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更新日:2018.07.06 / 掲載日:2018.07.06

エアコン復活塾 リペア編その1

1987年式(昭和62年)式 日産 Be-1(E-BK10) 走行11万km

エアコン復活モデルカーとして選んだのが、バブル期に大ヒットしたパイクカー、日産Be-1。オッサン世代にとっては、あんまり古く感じないがもう31歳となっており、エアコンもヨレヨレ!! 果たしてどうなるか?

あのパイクカー 日産Be-1を夏でも快適にしたい!  旧車の冷えないエアコンのトラブルシュート術

すでにプロの手が入ったエアコンは復活するか?
 今年のエアコン復活モデルカーとしてAMガレージに入庫したのは、バブル期の日産が生んだ名作Be-1の昭和62年式。この個体はワンオーナーであり内外装はきわめてよいコンディションに維持されている。しかし、そこは31年前のクルマだ。オーナーの溢れんばかりの愛情が注がれているので、メンテンスも入念に施されているが、予防的に全部替えているわけではないので、エンジンやサスペンションでは経年劣化が目立ち、特にゴム類では寿命を過ぎている部品もある。そのような部分もテコ入れが必要なのだが、本題となるエアコンはどうだろう?こちらも長年にわたって手が入れられており、プロによってコンプレッサーやエバポレーターなどが交換され、細かな部分でも改善策が施されている。それでも、十数年にわたって満足な状態にはなっていない。旧車という点を考慮しても冷えが悪い上に冷媒を補充しても1シーズン持たないというくらいに悪化しており、半ばあきらめの境地になっている。
 エンジンルームを覗いてみると、その苦心惨憺の跡が随所にある。レシーバードライヤーのサイトグラスには黒色テープが貼ってあり、冷媒のホースには継ぎはぎがある。さらにヒーター用の温水ホースには手動のバルブが装着されていて、冬以外は室内ヒーターへの温水供給がカットされている。冷媒のサービスポートはR-134aだが、入っている冷媒はR-12のようである。 冷媒漏れは直しようがあるが、冷え具合が回復する見込みはあるのだろうか?筆者はかなり厳しいとみる。Be-1はグリルレスで開口部が極端に小さいのだ。これではコンデンサーが冷えないからバンパーに大穴を開けないとダメだろう。

●SPEC
エンジン:MA10S (987cc 直4 2弁-SOHC アルミブロック シングルキャブレター ネット値出力:52PS 7.6kgf・m) 駆動方式・トランスミッション:前輪駆動・5段MT 車両重量:680kg ボディ:2ドアセミノッチバックセダンキャンバストップ 素通しガラス(UV、IRカット機能なし)

数度のリペアを施すも完治に至らず。不調の症状は?エアコンが1シーズン持たない、冷媒を足しても冷え不足

かわいデザインだが、 クーリングは厳しいハズ。 デビュー当時、海外のカーメーカーへも大きな影響を与えたといわれるかわいいデザインだが、開口部があまりに狭い。

リヤエンジンならいいかもしれないが、FFでは通気性能が確保できないと思う。

怪しいポイントをチョイチョイ発見!

 切り替えバルブはまさに苦肉の策。安価な車両では、ヒーターコントロールバルブがなく、室内ヒーターユニットへの冷却水循環が常時行われており、それがクーラー使用時でも熱源となって具合が悪い。そこで手動のバルブがヒーターホースに追加されている。冷媒が泡切れしないため、サイトグラスの目隠しが施されている。ガソリンスタンド等の事情を知らない業者が過充填しないためだ。R-134aへのレトロフィットはやってない模様。ゴムホースのカシメ部付近はパイプがロウ付けされていて、ゴムホースが修繕されたようだ。

