故障・修理
更新日:2019.10.01 / 掲載日:2019.10.01

バキュームブレーキの仕組みと作動原理

乗用車の場合を考えると150km/h以上の高速で走る場合は、人間の脚力だけでは、クルマを制動することはできない。また、大型トラックやバスなどではクルマの慣性重量が大きいので、人間が力いっぱいブレーキ・ペダルを踏んだくらいではとても止まってくれない。こういった背景から、ブレーキの制動力を補助する色々なメカニズムが発達してきた。今回はバキュームブレーキについて解説する。

バキューム・ブレーキとは

これはマスターバック、ブレーキ・ブースターなどの名で呼ばれているもので、ほとんどの国産乗用車に採用されている。とくに、大きな油圧を必要とするディスク・ブレーキには、バキューム・ブレーキが必需品だ。
バキューム・ブレーキをよく理解するには、まず「バキュームとはなにか」ということを知る必要がある。バキュームとは真空を意味し、物質が全く存在しない空間のことだ。
もっとも、このような絶対的な真空を作り出すことはできないので、ほぼ真空に近い状態をバキューム状態と呼んでいる。
空気にも他の物質と同様に重さがあり、海面上では1平方cm当たりに1kgの力が加わっている。そして、これこそが1気圧というわけだ。
ある空間をバキューム(真空)にすると、あらゆる角度から、この空間に1kg/平方cmの力が加わることになる。バキューム・ブレーキとは、この大気の重さを利用したものにほかならない。
ある一定の容器から連続的に空気を抜き取ると、容器内の気圧は0.3kg/平方cm位まで下がる。そうすると、容器の表面には差し引きで0.7kg/平方cmの気圧がかかることになる。そして、この圧力差によって生じる力をブレーキの踏力に加えてやろうというのが、バキューム・ブレーキの基本原理である。

■バキューム(真空)の作られ方バキュームをどのようにして作り出すかが問題になるが、4サイクル・エンジンの場合は簡単だ。つまり、エンジン内の空気や燃焼ガスをどんどんエンジン外に排出し、同時にエンジン内部に流入する空気を制限すれば、インテーク・マニホールド内の気圧が下がり、つまりバキューム状態が実現する。
シリンダー内のバキュームは、クルマが高速でかつ低いギヤで走っているときほど、またスロットルバルブが全閉になっている時ほど強いはずだ。
なぜなら、その時はタイヤの回転で駆動されるピストンが、短時間でシリンダー内のガスを排出し、インテーク・マニホールド内が低圧になるからだ。このバキュームを利用して大気圧の力を引き出すのがパワー・シリンダーということになる。
パワー・シリンダーとインテーク・マニホールドを結ぶパイプの途中には、ブレーキ・ペダルと同調して働くバルブが組み込まれている。
ブレーキ・ペダルを踏むと、このバルブが開き、ピストン前部のチャンバー内の空気はマニホールド内に吸い込まれる。するとピストンの右側のチャンバーに大気圧が流入してピストンを左側に押し、同時にプッシュロッドを引っ張ることになる。このような原理で、プッシュロッドには、ブレーキ・ペダルを介して加わるドライバーの踏力と大気圧という2つの力が加わるわけだ。そのためにペダルを軽く踏んだだけでも高い制動力を得ることができる。
現在、もっとも多く採用されているバキューム・ブレーキは、バキューム・サスペンディッド・タイプである。これは、マンガでも示したように、ブレーキ・ペダルを踏んでいない時は、ダイヤフラムの両面にバキュームが作用しているものだ。そして、ブレーキ・ペダルを踏んだ時に、はじめて片側のチャンバーに大気圧が流入し、圧力差が生じる。

1.ブレーキを踏んでいない時
エンジンが回転し、かつブレーキ・ペダルを踏んでいない状態では、インテーク・マニホールドからのバキューム圧は、チェック・バルブを通り、パワー・シリンダーのフロント・チャンバーに通じている。そしてバルブ・リターン・スプリングによってバルブ・ロッドとバルブ・プランジャーは、バルブの後部に押され、大気圧ポートを閉じ、バキューム・ポートを開く。
このような状態では、リヤ・チャンバーへもバキューム圧が通じるので、ダイヤフラムの両面が真空状態になる。
2.ブレーキを踏んだ時
ブレーキ・ペダルを踏んでブレーキを作用させると、バルブ・ロッドとバルブ・プランジャーは、ダイヤフラム・プレートのバルブ・ハブ内で前進し、バルブ・リターン・スプリングを押し縮め、バキューム・ポートを閉じる。さらにプランジャーを押すと、今度は大気圧用のポートを開き、そのポートより大気圧がリヤ・チャンバーに流入することになる。
その結果、ダイヤフラムの片面にバキューム、片面に大気圧が作用するようになり、両面の圧力差により、ダイヤフラムは前方に押され、接続しているロッドは、ハイドロリック・ピストンを押してマスター・シリンダー内のブレーキ液をパイプ・ラインへと押し出すことになる。そして、ドライバーのペダル踏力に応じたブレーキ作用が行なわれた場合は、今度は作用した圧力が逆にバルブ・プランジャーとバルブ・ロッドを軽く押し戻す。そのためダイヤフラムとバルブ・ハブは大気圧用のポートを閉じる働きをする。この作用によって、ドライバーにブレーキの作用に応じたペダルの重さをフィーリングとして伝える。
3.保持状態とは?
前に述べた作動状態で、ドライバーのペダル踏力に応じたブレーキ作用が行なわれた時は、その反力でプランジャーが軽く押し戻されて大気圧用のポートが閉じられる。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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