故障・修理
更新日:2019.09.08 / 掲載日:2019.09.08
目指せ30万km! オンボロジムニー快適化計画 その10
前回ブレーキラインを交換した時に気になったのがブレーキ。フロントのパッドはまだ残っているが、他の状態は全く分からない。というわけで、ブレーキまわりのオーバーホールを行うことにした。
1981年に登場したSJ30型から引き継いだ四角いボディを持つJA22W。パーツの少ないコイルバネと、ギア比の高さが災いしてマニアからはそっぽを向かれた不人気モデル。この取材時の走行距離は234,990km。
油圧系のコンディションを分解して確認したい
ネットオークションで投げ売りされた現状渡し車の悲しさで、メンテ記録が全くないジムニー。どこを点検するにも「さすがに20万kmオーバーなら替えてあるだろう? でもこの状態は替えてないなあ?」という疑念と推理を繰り返しながらのリフレッシュだ。
ブレーキもまた然り。ハブまわりを何度か分解しているので、フロントのブレーキパッドやリヤドラムのライニングに残量があることは分かっている。特にフロントは十分な残量があるので、車検の時に替えたのだろう。ローターやドラムに交換履歴があるかは不明だが、目立つ段付きはなく比較的キレイな状態。メンテが悪いと、ディスクローターにブレーキパッドが正常に接触しなくなることがあり、他のジムニーで本来の摩擦面の半分程度しかテカってないのを見たことがある。しかし、今のところ異常は見られない。効き具合も問題ないが、ジャッキアップしてフロントホイールを回すと、ハブをフリーにしているにもかかわらず、かなりの抵抗感がある。もしかすると、キャリパーのピストンやスライドピンの動きが悪いのかもしれない。一方リヤはドラムであり、ライニングがバネで確実に戻されるのでブレーキの引きずりはほとんどなく、そのままでもいいように思われる。
それでも、油圧系のコンディションがどうなっているかは分解してみないと分からない。エンジンルームを見てみると、マスターシリンダーが取り付けられているバキュームブースターがサビだらけになっている。これは典型的なマスターシリンダーからのブレーキフルード漏れによるものだが、現在は乾いているところを見ると、以前に交換したのではないかと思われる。それにしても、これだけサビるまで放置されていたのだから、前のオーナー(と整備工場)は壊れるまで予防整備を行なわなかったのだろう。そこで今回はブレーキの油圧系をフルオーバーホールしてみたのだ。
リヤのブレーキシューは減っていた!
内部のピストンは左右対称
Fブレーキのパッドは残っているけど……
パッドは片減りが目立ちキャリパーにもサビが!
オーバーホールは、込み入った構造のリヤのドラムから始めてみた。ドラムはサイドブレーキを解除すれば簡単に外れるが、今回改めてライニングの自動調整機構の解除用サービスホールを探してみた。しかし、それ用の穴やゴムのフタが見当たらない。ドラムブレーキは、ライニングの摩耗が増えた時にもドラムとのすき間を一定にするためのラチェット機構があるが、ドラムが段付き摩耗すると、ドラムを外す時にライニングが引っかかって抜けないことになる。そのため、ドラムが装着された状態でも外部からラチェット部を解除する小穴があるものなのだがないのだ。まあ、ジムニーの場合は特別な調整解除を行う必要がないのだろう(と勝手に解釈する)。
ホイールシリンダーはバックプレート裏側から、フレアナットとボルト2本を抜き取ると外れる。リヤは独特の配管レイアウトで、右のホイールシリンダーに左側車輪への分岐用配管も接続されているのがユニークだ。ホイールシリンダーの状態が懸念されたが、サビもなくいいコンディション。ただし、ライニングとバックプレート間のグリースは硬化したりなくなっているので、新品の組み付け時に補充した。基本的には通常の手順で作業が済んだ。なお、ドラムブレーキは自動調整部やスプリングの組み付け方が複雑なので、分解組み立ては片方ずつ行うといい。両方一気に分解すると、あとで分からなくなってしまう。
お次はフロントキャリパーだ。こっちはブレーキパッドの残量が十分なことは知っていたが、今回ちゃんとチェックすると、ディスクへの接触状態は問題ないものの、内側と外側のパッドの厚みが違っているのが分かった。左右どちらも外側のパッドの摩耗が進行している。クルマの仕様でこうなることもあるが、大抵はキャリパーの動きが悪くなっていることで発生する。他のクルマでは内側が先に減るのを多く見ているので、これは意外なパターンといえる。キャリパーはダストブーツ部とスライドピンでのサビやグリース劣化、ブーツ破損があり、サビ取りにはかなりの時間が掛かってしまった。
マスターシリンダーがブースターから外れない
フロントキャリパーは、ダストブーツにサビが出ていた他、キャリパーピストンにも僅かな腐食跡が見られた。本来ならピストンも新品にすべきだったが、今まで漏れていなかったことから表面の汚れを拭き取って元に戻した。幸い、組み立て後でもフルードにじみの発生はなかったが、こういうことがあるので、古いクルマのブレーキオーバーホールでは、サビた金属パーツの交換もあり得ると考えて十分な時間(と予算)を持って進めたほうがいい。
