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故障・修理
更新日:2019.10.11 / 掲載日:2019.10.11

W123復活大計画「ミッション交換その1」Vol.18

今月の作業レシピ
・ボディ診断
・ボディ下処理&塗装
・アルミホイール塗装

中身は往年の姿に戻りつつあるベンツちゃんだが、ここまで仕上がってくると、すべてをきっちり戻したくなってくるものだ。今回は40年に歴史が宿るベンツちゃんのボディ塗装をD.I.Yで美しく蘇らせてみるぞ。

1977年式 幸せの黄色いベンツちゃん復活大計画【Vol.18】 

ベンツちゃん=Mercedes-Benz 300D(W123)

 ベンツちゃんのサハラ・イエローの車体は遠目には素敵な色に映るが、不思議なことにボンネットとトランク、左フェンダーの下側の部分だけ洗車すると、スポンジに塗料らしき色が移ることもしばしばだ。最初は、「この3箇所は40年間一度も鈑金塗装されていないオリジナル塗装なのかも?」と考えたのだが、実際はマスキングテープやオーバースプレーの痕跡から推測すると、この3か箇所は大掛かりな鈑金塗装が施された部分らしい。その時の作業や塗料品質の問題で色移りしてしまうようなのだ。
 他のドアなどにも小さな凹みが多数あるので、思い切って“全塗装”することも考えたが、自分の技術を冷静に振り返ってみると、「塗る前のほうが良いかも……」にもなりかねない。正直、パテ盛り作業も自信がなく、下手にパテで修正してしまった、後でパテ跡が浮き出てしまっては、悲しい失敗例をさらすだけだろう。
 新ガレージの立ち上げに散財してしまったこともあって、プロに全塗装を依頼する予算もない。そうなると残るは劣化が目立つ部分に絞った鈑金塗装しかないが、塗装した部分と未塗装の部分の色や肌の違いを目立たないように仕上げるのは、極めて高度な技術が必要となるだけに、ベンツちゃんを美しく仕上げられるのはどんな方法なのだろうか?

新ガレージで初のメンテに挑戦、 ベンツちゃんも嬉しそう(笑)

ボンネット、トランク、左フェンダーのモール下の部分だけ、極端な塗装の劣化が目立つ。他の部分は、遠目にはまあまあの状態。

パテ跡やボンネットの裏には鈑金の痕跡はないため、オリジナル塗装箇所の劣化と思ったが、実は逆のシナリオだった。

メカ系メンテは大好きだけど 実は塗装メンテは超苦手 自分でできるか、本当に心配だ

下地のプライマーの色が透けている。過度のポリッシングの影響ではなく、鈑金時のプライマーが透けているようなのだ。

劣化部分を磨くと、オリジナル塗装や鈑金跡が現れた。劣化の原因は再塗装時の塗装の耐久性の問題だと思う。

樹脂製のウォシャーノズルが硬化して割れそう。新品パーツと取り外す手間のコストを天秤にかけて、作業をスタートする。

ボンネットは大掛かりな作業が必要だ。

樹脂製のウォシャーノズルが硬化して割れそう。新品パーツと取り外す手間のコストを天秤にかけて、作業をスタートする。

うっかり塗装を落とすために用意した240番のサンドペーパーで、塗装を予定していないフェンダー上部まで磨いてしまった……。

急遽2000番で研磨&コンパウンドで修正を試みる。240番による深い傷は微かに残ったが、再塗装の必要性まではない……、事にしよう。

やたら頑丈な雰囲気の北米仕様5マイルバンパーは、衝撃吸収のためのショックアブソーバー付きで取り外した。

ヘッドライト下の塗装は、飛び石傷によるダメージが目立つ。やたら頑丈な雰囲気の北米仕様5マイルバンパーは、衝撃吸収のためのショックアブソーバー付きで取り外した。部分も再塗装することにした。

