故障・修理
更新日:2019.10.01 / 掲載日:2019.10.01

アクティブサスペンションの構造と仕組み

アクティブサスペンションは、サスペンションに油圧の力を加えることで、クルマの動きを積極的にコントロールし、乗り心地と操縦安定性を高い次元でバランスさせるのが目的です。ここでは、アクティブサスペンションの構造と仕組みについて解説します。
サスペンションは金属バネで車体を支え、ショック・アブソーバーで揺れを抑える。しかしバネや別体のショックアゾーバーを用いないサスペンションもある。シトロエンのハイドロニューマチックが代表的なものだが、国産でも以前に油圧アクティブサスペンションが実用化され、一部の車種はエアサスペンションを採用している。ここでは油圧アクティブサスペションに触れてみよう。
 従来のショック・アブソーバーによる減衰力切り替え方式や、エア・サスペンションによるバネ定数切り替え方式は、車体が動いてから初めて力を発生させる装置であり、車体が動かないよう積極的に力を発生するシステムではない。
 油圧アクティブ・サスペンションは、従来のサスペンションにおけるバネとショック・アブソーバーの代わりに、油圧アクチュエーターを用いている。路面の凹凸や車両の走行状態に応じて、発生する振動や動揺を、Gセンサー(加速度センサー)で検出して、最大限のフラット感を得るように、油圧アクチュエーターを連続的に作動させ、乗り心地と操縦安定性を高いレベルで両立させる。
 制御機能としてはバウンス制御、ロール制御、ピッチ制御、車高制御があり、これを関連的かつ連続的に行なって、クルマの安定性を保つ。
 バウンス制御は、路面の凹凸に対するもので、車体が上下方向にバウンドした時、発生する上下方向の加速度を上下Gセンサーで検出し、その値から上下方向の絶対速度を算出して、その速度に応じてアクチュエーター圧力を制御し、車体の制振を行なう。
 突起がくればアクチュエーター内の圧力を下げてサスペンションを縮め、くぼみがくれば圧力を上げてサスペンションを伸ばし、路面状況からの入力が、車体に伝わるのを大幅に軽減させている。

アクティブサスペンションで重要なGセンサーによるロール制御の仕組み・構造

 ロール制御については、クルマがコーナリング中に発生する横加速度(横G)を、横Gセンサーにより検出し、その値に応じて外側輪のアクチュエーター圧力を上げ、同時に内側輪のアクチュエーター圧力を下げて、クルマをロールさせようとするモーメントを打ち消す作用を行なう。
 ピッチ制御は、クルマのスタート時、またはブレーキング時に発生する前後加速度を前後Gセンサーにより検出し、その値に応じて前後輪のアクチュエーター圧力を制御して、スタート時の後方沈み込み(スカット)、及びブレーキング時の前方沈み込み(ダイブ)を抑える。
 車高制御は、乗員数や積載量の変化に応じて、車高が変化した場合、各サスペンションに取り付けられた車高センサーで、車高の変化を検出し車高を理想的な状態に保持する。
 アクチュエーターに油圧力を加えるポンプは、エンジンにより駆動される。ポンプ形式は高圧吐出(最高油圧110kg/平方cm)とするため、プランジャー型とし、7気筒を円周上に配列させたものである。また、ポンプ吐出圧の振動を減衰させるため、金属ベローズ式のガス封入アキュムレーターを組み込んでいる。
 この圧力を監視するマルチ・バルブ・ユニットは、アクティブ・サスペンションのオイル供給圧や戻り圧などの制御機能を、ひとつのユニットにまとめ、多機能バルブとして設定、メイン・リリーフ・バルブは、ポンプの吐出流量に関係なく、オイル供給圧を約100kg/平方cmに保つ。
 供給圧は前輪用と後輪用に独立して蓄えるため、メイン・アキュムレーターを前後に1個ずつ装着。アクチュエーターが一時的に大流量を消費する場合に、ポンプ側からの供給オイル不足分を補ったり、供給圧の変動を吸収する、など多くの機能を持たせている。
 アクチュエーターには、パワー・シリンダー、サブ・アキュムレーター及び減衰バルブを一体としたもので、コイル・スプリングを設け、アクチュエーターと併用することにより、必要圧力を低く設定し、消費馬力の低減を図っている。
 パワー・シリンダーは、高圧かつ低フリクションを両立させるため、減圧シールとダスト・シールの2段シール構造を採用し、さらに減圧シールからのオイル漏れを回収するドレーン・ホースが設けられた。
 サブ・アキュムレーターは、バネ下より入力される周波数の高い振動を吸収させるため、フリー・ピストン式のもので、パワー・シリンダーとの間には、制振用ショック・アブソーバーの役割をする、リーフ・バルブ式の減衰バルブを付けている。
 クルマの挙動を検出するGセンサーは、3つの上下Gセンサー、1つの前後Gセンサー、2つの横Gセンサーを取り付けており、その状態をコントロール・ユニットに入力する。
 Gセンサーの構造は、スチール・ボール位置検出型で、加速度がスチール・ボールの位置を変化させた時の磁場変化を検出して、加速度の量を計測するシステムとなっている。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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