樹脂バンパーは柔軟性があるがゆえに補修時、硬い金属ボディ向けの機材とは異なる性能が求められる。パテや塗装の塗膜にも柔軟性が求められるのだ。また、歪みの修正も単に叩くだけでは元には戻らない。常温ではハンマーで叩く程度の衝撃は跳ね返してしまうからで、加熱して軟化したところで形を整えていくことになる。
Prologue プロ向けの機材は選択肢が広い!?
樹脂バンパーの補修には柔軟性のある溶剤を用意!
柔軟性のある樹脂バンパーは、衝撃を受けた時たわみが生じる。
このため、金属ボディ用の硬く硬化するパテや塗料で補修した場合、伸縮率の違いから塗膜が突っ張ってしまい、ヒビ割れたり剥離する可能性がある。また、バンパー素材のPP(ポリプロピレン)は塗装が密着しにくい。
それゆえ、樹脂バンパーの補修には樹脂に適した補修材の利用が原則で、プロ向けの機材だとその選択肢が広いのだ。
たとえば、メタリック色の仕上げに上塗りするクリアは強靱な被膜を形成する2液型ウレタン塗料の利用がベスト。ところが、強靱ゆえ被膜が硬く、プラスチック素材などの柔軟性のある素材に塗装した場合、剥離を起こす。そのようなトラブルを回避するため、プロ向けの機材では「専用硬化剤」の代わりに添加することで柔軟性が得られる「柔軟性硬化剤」が用意されているのだ。
樹脂補修向けの溶剤をチョイスする
■多用途プライマーミッチャクロンマルチ ■価格:1,200円(税込) 通常は塗膜が密着しないPPなどのプラスチックや非鉄金属、メッキ表面など様々な素材に対して塗装を可能にする多用途プライマー。
■マルチトップクリヤーSH・マルチトップS硬化剤 ■価格:0.8kg/2,000円(税込) 0.4kg/2,000円(税込) 芯締まり性に優れ、比較的短時間で強固な塗膜を形成する自動車用2液型ウレタンクリヤー。通常、専用硬化剤を主剤2に対し1の割合で添加して使用する。
■柔軟性硬化剤エコマルチハードナーフレックス ■価格:250g/2,600円(税込) プラスチックパーツなどへの塗装において塗膜に柔軟性が必要な場合、マルチトップS硬化剤の代わりに使用することでクリア塗膜に柔軟性を付与することができる柔軟性硬化剤。
■ニューエイジ パワーアップII ■価格:3,200円(税込) 専用硬化剤とセットで使用する硬化後も柔軟性のあるプラスチック素材用ポリエステルパテで、様々な素材に対して密着性があり、多用途に使用することができる。
■問い合わせ先:ぺいんとわーくす
バンパー脱着 Step1 近年の車両のバンパーは意外と簡単に外せる
バンパーの固定ポイントを確認する
平成初期くらいまでクルマの樹脂バンパーは造りが頑丈で、内部にガッチリした鉄フレームが入っていたり、サブフレームで支えられていた。
ところが、近年のクルマのバンパーは外装のみで、裏はドンガラ。このため、意外に簡単に取り外すことができる。バンパーの上下端にメインとなる固定ネジしもくは樹脂クリップがそれぞれ4から6個。側面の張り出し部上面は嵌合固定でまっすぐ引っ張れば外れ、事前にメインの固定ネジ類を外しておけばそっくり手前に引き抜ける構造になっているからだ。
そこで、まずはメインとなる取り付けボルトの位置を確認したい。それさえ見つかればあとは簡単。とりあえず取り外してバンパーをまっすぐ引っ張ってみるのだ。外れないようなら引っかかる部分の周囲を探ってみる。そうすれば残りの固定ポイントが見つかるはずだ。
01.フロントグリル上面
正面のバンパー上面は樹脂クリップで4から6か所、ラジエーターコアサポートに固定されている。グリル一体型なら固定ポイントはこれだけだ。 フロントグリル底面
モデル車のようにフロントグリルが別体の場合、グリルを外す。すると、パンパー上面を固定する樹脂クリップが、3から4か所現れる。 フロントバンパー底面
バンパー下面は左右の末端付近がネジで数か所、正面位置は樹脂クリップもしくはネジで4から6か所固定されている。それら固定部位はむき出しで、下に潜り込めば目視で確認することができる。 04.ヘッドライト下面周辺
ヘッドライト下面に接している左右末端のバンパー上面は嵌合固定で、水平方向にまっすぐはめ込まれ、爪で引っかけられている。 05.バンパー末端上部
左右末端の上部はネジ留めされている。インナーカバー端をめくってバンパー裏を覗けば下から垂直に締め込まれているネジを見つけられる。 06.リヤバンパー上面
左右のテールランプ下面や内側に回り込んだ面に固定ボルトがある。 目視できない時はランプ裏で、テールランプを外す必要がある。 07.リヤバンパー底面
左右のバンパー末端がネジで、正面の下面が樹脂クリップもしくはネジで4から6か所固定されている。 下に潜り込めば目視で確認することができるが、バンパーアンダーカバープロテクターがセットされていた場合、これを外すとさらに樹脂クリップが現れる。 08.バンパー末端上面
テールランプ下面と接している左右末端のバンパー上面はフロントと同様、嵌合固定で、水平方向にはめ込まれているだけだ。 09.バンパー末端上部
フロントと同様、バンパー左右末端の上部がネジ留めされており、インナーカバーの端をめくれば固定ネジを見つけることができる。 10.マッドフラップ・タイヤ面
マッドフラップの数本の固定ボルトの内、インナーと共締めになっていることがある。その場合、その共締めネジを外す必要がある。 バンパー脱着 Step2 車両本体が損傷している可能性もあるので注意!
