故障・修理
更新日:2019.10.01 / 掲載日:2019.10.01

アライメント調整(キャンバー・トーイン・キャスター・キングピン角度)の目的とは

 常にハンドルを修正しないとまっすぐ走れないとか、ハンドルが重すぎる場合は、ドライバーが疲れてしまうし、第一女性ドライバーなどには運転がむずかしくなる。
 これらの問題をなくすと同時にダイヤの早期摩耗を防止するためにフロント・ホイールに設けられた要素がフロント・ホイール・アライメント(前輪整列)である。つまりクルマは自ら動くと同時に、ある程度は自ら進路を決める機能をもっているといってもよい。
 フロント・ホイール・アライメントには、キャンバー、トーインキャスター、キング・ピン角度の4つがあり、このうちの一つが狂ってもハンドルが不安定になる。
 このフロント・ホイール・アライメントの各々には、お互いに不都合な現象を打ち消し合いながら、つぎのような大切な役割をはたしている。
 1.ハンドルの操作に必要な力を小さくする。
 2.ハンドルを安定させる。
 3.ハンドルに復元力を与える。
 4.タイヤの寿命を延ばす。

各アライメントの目的とは

 1.キャンバーの目的
 フロント・ホイールに大きな荷重をかけるとホイールの下側を外側へ広げようとする力が加わる。つまり前からホイールを見るとハの字形になるわけだ。こうなるとホイール・ベアリングに無理な力がかかるので、フロント・ホイールを上開き(逆ハの字形)に取り付けている。そして上開きの角度をキャンバー角といい、ふつうは1~3°である。
 キャンバー角を大きくすると原則的にはコーナリング時の求心力(遠心力に対抗する力)が大きくなる。
 たとえば、右回りのコーナーに入ったとしよう。この時、右前輪は右方向に、左前輪は左方向に転がろうとする。なぜなら垂線に対して右前輪には右傾斜、左前輪には左傾斜のキャンバー角がついているからだ。この説明がわかりにくかったら、タイヤをやや右に傾けて力いっぱいころがしてみよう。タイヤは右方向にカーブするはずだ。
 だが、実際にはホイールがアクスル・シャフトに組み込まれているので、タイヤは、このようにころがることはないから、トレッド面で右前輪には右方向、左前輪では左方向への力(キャンバー・スラスト)が働く。そして直進時は左右のキャンバー・スラストが打ち消し合ってバランスしているわけだ。
 右回りのコーナーの場合は、左前輪に大きな荷重がかかるから、左前輪のキャンバー角は小さくなり、キャンバー・スラストも低下してくる。そのため右前輪のキャンバー・スラストのほうが大きくなり、クルマ全体としては右方向への求心力が働くわけだ。
 2.トーインの目的
 前にも述べたとおりフロント・ホイールにはキャンバー角がつけられているので、左右のタイヤのトレッド面は変形しながら転動することになる。つまりトレッド面と路面との間でスリップを起こしながら走ることになりタイヤのトレッド面が傷みやすくなる。
 この弊害を防ぐには、上からみて前輪を前つぼみ(ハの字形)にレイアウトすればよい。そうすれば右前輪は左方向を向くので、右方向へころがそうとするキャンバー角の影響と打ち消し合ってタイヤの接地面は直進方向に向かいトレッドの変形はなくなるわけだ。同時にキャンバー・スラストも小さくなる。
 左右のタイヤの最前端と最後端の中心距離の差をイートンといい、一般的には2~5mmである。

 3.キャスターの目的
 自転車に乗りなれてくるとハンドルから手を放してもまっすぐ走れる。なぜなら前輪が常に直進方向を向くようになっているからだ。自転車の場合は、ハンドルのスポークが傾斜しているので、後ろの駆動輪から与えられた力はスポークの延長線と路面との交点に加えられる。つまりタイヤの中心線はこの交点よりも後方にくることになるから、タイヤは走行中のころがりの抵抗のため、たえず後方に引かれ、フロント・ホイールは自然に直進方向に向けられるようになる。
 クルマの場合はキング・ピンまたはアッパーとロアーのボール・ジョイントを結ぶ線の上部が下部よりもやや後方に傾けられており、この傾斜角をキャスターという。そしてキング・ピンの中心線の延長線と路面との交点からタイヤの中心線までの距離がトレール(リード)である。キャスター角が大きいほどトレールは長くなる。
 キャスター角は普通1~3度でホイールを常に直進方向に戻す働きを持つから、ハンドルを切っても手を放せば自然にクルマが直進方向に向かいハンドルが戻る。
 逆の見方をすればキャスター角が大きくハンドルの復元力が強いクルマほどハンドル操作が重くなる。そのため最近ではハンドルを復元させる働きをキング・ピン角度にまかせキャスター角をゼロにしたクルマも多い。
 4.キング・ピン角度
 バレリーナがクルクルと身体を回転させるときにはツマ先で立って身体の中心線をツマ先とを一致させる。これと同じようにクルマの場合もホイールの回転中心線とタイヤの中心線が交わるようにしたほうがハンドル操作が軽くなるわけだ。
 フロント・ホイールはキング・ピンを中心にして回転するから要するにキング・ピンの中心線をタイヤの中心線と交差させればよいわけだ。
 つまり左前輪では左傾斜のキャンバー角がついているから、キング・ピンに右傾斜の角度をつければタイヤの接地面の中心とキング・ピン中心線の延長と地面との交点との距離(これがオフセット量)が非常に小さくなる。
 このキング・ピン角度がないとハンドルを切った時にタイヤが路面の抵抗を受けるのでハンドルが不安定になる。
 またハンドルを左右に切り込むとキング・ピン角度があるためにボディがもち上がるので、手を放せばクルマの重さによってボディが一番低い姿勢に戻ろうとするから、タイヤを直進方向へ復元させる力が働く。そのためにハンドルの戻りがスムーズになる。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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