故障・修理
更新日:2019.09.29 / 掲載日:2019.09.29
20世紀の常識 vs 21世紀の新常識07「キャブレター vs フュエルインジェクション」
燃料容器に入れたガソリンを気化させ、それをシリンダーに吸い込ませていたごく初期のガソリンエンジンから、霧吹きの原理を応用したキャブレターに変わって、ガソリンエンジンは大きく進化した。キャブレターの時代は1970年代まで続く。
この間、キャブレターに代わる他の燃料供給システムがなかったわけではない。航空機では姿勢の影響を受けないように燃料噴射装置が採用され、自動車でも1952年にメルセデス・ベンツが300SLに燃料噴射装置を採用した。しかし費用対効果という点で、普及するには至らなかった。
燃料噴射の本格的登場は技術の進化によるものというより、一つの必然性があった。それが排ガス対策だ。キャブレターのような精度では完全な燃焼に導くための空気と燃料の混合が難しく、有害排ガスを抑制するために、より精密な混合が可能になる燃料噴射が求められたのだ。
燃料噴射も短期間のうちに今のように進化したわけではない。最初は空気通路にフラップを設け、その動きに応じて燃料噴射量を制御するプランジャーを開閉するという原始的なものだった。ポルシェ、ベンツ、BMWなどのドイツ車から導入が行われた。
コンピューターを用いる電子制御の時代に入ると吸入空気を様々な方法で検知し、その質量に合わせて最適な量のガソリンを噴射できるようになった。空気の質量検出には、吸気管内の圧力を測るもの、吸気管内のベーンの変位量を電気信号に置き換えるもの、吸入空気中に渦を発生させ、その数を検出して空気質量に置き換えるものなどが開発されていった。しかしどれも決定版といえるものではなかった。
そこで登場したのがホットワイヤー式だ。エアクリーナーとスロットルバルブの間の空気通路に通電できる白金線(ホットワイヤー)を設け、一定温度に保つために電流を流しておく。空気流量が多くなると、温度を一定に保つために通電量を多くする必要がある。空気流量が少なくなると通電量も抑えられる。この通電変化を数値に置き換えて空気質量を正確に計測する。
ホットワイヤー式には吸気通路を流れる空気を測定する主流測定式と、バイパス通路の空気を測定するバイパス式がある。バイパス式は吸気管内の脈動の影響を受けにくく、現在の主流となっている。
噴射制御も進化している。初期は常時噴射が行われていたが、現在は各気筒ごとに行程に合わせて噴射され、運転状況に合わせて精密に噴射量が制御される。このために必要なのがセンサーだ。クランク角センサーをはじめとして、水温センサー、空気温センサー、O2センサーなどからの情報が必須のものとなっている。
シリンダー内に直接燃料を噴射する筒内直接噴射も普及の兆しを見せている。噴射量を精密に制御できる他、シリンダー内を燃料冷却できるという利点があり、高圧縮比が可能となる。ダウンサイジングターボエンジンに採用される例が多くなっている。
公害対策のために普及したフューエルインジェクション。現在もまだまだ進化中
4バルブでは吸気管は各バルブごとに設けられるが、スロットルバルブ近くでは1本に集約される。インジェクターはその分岐部分に各気筒ごとに1個設けられる。しかし各吸気管ごとに設置するデュアルインジェクターを採用するクルマが現れた。第1号は日産ジューク。そしてスズキもスイフトにこの方式を採用し、燃焼効率を向上させている。