切り替えバルブ。

サイトグラスの目隠し。

R-134aのサービスポート。

パイプがロウ付け。

ディーラー装着のニチラ※製ユニットが使われている

コンプレッサーは日立製。ちなみにベース車マーチのライン装着品はデンソーのようだ。補修パーツの入手は厳しそうだ。

エアコンユニットはディーラーオプションのニチラ(※日本ラヂヱーター株式会社、現カルソニックカンセイ)製。

R-12仕様なので互換冷媒で作動させる、冷媒を補充して現状の冷えをチェック

R-12互換冷媒を使い、トラブルシュートを進める。

オイルコンディショナーを入れるためには添加剤用の注入ホース(写真のは別の添加剤用)を使用する。

なおR-12 用は缶のネジも細いので専用の缶切りバルブを準備しておく。

とりあえず動かしてみるが、致命傷はなさそうだ

 Be-1の車内に保存されているエアコンメンテ明細を見ると、最後に充填された冷媒はR-12と記載されている。これまで修理していたのはプロショップなのでデッドストックを保有しているのだろう。冷媒が抜けてしまうと、レシーバードライヤーにある圧力スイッチがオフになり、エアコンスイッチを入れたとしてもコンプレッサーのマグネットクラッチが繋がらないよう保護されるが、現状がまさにその状態。
 オーナーによるとコンプレッサーは一度替えているし、冷媒が入っている時の動き自体は問題なかったようなので、とりあえず冷媒を再充填して動かしてみる。もちろん、R-12は持ってないし、オゾン層保護の観点からも使うつもりもないので、まずは代替可能な冷媒を使うことにする。
 代替冷媒はいくつか種類があるが、今回は入手性のよい(近所の工具店でも在庫がある)R-SP34Eを使ってみる。これは成分の98%がR-134aで、R-12仕様車には専用のオイルコンディショナーを使用する。R-134aとR-12ではコンプレッサーオイルが異なる上に、違う冷媒を入れると分離してコンプレッサー焼き付きの原因となるので、コンディショナーで相溶性を与えるものだと思われる。
 冷媒充填ではマニホールドゲージを使い、冷媒の1本目はエンジン停止状態で高圧側から液状(缶を逆さにする)で入れる。その後、マニホールドゲージの高圧側バルブを閉じたらエンジンを始動しエアコンをオンにする。コンプレッサーはカチッというクラッチの締結音とともに静かに回りだし、室内にはやや涼しい風が出てきている。ここでオイルコンディショナーの注入処理を行った後、さらに冷媒を低圧側からガス状(缶を立てる)で充填。
 そして漏れ点検の補助とするためUVダイも注入。サイトグラスにはグリーンに染まった冷媒が流れており、条件によっては透明に変化することもあった。このようなことから、冷媒さえ入っていればエアコンは普通に作動することが分かった。
 次は、冷え具合のチェックだ。センターの吹出口に温度計をセットして、ブロワーの風量を変えて温度変化を見る。ブロワーの風量が増すほど温度は高くなるのだが、最大(3段目)でも12℃付近だし、ブロワー1段では9℃を切ることもあった。2名乗車で走行してみたが、背中に汗をかくこともなくちょうどよい温度。う~ん、31年前のクルマでこれだったら悪くないんじゃないか?とは思うのだが、この日は外気温が25℃程度にもかかわらず、キンキンに効くほどではなかった。これでは30℃超えのとたんにヌルくなってくることも十分考えられる。つまり、夜は働くが昼はだらしないタイプの可能性が高い。

配管のエア抜きをしてからコンディショナー、冷媒を補充
車両の低圧ポートにホースを接続し、缶切りバルブ直前までバルブを開いてホースの空気を冷媒で押し出す。

次にバルブを閉じ、缶を立てた状態で缶切りバルブを開け、バルブより先のホースを徐々に緩め、缶側から少し冷媒を出してエア抜きをする。

バルブを一旦閉じ、缶を逆さまに。これは内部のオイルをバルブ側に集めて冷媒のガス圧で押し込むため。缶切りバルブを開ける。

ホース上のバルブを開けて缶がヌルくなるまでは逆さを保持。

冷媒を充填。

冷媒があれば冷える!漏れさえ直せばイケるかもしれない!?
冷媒を少なめ(2本)に充填した段階でのゲージ値は、低圧200、高圧1000(kPa)で良好な数値。

室内の吹き出し温度(上側)は12℃を切った。これなら悪くないのでは?

