故障・修理
更新日:2019.10.01 / 掲載日:2019.10.01

電子制御ブレーキシステム(EBS)の種類と仕組み

電子制御システムの開発によって、ブレーキにもABSやTRCといった最新の自動制御テクノロジーが導入されるようになった。

ニッサンの電子制御ブレーキ・システムの仕組み

日産上級車を例にとって、ニッサンの電子制御ブレーキ・システムを見よう。
1.プレビュー・ブレーキ・アシスト・システム
車間自動制御システムを応用し発展させたもので、前方のクルマや障害物との車間距離および相対速度から急制動が必要だと判断した場合は、ドライバーがアクセルを放してブレーキを踏み始める間に、ブレーキに与圧をかけ遊びを詰めることで、ブレーキの応答性を向上させる。
2.電子制御制動力分配システム(EBD)
これは従来のABSシステム(アンチロックブレーキシステム)を応用し発展させたもので、乗車人数の違いに応じて、後輪の制動力を電子制御によって適正化する。
制動時、前後輪に発生する微少なスリップをABS車輪回転センサー信号から比較し、後輪側のスリップが前輪側に対して一定値以上に大きくなると、ABSアクチュエーターで後輪のブレーキ液圧を制御して、前後輪のスリップを均等に近づける。
3.ブレーキアシスト付き倍力装置
ブレーキシステムには倍力装置が組み込まれている。ブレーキペダルを踏む足の力だけでは充分な力を発生させられないからだ。倍力装置はインテークマニホールド内の負圧を活用して、マスターシリンダーのピストンを押す力をアシストするものだが、ブレーキペダルの踏力にほぼ比例して増幅する。しかし、この特性だと緊急ブレーキ時にはアシスト量が不足する場合がある。そこで採用されたのがブレーキアシストだ。踏力が一定の値を超えると入力に対する出力の増幅率が増え、少ない踏力でもフルブレーキ状態にすることがでる。これによって緊急時にはABSの効果をより効率よく発揮させられる(P.211補足解説も参照)。
4.トラクション・コントロール・システム(TCS)
滑りやすい路面(濡れたアスファルト路面や雪路)では、発進や加速時に駆動輪がホイール・スピンを起こしやすくなる。ホイール・スピンが起きた場合には、十分に加速できなかったり、尻振り現象が出る。
トラクション・コントロール・システムは、駆動輪がホイール・スピンを起こしそうになると、電子制御の働きによって、スロットル開度とエンジンへの供給燃料を制御し、駆動トルクを減少させるとともに、ATの変速特性をTCS制御用に切り替え、ホイール・スピンを防止する。

クラウンの電子制御ブレーキ・システムの仕組み

クラウンに採用された電子制御ブレーキ・システムを見よう。
1.前後制動力配分制御
これは基本ブレーキのもつ“止まる”性能をフルに引き出すことを目的として、走行状態に応じた適切な前後輪の制動力配分を実現したものだ。これにより積載状態や減速度による過重変化に応じて後輪の制動力を有効に活用できるため、とくに積載時の制動踏力を軽減し、優れたブレーキの効き性能を確保。
2.左右制動力配分制御
これは旋回制動時の車両安定性の確保を目的としたもので、左右輪の制動力をコントロールすることによって、制動時の車両安定性を確保しながら、優れたブレーキの効き性能を保つ。
3.ブレーキ・アシスト・システム
ブレーキ・ペダルを踏み込む速度と量によって緊急ブレーキを判断し、それに基づいた強い制動力を発生させる。これは従来のアシスト機能に加え、ドライバーが強いブレーキを必要としている場合にも、アシストを補う機能を追加した。フル乗車で坂を下りるときなど、通常以上の制動力が必要とされるような時に、ブレーキ油圧ポンプのアシスト量を制御することで制動力を高める。
パニック状態に陥ったドライバーは、緊急制動時に、ブレーキ操作の速度は速いものの強く踏めず、小さな制動力しか出せないことがある。また、こうしたドライバーは、制動後半にブレーキ・ペダルを長く踏み続けられず、制動力が低下する。
「ブレーキ・アシスト」は、ブレーキが速く踏み込まれた場合、ドライバーの緊急制動の意志を推定し、あまり強く踏めない場合でも制動力を高める。作動後にドライバーが意識してブレーキを緩めた時には、制動力のアシスト量を減らして違和感を低減する
また、フル乗車時や積載時など、ブレーキの操作速度は速くなくても強いブレーキが必要な時にも自動的に制動力を高める。
4.TRC(トラクション・コントロール)
滑りやすい路面での発進・加速時にスロットルを開けすぎると、過大なトルクのために駆動輪がスリップすることがある。TRCは、駆動輪のブレーキ油圧制御と電子制御スロットルによるエンジン出力制御により駆動輪のスリップを抑え、路面状況に応じた駆動力を確保し、発進加速性・直進性・旋回安定性を確保するシステムだ。
5.VSC(ビークル・スタビリティ・コントロール)
ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)やTRC(トラクション・コントロール)が主にブレーキ操作やアクセル操作にともなう制動時および加速時の安定性の確保を目的とするのに対し、VSCシステムはクルマの旋回方向の安定性を確保するためのものである。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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