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ターボチャージャーの仕組み

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吸排気系修理・整備
掲載日:2019.07.10 / 更新日:2019.07.31

ターボチャージャーの仕組み

かたつむり型のハウジングの中には排気エネルギーによって回転するタービンと、吸入空気を圧縮するコンプレッサーが内蔵されている。コンプレッサーはタービンと同軸で連結され、タービンの動力で回転する。
ここでは、ターボチャージャーの仕組みについて詳しく解説します。

 ターボチャージャーは排気のエネルギーで回るタービンと、それに連動して同軸で回るコンプレッサーがハウジングの中に収まって、一つのユニットを形成している。エキゾーストマニホールドから排出された排気はタービンハウジングに導かれ、タービンを高速で回した後、排気管に放出される。コンプレッサーはタービンの回転に連動し、吸入空気を大気圧以上に圧縮し、シリンダーへと送り込む。
 通常のエンジンの場合、吸気行程の下死点ではシリンダー内は圧縮されていないので、0.9kg/cm2程度で、充填効率は90%前後となる。ターボチャージャーの場合、予め吸入空気は圧縮されているので、吸気行程の下死点ではシリンダー内の圧力は大気圧以上になり、充填効率が向上する。
 過給圧を上げれば充填効率は向上するが、一つの障害が現れる。それが早期着火だ。過給された吸入空気は高温になり、さらに密度の高い空気が圧縮されるために早期着火を引き起こし、ノッキングを発生する。このため、個々のエンジンにとって、早期着火を引き起こさない最良となる圧縮比と過給圧に設定され、さらにノックセンサーによって監視し、あらゆる回転域で最適な点火時期が選択される。
 過給圧はコンプレッサーの回転に比例する。エンジン回転が高まると過給圧も高まり、高回転域ではエンジンを破壊するほどのエネルギーが発生する。これを防ぐためにタービンハウジングに入る排気を、手前で排気管にバイパスさせるウエストゲートバルブが装着される。吸気管内の圧力をセンサーで検出し、規定の過給圧に達すると作用するようになっている。最大過給圧はエンジンによって異なるが、0.4-0.9kg/cm2程度に設定される。

ターボチャージャーの構造

 かたつむりのような形状のハウジングの中にタービンとコンプレッサーが収まっている。タービンはその外周から排気を採り入れ、タービンブレードに導き、そして中心部から排出し、排気管へと導く。排気の流速は速く、タービンも一分間に約10万回転。なかには20万回転するものもある。
 高温にさらされるため耐熱合金が使用されるが、最新のターボチャージャーでは1000℃に耐えるものもある。日産ではGT-Rに搭載するエンジンのこの部分に高温に耐え、しかも慣性質量の少ないセラミックを用いるし、ランサー・エボリューションではチタンとアルミの合金を採用している。
 タービンはターボチャージャーの過給特性を決定づける重要な部分でもある。排気エネルギーの少ない低/中回転域から過給させる特性を与えることもできるし、レース用のように、低/中回転域を無視して、高回転域でのみ過給させることもできる。それの制御にはタービンの大、小やタービンに導入する排気通路の断面積の調整で行われる。
 タービンハウジングへの排気通路の断面積をA、排気通路の中心からタービンの中心までの距離をRとして、AをRで割った値をエイバイアール(A/R)という。Aを少なくすると排気通路は狭められ、タービンハウジングに導入される排気の流れは速くなり、反対に面積を大きくすると排気の流れは遅くなる。吸気のスロットルバルブと同じ現象が現れる。

ハウジングの中にタービンとコンプレッサーが収まっている。タービンはその外周から排気を採り入れ、タービンブレードに導き、そして中心部から排出し、排気管へと導き、コンプレッサーは中心部から空気を採り入れ、外周部へと押し出す。