バンパーを外し、裏の損傷の有無を確認する
擦りキズ程度の補修ならバンパーを装着したまま行うこともできるが、ベッコリ凹んだり穴が開いてしまっていた時は、なにはともあれ取り外す。
装着したままでは裏に手を入れにくく補修しにくいからだ。が、もう一つ大切な理由がある。柔軟性のある樹脂バンパーは自身が歪むことで衝撃を受けとめるが、変形限界を超えるほどの強い衝撃を受けた場合、裏側の車両本体フレームにまで達している可能性があり、損傷の有無を確認する必要が出てくるからだ。
なお、バンパー下面にセットされている樹脂クリップは土埃が詰まってロック爪が固着しやすく、脱着時に破損しがち。近年、カー用品ショップでも売られているので、そんな破損時にすぐに対処できるようスペアを用意しておきたい。
【1】フロントグリル周辺の固定クリップを外す
ボンネットを開けロッドをセットして固定。フロントグリル上面からラジエーターコアサポートに向けて伸びている固定ステー先端にセットされているた樹脂クリップの中心にはめ込まれているロックピンを抉り上げる。 ロックが解除されたところで樹脂クリップをまっすぐ引き抜く。 フロントグリル下端のはめ込み部のロック爪を解除。 まっすぐ上に引き抜く。 グリル下にセットされていた樹脂クリップをすべて取り外す。 【2】バンパー底面にある固定ネジ類を取り外す
クルマの下に潜り込み、バンパー正面の底面端を固定しているネジもしくは樹脂クリップをすべて取り外す。 左右のタイヤハウス前方にセットされているインナー共締めの樹脂クリップを左右2個とも取り外す。 中心部のロックピンの隙間に内装はがしを押し込んで抉り上げ、ロックが解けたところでロックピンごとまっすぐ引き抜く。 左右のバンパー末端に垂直にネジ込まれてる固定ネジを取り外す。 【3】両端の固定ポイントを解除し手前に引き抜く
インナーカバーの端をめくって末端の固定ネジをむき出しにし、レンチをはめ込んで取り外す。 バンパー端をがっちり持ち、手前にまっすぐ引っ張って嵌合されている面を引き抜く。 反対端も同様に引き抜き、フロントバンパーをそっくり取り外す。 【4】裏のフレームまで衝撃が達していないか確認!
右コーナーはフォグランプが横を向くほど大きく変形。これだけ変形していた場合、裏に組み付けられているパーツも破損している可能性大。キッチリ確認する必要がある。 しかし、今回は幸いなことに末端の固定ネジの受けが外れた程度。 車両本体フレームは無傷だった。 【5】リヤバンパーには穴が! 取り外してこれも補修する
モデル車はリヤバンパーもキズだらけで、なんと穴も開いていた。このよう損傷も補修可能だ。が、裏面にアクセスする必要があるため、やはり取り外して作業する。 テールランプ下のテールゲート内側に回り込んだ面を確認。 組み付けられている固定ボルトを取り外す。 左右のパンパー末端に垂直に組み付けられている固定ネジを取り外す。 底面の左右末端に組み付けられている固定ネジを取り外す。 【6】底面にセットされている固定ネジ類を取り外す
クルマの下に潜り、バンパー正面の下面端に組み付けられている固定ネジをすべて取り外す。 モデル車にはバンパーアンダーカバープロテクターが取り付けられていた。 これもそっくり取り外す。 バンパーアンダーカバープロテクター裏に隠れていた樹脂クリップをすべて取り外す。 両端の固定を解除し手前に引き抜く
各部の固定ネジ/樹脂クリップを残らず外したら、バンパー端をがっちり持って手前にまっすぐ、グッと一気に引っ張って嵌合部を引き抜く。 反対端の嵌合部も同様に引き抜き、リヤバンパーをそっくり取り外す。なお、嵌合部が外れた瞬間、落下させやすいので注意! 提供元:オートメカニック