故障・修理
更新日:2019.07.10 / 掲載日:2019.07.10

AT(オートマチックトランスミッション)の仕組み

クラッチを持たない自動車である(オートマチックトランスミッション)にはいくつかの形態があるが、主流となっているのは1940年代にアメリカで実用化されたトルクコンバーターとプラネタリーギヤを組み合わせた仕組みだ。

AT(オートマチックトランスミッション)の種類

 AT(オートマチックトランスミッション)には様々な形態がある。もっとも普及しているのがトルクコンバーターと複数のプラネタリーギヤを組み合わせた方式だ。この方式はアメリカで実用化され、その後多くのメーカーに採用されていったもので、ATオートマチックトランスミッションの主流といってもいい。1980年代に登場したのが金属プーリーとベルトを組み合わせたCVTで、小型車のトランスミッションとして普及している。またCVTのバリエーションとして、トロイダル方式のCVTも開発された。

トルクコンバーター+プラネタリーギヤ

コンベンショナルなAT(オートマチックトランスミッション)の構造。トルクコンバーターに複数のプラネタリーギヤを内蔵した変速部分、そして油圧制御システムで構成されている。

・AT(オートマチックトランスミッション)のパーツの構成
 フルードカップリングは、フルードを満たしたケースの中にポンプとタービンを向かい合わせ、動力の伝達を行う。エンジンからのインプットシャフトはポンプに繋がれ、カップリングからのアウトプットシャフトはタービンに結合される。ポンプ、タービンの両方に放射状に羽根が設けられる。
 クランクシャフトの回転は機械的にポンプを回し、ポンプによって撹拌され、羽根の作用で流れの方向性を持たされたフルードはタービンに向かって流れ、タービンに設けられた羽根の作用によってタービンを回転させる。いったん機械式に取り出された回転はフルードによって伝えられ、再び機械的な回転として取り出される。
 回転の変換は扇風機や風車を連想するとわかりやすい。扇風機は羽根を回転させることで風を送り出し、風車は、それに風を当てることで回転する。扇風機を2つ向かい合わせ、一方を回転させると、もう一方の羽根が回り出すのも同じ原理だ。
 ポンプとタービンは機械的に接合されていないので、流体クラッチとしての作用を持つという大きな特徴がある。ポンプの回転が低い時は、タービンに与える影響は少なく、タービンを固定したままでもポンプは回転を続けられる。AT(オートマチックトランスミッション)車が停止時に、ギヤを入れたままでいいのはこの機構によるものだ。
 動力伝達機能を持ち、さらにクラッチ作用を持つことから、初期のAT(オートマチックトランスミッション)は、フルードカップリングが主役で、変速機能は従の関係にあった。例えばトヨタ初のオートマチックトランスミッションの変速段数は2速のみで、スタート、定常走行は常に2速に固定され、登坂などでトルクを要求される場合にのみ、手動で1速を選択するようになっていた。
 フルードカップリングは、流体力学上、ポンプで生み出したのと同じエネルギーしかタービンに伝えられない。しかしクルマのトランスミッションに用いられるフルードカップリングはトルクコンバーターといわれ、伝達トルクの増強作用を持っている。その秘密はステーターという羽根に隠されている。ステーターはリングの外周に飛行機の翼と同じ断面形状を持つフィンを多数、設けたもので、ポンプとタービンの間に挿入されている。ポンプから送り出されたフルードはタービンを回転させるが、タービンで用済みとなったフルードはステーターで流れの方向を変え、再びポンプに戻る。この時、戻されたフルードはポンプを回転させる方向に流れ、ポンプの回転力を補う働きをする。これがトルク増大作用だ。
 トルク増大効果は、ポンプとタービンの回転差が大きいほど顕著になる。発進時はポンプの回転が上がり、タービンの回転は止まっているから、トルク増大効果は最大になる。感覚の鋭いドライバーなら、発進時や加速時に、ターボエンジンのようなトルクの延びを一瞬、感じるはずだ。ポンプとタービンの回転が同じになると、ステーターの羽根に流れるオイルの方向が、ポンプの回転を補う方向とは逆になるため、ワンウェイクラッチの働きでステーターは自由に回転し、負の要素を現さないようになっている。

