故障・修理
更新日:2020.03.10 / 掲載日:2020.03.10

バッテリー&オルタネーター完全リフレッシュ 【5】

ショート防止の手順を守れば難しくはない ヘタったバッテリーは迷わず交換

限界を超えて放電させてしまったらアウト!

 鉛バッテリーは無負荷電圧で約11.5V(開路電圧)で電気容量の残容量が0%近くになり、その後放電を続けると残容量は限りなく0%に近づいていく。

 バッテリーメーカーはその電圧低下の限界点を「放電終止電圧」と定義。電圧としては一般に約10.5Vとされている。これが放電させられる限界で、ここまで電気を使い切ると寿命が極端に短くなり、最悪の場合、充電ができなくなる。

 このため、セルが回りきらず、電磁スイッチが断続して「カチカチカチ」と甲高い音を発しだしたくらいまでが、補充電して再利用できるか否かの分かれ目。そこから無理をしたり、そもそも既に放電しきっていてウンともスンともいわない状態だったら、限界を超えている可能性大。3年以上使用して上がりやすくなったバッテリーも同様で、素直に交換したほうがよい。そのバッテリーの交換、基本的には簡単。無理なくDIYできる。

基本的なバッテリー交換手順  交換自体はそれほど難しくないが……

外す時はマイナスターミナルから!

赤色カバーを被った側がプラス(+)端子、剥き出しになっている側がマイナス(-)端子。

ターミナルを取り外す時は端子剥き出しの「-側」から。

次に+側を外すが、万が一にもショートした場合、すぐに外せるよう口先が開いたスパナの使用が原則。

ブラケットの固定ナットを外れない程度に目一杯緩める。

ロッド先端の引っかかりを外して取り外す。

これでバッテリーが取り出せる。

組み付ける時はプラスターミナルから!

搭載する向きに注意しつつ、グラつくことなく安定する位置に載せる。

ブラケットを元通り組み付け、ナットを締めて固定。

ターミナルを取り付ける時は「+ターミナル」からだ。

「-ターミナル」は最後に取り付ける。きっちり締め付けたらバックアップ電源を外して完了だ。

バックアップせずにバッテリー端子を外してしまうとメモリーが吹っ飛ぶ!?

 オーディオやコンピューターに内蔵されている各種設定を記憶するメモリーは、搭載バッテリーの常時電源(+B)が通電していることでデータを保持している。

 このため、バッテリーの-ターミナルを外すと各種設定データも消えてしまい、再設定が必要となる。近年、このメモリー消去後の回復に手間がかかる車種が増えているので注意。交換するならバックアップが必須だ。

ラジオのチューニング、オーディオの各種設定、バックカメラの設定といったメモリーに記憶された設定がすべてキャンセルされる。

近年の純正ナビの場合、バッテリーを外すとセキュリティ(盗難防止)が動作し、パスワードを入力しないと動作できなくなる。

パワーウインドウがリセットされてオート動作が無効になることも。この場合、窓が全閉から1秒以上、スイッチを押し続ければよい。

バックアップ手順
カイセ/ジャンプスターター KG-106C 価格:34,800円(税別)

●仕様
バッテリータイプ:リチウムイオンバッテリー(リン酸鉄)
バッテリー容量:16000mAh(3.2V)
ジャンプスタート出力端子:DC12V/300A、USB出力端子:DC5V/1A、DC5V/2A
シガーソケット出力端子:DC12V/10A
入力:DC15V/1A(充電用入力端子)
ジャンプスタート電流:300A
ジャンプスタート対応車:排気量4000cc以下の12Vガソリン車、排気量3000cc以下の12Vディーゼル車
本体充電方法:専用充電器(908AC充電器/909シガー充電器)
本体充電時間:約6時間(AC充電器の場合)
残量インジケーター:5段階青色LED表示
サイクル寿命:約2000回(目安)
防塵・防滴仕様:IP63
寸法・重量:134(H)×188(W)×37(D)mm、約810g(本体のみ)

プラスターミナルが通電状態になるので注意!

