故障・修理
更新日:2019.09.08 / 掲載日:2019.09.08
目指せ30万km! オンボロジムニー快適化計画 その9
エンジン、内装をリフレッシュして、前回は懸念だったショックの交換も済み、かなり快適になってきたジムニー。ただ、ひとつだけずっと気になっていたことが。それがフューエルライン。まさか23万km無交換?
1981年に登場したSJ30型から引き継いだ四角いボディを持つJA22W。パーツの少ないコイルバネと、ギヤ比の高さが災いしてマニアからはそっぽを向かれた不人気モデル。取材当時の走行距離は233,600km。
エンジンが動いているのが不思議なほど劣化している!?
エンジンオーバーホールが終わってから1年弱になるが、ショックアブソーバーの交換をしている時に、おかしなことに気付いた。リヤの右ショックアブソーバーのフレーム側取り付け部の前側には、燃料フィルターがある。金属製のボディだが、年式なりに黒ずんだ外観となっている。そういえば、このフィルターはいつ換えたんだろう? との疑問がわいてきた。さすがに23万kmの間には、一回くらい換えていると思いたいが、なんせメンテナンスの悪いクルマだけに、ひょっとして無交換なのだろうか?
燃料フィルターが詰まると、始動不良を起こしたり、ターボのブースト圧が上がってきた時にガス欠症状が起こるものだ。明らかなガス欠症状ならドライバーが気付くのでまだマシだが、フルブーストがかかっている時に、混合気が薄くなるような状況が一番マズイ。そもそも、このクルマのエンジンは2番の排気バルブが溶損していたこともあり、バルブ自体に不安があったのだから、燃料系のチェックはしておくべきだった。しかし、オーナーTは今のところは問題ないという。それよりも、燃料計がフル側でちゃんと動かないので満タン後から半分程度までの減り具合が分からないほうが困るという。
そのほか、燃料ホースもくたびれている感じがするので、この際タンクからエンジンルームまで換えてしまおうということで、燃料ポンプ以外の部品をリフレッシュすることにした。ポンプは社外品もあるらしいので、予算と性能の兼ね合いでどれにするか再度検討することになった。
ジムニーには、普通の乗用車にあるような室内側のサービスホールはなく、まずはタンクを外さなくてはならないが、ガソリンがどれだけ残っているか分からない。半分くらいは残っているだろうということで、給油口からのパイプを慎重に外し、そこからポンプで携行缶に吸い出した。結局25Lほど残っていた。
タンク内部の状態は悪くなかったが……
燃料ポンプとセンダーゲージが分離した古い構造
燃料タンクを降ろしたら、タンク上面に溜まった長年の汚れを落とす。センダー(sender)ゲージや燃料ポンプはここにネジ留めされているが、脱着時に砂が内部に入らないようにするのだ。上面にはシャシーブラックを吹いたような形跡があったが、一度はポンプを交換しているのかもしれない。今のクルマではフィルターまで一体式を採用するタイプもあるが、この当時はポンプもゲージも別。ゲージは新品にするので外すのは当然だが、ポンプも吸い込み部のフィルターが詰まっていないか確認し、燃料タンク内の異物や水滴の有無をチェックしたいので、ポンプユニットも外してみた。
酷い状態を覚悟しながら外してみたが、ポンプの吸い込み口のスクリーンには、目立つゴミは見当たらない。タンク側は、ポンプの周辺を囲っている隔壁の底に赤い変色が見られるが、浮きサビではないので、悪さはしなさそう。もしかして水分が入ったのかもしれないが、特別な掃除は不要と判断し、ポンプを元通り装着する。センダーゲージは、長いロッドの先にフロートがあるので、上に引き上げてから横に寝かしてフロート部をタンクの穴から引き出してやる。こちらは外観上の異常は見られないが、内部の可変抵抗が擦り切れているに違いない。
次は燃料フィルターと周辺ホースの交換。リヤをジャッキアップして右のショックアブソーバー取り付け点の前にあるフィルターを外す。フィルターはブラケットにボルト2本で取り付けられているが、ボルトを差し込む向きが、内側と外側に分かれている。フレーム周辺は空間があるように見えるが、安全性を考慮してかフレームとフロアのキワに寄せてある感じだ。
燃料ホースは、ホースバンドで固定するタイプ。補給部品はバキュームホースと同じで長いホースから切り出すタイプ。バンドはねじ込み式だが、使用限界を超えていたため、新たに買い足すことになった。このくらいの年式だと、全部換えたほうが安心だ。
そうだ!ブレーキホースも交換しよう!
