故障・修理
更新日:2019.12.24 / 掲載日:2019.12.24
令和の今も愛されるオープンスポーツ HONDA S2000(AP-1)【2】
回さないようにしてもオイル消費量は減らない
まだまだ新しいクルマというイメージが強いS2000だが、果たしてS2000特有のトラブルなどあるのだろうか? ホンダに特化したアフターパーツメーカーであるスプーンのアンテナショップとして、日本はもとより世界中のホンダマニアが日常的に訪れるというタイプワンでお話を伺った。対応してくれたのはタイプワンの元店長であり、現在は本体のスプーンで広報担当として活躍されている城本さんだ。
「S2000を乗るに当たって、最も注意してほしいのがエンジンオイルです。S2000はオイルの消費量が非常に多く、一般的な5000kmというサイクルでしっかりとオイル交換をしていても、オイル不足が原因でエンジンブローさせてしまうオーナーさんが非常に多いのです」
やはり高回転を常用するので、オイル消費が激しいのだろうか? 「高回転まで回さなければオイル消費が減るのかといえば、そうではないのです。街乗りのみ、あまり極端にエンジンを回されない方でも、同様のトラブルに見舞われています。オイル消費が多い原因はピストンリングの形状で、高い燃焼圧力に対応させるために、ピストンリングの形状が一般的なエンジンとは異なるのです。走行10万km以上という車体が一般的な現在では、1000kmで1L減るエンジンも少なくありません。オイル消費は多いものと考えて、日常的にレベルゲージを見る癖をつけたほうがいいですね」
教えてくれたのはタイプワンの城本さん
チューニングのイメージが強いスプーンとそのアンテナショップであるタイプワンだが、歴代ホンダ車のリフレッシュにも力を入れている。特にデビューから20年が経過したS2000は、ディーラーで専門的な整備が受けづらくなっており、S耐参戦等で得た多くのメンテナンスノウハウを持つタイプワンでリフレッシュを行うオーナーが多いという。
TYPEONE
所在地:東京都杉並区南荻窪1-3-16
TEL:03-3247-6601
URL: https://www.typeone.jp/
高出力対応のピストンリングが思わぬトラブルの原因 一般的なオイル交換サイクルで安心するのは禁物
メーカー指定のオイル交換サイクルをしっかりと守っていたにもかかわらず、オイル不足が原因でエンジンがブローしてしまうというトラブルがS2000には多いという。これは燃焼圧力が非常に高いため、それに対応したピストンリングの形状が原因となっているようだ。燃焼圧力が高い時に最もシール性を高めるべくリングがすり鉢状になっている。
燃焼圧力が低い状態ではシール性が低い、つまりオイル消費量が多くなってしまう。城本さんによると、1000kmあたり1Lのオイルを消費するとのこと。オイル消費の多いクルマはマフラー出口が黒くなるので、そうなっていたら要注意。対応策としては日常的に油量を確認し、必要に応じて補充する必要がある。
「ちょい乗り」ばかりや長期放置車両は要注意です
高回転エンジンは、ブローバイの圧力対策が必須。そのためS2000のヘッドカバーは非常に大容量。しかしその大容量が思わぬトラブルを招く。
そのトラブルとは結露による水分でカムなどのエンジン部品に錆が発生してしまうというもの。たまのちょい乗りしかしていないような車両はフィラーキャップから内部を確認したほうがいい。
オイルブロックの装着は 百害あって一利無し
エンジンの状態をより詳細に把握したいと追加メーターを付けるユーザーも多い。しかしその付け方として最も手軽なオイルブロックの使用はS2000では避けたほうがいいという。9000回転を常用するS2000は、高回転時の振動が一般的なエンジンとは次元が異なるそう。オイルブロックでかさ上げされることで、オイルフィルターへの振動の影響が増し、フィルターが外れるなどのトラブルが多発するそうだ。
アース線の経年劣化はしっかりと進行中
20年という歳月で経年劣化している部分は多い。そのひとつが配線類。高回転では点火に多くの電力が必要となるため、ちょっとしたハーネスの経年劣化による電気抵抗の増大で、不調となっている車両が多いそうだ。バッテリー端子のマイナス側などを新品に替えたりアーシングを施すことで、調子を戻すこともあるという。
タンクとコアのカシメが 緩んで冷却水漏れ発生
ラジエーターは樹脂タンクなのでアッパータンクの割れなどが多そうだが、それよりもコアとのカシメが緩み、そこから冷却水漏れを発生することが多いという。発生するのは高温高圧のアッパー側となるので、タンクとコアの合わせ目にクーラント漏れがないか確認しよう。
高い燃焼圧力と高回転による 振動でプラグに緩みが発生
これも高回転・高出力を誇るF20Cならではのトラブル。なんと高回転時に発生する振動や、高い燃焼圧力が原因となり、規定トルクで締め付けられていたプラグに緩みが生じて、圧縮漏れが発生することがあるという。プラグの締め付けも定期的に行ったほうがいいいだろう。
ヒーターバルブが固着して しまう車両が出始めています
冷却水路でラジエーターと共に最近トラブルが増えているのがヒーターコックだ。エンジンの吸気側、バルクヘッド部に位置するヒーターコックが固着してしまいヒーターが効かない、もしくは温度が下げられないといった症状が発生。冷却系メンテ時に交換するのが得策だ。
センサーは汚れて不具合も しかしDIYでの洗浄はNG
スロットル系やインマニのタンクに付くエンジン制御系のセンサー類は定番といえるようなトラブルはない。しかしそろそろ交換しておいてもいい時期ともいえる。ちなみに内部をパーツクリーナーなどでクリーニングするのはセンサーを壊してしまうのでNGだそうだ。
テンショナーのスプリングが 弱ってベルトに緩みが
オルタネーターやエアコンコンプレッサーを駆動するためのファンベルトのテンショナー。これのスプリングが弱くなってしまいベルトの張りを保てなくなっている車両が目立ってきているという。ベルトの鳴きが発生していなくても、予防メンテで交換するといいだろう。
エンジンマウントは液体封入タイプ。これまで一度も交換されていないものであれば間違いなく封入されていた液体は漏れてなくなっている状態。純正品に交換するのもありだが、S2000のダイレクト感をより高めるべく、スプーンの強化マウントに交換するのもあり。
ダッシュパネルの割れは 幸いなことに現状では少ない
旧車では定番となるダッシュパッドの割れだが、S2000は現在のところ割れている車両は非常に少ないそうだ。とはいえ紫外線による劣化は間違いなく進行しているので、今のうちから駐車時には紫外線を当てないようにするなどの防御策を講じておくといいかもしれない。
レザーシートに特に目立つ サポート部の擦れや割れ
純正シートに関しては標準のファブリックタイプと本革タイプがある。どちらも相応のヤレや擦れが発生しているのが普通だが、本革タイプのほうが特に運転席右側のサポート部に割れが発生していることが多く、ヤレて見えてしまうことが多いそうだ。
スイッチ類は機能不全は少ないがランプ切れが目立つように
メーターの両サイドにレイアウトされる各スイッチ類。どれも機能的な問題が発生しているということは少ないそうだ。
だが、内蔵されている照明が切れてしまっているクルマが目立つようになってきたという。電球のみ交換できるタイプではないところが問題。
手に触れる部分の使用感が 目立つようになってきた
ハンドルやシフトレバーといったドライバーが触れている部分に、仕方がないことだが使用感が出ている車両がほとんど。
アルミ製のシフトノブも、20年なりに走行距離を重ねている車両であれば、表面のアルマイトが剥がれて年季の入った見映えとなっている。