ただし、真夏は冷えにくそう
エアコン用温度計で判定させると、外気温に対して冷えが足りないのか×が表示される。本来の性能は外気温が30~35℃にならないと分からない。

ブロワー1段では9℃弱。

サイトグラスの状態
封印を剥がしてサイトグラスもチェック。確かに泡消えしづらい傾向がある。条件が整うと透明になることもある。

冷媒量を示すラベルがないのだが、R-134a時にどう判断しようか……。

R-12とR-134aではなにが違う?

 旧車あるいは1990年代中ごろあたりまではR-12という冷媒が使われていた。オゾンホールを破壊する他、空気中の水分と触れると塩酸になるので冷媒漏れで空気が入ったのを放置するとパイプが激しく酸化して再使用が難しくなる。R-134 aはオゾン破壊係数はゼロだが、温暖化係数は1430と高い。また両者はコンプレッサーオイルも違うので、混ぜるとコンプレッサーの潤滑不良の原因となる。Oリングの材質は最近のものは両対応可能になっているようだ。

複数の診断法で見逃し、誤診断を防止。 冷媒のリークポイントを探し出せ

バンパーを取り外す。バブル期のクルマのせいか取り付け点がとても多くて面倒くさい。

冷媒漏れはアマチュアでも発見できる部位だった

 冷媒を充填したところで、漏れ場所を探してみることにする。複数のプロが関わってきたクルマだけに、経験と機材に乏しいアマチュアが探せるか?というと大いに疑問である。あちこち見たところコンプレッサーオイルが漏れた形跡はどこにも見当たらないので、単純な目視では到底発見できない。そこで複数の方法を併用してみることにした。まずはリークディテクター。これは電子式のガス検知器で7g/年というきわめて高い感度を持つものである。ギュッポフレックス(以下ギュッポ)は漏れが疑わしい部分に吹き付けて泡の発生を調べるもので継続使用している製品。さらにUVダイとUVランプも取り入れて合計3種の方法を使う。
 まず疑ってみたのは、ロウ付けされたパイプである。ここの施工不良がないかを調べたのだが、併せて高圧ガスが入るコンデンサー入り口の接続部付近にギュッポを吹いてみた。ギュッポは吹き始めそのものが泡っぽく、馴染みだしてから液状となりガスが漏れていると泡が膨れてくる。ホースの接続部は締め付けのナットとパイプの間に隙間があるので、ここに浸透する時にも内部の大気が出てきて泡になることがあるので、何回か吹き付けて液の変化で正常な範囲と異常なものを把握しておく。 数回吹いてみると、コンデンサーとの接続部から明らかに泡が出てくるのが分かった。しかし、連続的ではなく、数分ごとに思い出したように出てくるもので、ある程度溜まったら出てくるような挙動である。そのような独特の漏れ方だったが、一か所目は割と簡単に発見。リークディテクターでの検知も同じで、アラームがピーピー鳴った後、数分は無反応という状態だった。接続部は他にもあり、全部チェックするにはバンパーを外したり、室内のブロワーユニットを外す必要があったが、コンデンサーの出口側でも漏れを発見。
 室内ユニット側は、エバポレーター、エキスパンションバルブとも漏れは発見できず。また、コンプレッサーのシャフト周辺(プーリー中心付近)では、リークディテクターが反応したが、何度も診断しているうちに反応しなくなってしまった。ロウ付けで繋がれているパイプやゴムホースには、目立った漏れはないようだ。
 Be-1の漏れチェックの結論としては、コンデンサー出入り口の接続部をリペアすれば、少なくとも1シーズンで冷媒がなくなってしまう現象は防げると考えられる。
 最低でもOリングの交換が必要だろうが、修理レベルとしてはごく基本的なものだ。なぜ放置されていたのか疑問だが、これはBe-1のバンパー外しが込み入ってて面倒だったからかもしれない。