リヤのブレーキホースはちょっと危険な状態に
リフトアップ用スプリングと新品ダンパーによって、足回りの性能はそれまでと比較にならないくらいによくなったが、ここで問題となるのがブレーキホース。リヤ側はリフトアップで長さが足りなくなっていて、通常車高でも少ししかたわんでおらず、ジャッキアップしてデフを下げると完全に引っ張られた状態になる。コーナリングでのロール方向はまだしも、ブレーキングでリヤがリバウンドした時はホースが傷む可能性がある。そこで、リフトアップに対応した長いブレーキホースに交換。リヤ側のホースは一本だけで、フレアナットレンチがあれば難しくない。ジムニーは、左右のホイールシリンダーが金属パイプで連結され、ブリーダープラグが左側にしかないので、エア抜きは片側だけで済む。
フロント側はホイールハウス側で配管の取り回しが左右非対称だ。右側はタイヤを外すとホイールハウス内のフレームまで金属パイプが這わされていて、ホースとの接続部がある。一方、左側はエンジンルームのボディ鋼板にホースの固定部があるので、脱着はエンジンルームから行うようになっている。このようなことから、左右のホースも全く違う長さと形状になっている。こういった専用部品が増えるのはコスト高の要因となるだろうから、よほどの理由があってこの構造としているのだろう。
フロントのホースを交換すると、左側はフレーム側の中間ブラケットとボディ側でホース長があまり、純正より曲げた形での装着となる。これはこのホースがボディのリフトアップ(フレームとボディの間にスペーサーを入れる)も考慮されているからのようだ。普通のクルマしかいじっていないと、ブレーキホース延長はまずしないから、ちょっと新鮮な感じがした。
その他、フロントキャリパーのブリーダープラグの動きが渋いため、エア抜き前に一旦取り外してプラグのネジ部分をワイヤーブラシでブラッシングした。
フロント左側
フロント右側
フューエルラインの状態を検証する
泥が溜まっていた!?燃料フィルター内部
予定の作業が終わったところで交換した燃料系パーツの劣化具合をチェックした。一番気になるのは燃料フィルターだ。これは燃料圧力に耐えるために金属ケースを使っているが、内部にガソリンが残っているので、グラインダーでカットするわけにはいかない。しかし、金ノコで切ると切り粉が出てしまうので、1日放置して内部のガソリン残量が少なくなったあたりで(常温では蒸発しない成分もある)、フィルターにエアを少し吹き込んで液分を押し出した。さらに、カシメ部をグラインダーで平らに削り、タガネを打ち込んでカット。もちろんタガネを打ち込んだ際にはフィルターやハンマーで火花が出る可能性があるので扇風機で換気し混合気が滞留しないようにした。
フィルターはホースを外した段階やエアを入れた時点で相当な汚れが溜まっていると想像できたが、開けてみると泥が溜まっているかのようだった。当然濾紙は真っ黒けで、これでよくガソリンが流れていたもんだと感心するレベル。10万kmでの交換が推奨されているが、やっぱり今まで交換していなかったのか? こんなに酷いのなら、燃料ポンプの消費電力も測っておけばよかった。詰まりがあるとポンプの電力が増すのか気になるところである。
燃料計は、センダー部のロッドの支点部を開けると可変抵抗が見えるが、想像通りコイル状に巻かれた部分がすり減っていた。これのせいで、抵抗値があるところから変化しなくなったのだろう。交換後は燃料計がフルまで動くようになった。
燃料ホースは、1回は換えられているのかもしれないが、圧力の高いインジェクション用は寿命が長いので、換えてなくても持ちそうな気もするし、よく分からないが、ホースバンドで締めた部分のつぶれ方を見ると、換えてよかったなと思う。
燃料ポンプは換えていないし、燃圧も測っていないので、まだやることは残っているが、かなりリフレッシュが進んだはずだ。
高速でも安定して快適に走れるようになった
今月も、GAB製ショックアブソーバーのインプレをお届けします。
今月は取材で糸魚川、大阪、山梨、長野と長距離走行をすることが多かったので、高速での印象をお伝えしましょう。
高速での安定感はノーマルとは比べ物にならないくらい引き締まった感じ。今までは不安だった首都高合流部分の繋ぎ目でも安心して走ることができる。これまではコーナリング中はゆらゆらと不安定で、段差を超える時には飛び跳ねるようにタイヤが暴れていたが、ショック交換後は、コーナリング中は安定していて、段差を乗り越えてもショックが吸収してくれるので、慌てることもなくなった。
ショックの減衰力はフロントを3、リヤを6にセットしていたのだが、同乗者から「固い」とのクレームがきたので、フロントを2、リヤを4へと柔らかくしてみた。はじめはフロントが柔らかく感じていたが、確かにこちらのほうが乗り心地がいい。
1日で1200kmほど運転したが、今までよりも直進安定性もよく、小刻みにハンドルに修正を与えなくて済むので、疲労も軽減された。柔らかくしたおかげでコーナーでは少しロールが大きくなったが、安全なスピードで走行するにはこのくらいがちょうどいい感じだ。
デフロックに興味がある読者が多いようで……
最近デフに関する質問や問い合わせを多くいただきます。なかでもデフロックに興味がある方が多いようで、取り上げてほしいとのご意見をいただいているのですが、今のところこのジムニーは高速での移動も多いのでデフロックの装着には踏み切れません。エアロック式にすればいいのでしょうが、今のところ本格的なコースにも行く予定はないし……。