 エンジンが高回転で回り、排気エネルギーが十分にある場合は、Aの面積が大きくてもタービンは高速回転するが、エンジンの回転数が低い場合は十分な排気エネルギーが得られず、タービンには、コンプレッサーを回転させ空気を圧縮するための十分なエネルギーが与えられない。そのためA/Rはクルマの特性に合わせて設定される。例えば低/中回点域から過給効果を追求する実用エンジンではA/Rの小さいものにし、低回転からのレスポンスを向上させる。低/中回転域を犠牲にしても、高回転域での性能を重視するスポーツエンジンではA/Rを大きく設定する。
 コンプレッサーはタービンと同軸にセットされ、タービンの回転がそのまま伝えられ、吸気を圧縮する。ハウジング内の吸気の流れはタービンとは逆で、コンプレッサーの中央部分から導かれた吸気が外周に向かって圧縮され、吸気管へと導かれる。コンプレッサーユニットを構成するブレードは吸気の速度を高める部分とそれを圧縮する効果を併せ持ち、ブレードの形状、角度もエンジン特性に合わせて設定される。
 高回転で回る軸受け部には潤滑オイルだけで支えるフルフロートのプレーンベアリングが用いられる例が多いが、高性能エンジンの中にはフリクションを減らし、レスポンスを向上させるためにボールベアリングを採用するものもある。

タービンハウジングへの排気通路の断面積をA、排気通路の中心からタービンの中心までの距離をRとして、AをRで割った値をエイバイアール(A/R)という。Aを小さくすると排気通路は狭められ、タービンハウジングに導入される排気の流れは速くなり、反対に面積を大きくすると排気の流れは遅くなる。

インタークーラーの働き・仕組み

吸気温度を下げて、混合気の充填効率を高めるために使用される、熱交換効率の高いインナーフィンタイプのインタークーラー。

 空気を圧縮すれば温度は上昇する。それに伴って空気密度も低下し、吸入効率は損なわれる。ターボチャージャーには、このように相反する特性がある。では圧縮されて温度が上昇した空気を冷却したらどうか。そこで導入されるのがコンプレッサーとサージタンクの間に挿入されるインタークーラーだ。
 インタークーラーには空冷式と水冷式がある。水冷式はインタークーラーの内部に水路を設け、そこに水を循環させる。構造はエンジンの冷却系統と同じで、インタークーラーの熱を吸収した水をラジエターで冷やし、冷えた水を再びウオーターポンプでインタークーラーに送り出す。また最新のVW・TSIエンジンはインテークマニホールドと一体化された水冷式を採用している。水冷式は過去にトヨタ1G-GTEUに採用されたが、現在では空冷式が主流となっている。
 空冷式の構造はよりシンプルだ。圧縮された空気は冷却用のフィンを持つインタークーラーに送られ、走行風で温度を下げられた後でサージタンクへと送り込まれる。水冷式の場合、インタークーラーの設置位置をそれほど選ばないが、空冷式では走行風がもっとも当たりやすいクルマの前部に設置される例が多い。
 インタークーラーの吸気出口にはエアバイパスバルブが設けられる。ターボチャージャー作動直後にスロットルバルブを全閉にすると、ターボチャージャーからスロットルバルブまでの空気圧が高くなり、エアホースの外れや吸気装置の破損がある。それを防ぐために、スロットルバルブからインテークマニホールドまでの吸気圧(負圧)が規定値を超えた場合はバルブが開くようになっている。

インタークーラーを装着することで、吸入空気温度が低くなるので、ノッキングも発生しにくくなり、エンジンの圧縮比も大きく設定できる等により、出力を向上させることができる。

ターボチャージャーのバリエーション

直列6気筒のような多気筒エンジンでは排気干渉を防ぐことと、ターボチャージャーのレスポンスを上げるために、小型化された2個が並列にセットされる。

 ターボチャージャーには様々なバリエーションがある。タービンに当たる排気エネルギーを可変するものの他、ターボそのものを複数設置し、直列、あるいは並列配置によって、あらゆる回転域で効率のよい稼働を目指している。