ガスリークディテクターでの漏れ検知
コンデンサー入り口。これはエンジンルーム側からならバンパーを付けたまま可能。漏れあり。

コンデンサー出口。漏れあり。

配管から5mmほど離して周囲をゆっくり1周させるイメージで探す。

室内のエバポレーター部。漏れなし。

リークディテクターはプロ用が安心

トルクレンチの世界と同じで格安品も存在するが、ある程度のランク以上でないと微量な漏れの判断ができないと思う。もちろん、数万円なのでアマチュアにオススメとはいえない。その予算があればプロに診断してもらうのが現実的だ。

漏れを手軽に修復
A/C STOP LEAK。システムを分解することなくエアコンのリペアができるスグレモノ。冷媒の漏れを止めるR-134a A/Cストップリーク(ダイレクトチャージ)。税抜き2640円。

NEW R-12→R-134a交換キット。R-12 からR-134aのレトロフィットをケミカルで行うもの。チャージホースやカプラーも付属。税抜き7640円。ともにサンケン扱い。

UVダイ&UVランプでの検知
UVダイを注入してエアコンを作動させた後、疑わしい部分にUVランプを当てて漏れがないかをチェック。漏れ場所が分からない場合も、オイルが漏れていれば光るので探しやすい。

配管の込み入ったレシーバードライヤー付近。試しにサイトグラスを覗くと見え方が分かる。

配管の裏側はインスペクションミラーも併用するといいだろう。

狭いところもOK
フレキシブルUVライトは、部品の裏側や狭い部分で便利。税抜き5,510円。

DC12 V UV検知キットライト&ゴーグル。税抜き13,430円。

UVダイエアゾール5ショットで税抜き4,450円。すべてサンケン扱い。

ギュッポフレックスでの検知
今回大きな成果を挙げたのはギュッポフレックス。

コンデンサー入り口の高圧パイプ接続部に噴射。

コンデンサー出口の接続部に噴射。

噴射直後はビールの泡のような白っぽい状態だが馴染むと無色透明に変化。ベタついたり変な残留がないので使いやすい。

接続部のリークが最低でも2か所ある
パイプと接続ナットの境界線から泡がポコポコ。間欠的なので時に十分ほどインターバルが必要だが、漏れがあるのは間違いない。

コンデンサー出口は水平配置のせいか泡の出方はおとなしいが、こちらも漏れがある。1シーズンでなくなるほどの漏れはこの2か所が主な部分だろう。

新車設計段階でかなり苦労した形跡がある。R-134a化に向けてコンデンサー冷却のポテンシャルを調べる

急ごしらえの影響がエアコンにシワ寄せか?

 Be-1は高田工業で制作されているそうだが、企画の立ち上げからリリースまでの期間があまりにも短く、熟成しきれなかったところもあると聞く。新車開発では、デザインがどんなに優れていても、それを現実のクルマに落とし込む部分では、ボディやエンジン、足回りなどの担当者が様々な議論を交わし、時には強い交渉や妥協もしなければならないこともあるそうで特に冷却系は、場所取り合戦をいかに制するか?が大事などという話を伺ったことも。
 AMガレージ入庫当初から、Be-1のエアコンの効きが良くない理由の一つにフロント開口部が小さすぎることが要因と考えていたのだが、細部を見ていくとホントに厳しいのが分かってきた。
 エンジンルームでは、エンジンが右(運転席側)でトランスミッションは左(助手席側)に配置されているのだが、コンデンサーは右でラジエーターは左である。ところがエンジンルームの全長が短く排気系とのクリアランスが狭いことから、コンデンサーはラジエーターの前に被さりバンパーのキワまでせり出しているのだ。コンデンサーやラジエーターの前後方向の厚みには電動ファンも含まれるが、それぞれがエンジンやミッションの前側に沿うように配置されているのだ。
 コンデンサーがバンパーの真裏にあること自体は悪いことではないのだが、グリルがないデザインなので、そのままではコンデンサーの下1/3程度にしか外気が当たらない。そこでこれを解決するために、少しでも前面開口部の外気を上側に流そうという努力をしたようで、切り欠き部が設けてあるのだ。
 熱気の回り込み対策も不十分で、コンデンサーの面積を確保するために幅を広げて、バンパー開口部の中央付近ではラジエーターの前に被さる配置なのだが、エアコンがオンになってコンデンサーの冷却ファンが回りだすと、ラジエーターで熱せられた熱い空気がコンデンサーに流れていくのだ。走行中や水温が上がってラジエーターファンも回るとコンデンサーも冷えるが、単独ではコンデンサー幅を広げた部分が活用できてないことになる。新車時の冷えを体感していないので断定はできないが、エアコン性能を引き出すのは困難なレイアウトなのだ。
 これを打開するには、バンパーフェースの左右ウインカーの中央やバンパーコーナー部のブラックの出っ張りの下、ナンバープレートの裏などに穴を追加するのが手っ取り早いのだが、流石にそこまではやれない。今回のリペアでは冷媒をR-134aにしたいのだが、冷媒だけ変えたのではますます冷えなくなってしまう。今までメンテンスしてきたプロがR-12を充填してきたのも、レトロフィットは容易ではないと分かっていたからかもしれない。