プラネタリーギヤを3セット用いた6速トランスミッションの横からのカット写真。プラネタリーギヤ、クラッチ、ブレーキの配置がよくわかる。

FF車用オートマチックトランスミッションの構造。エンジンの横に直列にセットされ、ドライブピニオンからディファレンシャルに直接動力が伝えられる。

・AT(オートマチックトランスミッション)のロックアップ機構
 フルードによる動力の伝達は、摩擦がない、ショックがないという大きな利点を持っているが、常に滑っている状態なのでエネルギー損失が大きいという決定的な欠点も抱えている。この欠点を解消するメカニズムがタービンとポンプハウジングを機械的に接続するロックアップ機構だ。
 タービンの外側に設けられたロックアップクラッチアッセンブリーはタービンと一体になりアウトプットシャフトに結合されている。ロックアップクラッチはポンプハウジングの内周に近接してセットされ、クラッチを油圧でポンプハウジングに押しつけることで、ホンプハウジングとタービンが機械的に接続され、動力の伝達がロスなく行われる。クラッチにはマニュアルトランスミッションのクラッチと同じ構造のトーションダンパーが内蔵され、クラッチ接続時のショックを吸収するようになっている。 
 ロックアップは常に行われるわけではない。大きな駆動トルクが要求される発進時や低速からの加速時にロックアップをすると、ぎくしゃくした動きとなってしまう。このため、速度とアクセル開度を検出し、速度が高く、アクセル開度が少ない運転領域でロックアップが行われ、それ以外の運転領域ではロックアップが解除され、フルードカップリングの滑りが活かされる。
 ロックアップはドライバビリティの向上だけでなく、燃費に大きな影響を与えるため、最近はロックアップ領域を拡大する傾向にある。その一つの方法としてフレックスロックアップも行われる。ロックアップクラッチを100%結合するのではなく、油圧を制御してクラッチにわずかな滑りを与える。これによって低速域でもロックアップの効果が現れる。

トルクコンバーターの構造。中心部分にステーターがセットされ、タービンランナーからポンプインペラーに戻るフルードに勢いを与え、トルクを増強する。

フルードカップリングの原理。フィンを持った2つのカップを向かい合わせ、内部にフルードを充填する。一方のフィンを回転させると、フルードにも回転エネルギーが伝わり、もう一方のフィンを回転させる。

トルクコンバーターのロックアップクラッチの構造。タービンランナーと一体になって回転するクラッチをハウジングに押しつけて、トルクコンバーターそのものを一体化させる。これによってポンプインペラーの回転が機械的にタービンランナーに伝えられる。

4速AT(オートマチックトランスミッション)が1速に入っている状態。フロントプラネタリーリングギヤとリヤプラネタリーキャリアーにブレーキがかけられ、インプットシャフトとプラネタリーサンギヤが接続される。


・AT(オートマチックトランスミッション)の自動変速機のメカニズム
 トルクコンバーターは機械的な接続なしで動力を伝えられる自動クラッチの役割と、ある程度の変速能力を持っているが、それだけではクルマの変速機としては機能しない。そのために、複数のギヤを持つ変速機が組み合わせられる。マニュアルトランスミッションでは、シフトレバーによってギヤを選択できるため、各速ギヤはメインギヤとカウンターギヤという2対のギヤの組み合わせでいいが、AT(オートマチックトランスミッション)にはプラネタリーギヤユニットが用いられている。
 プラネタリーギヤの原理は1800年代に考案され、1908年に発売されたフォードT型にも用いられたものだが、現代のAT(オートマチックトランスミッション)では、複数のプラネタリーギヤを組み合わせ、多段化を行っている。
 プラネタリーギヤは中心のサンギヤ、それに噛み合っているピニオンギヤ、ピニオンギヤを覆うように内周で噛み合っているリングギヤから構成されている。サンギヤ、リングギヤは一つのユニットに対して1個しか存在しないが、自転と公転をするピニオンギヤはサンギヤの外周に複数存在する。それぞれを結合するためにプラネタリーキャリアーがある。
 この組み合わせは様々な回転数と入力軸、出力軸の可変を可能にする。例えばリングギヤを固定し、サンギヤを回すとピニオンギヤを結合したプラネタリーキャリアーが出力軸となる。サンギヤを固定し、リングギヤを回しても、プラネタリーキャリアーが出力軸となるが、回転数は異なる。リングギヤを固定し、プラネタリーキャリアーを回すと、サンギヤが出力軸となり、同様にプラネタリーキャリアーを回して、サンギヤを固定するとリングギヤが出力軸となる。プラネタリーギヤを固定し、サンギヤを回しても、同様にリングギヤが出力軸となる。また、プラネタリーギヤを固定し、リングギヤを回すと、サンギヤが出力軸となる。このように一組のプラネタリーギヤの入力と出力取り出しパターンは6種類にもなる。
 多段トランスミッションは複数のプラネタリーギヤを組み合わせているが、1セットのプラネタリーギヤを例に変速の制御を説明すると以下のようになる。