サイドモールを取り外すと、マスキングテープの跡が隠れていた。フェンダーの下側も再塗装されたのは明らか。

エンブレムの装着箇所は、取り付けボルトによる塗装の傷から錆が進行しがち。だが幸い問題ないようだ。

脱脂ではシリコンオフを使うが、塗布直後は反射するので、サンディング箇所の凹凸の判断の一助になる。

塗装の方法はどうする?悩みすぎてラビリンスに突入

 鈑金塗装にセンスがないことは知っているのだが、バンパーやドアミラーレベルの作業ならば、プロ並み(?)に仕上がったこともある。塗装面積が少なかったため、下手くそな塗装ガン作業でも吹きムラが目立たなかったのだろうが、こういう奇跡的な成功体験があるからメンテは面白い。
 きちんと塗装を仕上げるためには外せないお約束があるが、まずはエアコンプレッサーの空気吐出量が塗装ガンの空気消費量を上回っていることが大切だ。これを満たしていないと、コンプレッサーの圧縮空気が不足した段階で“息切れ”を起こしてしまい、塗装作業を終了せざるえない事態にもなりかねない。ドアミラー程度であれば、所有するコンプレッサー(25Lタンク)でも最後まで適正圧力を保てるのだが、大きなボンネット一面を塗装するには少々荷が重い。そこで今回は写真のような補助タンクを追加することで息切れ対策を施し、塗装してみるとにする。
 そして次に問題になるのは、プライマーの選択だ。一般的にはサンディングを行なって、鉄地肌が露出した部分も含めてウレタン系のプラサフを下地として作ってから塗装する。だが入手した車体整備書によると、鉄地肌が露出した部分には防錆能力の高い2液のエポキシプライマーを塗布してからプラサフやパテを使用するように指定してある。下地の処理とプライマーの選択は、特に防錆に大きな影響があるが、下地処理の考え方はさまざま。塗料販売店と相談するなどしてから、塗装工程を検討するのがいいだろう。
 今回の作業では、微かな凹凸が全体的に発生しているため、一般的なウレタン系プラサフより、厚塗りできる2液タイプのポリエステル系プラサフを使用した。
 その施工は液状のパテを塗布しているような感覚に近い。一回のスプレーで膜厚を確保できるので作業性は良いが、平滑な仕上がりにこだわりすぎると、良好な下地にならない。さらに問題はサハラ・イエローが透けやすい色のため、下地が均一になっていないと、塗装後に下地が透けてしまい、ムラになりそうなことだ。
 そのため、色が変わっている部分には再びプラサフを塗布する手間が必要になる。研磨、うっかり下地露出、再び塗装、また研磨……。この無限ループにより、暑いガレージの中で約一週間を費やすはめになってしまった……。