開口部面積が少なすぎる
初見でエアコンが冷えなさそうだなと直感する小さな開口部。コンデンサーはラジエーターの前に被さる。

ラジエーター用の導風板付き
開口部のグリルのラジエーター側は導風板が設けてある。外気を上に持ち上げたいのだろう。

コンデンサーが前出し過ぎる
開口部を下から覗くとコンデンサーとバンパーの隙間が全然ないために、一部を凹形状にしてある。ここから上方へ外気を持ち上げたいのだろう。

グリルの固定部までキツキツ

グリルを固定する部分のコンデンサー側は薄い。

ラジエーター側は厚い。それだけコンデンサーがせり出しているのだ。

バンパーのリンフォースもえぐってある
バンパーの裏側にあるリンフォースメントも苦心の形跡がある。

リンフォースより上側のほうがコンデンサー面積が広い。

リンフォース中央部はコの字断面が薄くされ、その分鉄板で補強してある。この形状では衝突時の強度が弱くなるはず。

コンデンサーのファンが回るとラジエーターから熱気が回ってくる。

バンパーを外すと明らかに冷却効果が上がる
バンパーあり状態のシステム圧力(kPa)。

エアコンを作動させながらバンパーの脱着を行ってみた。

バンパーなしとした状態。高圧側の圧力で200kPa、

コンデンサー出口温度で10℃以上変わってくる。

段ボールをあてがって通気を防ぐと、さらにコンデンサー出口温度は上昇した。この実験からコンデンサーを冷やせてないことは明白。

診断終了。分解スタート!
冷媒を抜き、分解へ。Be-1で超面倒くさいのが前ヒンジのボンネット。AM編集部に初代マーチがあったときはボンネットを脱着式に改造したくらい。

入り口のパイプを外す。

漏れのあったOリングを外す。

出口側。

Oリングは弾力がなく明らかに気密不良。

再生歴があるが内部に不具合があった、 エンジンルーム配管を作り直す

思わぬ不良を抱え込んでいたゴムホース

 Be-1のエアコン復活プランとして、おぼろげながら見えてきた方針は、1.接続部の漏れを止める、2.コンデンサーの冷えを大幅に改善する、3.コンデンサーの冷え改善分を生かしてR-134aへのレトロフィットを実現、というところになる。1.については硬化したOリングを新品にすれば解決しそうだが、他についてはやってみなければ分からないし、ダメならR-12代替ガスのHC冷媒などを採用することになるだろう。
 バンパーを含めた外装の改造が許されないので、エアコンシステムで改良していくしかないが、こちらについては何をしても良いことになっている。そのため、コンデンサーはR-134aに対応したものへ交換することにし、それに合わせて配管も作り直すことにした。
 配管は、エンジンルーム側で4本あり、新コンデンサーに合わせて改造するのは2本だけでいい。しかしロウ付け加工された低圧側のゴムホース1本も作り直すことにした。
 配管とコンデンサー制作は、スギタラジエーターワークスに依頼。1週間ほどで完成したのだが、スギタオジサンからは「元のゴムホースからアルミパイプを使う予定だったけど、タケノコ(ギザギザ部)が潰れてたので別加工が必要だったよ」との御報告が。通常は、劣化したゴムホースのカシメ部を割いて外し、両端のアルミの接続部は再利用するのだが、今回送ったホースではカシメたい部分がすでに潰れていたらしい。
 つまりそのホースを制作したプロは、純正のアルミパイプ部に別のタケノコをロウ付けしたようだが、ゴムホースを装着する時のカシメ工程でタケノコを潰していたのだ。これでは冷媒の流れが悪くなるし、カシメの圧力や密着度もバラついて漏れの原因にもなる(目立つ漏れはなかったが)。全部作り直したのは幸いだった。