ニュートラル
 リングギヤ、プラネタリーギヤ、サンギヤのいずれのギヤも固定しないで、自由に回転できる状態にすると、どのギヤに入力しても、空転するだけで、トルクは伝達されない。リングギヤを回してみよう。内周で噛み合っているピニオンギヤが回転するが、それはプラネタリーキャリアーを回転する力にはならない。プラネタリーギヤの回転に伴ってサンギヤは回転するが、プラネタリーキャリアーが固定されていないので、回転トルクは発生しない。
 なお、サンギヤを回しても、プラネタリーキャリアーを回しても、同じことがいえる。

増速作用
 サンギヤを固定し、プラネタリーキャリアーに入力すると、プラネタリーギヤは自転しながらサンギヤの外周とリングギヤの内周の間で公転し、リングギヤを回転させる。プラネタリーギヤの自転はリングギヤを増速させ、プラネタリーキャリアーの回転よりも速くなる。リングギヤを固定して、プラネタリーキャリアーに入力すると、公転の他に自転の力がサンギヤを増速させる。

減速作用
 サンギヤを固定し、リングギヤに入力するとプラネタリーギヤは自転しながら、サンギヤの回りを公転する。プラネタリーギヤの自転は、この場合、リングギヤの回転方向ではなく、逆の方向となる。このためプラネタリーキャリアーの公転速度は遅くなり、リングギヤの回転は減速される。リングギヤを固定し、サンギヤに入力しても、同じように減速効果が得られる。

逆転作用
 プラネタリーキャリアーを固定し、リングギヤに入力すると、プラネタリーギヤは自転のみを行い、その回転をサンギヤに伝える。サンギヤに伝えられる回転はリングギヤとは逆の方向になる。この場合、大きなリングギヤの回転を小さなサンギヤで取り出すために逆転増速となる。
 プラネタリーキャリアーを固定して、サンギヤに入力しても、リンクギヤの逆転作用が現れる。プラネタリーギヤは自転のみを行い、リングギヤを回転させる。この場合、小さなサンギヤの回転を大きなリングギヤで取り出すために減速作用が現れる。

リバースギヤに入れた状態。フロントプラネタリーリングギヤ、リヤプラネタリーキャリアーがロックされる。

油圧機構の構造。各ギヤに合わせたブレーキ、クラッチを断続するために油圧が用いられるが、そのコントロールは電子制御されたソレノイドと、それによって作動するアキュムレーターが受け持つ。

オートマチックトランスミッションのダイヤグラム。エンジンからの情報、タイヤからの回転情報などを基にコントロールコンピューターがソレノイドに最適な制御指示を出す。

CVTの制御ダイヤグラム。


プラネタリーギヤの制御方法
 プラネタリーギヤは、それぞれのギヤを固定したり、解放したり、接続することで様々な回転パターンを生み出す。さらに複数のプラネタリーギヤユニットを組み合わせることによって複数の変速パターンが生み出される。各ギヤの固定、解除にはクラッチとブレーキバンドが用いられる。ブレーキバンドはプラネタリーギヤユニットを覆うドラムの外周に設けられるもので、ホースバンドと同じような原理といえばわかりやすいが、最近のトランスミッションは多板クラッチを使用している。クラッチはマニュアルトランスミッションのそれのようなものではなく、金属の複数のリングが組み合わされた多板クラッチだ。
 一つのユニットの基本的な構造はP.175の写真のようになっている。インプットシャフトはリングギヤに接続される。プラネタリーキャリアーはアウトプットシャフトに接続される。サンギヤはドラムと一体になっている。ドラムには、その外周にブレーキが設けられ、ドラムとプラネタリーキャリアーの間に多板クラッチが設けられ、断続が可能になっている。作動の一例を説明すれば以下のようになる。
 ブレーキバンドを作用させ、サンギヤを固定すると、サンギヤの回りを公転するピニオンギヤの自転速度が増し、それに伴ってリングギヤの回転も増して、アウトプットシャフトに伝わる。ドラムとプラネタリーキャリアー間のクラッチを接続すると、プラネタリーギヤとサンギヤが固定される。これによってインプットシャフトとアウトプットシャフトが一体となった状態になり、ギヤ比は1となる。
 クラッチとブレーキは油圧ピストンによって作動する。オイルはトルクコンバーターと共用のATFで、トルクコンバーターと変速機の間に挿入されたオイルポンプによって作動圧力が生み出されている。油圧の断続制御はバルブの開閉によって行われる。電子制御以前は機械的に行われていたが、電子制御になってからは、ソレノイドバルブが用いられる。

