故障・修理
更新日:2019.09.29 / 掲載日:2019.09.29
20世紀の常識 vs 21世紀の新常識11「セミトレーリング vs マルチリンク」
長い間リヤサスペンションは頑丈な車軸を持ったリジッドアクスルだった。道路事情の悪い中では頑丈であることがプライオリティの上位にあったからだ。高速道路が普及し始めても、依然リヤサスペンションはリジッドアクスルをリーフスプリングで吊るという形態を採るクルマが多かった。
しかしこの方式では接地性に劣る。中速域までは不足がないとしても、高速域やハイスピードコーナリングでの低い接地性は走行性能を著しく低下させる。そこで登場したのが独立懸袈だ。前輪はダブルウィッシュボーンの採用によって早くから左右独立が採用されていたが後輪は後れをとっていた。
といっても、上級車やスポーティカーでは様々な方式の左右独立サスペンションが考案された。それらの中でも、最も多く、最も長く使用されたのがセミトレーリングアーム式だ。
しかしこのサスペンションには大きな欠点があった。適切なキャンバー変化によって接地性はよいものの、外力によってトーアウトとなり、車両のバランスを崩すのだ。
この欠点を解消するものとして1982年に登場したのがマルチリンクだ。メルセデスが開発し190Eに搭載した。複数のリンクで位置決めされたハブはタイヤの動きに応じて最適なキャンバーとトーを作り出す。直進中にタイヤが上下しても、コーナリング中にバウンド、リバウンドしてもタイヤの接地面に大きな変化は現れない。
E190以後、上級車のサスペンションはマルチリンクに収斂されていく。
動的ジオメトリーを追求して大きな進化を遂げたFR車用のリヤサスペンション
主にFRや4WDの上級車のリヤサスペンションにはマルチリンクやダブルウィッシュボーンが用いられるが、FF車の多くはトレーリングビーム式を採用している。一見、左右リジッドのように見えるが、ビームの捻れによって、左右のタイヤは自由に動き、接地性にも優れている。低コストでコンパクトな優れたサスペンション方式なのだ。