コンデンサー変更を前提に分解
コンデンサーをサイズが大きい大容量品に交換するため、配管の改造を行う。そのためパイプ変更部も検討しておく。

ボルト2本を緩め、コンプレッサーのブロックジョイントを外す。高圧と低圧の2本がある。

ホースを外す。コンプレッサー側はテープ等で塞いで内部にゴミが入らないように処置しておく。

必ずレンチを2本使ってパイプを捻らないようにする。アルミパイプなので簡単に変形する。

左側ストラットタワー付近にあるレシーバードライヤーの取り外し。

コンデンサー出口から室内側に向かう高圧側配管は、左前タイヤ付近にジョイントがある。

新コンデンサーに対応させた加工ポイントをマーキングしてプロへ発送。

配管4本のうち、3本を作り直す
取り外したエンジンルームの配管。右側の黒い筒がレシーバードライヤー。改造が必要なのは高圧パイプと高圧ホースの2本だが、低圧ホースにもロウ付け補修跡があるので作り直す。

専門ショップの技が光る!  コンデンサーの接続位置変更とゴムホース部の交換をプロに依頼

ゴムホースの修理工程(写真は違う車種)。

カシメ部を割いてゴムホースを外す。通常はアルミ部を再使用。

新しいゴムホースを取り付けてアルミ部と組み合わせる。ゴムホースに被せた筒をカシメて完成。

生まれ変わったホースたち。

カシメの部分も過度な締め付けがない状態であり、純正品と同様以上の耐久性を持っている。

取材協力ショップ スギタラジエターワークス 〒485-0077 愛知県小牧市西之島烏海道59 http://sugita.cool.coocan.jp/ TEL0568-71-1611

なんとベース配管は、カシメ内部でタケノコが潰れていた!
ベースとなった元のホースだが、ロウ付け部からカットしてある。

本来は再使用できるタケノコ部がこのように潰れていたためだ。

カシメ機を導入しているものの、完成検査をしたことのない素人が施工したと思われる。

Oリング位置でも設計の今昔がある
突き当て(Be-1)。ジョイント部のOリング位置でも設計の今昔が分かる。Be-1は古いタイプで、差込部のストッパーに当てる構造でOリングが潰れやすい(耐久性が低い)。

差し込み(現行)。現在は、接続部の内径と外径間に差し込むタイプだ。

Oリングの寸法には様々な規格があるそうでニチラ製エアコンにピッタリ合うサイズを選ぶのが大変。そこでR-12(税抜2500円)、R-134a(税抜6160円)のOリングキットを準備(サンケン扱い)。