登降坂時に不適切なアップシフト、ダウンシフトをしないように登降坂変速制御が用いられる。コンピューターに記憶された基準加速度とスピードセンサー信号から算出した実際の加速度を比較し、登、降坂を判断し、適切なギヤにホールドする。複数の制御パターンを記憶させ、ドライバーの運転パターンに合ったシフトプログラムにする学習機能付きもある。

CVTの構造。2つのプーリーの間に金属ベルトがかけられる。プーリーの幅を油圧で広くしたり狭くすることでプーリー比を変え、無段階の変速が可能になる。

プライマリープーリーの有効径を小さく、セカンダリープーリーの有効径を大きくすると、変速比は大きくなり、反対に制御すると変速比は小さくなる。

最新の変速制御
 油圧制御機構はトランスミッション下部のバルブボディに内蔵されている。迷路のような油圧回路と、クラッチ、ブレーキの断続のための油圧回路の開閉制御を行うソレノイドバルブで構成されている。ソレノイドバルブはギヤ段数に応じた数が設定されるが、4速トランスミッションでは、1-2・3-4切り替え用、2-3切り替え用、クラッチ変速制御用、ロックアップクラッチ制御用、ライン油圧制御用の、計5個が装着されている。
 スロットルポジションセンサー、エンジン回転数センサー、水温センサー、油温センサー、入力軸回転センサー、ニュートラルスタートスイッチ、ストップランプスイッチ、車速信号などからのデータがトランスミッションコントロールコンピューターに送られて、その時の走行状態に最適な変速制御が自動的に行われる。
 スムーズな変速のための機構もいくつか組み込まれている。精密に制御できるソレノイドバルブによって、ライン全体の油圧がエンジンの出力状態に合わせて最適化される。シフトダウンでは、クラッチ接続時のショックを軽減するために、エンジンの点火時期を遅らせ、トルクを一瞬低下させるものもあるし、接続の前に、マニュアルトランスミッションで行うブリッピングの行程を入れるトランスミッションもある。さらにクラッチ接合のための油圧も精密に制御され、ショックの発生を抑制し、滑らかな変速を可能にしている。
 初期のオートマチックトランスミッションは、平坦路での変速制御はスムーズでも、登坂や降坂ではドライバーの思惑どおりに変速しなかった。登りなのにシフトダウンが遅れたり、下りでエンジンブレーキが必要なのに、高いギヤに固定されたまま、という例が多かった。そのような欠点を取り除いたのが登坂/降坂制御だ。メーカーによって固有の名称を付けているが、基本的にはみな同じような制御を行っている。 コンピューター内に記憶させた基準となる加速度と、スピードセンサーからの信号を基にした実際の加速度を比較することで、登坂か降坂かを判断し、基準加速度より実際の加速度が小さい場合は登坂、大きい場合は降坂と判断する。これによって、登坂直前のシフトアップを抑えたり、降坂時に適切なギヤへのシフトダウンがすみやかに行われる。カーナビと連動して、道路状況に合わせた変速を行う機能も一部のクルマに搭載されている。また横Gセンサーからの情報を基に、弱いGが連続して入る場合は、緩いコーナーと判断して3速に固定、強いGが入る場合は2速に固定するというような制御を行うトランスミッションもある。
 電子制御はドライバーの意思による制御もやりやすい。シフトアップのタイミングを抑えて、エンジンを高回転まで使えるようにするスポーツモードを設定することもできるし、スタートギヤを高くし、巡航ギヤも適度なトルクのものに固定するスノーモード、すぐに高いギヤにシフトアップさせるエコノミーモードを作ることも可能だ。また、制御はワイヤーで機械式に繋がったものではなく、電気信号で制御するバイワイヤーのため、シフトレバーの位置の自由度は高く、シーケンシャル操作の他、ステアリングホイールの裏にシフト用パドルを設けたクルマも増えている。