次はマスターシリンダーの分解。まず、シリンダーに付いているフレアナット2本を外すのだが、シリンダー上部に差し込まれている側は、ボディ側の接続部から外す必要があった。そこは奥深くスペースがないので、ソケットレンチのエクステンションバーにクロウフットを付けて回した。さらに、フレアナットのネジ部が渋くなっているので、スパナをいちいち差し替えて回すのが面倒で、作業途中でラチェットスパナを使って回していった。
マスターシリンダーは、固定部のナットを緩めれば外れるハズ。しかし、引っ張っても抜ける気配がない。この時点でほぼ予想はしていたが、マスターシリンダーの差し込み部が激しく腐食していて、白い粉で全周が覆われていた。フルードは漏れていないので、前回修理時の清掃がほとんど行われていなかったのだろう。だけど、部品交換する時って、それなりに周辺のクリーニングもするものではないのだろうか。素人の場合、機能と関係ないところまで拭き上げたりするものだが、このジムニーでは玄人ならではの手抜きが感じられる。つまり、マスターシリンダーの中身さえ替えればよく、他は汚くても機能的には関係ないと知っているヤツの仕業と推測されるのだ。しかし、この部分にOリングがあることから分かるように、バキュームブースターの機能上、マスターシリンダー取り付け部の気密性は非常に重要なのだ。ここの真空度が小さくなるとブレーキの利きが悪化するのだ。
マスターシリンダーもひどい状態だった
こんなところに……
シルバーに
ブースターのプッシュロッド調整は「ゼロ」で
方向に注意
空き缶を利用してプッシュロッドのすき間確認
マスターシリンダーのオーバーホールは、シリンダー後ろ側のスナップリングを外してプライマリーピストンを抜き、次にマスターシリンダーの脇にあるボルトを抜いて、セカンダリーピストンを抜き取る。シリンダー内部は取り付け部の腐食が酷い割には程度がよく、ウエスで軽く拭くだけで十分キレイになった。
問題は、組み付け時だ。ブレーキブースター(マスターバック=Master-vacは商標)のプッシュロッドとマスターシリンダーの接触部のすき間をチェックし、必要によりプッシュロッドの長さを調整する必要があるのだ。クルマにもよるが、すき間はゼロ~0.3mm程度になる。少なくとも、マイナス(プッシュロッドが常にマスターシリンダーのピストンを押し出す状態)はマズイ。ただし、この寸法の測定および調整には特殊工具が必要だ。昔、AMガレージでも自作SSTを製作したが、これがどういうわけか見つからない。さらにプッシュロッドが奥まったところにあるので、正直調整も困難。ムリしてやるとプッシュロッドを傷める可能性がある。取り敢えず、プッシュロッドのすき間だけOH前とあとで変わらないことを確認するために、缶コーヒーの空き缶を当て物にして、数値を簡易計測し変化のないことを確認。ブースター側とのすき間はゼロではなく、僅かに確保されていることも分かったので、今回はいじらなかった。
マスターシリンダーはピストンとリザーバータンクとタンク取り付け部のパッキンを交換。特にタンクが新品になったことで、見た目もバツグンによくなった。
組み上がったマスターシリンダーはそのままブースターに付けるのではなく、単体でエア抜きを行う。ブレーキフルードをタンクに入れ、ピストンをドライバーなどで押し込んでから、指でポート(フレアナット接続部)をふさいでピストンを戻す。これを数回繰り返すとピストンを押した時にフルードがポートから出るようになる。
【オマケコーナーJA22通信】GAB製ショックアブソーバーのインプレ オフロード編
オフロードで本領発揮足はしなやかに動くが…
前々回、ショックアブソーバーをGAB製に交換して、快適にドライブできるようになったジムニーだが、せっかくのクロカン4WDなのに舗装路を走ってばかりだったので、林道を走りに行ってみた。首都圏近郊の林道はほとんどが閉鎖されてしまって、あちこち走り回ってようやく見つけた埼玉県某所の林道を走ってみた。
サスペンションの減衰力はF2、R4でオンロード時のセッティングのまま。入り口付近のフラットダートではしっかり凹凸を吸収し、走りは安定している。少し奥に入ると前日の大雨により路面が削られてガレている。ショックはしっかりストロークしているようで、大きな溝も難なく乗り越えた。減衰力はそのままでも問題なさそう。ただ、タイヤが元々ミニバンで履いていたオンロード用なので、濡れてぬかるんだ路面ではズルズルと滑ってしまい走りにくい。タイヤを交換して再度アタックしてみようと思う。
ペダルパッドを交換して気分もリフレッシュ
ブレーキのリフレッシュに合わせて、ペダルのゴムも新品に交換してみた。ペダルのゴムパッドは硬化してしまい、靴底が濡れた状態で操作すると滑ってしまうこともあった。ペダルが滑ってしっかり踏み込むことができなければ危険。というわけで、ペダルのパッドを交換した。
ペダルパッドはJB23用と統合されたのか、デザインが変更されていた。ちなみに価格はアクセル用が1個180円、ブレーキ、クラッチ用は1個270円。いずれも税別だ。
古いペダルパッドはカチカチに硬化してなかなか外れない。プライヤーで掴んでようやく取り外した。新しいパッドは柔らかく、しっかり靴底もグリップして操作もしやすく快適だ。