故障・修理
更新日:2019.10.01 / 掲載日:2019.10.01

ブレーキの油圧システムの仕組みについて

ブレーキの油圧システムは、ブレーキ・ペダル、マスターシリンダー、ブレーキ・パイプ、ブレーキ・ホース、ホイール・シリンダーでなりたっている。それぞれの特徴と仕組みについて解説する。

ブレーキ油圧システムの種類や仕組み

1.ブレーキ・ペダル
これは、いうまでもなくドライバーの踏力をマスターシリンダーへ伝えるためのもので、乗用車の場合は、ペダルの支点の上の方に置いた吊り下げ式が多く使われている。だが、トラックやバスではペダルのストロークが大きいので支点を床下に置いた踏み込み式が多い。
さて、支点とペダル間の距離を支点とプッシュロッド間の長さで割ったものをペダル比と呼ぶ。テコの原理からいってもペダル比を大きくすれば踏力を小さくすることはできるが、踏み込みのストロークが大きくなる。このため乗用車のペダル比は3~5、大きな制動力を必要とするバスやトラックでは5~7のペダル比をとっている。
2.マスターシリンダー
これは加動用シリンダーの一種で、ブレーキ・ペダルを踏むとペダルのアームに取付けられたプッシュロッドがシリンダー内のピストンを押し込む。ピストンの先端にはブレーキ液を押して圧力を加えるプライマリー・カップ、後端にはブレーキ液の洩れを防ぐセカンダリー・カップが組み込まれている。
プライマリー・カップが、リザーバータンクに通じるコンペンセーティング・ポート(油逃し穴)をふさぐと、シリンダー内の圧力が上がりはじめ、小さなスプリングの力でブレーキ液の出口を閉じているチェック・バルブを押し開いて、ブレーキ液がパイプ・ラインへと送り込まれる。
逆にブレーキ・ペダルから足を放すと、ペダルとピストンは、それぞれにリターン・スプリングによって引き戻される。
ただ、この時に問題になるのはパイプ・ライン内とシリンダー内に負圧が発生することだ。この負圧のためピストンの戻りがおくれ気味になるし、ホイール・シリンダーやカップから空気を吸い込む恐れもでてくる。
この負圧をなくすために、インレットポートからピストンのまわりに引きこんだブレーキ液をピストンの頭部の小さな穴(ブリーダーホール)を通して、シリンダー内に送り込む。ピストンが完全に戻り終わると、シリンダー内の余分なブレーキ液がコンペンセーティング・ポートを通ってリザーバータンクに戻るわけだ。
さて、ホイール・シリンダーからマスターシリンダーへと逆流するブレーキ液の大半がマスターシリンダー内におさまってしまうとチェック・バルブが前進しパイプラインとマスターシリンダーの間をカットしてしまう。
ただし、逆流が終了する一歩手前でチェック・バルブが閉じるので、パイプ・ライン内には一定の圧力が残ることになる。これが残圧と呼ばれるもので、普通は3~5kg/平方cmだ。
この残圧がないとパイプ・ライン内に空気が混入しやすいし、急ブレーキを踏んだ時の圧力伝達が遅れることがある。つまりブレーキのレスポンスが悪くなってしまうわけだ。
だが、ディスク・ブレーキの場合は、チェック・バルブにピン・ホールをあけるなどの方法で残圧をゼロにしなければならない。なぜなら、ディスク・ブレーキでは、ドラム・ブレーキのようにシューのリターン・スプリングがないため、残圧があると引きずりを起こしてしまうからだ。

3.ホイール・シリンダー
ホイール・シリンダーは、マスターシリンダーで発生した圧力を受け、それを一定方向への力へ変えてシューをドラムに押しつける受動用シリンダーである。
ホイール・シリンダーの形状と作用は、ドラム・ブレーキの形式によって異なり、対向ピストン型や一方向型などが用いられる。またシリンダー自体がアンカーの役目をもつこともある。
シリンダー本体には、強度や摩擦特性を考えて鋳鉄を使うこともあったが、乗用車等ではアルミ合金も使われる。ピストンの内面には、ブレーキ液の洩れを防ぐためにカップと呼ばれるゴム製のリングがはめ込まれている。また、カップのほかにOリングや角リングが使われていることもある。
マスターシリンダーやホイール・シリンダーには、ブレーキ液の中に混入した空気を抜くためのプラグが組み込まれている。これがエア・ブリーダー・プラグだ。

4.ブレーキ・パイプとホース
ブレーキ・パイプはマスターシリンダーとホイール・シリンダーの間をつなぎ、油圧の通り道となるものだ。
すこし前までは、錆がでにくく加工しやすいために銅製のブレーキ・パイプを採用していたが、最近では少量のブレーキ液に大きな圧力をかけるため、強度が高くコストも安い鋼管が用いられるようになってきた。鋼管を使う場合は錆や腐食を防ぐために、まず銅メッキをし、さらに亜鉛メッキをする必要がある。
ホイールに組み込まれたホイール・シリンダーとボディのパイプ・ラインを結ぶものがブレーキ・ホースだ。この部分に、金属製のパイプを使ったのでは、クルマが上下に振動したり、ハンドルを切った時に折れてしまう。そのために、柔軟性をもつ合成繊維、綿、麻などの材料を加工した耐圧ゴム・ホースがブレーキ・ホースとして使われている。
これまでにみてきたように、ほとんどのクルマでは、サービス・ブレーキ(常用ブレーキ)にハイドロリック・システムを利用している。ただしパーキング・ブレーキ(駐車ブレーキ)は、ケーブルによる機械制動である。

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

この人の記事を読む

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