可変ジオメトリーターボ
 ターボチャージャーの構造の項で触れたが、A/Rはターボチャージャーの特性を決定づける重要な要素だ。低/中回転域寄りに設定すれば、高回転域ではトルクのやせたものになってしまうし、高回転寄りに設定すれば、実用域で使いにくいものになる。そこで全域に対応できるように開発されたのが可変ノズルターボだ。1985年日産は「ジェット・ターボ」の名称でA/Rを可変できるターボチャージャーを開発した。タービンハウジングの入り口にアクチュエーターで作動する可動フラップを設けたもので、低/中回転域ではフラップを閉じ、タービンハウジングの吸気通路を狭め、流速を上げる。高回転域ではフラップを下げ、吸気通路の面積を十分に確保する。これによってA/Rは0.21から0.77まで可変し、幅広い回転域に対応した。 
 日産方式の発展型として現在用いられているのが可変ジオメトリーターボだ。日産のジェットターボが一枚のフラップしか持っていなかったのに対し、この方式ではハウジングの内周に複数の小さなベーンが組み込まれ、それぞれがアクチュエーターによって角度を可変する。ベーンの角度を立てると、ベーンとベーンの間隔が広くなり、大量の空気が導入され、フラップの角度を寝かせると、間隔は狭くなり、排気の導入量は減少するが、流速が速くなる。
 可変タイプはその特性からシングルターボとして使用される。三菱自動車は2007年の東京モーターショーでコンプレッサーも可変が可能なVD/VG(Variable Diffuser/Variable Geometry)ターボを展示した。このタイプは既にトラック用の大型エンジンで実用化されているものだが、乗用車用の小型ターボとしては初の試みだ。

大、小2個のターボを持つシーケンシャル・ツインターボの作動。低/中回転域では小さなプライマリーターボが働き、高回転域では、それに加えてセカンダリーターボも稼働する。

ツインターボ
 ターボチャージャーを2機装着したものがツインターボだ。フェラーリGTO、マセラティ・ビトルボなどのV型エンジンでの採用例があったが、1985年に国産で最初に採り入れたのはトヨタの1G-GTEU型エンジンで、直列6気筒としては世界初の試みだった。主な目的はシングルターボの場合に発生する6気筒の排気干渉を避けるためで、ツイターボにすることによって排気がスムーズにそれぞれのタービンに導かれた。
 例えば、直列6気筒にシングルターボを装着した場合、1番と5番、5番と3番というように、排気が干渉し、ターボチャージャーのタービンに入る前の排気エネルギーに損失が発生する。これに対し、一つのターボチャージャーが3気筒分を受け持つと、ほとんど排気の干渉なしにタービンへと排気は導かれる。また二つになることによって、それぞれのターボを小型にすることも可能になり、レスポンスの向上も得られた。
 ツインターボの発展型として現在採用されているのがシリアルシーケンシャルターボとパラレルシーケンシャルターボだ。シリアルシーケンシャルターボは大、小の二つのターボを装着する。低/中回転域では排気の流速が低くても稼働する小さいターボが受け持ち、大きいターボへの排気はバイパスされる。高回転域では小さいターボへの排気はバイパスされ、稼働を止め、大きいターボにバトンタッチする。パラレルシーケンシャルターボは小型の同じサイズのターボを2機装着する。低/中回転域では一つのターボのみが稼働し、高回転域では二つが同時に過給をする。パラレルシーケンシャルターボはプジョーのディーゼルエンジンなどに採用されている。 

日産が1985年に開発したジェットターボ。可動式フラップを内蔵し、A/Rを運転状態によって可変することが可能だった。現在の可変ジオメトリーターボのルーツともいえるテクノロジーだ。