CVTのプーリーの断面図。軸を中心に左右に分かれていて、一方が油圧ピストンと同じ動きをする。油圧室の油圧を高くするとプーリーの幅は狭くなり、低くするとプーリーの幅は広くなる。ピストンはまた、油圧でベルトをプーリーに押しつける働きもしている。

CVTのスチールベルト。駒のような多数のエレメントとスチールリングで構成されている。コグドベルトやサーペンタインベルトは引く力で駆動するが、CVTではエレメントを押す力がプーリーの駆動力となる。

インプットシャフトをプラネタリーギヤのサンギヤに接続し、前進、後退の切り替えを行う。初期のCVTは電磁クラッチを用いていたが、最近はトルクコンバーターに替わっている。


・変速のメカニズム
 油圧室にオイルを送り込むとプーリーは対向するプーリーの方向へ押し出される。これによってV字形の谷が狭まる。油圧室からオイルを排出するとプーリーは対向するプーリーから離れ、V字形の谷が広がる。これがCVT制御の全てといっていい。
 谷が狭まると金属ベルトはプーリーの上部に押し上げられ、直径の大きいプーリーにかけたのと同じ状態になる。プーリーの谷が広がると、金属ベルトは谷の底に下りて、直径の小さいプーリーにかけられたのと同じ状態になる。これをプライマリープーリーとセカンダリープーリーで行うことによって、連続したとぎれのない無段階の変速が可能になる。
 変速制御にはアクセル開度センサー、スロットルポジションセンサー、エンジン回転数センサー、水温センサーからのデータがエンジンコントロールコンピューターに送られ、運転状況に合った油圧制御が行われる。
 CVTの大きな特徴はエンジンを効率の良い部分で使えることと、主に加速時に、出力回転数を保持することができることだ。有段のオートマチックトランスミッションではギヤが選択されるたびにいったん回転が下がり、そこから上昇に入るが、CVTではそのロスがなく、エンジンの能力を無駄なく活用できる。
 道路状況に合わせた変速プログラムは有段オートマチックトランスミッションと同様で、登坂、降坂をコンピューターが判断して、無駄なアップ、ダウンシフトを制限している。 
 無段変速ながら、その範囲で変速比を区切り、シーケンシャルでマニュアル操作ができるものの他、ステアリングの裏にパドルを設け、ドライバーの意思に応じて駆動力を引き出し、ドライビングを楽しめるものもある。

ホンダが採用するマルチマチック。基本はCVTだが、トルクコンバーターに代えて電子制御多板式の発進用クラッチを設けている。ドリブン側に設置することによってクリープ現象を作ることが可能な他、駆動軸とプーリーの間を断続できるため、牽引時にもCVTに損傷を与えない。


・トロイダルCVT
 スチールベルト式のCVTは強度の問題から、大きなトルクを発生するエンジンに使用できないという欠点を抱えている。最近は大トルクにも対応できるCVTが生産されるようにはなったが、1.5Lから2Lまでのエンジンが主な対象となっている。これに対して大トルク向けに開発されたのがトロイダルCVTだ。 変速の原理はベルト式CVTと変わらず、プーリーに代わる入力ディスクと出力ディスクの比によって行われるが、動力の伝達はその間に挿入されるパワーローラーによって行われる。パワーローラーを水平の状態に保てば、変速比は1対1となる。パワーローラーを傾けると、入・出力ディスクに当たる位置が変わり、変速比に変化が現れる。
 NSKが開発し、ニッサン・セドリックに搭載された。現在、この方式を採用するクルマは生産されていないが、同種のトランスミッションの開発は他のメーカーでも行われている。イギリスのトロトラック社はトルクコンバーターを廃止し、代わりにプラネタリーギヤを使ったITVを開発中だ。ITVのもう一つの特徴はディスクに接触するローラーにトルクを与え、ローラーの自立安定によって自動的に変速することだ。トロイダルCVT、ベルト式CVTの他に新手のCVTの研究も進められている。駆動系パーツの大手メーカーNTNが公表したモノリングCVTがそれだ。ベルト式CVTのベルトがVプーリーの中を上下するように、ガイドローラーで保持された歯付きリングがプーリーの中で前後に揺動して、出力歯車に異なった回転力を伝える。

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

この人の記事を読む

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