 メモリーのバックアップは常時電源系統に外部からDC12Vを流し込むことで可能となる。そして、それを目的としたバックアップ電源も市販されており、初期の製品はバッテリーターミナルに接続した。近年は交換作業の邪魔にならず、常時電源系に確実に通電できるOBD2コネクター接続タイプが主流。Part4のアイテムとして用意したカイセの「ジャンプスターターKG-106」にはDC12V電源にもなるシガー出力があり、そこに接続して使用するバックアップ用OBD2ケーブルも付属している。そこで、これを利用し使用手順を追ってみる。

キーOFFでバックアップ電源を接続する

イグニッションキーを抜き、OBD2コネクターの設置位置を確認。

コネクターの向きを合わせてOBD2ケーブルを奥まで確実に差し込む。正常に接続できればOBD2ケーブルのコネクター側面の赤色LEDが点灯する。

窓を全開にしてドアを閉め、窓からOBD2ケーブルのシガープラグを引き出し。

ジャンプスターターのシガーソケットに接続。

シガープラグ側面の赤色LEDが点灯したことを確認して準備完了だ。

マイナスターミナルを外したら確実に絶縁する

-ターミナルを取り外し。

作業中に間違ってターミナルポールに接触しないようケース側面に押し込んでおく。

バックアップ電源が接続されていると-ターミナルを外しても+ターミナルには電気が流れているので注意!

ウエスを広げてカバーしつつ。

周囲の金属部に触れないよう慎重に取り外す。

外した後もショートを防止するため軍手やウエスを被せることで確実に絶縁しておく。

ホルダーを外しバッテリーを取り出す

ブラケットの固定ナットを目一杯緩める。

ブラケットのロッド先端はフックになっていてバッテリーベース上に設けられステー、もしくは側壁の穴に引っかけられている。ロッドを傾斜させて、その先端部の引っかかりを外す。

外れたら、まっすぐ引き抜くようにしてホルダーごと取り外す。

バッテリーは鉛の塊ゆえかなり重いので注意! 慎重に引き上げつつ取り出す。

定位置にキッチリ載せて固定する

ターミナルポールの組み付け方向を間違えると+/-ターミナルが届かなくなるので注意! 分からなくなったら仮置きして収まりを確認を。

載せる位置も決まっている。

ズレるとグラついて不安定となるため、安定しているか必ず確認する。

ブラケットをバッテリー上部に載せ。

ロッド先端のフックを引っかける。

固定ナットを締め込むが、レンチのヘッド部分を持って回す程度の力で締めれば十分だ。

ターミナルを組み付け、バックアップを外す

ブラケットの固定ナットを締めすぎるとケースが歪むので注意! 揺すって動かなければOKだ。

+ターミナルに被せた絶縁用の軍手を、周囲の金属面に接触させないよう慎重に取り外す。

外したらただちにターミナルポールにはめ込み、根元まで確実に押し込んでからキッチリ締め付ける。

最後に-ターミナルを取り付けて一段落。

キッチリ締まっているか再度確認。

その後、バックアップ電源を取り外して作業完了だ。

簡易タイプのバックアップ電源

 とりあえずバックアップだけ行いたいなら、簡易タイプのバックアップ電源を利用する手がある。写真はそんな用途に最適なエーモン「メモリーバックアップ」で、電源は単3形乾電池6本。動作確認ランプはなく、バッテリーへの接続は赤クリップを+ターミナルに直接、挟み込む。このため、確実に機能させるため使用時は新品電池を用意。作業中に外れないよう安定かつ確実に挟める位置に接続すると共に、引っかけて外さないよう取り扱いには注意が必要だ。

新品を調達する時は記号に注意!

 新品バッテリーを調達する時は、ケース上面に表示されている「形式表示」と同じものを選択すればよい。ただし、似たような表示でも記号が1つ違っただけで取り付けられないことがあるので注意! たとえば、端子の極性位置を示す末尾のL/Rを間違えるとターミナルが届かなくなる。購入時は十分注意したい。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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