可変ジオメトリーターボの構造。タービンハウジング内に複数のベーンが設けられ、それがアクチュエーターによって角度を可変する。これによってタービンブレードに当たる排気流速を調整し、あらゆる回転域で最良の過給を行う。


ツインスクロールターボ
 マツダが2代目サバンナのロータリーエンジンに採用したのがツインスクロールターボ。タービンへの排気導入通路(スクロール)を2分割し、一方のスクロールに開閉するゲートを設けたものだ。低/中回転域ではこのゲートを閉じ、排気の流速を高め、高回転になるとゲートを開け、両方のスクロールから排気を導入した。可変ジオメトリーの元祖のようなシンプルな機構だった。ランサー・エボリューション、スバル・インプレッサWRX、レガシィなどがこの方式を採用している。

直噴エンジンとターボ
 ガソリンエンジンとターボの組み合わせは一時ブームのように世界のメーカーに採用されたが、DOHCの普及、エンジン各部の改良によって、それを必要としないほど十分に出力が得られるようになった。また、濃いガソリンによって吸気冷却が必要だという、大きなウイークポイントによって、燃費、排ガス対策にも問題が生じ、ガソリンエンジン+ターボの発展は阻まれたかのように見えた。
 しかし、筒内直接噴射エンジンとターボという組み合わせが復活しつつある。ターボの大きな欠点は吸入空気をあらかじめ圧縮するために、吸気温度が高くなる。シリンダーに吸入された混合気は圧縮によってさらに高温になり、自然着火(ノッキング)が発生する。このためエンジン本体の圧縮比を高くできない、という特徴を持っている。
 ところが筒内直接噴射エンジンでは、圧縮されるのは空気のみで、シリンダー内に噴射されるガソリンは圧縮による温度上昇の影響を受けない。混合気より温度の低いガソリンを噴射することにより、混合気の温度を下げる効果があり、圧縮比をある程度上げても自然着火は発生せず、効率の良い燃焼が可能になる。
 この組み合わせを採るのはBMWのスプレーガイデッドエンジンを搭載する335、マツダCX-7などで、BMWは直列6気筒にツインターボを装着し、圧縮比は10.2と、自然吸気と同じレベルに設定される。マツダは低速型A/R比の小型のターボを装着し、9.5という高い圧縮比を得ている。

ターボとディーゼルエンジン
 ヨーロッパの多くのメーカーでは排ガス対策と燃費向上のためにディーゼルエンジンを導入しているが、燃費向上のために排気量を減らし、不足分を補うものとしてターボチャージャーを装着している。ヨーロッパのディーゼル比率は高い。フランスでは乗用車の60%がそうだし、ガソリンエンジンの権化のように思われているBMWにしても、X3やX5の90%がディーゼル、全車の比率でも60%にもなるという。ディーゼルエンジンにとってターボチャージャーは今では必須のデバイスなのだ。
 アウディはR10 TDIでディーゼルエンジン搭載車として史上初めてル・マン24時間レースに優勝した。R10 TDIは翌年もル・マンに勝利、さらにアメリカ・ル・マンシリーズでも連勝を続けた。プジョーHDiはアウディに次ぐディーゼルターボを搭載したル・マン挑戦車で、2007年はおしくもアウディに敗れたが、めざましいパフォーマンスを発揮した。VWはパリ・ダカールラリーでディーゼルエンジンを搭載したトゥアレグで参戦している。2009年には見事に優勝を飾っている。
 アウディもプジョーもVWも、ディーゼルエンジンでありながらモータースポーツで活躍できるのは、過給というシステムをフルに活用しているからなのだ。

サーブ9-5のV6エンジンに採用されているユニークな非対称ターボ。片バンクの3気筒からの排気だけで作動し、過給された空気は6気筒に配分される。

トヨタNO4C-TJ型エンジンのターボ構成図。最新のディーゼルエンジンにとって過給システムは必須のパワーアップデバイスとなっている。

グーネットピット編集部

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車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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