R-134aのレトロフィットで容量アップが必然、コンデンサーは極力大きなものへ

最大限のスペースを得られる大型コンデンサーに改造

 Be-1では、コンデンサーの冷却が非常に厳しいことが分かったので「エアコンが効きづらいのは仕様です。ボディの改造もできないのでどうにもなりません。夏は氷を車内に積んでください」とでも言えればラクなのだが、新車時から30年も経てば性能の上がった部材や方法が出てくるハズ。そこで今回は(というか毎回なのだが)、コンデンサーを大型化し冷却の改善にトライする。Be-1のコンデンサーはサーペンタイン式であり、1本の平べったいチューブをクネクネさせたものにフィンを組み合わわせたもので、R-12時代のスタンダードな方式である。現在のコンデンサーはパラレルフローなどと呼ばれるもので、左右に筒状のパイプがあり、チューブが左右を平行につないでいる。そのため複数のチューブに対して一斉に冷媒が流れていく。それも単純に左から右というのではなく、上下に何段のブロックに分かれていて、出口に行くまでに2往復程度するようになっている。チューブやフィンは非常に高度かつ精密なアルミ加工技術によって極めて薄くなっており、外気への放熱性も格段に上がっているのだ。
 レトロフィットに関してインターネットで調べている際にアメリカのトラック用コンデンサーのサイトを見つけたのだが、R-12からR-134aのレトロフィットでは、コンデンサーの能力を30%以上上げることが必要との記載があった。それは、コンデンサー自体の容量以外でも、送風量の強化でも可能という。Be-1ではサーペンタインからパラレルフローにするだけでも大きな効果があると考えられるが、冷却風の流れに制約が大きいことから、面積を拡大することにした。バンパーの狭い開口部から入る外気を生かすには、ボディ前面をコンデンサーで覆うべきと考えた。
 新しいコンデンサーもスギタオジサンに作ってもらう。こちらは既存のコンデンサーから装着できるギリギリに設定する。段ボールでダミーのコンデンサーの型紙を作り、冷媒の出入り口やボディへの取り付け部を書き込んだ原寸大の指示書を作って依頼した。
 出来上がったコンデンサーは、パイプの接続作業を考えると想像以上にピッチピチだったが、元のブラケットを利用してボディへの固定位置も決まった。今回は大幅に薄くなることを生かして、できるだけ後方へ移動してバンパー内側とのクリアランスを稼ぎ、前方に風が取り込めるようにしている。一方、エンジン側とのクリアランスは狭くなり純正の引込型ファンは使えなくなるため、後付けの押し込み型ファンを使う予定だ。この仕様でどうなるか?次回報告する予定なので乞うご期待!

どんなサイズが入るか細部をチェック
コンデンサーを大きくする際、バンパー開口部内にどのくらいの幅が取れるか採寸。650mmが限界。天地は300mm程度と低いのがネック。

コンデンサーとラジエーターのクリアランス。新しいコンデンサーはより後方へセット。

軽トラックのコンデンサーをあてがってみたがBe-1には天地が大きすぎ。

コンデンサーを外す。

電動ファンのシュラウドはカバーしきれていない。

段ボールでダミーコンデンサーを作って採寸
段ボールでダミーコンデンサー作るが、これは600×290mm。配管位置やブラケット新設も考えて位置を書き込む。

コンデンサー入り口の接続位置を検討する。パイプ側も作るので双方で調整することが可能だが、スペースがないので純正位置から大きくは変えない。

投影面積1.5倍で製作してもらった
完成した新コンデンサーとこれまでのサーペンタイン型。投影面積を大きく拡大し、走行風を有効に流せるようにした。ブラケットは加工前提の2mm厚板を付けてある。

エンジンルーム側は右のタンクに冷媒入り口がある。

大幅に薄くなっている。

日本製のコアを使っているので安心。

元のブラケットと組み合わせて車体へのフィッティング
旧コンデンサーからブラケットを取り外す。ボルトで挟んであるので分離は簡単。

水よけのプレートは位置をずらすため、ブラケットに固定し直す。

新コンデンサーとの組み合わせ。中間部も保持できるようにしているが部材として弱いので、できるだけ左右のタンクで支持するのが良い。

開口部を使い切るサイズになった
位置決めがほぼ決まった状態。フロントエプロン部全体を使うようにしている。ラジエター側はコンデンサー出口配管の脱着用のクリアランスが設けてある。

左の上側はフロントエプロンにゴムを介してブレ止めとしている。

フロントのクリアランスは2倍に
バンパーリンフォースとの隙間を確認。旧コンデンサーでは最大部で40mm。

新コンデンサーは80mmと倍になった。コンデンサー前面に空気を流しやすくなるほか、押し込み型電動ファンも装着できるようになった。


完全復活なるか!? その2へ続く




提供元:オートメカニック


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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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