になるとニオイが抑えられるそうなのだが、同製品の装着により、バクテリアを100分の1にすることが可能で、梅雨から初秋の大半でニオイを抑えることが期待できる。装着は、フィルター折り目の山谷のスペースで高さ20mm、幅130mm以上確保できるものなら大半に装着可能。
 取り付けは至って簡単で、フィルターを通過する風の流れに対し下流に相当する面の中央に挟み込んで反対側からクリップで固定するだけ。気を付けたいのは、フィルターの組み付け方向を示す上下マークに惑わされないことだ。つまり、エバポ側に向けるのが重要なのだ。効果の持続は1年間。フィルターの交換時期も1年~2年なのでフィルターと同時交換を行うのがいいだろう。
 また、前ページで装着した除水タイマーとの併用で、湿気の原因となるエバポの凝縮水を減らしながら、わさび成分を拡散するので、相乗効果も上がるものと思われる。



提供元:オートメカニック


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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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