久々に挑む塗装工程はドキドキの連続。失敗したら、わざわざやる意味なし

25Lタンク付きのコンプレッサーの吐出能力は、ガンの空気消費量より低いので補助タンクを購入し息切れ対策をした。

ガンの空気消費量 164L/min コンプレッサーの吐出量100L/min。補助タンク追加でせめてボンネットを一気に塗装できることを願う。

ガンと使う塗料の説明書にはエアの設定圧が記載されている。補助タンク出口に装着したレギュレーターで調整。

パテは、軽量で嵩を増すという目的から水分を吸収しやすい性質がある。パテの下で錆が進行している可能性もある。

プラサフはほんの微かな凹凸でも塗装後に目立つ。パウダー状のガイドコートで凹凸箇所を探るが、これが難しいのだ。

手作業で仕上げた旧塗装は、微かな凹凸が生じている。プラサフ塗布後に手作業で完璧に平滑な面を出すのは難しい。

シリコンオフを塗布すると、クリアコートのような感じになるので、塗装後(磨き後)に現れるパテ跡を予想できるが……。

スマホのLEDを塗装面に平行に照射すると、微かな凹凸が影となる。真夏の深夜、出口の見えない作業がひたすら続く……。

凹部はパテで修正。今回使用したエバーコートのパテは電気化学的密着力を高めた優れた防錆力が特徴。鉄地肌でも安心して使える。

黄色は、色が透けやすいので下地の色が塗装後に目立つことも。防止策として下地に白を塗装する方法もある。

プラサフ研磨時に鉄が露出したエッジ部分は、防錆力の高いプライマーかプラサフで再塗装しないと錆発生の原因にも。

研磨、プラサフ、研磨の繰り返し。酷暑の中の研磨作業で落ちた汗が、その後のトラブルになることも知らずに……。

艶は磨き作業で引き出す、その大原則を実施するのが難しい

 使用した塗料は、3年前に塗料販売店で調色を依頼して作った2液アクリルウレタン塗料。販売店曰く、「調色はばっちりだから、ブロック塗装(ぼかし塗装をする必要がない)でもいけます」と自信満々。だが3年間による塗料の劣化、実車の塗装の劣化による色の変化、そもそも調色した塗料とボンネットの色が完璧にマッチしているのか?など、不安材料は多い。
 そんな不安を抱きつつも、まずはホイールキャップから塗装を開始する。以前、販売店からは「古いクルマなので、ソリッドカラーでもクリア塗装はされていないと思うので磨き作業が超大変だけど、クリア塗装無しのほうが、マッチングがいいんじゃないかな」とアドバイスをもらっていた。塗り過ぎて塗料が垂れてしまっては本末転倒だが、艶は磨き作業で出すと心得るべし、ということなのだろう。
 これらのことを踏まえて作業を進めていくと、思った以上に作業はスムーズに進んでいく。キャップも床に置いて艶が出るように厚塗りすると、艶はばっちり出ていて懸念していた垂れも発生しない。だが好事魔多しか、ボンネットの塗装は、何やらポツポツとクレーター状になってしまった。塗料会社に相談してみると、これは作業中に汗が垂れた可能性が高いという。おそらくサンディングの時にドキドキした時の冷汗の痕跡だろうか? さらにトランクの垂直部分でも艶を追い求め過ぎて厚めに塗った結果、恐れていた垂れが盛大に出来てしまった。想定していたとはいえ、この仕上がりは最悪に近い結果。リカバリーは頑張らなければ。

本格塗装工程に突入! 特にホイールはキレイに仕上げたい

調色を依頼して作った2液アクリルウレタン塗料だが、色見本のフェールリッドとボンネットの色がマッチするのか不安だ。

ガンの清掃や塗料の調合等、塗装作業は手間のかかる作業なので同時に塗装するほうが効率はいいだろう。

塗料はがし液をブラシで塗ると、あっという間にブクブクと塗装が浮いてきた。強力なケミカルなので扱いには注意したい。

無事、古い塗装は剥がせました。ホースで水を勢いよくかけただけで、あっという間に御覧の通り。このままの状態でも良いくらいピカピカの状態になった。

鉛筆は、テープの上で滑りやすいのでエッジ部分にまっすぐな線を付けることが出来る。そのあとカッターで切る。

非塗装部分のマスキングが剥がれないように丁寧に剥がしていく。ブレーキダストで汚れる部分なので、神経質にならなくても良いかも。

ステンレスと思われるので、密着性を高めるために“ミッチャクロン”をプライマーとして最初に塗布することにした。

硬化剤、シンナーを正確に混ぜ合わせフィルターで微細な異物を取り除く。プロは気温でシンナーを変えるほど神経を使うそうだ。

プロでもソリッドだけで艶を出すのは難しいという。でも「艶は磨いて出せばOK」と言い聞かせながらながら塗装を進める。

ついつい艶を出そう(磨く手間を軽減しようと)として、塗り過ぎてしまうと垂直部分で“垂れ”が発生してしまった。

フェンダー下の塗装部分とドアの色違いが気になるが、光源によって色の違いが変わることもあるので、この段階では答えが出ない。

塗料が完全に硬化する前にマスキングテープを剥がすことにした。塗装はしっかり密着しているので大丈夫だと思う。

マスキングのエッジ部分が、手仕事っぽい仕上がりとなってしまったが、色がマッチしているので満足な仕上がりだ。

知り合いのプロから「これつけた方がいいよ」と頂いたマスクは黄色に染まっていた。プロのアドバイス、ありがたや。

調合済塗料をこぼしてしまい、肌に触れると焼けるように熱くなった。すぐに裸になり水浴びしたが、びっくり。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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